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zoom RSS 『正午から3時まで』(1976)ブサイク代表ブロンソンが長身の美男子に変身?

<<   作成日時 : 2014/01/28 18:38   >>

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 チャールズ・ブロンソンが妻で女優のジル・アイアランドと共演した西部劇に『正午から3時まで』という作品があります。2004年に日本語版DVDが発売されていましたが、残念ながら現在は廃盤扱いになっています。

 日本語版は中古でもかなり高額ですが、北米盤リージョン1のDVDは送料込みでも1000円以下で購入できますので興味がある方はご検討ください。PCを使用すれば、リージョンに関係なく再生できますので特に問題は発生しません。

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 この映画のジャンルは西部劇ですが、内容がかなり風変わりでお色気とブラック・コメディ要素が強く、何よりもハッピーエンディングとは程遠い、ラストに向かってのお話の展開にはきっと驚かれるでしょう。

 われわれ日本の映画ファンにとってはチャールズ・ブロンソンのイメージは髭をしごきながらの「ウーン…マンダム!!」が強く、出てくる作品も『大脱走』『メカニック』や『狼よさらば』のような彼の渋味が魅力的なものが多い。

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 そんな彼ですが、よくみると顔はブチャムクレ、背は小さく、足も短く、声が魅力的とも思わない。そんな彼こそがこの役にはピタリとはまる。自虐的なこの作品に奥さんと一緒に出るわけですから、ノリノリで出演したのか、それとも「あーあ…、オレもここまで落ちぶれたのか。」とどちらの感情が彼のあたまのなかを占めていたのだろうか。

 なんにせよ、出来上がった『正午から3時まで』は今となってはカルト映画と呼ぶに相応しい傑作に仕上がっています。以下に内容を書いていきますので、未見の方はご注意ください。

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<あらすじ>

 砂利道で馬を乗り潰してしまったチャールズ・ブロンソンを含む五人組の荒くれガンマンたちが町外れの館に立ち寄ると、そこには美しい未亡人ジル・アイアランドが彼らを出迎える。

 なんとか馬を調達したいガンマンたちは彼女に馬を譲るように求めるが、彼女は牛を飼育しているが、馬などは持っていないと言い放つ。

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 チャールズ・ブロンソン(役名はグラハム・ドーシー。)は代表して馬屋に調べに行くと、美しい駿馬が繋がれていた。彼女は彼らに嘘をついていたのだ。

 しかし、ブロンソンは頭目には彼女の言う通りで牛しかいないと報告する。結果、逃走用の馬がないと足手まといになると判断され、ブロンソンは館で留守番をすることになります。

 本来ならば荒くれ者は彼女から馬を奪った挙句に犯して殺すというマカロニ的展開になるのでしょうが、前の晩に見た悪夢(それは銀行強盗に失敗して全員射殺されてしまう。)を受けて、正夢を恐れたブロンソンは残ることを選択したのかもしれない。

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 夢判断や精神病院など現代的なエピソードを挿入してくる時点で、これは西部劇パロディなのだなあと気づかされます。中でも興味深いのがタイトルと時間の長さです。たった三時間の出来事を自分の都合良くお話を作り、出版やミュージカルまで出してしまうジルのサクセス・ストーリーを展開する後日談的エピソードを持ってくるユニークさは他には見られない。

 つまりブロンソンと未亡人ジルが二人きりで正午から三時までを過ごした思い出が描かれているのがこの映画なのです。なぜこの時間が正午なのか解るかと言うと、ガンマンたちが彼女の住む館に到着したときに振り子時計の鐘が12回ほど鳴り響くからです。

 計画では三時間後に銀行襲撃のカタをつけて、館に戻ってくるというので、チャールズ・ブロンソンとジル・アイアランドがガンマンたちの帰りを待つ時間は三時間、つまり正午から3時までなのです。

