『レオン』(1994)これが最高!これ以降の、ジャン・レノもリュック・ベッソンも輝いていない。

 最も人気のあるフランス人監督といえる、リュック・ベッソン監督のというよりは90年代を代表する作品で、個人的にも年2回は見る作品のひとつです。見所としてはなんといってもナタリー・ポートマン、ジャン・レノ、そしてゲイリー・オールドマンという主役級の人々のキャリアのなかでも最高傑作ともいえる演技を挙げなければなりません。

 特にナタリー・ポートマンの演じた「マチルダ」が見せた、陰のあるキュートさと熟練女優のような演技力のギャップの大きさが、この作品に幅の広さと奥行きを与えています。彼女の作品はこの後も注目し、いろいろ見ましたが、残念ながら『レオン』ほどのインパクトを残してはいません。

 過激版『ロリータ』の印象のある、この作品を彼女自身が超えていくには、才能のある監督の渾身の一撃のような作品に巡り会わねばならないでしょう。つまりかなり難しいという意味です。ジョージ・ルーカスが焦って『スター・ウォーズ』を撮り終えたのも、若い初々しさこそが最大の魅力である彼女の「賞味期限」が近づいていたからではないでしょうか。

 この作品で彼女を知った人は昔の彼女を知った上で、今の作品を見ています。今でも十分に魅力のある彼女ですが、徐々に輝きが消えつつあるのは寂しい限りです。

 レオンを演じたジャン・レノは『グラン・ブルー』、『二キータ』に引き続き、リュック・べッソン監督作品の主役を務めました。ここでの彼は圧倒的で、少々頭は足りないが、野獣のような力と氷のような冷たさを持つ孤独な殺し屋を見事に体現しています。しかしながら彼もまたナタリーと同じく、この作品以降は魅力を十分に引き出せているとは言い難い。

 彼らを動かす、リュック・べッソン監督の才能も全編に満ちています。映像表現の豊かさを物語る素晴らしい演出、分かり易いが奥の深い物語など彼がこの作品で見せた素晴らしさは彼のその後のキャリアを作っていくうえでも大きな意味を持つ作品だったのではないでしょうか。

 オープニング・シークエンスのスピード感と激しさの伴う動きを落ち着いて処理するカメラ・ワークは決してバタバタしない安定感と自信を感じます。階段を映すシーンでの、ヒッチの『めまい』のようなアングル、『ゴッド・ファーザー』のオープニングを髣髴とさせる大写しされた「手」の映像には思わず「にやっと」させられました。 

 映像として印象に残っているのはベッドの白いシーツに二人で入るシーン、ナタリーの修行時代(ジェダイかよ!)、レノがひとりでミュージカル映画に子供のような目で没頭するシーンは『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいでした。

 まだまだあります。家族を惨殺され逃げてくるナタリーを部屋に迎え入れるシーンでのドアを開けた時に彼女の顔に反射する日光(まるで天国に行き着いたような光)、効果的なスローモーション、ズーム、クレーンとズームの組み合わせなどを使いこなし、べッソン監督は映像で物語を語っていきます。
 
 エリック・セラの効果的な音楽と音響も聞き逃してはなりません。場面によって「オン」と「オフ」をはっきりさせています。音楽が物語や感情を表現するところ、映像が主に物語を語り音を必要としないところではしっかりと消しています。スティングの哀愁を帯びた『Shape Of My Heart』も締めくくりとしては素晴らしい曲でした。

 それ以外にも寒々しさと暖かみが交差する落ち着いた色調の照明などは個人的に好きな色調です。舞台設定もリトル・イタリーの雰囲気を上手く取り込み、殺伐となりがちな作品世界に暖かみを加えています。以上のように多くの見所がありますので、いろいろな部分に限定して、繰り返し何度でも見たくなる作品なのです。

  当初はフランス製アクション映画のスタイリッシュさばかりが強調されていたような印象がありましたが、徐々にそうした浮ついた事は語られなくなりました。じっくりと見ていくと基本に忠実に構成されていて、奇をてらった表現が皆無である事に気付くでしょう。

 映画には3種類しかありません。それは良い映画か、まあまあの映画か、それとも悪い映画かのいずれかです。古いからといって、良いわけではない。新しいから、レベルが低いわけでもない。観客動員数が圧倒的なものが映画の出来としても良いわけではない。公開後すぐに打ち切られたものがすべて最低であるというわけではない。

 軽視されがちではありますが、80~90年代にも多くの名作が生まれています。とかく、こだわりのある映画ファンほど、古いものを神聖視したがり、新しいものを批判しがちではあります。なかには全く新作を見ない人もいるかもしれません。

 ただし、勘違いして欲しくないのは昔の映画がすべて優れていたわけではないのです。一本の素晴らしい作品の陰には50本~100本の駄作が埋もれています。今、残っている名作映画は各国、各時代を生き抜いてきた真髄(クリーム)ともいえる人類の至宝です。

 『死ぬまでに観ておきたい1000本の映画』という著作がありますが、あれですら、たった1000本の名作について、述べているにすぎないのです。1000本の陰には何万本、何十万本のクズ映画があるに違いない。

 反対に、古いものは全く見ないで、ハリウッドの新作だけが映画だと思っている人もいます。制作費が莫大に掛かっているから出来も素晴らしくなるわけではない。『天国の門』が歴史的大失敗に終わったために、由緒ある会社だったUAは倒産しました。

 費用対効果のパフォーマンスが最悪な作品がこれでした。UAにとって、必要だったのは作品の芸術性ではなく、興行成績だけでした。映画は芸術であるだけではなく、多くの人がそれによって生活していくためのビジネスでもあるのです。

 どうも、日本の映画に携わる人はお互いの事をあまり理解せず、「観る人」は娯楽と芸術だけに言及し、「撮る人」は自作の評価と予算の少なさだけに言及し、「見せる人(会社)」はお金が儲かっているのか、そして次に何で儲けるかしか考えていない。

 一見、大儲けしているように見える会社であっても、『タイタニック』のように膨大な予算をつぎこんだ作品が、本物のタイタニック号のように興行的に沈没すれば、会社が倒産する可能性が大きくなる。博打の要素が大きいビジネスが映画なのでしょう。

 こうして考えていくと、素晴らしい映画の価値も三者によって、全く違ってきます。例えば会社的にいうと、とにかく儲かればそれが良い映画だというのであれば、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』なんて最高の映画でしょうし、『天国の門』は最悪です。

 会社主宰で、「会社による、会社の、会社のための映画」を産業映画大賞として選出するならば、『ブレア~』は金字塔でしょう。他の2者はこれが賞を取ることなど許さないでしょう。社内で、「身内だけでガッツ・ポーズを取る作品賞」を祝うところを見たい。

 ええっと、『レオン』でした。素晴らしい作品です。ジャン・レノ、リュック・べッソン、ナタリー・ポートマンは最高です。ここではという限定がつきますが。ナタリー・ポートマンがおお化けする最後のチャンスは『マチルダ』製作しかありません。

 べッソン監督も「あんじぇら」なんかにうつつを抜かさずに、彼女マチルダの立派な姿を描いて欲しい。なにもアクション映画である必要性などないのですから。

総合評価 96点

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