『見えない目撃者』(2019)韓国映画のリメイクが4年前に中国公開、さらに日本でもリメイクして公開。

 『見えない目撃者』はどんぎつねのCMが人気の若手女優、吉岡里帆の主演作品で、彼女を助けるスケボー学生に高杉真宙を当て、大倉孝二、浅香航大、田口トモロヲ、國村隼、松田美由紀らしっかりした脇役を揃えています。先週の金曜日から公開されていて、早速見に行って来ました。

 ドラマや映画の主演に起用されることが増えている吉岡里帆ですが、本来は脇を固める女優として活動したほうが息が長いキャリアを積めそうなのになあと思いながら、見ていることが多い。このタイミングで何故に韓国映画のリメイクをして評価が低かった中国版があるのに何故再び日本でも同じ題材で製作したのだろうかという疑問はあります。

 韓流が好きなのは吉岡里帆のファン層ではないでしょうから、いくらネタがないとは言っても、安易に外国作品のリメイクに走る動きはいい加減に無くしてもらいたい。韓国映画独特の暗い情念たっぷりで残酷な描写を日本向けにどう修正したのか、その試みは正しかったのかで評価が分かれそうです。

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 里帆ちゃんのピンチの場面で犯人の浅香が噛みつきに来た盲導犬をナイフで刺す描写がありますが、日本版では殺していません。食用として犬を殺している韓国では特に残酷ではないのでしょうが、日本では受け入れられないので、止めを刺されていなかったようで、ラストでは里帆ちゃんと一緒にお墓参りをしている。

 田口トモロヲと大倉孝二という二人の刑事は呆気なく殺害されますので、どうやら犯人はスターと犬に甘く、官憲には容赦ないようです。それは忖度と言うのであろう。

 作品の世界観そのものは悪くなく、サスペンスや猟奇的な犯罪を描くには現実的かつ適切な照明を心掛けています。最近の安っぽいドラマの明るすぎたり、くっきり鮮明に写りすぎる機材の進化には良し悪しがあります。この作品の題材のような世界観を描くには仄暗く、空気の流れが停滞している感じがちょうど良い。

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 本日の初回上映は10時手前に始まりましたので、平日ならばスカスカになるはずの待ち合いのロビーですが、今日は連休中なので夏休み子供向けアニメをまだ上映しているためか、楽しそうにはしゃいでいる子どもたちが多い。映画で良い思い出を作り、将来は映画マニアになって欲しいなあと思って、子供たちを見ていました。

 入場前にカフェラテを売店で頼み、おそらくは家族向けとは観客対象が違うR-15を観に来ている客は少なく、40人ほどでしょうか。3割は韓流ファン層がオリジナルとの相違をチェックするために来ているのでしょうし、もう3割はサスペンス好きの映画ファン、残りは吉岡里帆を観に来ているのはもう4割くらいでしょうか。役柄に合わせるためか、化粧っ気はなく、事故や現実に苦悩するヒロインを演じています。

 主演を張れる集客力が彼女にあるのかは分かりかねますが、仕事がきているうちに将来の方向性を見つけてほしい。主演を張るには事務所の後押しが必要ですし、更に映画がヒットするには作品に恵まれる必要があります。片方をすでに得ている訳ですから、あとは興行が上手く行くかに掛かってきます。

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 あれこれ考えているうちに上映が始まりましたが、盛り上げ方などはオーソドックスな演出がされていて、安定感がありました。何を持って安定感とするかは難しいところですが、サスペンス映画だと多分こういう風に進めるのかなあという期待を裏切らない演出です。

 何故に定年前のベテラン刑事(田口トモロヲ)が身内の容疑者(浅香)宅に調べに行くときに単独行動を取るのか、何故に容疑者のアジトへ捜査に向かうのに元警官で視力を失った吉岡里帆と未成年を相棒なし(警察は基本的に二人以上で動く)で連れて行くのか。

 何故に大倉孝二刑事が指示にあったように応援を待たずにどんな武器を持っているか不明の容疑者である現職警官の隠れ家に飛び込んで行くのか、そもそも一般的に視覚障害者の方はサングラスをしているイメージが強いが、なぜ彼女はしていないのか。

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 そこらへんは現実とは離れているようで違和感があります。あくまでも人気女優を見せる演出がされていますし、サスペンス演出上はお約束の行動や展開ではありますが、色々と謎は多い。

 シリアル・キラーかつカルト犯罪者の浅香航大はあれだけ残虐に女子高生たちの耳、鼻、指、口を削ぎ落としてきたのに盲導犬や高杉、吉岡にはとどめを刺さないのは忖度しすぎだろうとチャチャを入れたくなりそうで、プロレスみたいな演出でした。

 見ていて飽きることもなく、最後まで流れていきましたので、出来は悪くない。オリジナルを見ていないので、何とも言えませんが、オリジナルの出来は優れていたに違いない。そうでないとリメイクしようとはなりません。

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 昔の映画でオードリー・ヘップバーン主演の『暗くなるまで待って』というのがありました。今回の吉岡里帆は目が見えない割りに階段を踏み外すことなく走り抜けたり、かなり長い距離を走っています。途中で危うく踏み外すなどの演出があった方がよりリアルに見えたかもしれません。

 夜中でも昼間でも真っ暗闇という対等な状況になり犯人を苦しめたりする演出は「暗く~」にもありますし、序盤で視力を失うきっかけになった弟のアクセサリーが最後のシーンで吉岡が犯人との距離感を図る重要な仕掛けになるというリンクにはなるほどねえと唸りました。

 オリジナル版を見ていないため、リメイク版との比較が出来ませんので何とも言えない部分はありますが、おそらく六根清浄や盲導犬の結末などの演出は違うのだろうなあと思いながら、劇場のスクリーンを眺めていました。何気に田口トモロヲが写るたびに、80年代初頭、あの❝ばちかぶり❞のヴォーカリストが見事に俳優さんに転身し、邦画に欠かせないバイ・プレイヤーになっていることが嬉しくなります。

 総合評価 70点

見えない目撃者 (小学館文庫)
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