『女はそれを我慢できない』(1956)往年のロック・スターが多数出演!

 タイトルを聞くと、なんだかエッチな映画なのかなあと思う人がいるかもしれません。しかし、それは勘違いで実際は1950年代に活躍していた偉大なロックンローラーたちが実名で大挙出演するロック映画なのです。

 今と違って、躍動感のある大きな映像で彼らをしかもカラーで見られることは皆無の時代でしたので、それらの価値もオープニングで表現しています。

 普段はラジオやレコード写真、音楽雑誌でしか見たことがなかったであろうロックンローラーたちの姿を見ただけでも大いに満足したことでしょうし、映画館に見に行けない貧乏なティーンエイジャーやマセガキにとってはテレビ放送に釘付けになる夜だったようです。

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 それはお金持ちの現役ミュージシャンも例外ではなく、世界を制圧したビートルズ・メンバーたちも放映日には皆でテレビを囲み、ワイワイやりながら楽しんで、そのままの勢いで2枚組『ザ・ビートルズ』に収録された、元気なロック・ナンバー『バースデイ』のレコーディングに臨んでいます。

 メンバー間の確執が表面化しだした時期にあっても、あの曲だけは妙に楽しそうだったのはそういう理由があったのでしょう。天下のビートルズでも楽しませたこの映画は現在DVD化されているので、久しぶりに見たくなり、Amazonで購入して、到着を待っていました。無事に届き、再生を始めると、伝説のロックンローラーや人気歌手が次から次に出てくるので嬉しくなります。

 ベティ・グレイブル『I Wish I Could Shimmy Like My Sister Kate』、リトル・リチャード『The Girl Can't Help It』『Ready Teddy』『She's Got It』、ニノ・テンポ『Tempo's Tempo』、ジョニー・オレン『My Idea of Love』『I Ain't Gonna Cry No More』 、ジュリー・ロンドン『Cry Me A River 』『Every Time You Kiss Me』などが次々に出てきます。

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 歌姫ジュリーの歌声は今聴いても、聴きほれるような美しい声で魅了されてしまいます。映画でもかつて彼女のマネージャー(役柄上)を務め、今はジェーン・マンスフィールドを売り込むために奔走するトム・イーウェルが酔っ払いながら、幻影を見るシーンもあります。

 大スターに育て上げた彼女を自分の飲酒などの悪癖で失ってしまった苦しみやマネージャーとしての役割以上の関係があったことが仄めかされます。つまり、この映画は単なるコメディではなく、かつての挫折も描き出しています。

 さらに彼女の歌がラジオで掛かっていたにもかかわらず、ジュリーの幻影がジェーンの幻影に変わった時が彼が新たな生きがいを見つけた瞬間だったのでしょう。 歌が下手なジェーンが歌の練習をすると、ガラスや花瓶が割れたりするのは笑ってしまいます。

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 このへんが今でも根強くファンが残っていたり、ロック・スターたちが楽しみにテレビ放送日にニコニコしながら、家に帰って見る理由なのかもしれません。

 エディ・フォンテーン『Cool It Baby』、スリー・チャックルス『Cinnamon Sinner』、アビー・リンカーン『Spread the Word (Spread the Gospel)』、ジーン・ヴィンセント『Be-Bop-A-Lula』、エディ・コクラン『Twenty Flight Rock』、ファッツ・ドミノ『Blue Monday』 、プラターズ『You'll Never Never Know 』、トレニアーズ『Rockin' Is Our Bizness』、レイ・アンソニー『Rock Around the Rock Pile』『Big Band Boogie』、ジェーン・マンスフィールドが魅力的に歌う(本人歌唱?)『Ev'rytime』などが出てきます。

 音楽が素晴らしいのはもちろん、何気にレイ・アンソニー宅に飾られているロートレックっぽいポスターが気になってしまいます。内容的には『マイ・フェア・レディ』『ボーン・イエスタデイ』などどこかで見たような筋書きと風味ですが、コメディとしてはしっかりと作りこまれていますし、新鮮だったロックへの興味とイメージが伝わってくる良い出来栄えです。

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 当時はポップカルチャーの最先端だったであろうロック音楽をスパイスにして、肉体美(おっぱいがスゴイのとウエストのしまりがスゴイ!不二子ちゃんみたいですwww)を誇るジェーン・マンスフィールドを売り込むための作品だったのでしょうが、製作者のセンスの良さのおかげで、往年のロック・スターたちが一本のフィルムに収まる奇跡の映画になりました。

 ピアノを弾きながら、シャウトするリトル・リチャード、カラーで動くジーン・ヴィンセントやエディ・コクランの全盛期を見られるだけでロック・ファンにはお得な一本です。彼らを手本に大成功したのがビートルズであり、ローリング・ストーンズなのですから、ルーツを探るにも最適な作品です。

 リトル・リチャードやジーン・ヴィンセント、エディ・コクランの歌い方はジョン・レノンやポール・マッカートニーに大きな影響を与えたことでしょう。

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 洒落ているのがバンドや歌手の紹介の仕方で、小屋の前などに置かれている看板や小道具で、誰が出演するのかを、つまり誰が歌うのかを提示している所です。字幕に入れるのが一番分かりやすいのですが、それだと画面が汚れてしまうので、このやり方はスマートに映りました。

 トム・イーウェルはかつて、永遠のセックス・シンボルであるマリリン・モンローと『七年目の浮気』で共演していますが、彼にとってはジェーン・マンスフィールドはどのように映っていたのでしょうか。二人とも不慮の死を遂げた点は哀しき共通点でしょう。

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 総合評価 78点


女はそれを我慢できない [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2010-08-04

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THE GIRL CAN'T HELP IT <ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK>
JASMINE
2018-10-12
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THE BEATLES INCHTHE WHITE ALBUMINCH (DELUXE EDITION) [3CD] (50TH ANNIVERSARY)
CAPITOL RECORDS
2018-11-09
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この記事へのコメント

さすらいの映画人
2019年05月16日 20:17
用心棒さんこんばんは。僕はこの映画まだ未見ですが、相当豪華な顔ぶれですね!いつか見てみてみたいです。さて、この映画の題名僕は松竹の喜劇映画のタイトルみたいだなと感じました。
用心棒
2019年05月16日 22:27
こんばんは!