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 残されたチャールズ・ブロンソンははじめは警戒心を持たれないようににこやかな表情でジル・アイアランドに接する。しかし本性をあらわした野性のぶちゃむくれ男、ブロンソンは彼女に襲いかかり、モノにしてしまう。

 旦那に死なれてからご無沙汰だった彼女は精力絶倫なブロンソンに惚れてしまい、全裸になって、近くの池でブロンソンと水遊びを楽しみ、ボール・ルームで蓄音機を掛けて、笑顔で踊りまくる。

 この時の様子がスチールなどでよく出てくるシーンです。蓄音機によるダンス音楽なのですが、のちに思い出を美化したポップ音楽『ハロー・アンド・グッバイ』までが作られ、エンディングでは彼女自身が歌っているテイクが流される。

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 最初の一時間で性欲を処理し、次の一時間では亡夫の燕尾服を着た、お世辞にも似合うとは言い難い、馬子にも衣裳のブロンソンが未亡人ジル・アイアランドとダンスに興じ、最後の一時間で水浴びをする。

 現実とはかけ離れた三時間が終わりを告げる頃、近所の少年が血相変えて館に馬を走らせてくる。彼は銀行が襲撃されたが、強盗四人組はみな銃殺されたこと、仲間のもう一人がまだ逃走中であることを知らせてきました。

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 ブロンソンはとぼけて、自分は彼らと無関係だと言い切れば、一緒に生活を続けられると提案するが、彼女は無理だと突っぱねて、すぐに馬で逃亡させる。

 追っ手を振り払い、モグリの医者を身代わりに仕立てると彼を気絶させて、ライフルを持たせたままにして逃げ去っていく。このため医者はドーシーと間違えられて射殺されてしまう。そこまでは良かったが、医者に恨みを持っていたド近眼のお婆ちゃんに捕まり、医者と間違えられてしまい、刑務所に収監される。

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 その頃、盗賊一味の一人と関係を持ったジル・アイアランドも町の住民から淫らな女として蔑まれる。我慢ができなくなった彼女は愛情は時間だけが重要ではなく、密度こそが大切なのだと言い返し、その堂々とした態度は住民たちを感動させる。

 この三時間に起きたことを記した書籍を発表した彼女は町の有名人という枠を越えて、世界中で読者を獲得し、ミュージカルが仕立てられ、『ハロー・アンド・グッドバイ』という流行歌まであちこちで歌われる状況になる。

 イタリア、フランス、チベットまで名声が轟き、日本からはファンレターまで届くという異常事態にすっかり舞い上がってしまったジルは思い出をどんどん美化していき、そちらを現実だと信じ込んでいく。

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 彼女はブロンソンとの思い出を美化し、彼は190pの美男子であると言い出してしまう。時が経つにつれて、思い出は美化されていき、町中に彼と彼女の看板が立っていく。見るとレッド・バトラーとスカーレット・オハラのようです。

 一方では大スターになってしまったドーシーの友人だと名乗る輩まで出てきて、刑務所内で自慢する彼らに「自分がドーシーだ!」と告白すると、皆が大笑いして、「ドーシーは190CMを越える美男子でお前みたいなぶちゃむくれとは違う(笑)」と相手にもされない。

 大フィーバーになっているそんな折りに出所したブロンソンは彼女に会いに戻る。しかし予期していた対応とは違い、思い出を信じ込んで現実が分からなくなってしまっている彼女はブロンソンを忘れてしまい、背が低い、ブチャムクレの本物の彼(ブロンソン)を彼(ドーシー)だと認めず、逃げ出してしまう。自己の消失です。

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 ブロンソンがあの三時間のことを色々と語っても、それは本に書いたことだと言い返してくるのみだったジル・アイアランドに業を煮やしたブロンソンは「それなら、本に書いてないことを見せてやるさ!!」とやおらズボンのチャックを下ろし、むき出しの彼自身(もちろん下半身)を彼女に見せつける。

 すると彼女は「まあ、あなただったの!?」と驚く。この場面が最高に笑えます。かつて西部劇で自分の存在を証明するために下半身をむき出しにした主人公がいただろうか。

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 それでも虚構によって得た名声を手放したくない彼女は自殺することで永遠に思い出のなかに生きる。彼女の自伝によって美化されてしまった彼自身の存在証明が必要になったブロンソンはかつて付き合っていた娼婦や友人たちに会いに行くも、全員がブロンソンのことを覚えておらず、「彼は190pの美男子だから、お前みたいなブサイクじゃない(笑)」とどこへ行っても物笑いの種になる。

 つまり彼はパブリック・イメージに本当の自分を奪われてしまったのです。酒場で大暴れするほど発狂した彼が送られた先は精神病院でした。

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 そこではみなが親切で、彼を彼自身だと認めてくれる。もっとも幸福だったダンスを彼女とともにする回想シーンが再び挿入され、そこにジル・アイアランドが唄う『ハロー・アンド・グッドバイ』が流れる…。ジ・エンド。


 なんて、ぶっ飛んだストーリー展開なのでしょう。誰も想像できない筋書きは独創的であり、今でもカルト映画として君臨するに相応しい。

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 しかしながら、果たしてこれを西部劇と読んでもいいのだろうか。下ネタがあちこちに仕込まれ、ブロンソンが他人と間違えられて投獄されたり、主人公の実存自体が疑われ、ヒロインは自分の名声を保つためにピストル自殺、ラストは精神異常者となるなんて、いくらすでに役割を終えていた西部劇にしても酷すぎる。

 イギリス人が西部劇を作ったら、こんな感じになるのだろうか。それともスターであるブロンソンと本当の自分は違うんだよという暗喩だったのか。今回の記事を書くためにAmazonからリージョン1のDVDを取り寄せました。

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 海外動画サイトでフル動画が見れますが、細かい台詞は理解できなかったので、DVDに英語字幕選択があれば、かなり理解度は高まります。

 どうせお取り寄せするならと『キラー・ビー』『センチネル』も頼もうかと思いましたが、海外からの輸送の確実性がいまいち分からないので、まずは『正午から3時まで』と『キラー・ビー』を購入しました。

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 たぶん一月後半から二月の上旬までには楽しめるはずです。問題なのはリージョン1なのでPCでの視聴になることですが、たまに(3割くらい。)リージョンが違っていても普通に再生できるのでそこに期待したい。

 残念ながら日本語字幕版は現在、廃盤になっていて、中古DVDが8000円近くで取引されていますので気軽に手を出せる価格ではない。それでも最初に書いたようにアメリカ版リージョン1DVDは千円そこそこで買えますので、チャレンジして欲しい。

 内容は書いた通りなので、補足として読んでおけば、多少英語に躓いても、ちゃんと楽しめます。ブロンソンが彼自身をジルに見せつけるシーンで大笑いしましょう。

総合評価 88点


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さんこんばんは。僕もこの映画をテレ朝の深夜枠で放送されたのを録画して見ました!コメディ西部劇といった感じでしょうね。とても名作ウエスタン(僕から見て)「アウトロー」「大いなる決闘」「ミズーリ・ブレイク」と同年に作られたとは思えません!ブロンソンについて:自分の母親もブロンソンを初めて見た時物凄くブサイクだなと言っていました!他にもベルモンド、ダスティン・ホフマン、スタローン、ジャッキー、シュワちゃんも初めて見た時に同じことを言ってました(笑)
さすらいの映画人
2014/01/28 19:30
 こんばんは!
>スタローン、ジャッキー
そうですよね。スタローンなんて完全にチンピラみたいですものね(笑)

 ミック・ジャガー、ビリー・ジョエル、ブルース・ウィリス、リンゴ・スター…。

 音楽界にもブサイクがいっぱいですよ(笑)でもみんなイイ味出しているオヤジたちですね。

 スターの顔じゃないですもの!ではまた!

用心棒
2014/01/28 20:22

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