これは歴史的にも貴重で、カラーでジーン・ヴィンセントを見られるのはたぶんこれだけだったはずです。

DVDが1000円以下で買えるので、かなりお得ですよ。

>松竹
いかにもな釣りタイトルですものねwww

ぼくはエディ・コクランが劇中で素人扱いされているのが可哀想に思いました。

ではまた!
miu
2019年06月01日 04:30
用心棒さん、おはようございます。

動くジュリー・ロンドンが、観たいです。フライミートゥーザムーン、彼女の歌うバージョンでは、前奏や間奏が駆け昇るような感じで。
スモーキーな声質も、お茶のように味わい深いです。

同世代ですね、ha-hahahahaとのお見立ては。ちょっと、10程度は用心棒さんがお兄さんなはずです。なんてね。ミドルエイジ仲間ということです。

教育入院の件、そうでしたか。
野菜をがんばって、食べてくださいね。彼らは動かずとも太陽光線から身を護り、虫を惹き付け子孫を繁栄させ、空気は浄化してくれますし。したたかきよらか。生命力を、底上げしてくれますよ。

私は、頸椎を傷めており頭も打っているので、なかなか厄介なんです。やっと、映画の字幕を追えるようになっては来ましたが、痛みも尽きないので、いちいちヘトヘトになります。

目のこと、自覚なさっているので、きっと大丈夫でしょうが、くれぐれもご用心をね。

私は、まず、今年度中に、2階にレコードプレーヤーを取りにいきます!
きっと、がんばって取りにいきます!

昔、SONY MTVや、ミュートマ ジャパンって、ご覧になってましたか?

もしかしたら。

ではまた!ご機嫌よう。
2019年06月01日 21:36
こんばんは!

>厄介
コメントを読ませていただいていると
現状でも御身体がつらそうなご様子がうかがえます。
くれぐれもご無理なさらないようにしてくださいね。

>ジュリー
綺麗な声というだけではなく、うっとりとしてしまう感じです。魅力的です!

>10程度
ぼくは今年で50歳になりますwww

>レコード
取りに行ける日が早く来るようお祈りいたします!
ぼくは今、ジャニス・ジョプリンのライブ盤レコードを聴きながら、書いております。

音楽はつらい気持ちを癒してくれますし、元気をつけてくれます!

>ミュートマ
う~~む。残念ながら、存じ上げません。ミュージック・ビデオを流す番組だったのですか?
昭和のころ、外人さんの音楽はテレビの深夜番組で流してくれるクリップしかありませんでしたねwww

今の子たちは気軽にネットでなんでも見られるし、聴けるので羨ましいですよwww

ではまた!
miu
2019年06月04日 17:03
ライブ盤といえば、今日、mazeのニューオリンズでのCDが届いたので、聴きましたよ。

ビートルズについて、用心棒さんのオノヨーコ像はなるほどです。

なんだか気が付いたらラジオからテレビから、ポンキッキからと、ありふれており、さほど興味を持ってはいなかったんですが、ラバーソウルっていうアルバムを聴いてみようか。
確か、昔もらったカセットテープに何曲か入ってたと思う。それから、カエターノヴェローゾのレコードにも。

実に体調を崩してから難しい状況で、実は、近しい人々とも連絡をたっていたのですが、この場所があって、良かったです。

再び芸術を味わってみよう!と、気力が湧いてきています。

暑い日もありますね。水分摂って、音楽浴びて、新しい時を迎えよう。

ありがとうございました。

2019年06月05日 00:11
こんばんは!

スタジオ録音のアルバムももちろん素晴らしいですが、音楽はライブが一番ですね。ライブ盤では最近はジャニス・ジョプリン、レッド・ツェッペリン、ジョン・レノンをよく聴いています。

そのほかではAIDSで80年代初頭に亡くなったクラウス・ノミ(デヴィッド・ボウイのコーラスなどをしていました)のベスト盤をAmazonで取り寄せて聴いています。

>ポンキッキ
ビートルズの原体験はあの番組で流れていた『プリーズ・プリーズ・ミー』や『ヘイ・ジュード』ですねwww

>ラバーソウル
一番良い選択だと思います。『リヴォルヴァー』以降のアルバムは作り込みが極度に進み、芸術性は上がるものの生の声が聴けなくなってきます。

その点、『ラバーソウル』の時期はまだライブでの演奏も考えた曲作りをしているので、完成度が高く、なおかつ快活ではないものの深みのある楽曲が多いですね。

>気力
大切ですよ。嫌なことが続くときには“ゲット・バック”して、昔大好きだった曲やテレビ番組などを見て、元気を取り戻すというのはけっこう有効ですよ!

>新しい
死ぬ以外はかすり傷という本もありますし、ぼくも糖尿なんで、一生付き合う病気とともに生きていきます。

ではまた!

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