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zoom RSS 『思えば遠くへ来たもんだ』(1980)個人的には金八先生よりこちらが好きです。

<<   作成日時 : 2012/10/11 18:21   >>

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 武田鉄矢主演の『思えば遠くへ来たもんだ』は現在DVD化されていません。そのためネット・オークションでは大昔のVHSテープが7000円位で取引されています。

 主演が武田鉄矢で、彼の周りを固めるのはあべ静江、熊谷真実、乙羽信子、山本圭、植木等、山谷初男、大滝秀治、泉ピン子、大山のぶ代、たこ八郎、山田隆夫と懐かしい顔ぶれが揃っていて、なんだかホッとします。

 製作は1980年ですので、ちょうどテレビドラマ『3年B組 金八先生』がスタートして大ヒットしていた頃になります。この映画を見たのは公開から数年経ったあとのテレビ放送でした。

 金八先生のインパクトが強すぎたために霞んでしまっているのですが、見てもらうとこの作品での武田鉄也の素朴さと秋田の自然に囲まれた情景が郷愁を誘う素晴らしい作品に仕上がっています。

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 この青春ドラマの何が原因で視聴困難な状況になってしまっているのかはまったく分かりません。先日亡くなった大滝秀治を始め、植木等や乙羽信子ら鬼籍に入ってしまった人たちも映画では元気に活躍している姿を見ることが出来るのは貴重なので、DVD化を望みます。

 この映画、そして主題歌『思えば遠くへ来たもんだ』のファンは今でも多いでしょうし、発売されれば潜在的なニーズはあるはずです。

 地方都市で暮らしている若者たちの屈折した感情や都会への憧れ、因習にがんじがらめに抑圧されている現状への不満のはけ口として暴力や激しい性行動に走って、自滅したり、発散する若者を描いたのはATGや東映作品でした。

 しかしながらこの映画ではそういった負の部分を殊更に暴きたてることなく、普通の生徒たちや家族が穏やかに、笑顔を絶やさず、必死に生活しながら、希望を見つけ出そうとしているさまを描いている。

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 なんでもかんでもスキャンダラスに写し出すのがこの頃にはカッコ良かったのでしょうが、そんな映画ばかりでは心が荒んでしまう。その点、この映画では東北の小京都と呼ばれる地区でのロケ撮影が敢行されていることも大きく、昔々にぼくらが住んでいた郷土がそうだったように懐かしさと田舎への憧憬を感じさせてくれます。

 金八ほど熱血ではない、人間臭さが前面に押し出された若かりし頃の武田鉄矢がそこにいます。80年代初頭、あの長髪で教師という設定からはフォーク世代やバンカラ気質の残像や共感が見える。長髪は物語の舞台に彼一人である。

 主題歌がまた最高で、ぼくは海援隊全盛期の曲では『贈る言葉』『人として』よりも『思えば遠くへ来たもんだ』の方が昔から大好きでした。

思えば遠くへ来たもんだ 故郷離れて六年目

思えば遠くへ来たもんだ この先どこまでゆくのやら

思えば遠くへ来たもんだ 振り向くたびに故郷は

思えば遠くへ来たもんだ 遠くなるような気がします

思えば遠くへ来たもんだ ここまで一人で来たけれど

思えば遠くへ来たもんだ この先どこまで行くのやら


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 それぞれに故郷があり、それぞれに生きてきた時間があります。嬉しいこと、悲しいこと、喧嘩したこと、失敗したこと、後悔していること、いまだに恨んでいることなど色々あるでしょう。

 生きるのが難しい時代ですので、大半は嫌なことばかりです。それでも生きていくのが人生なのでしょう。人生のしがらみは年齢を重ねるほどに増えていき、身体も不調な箇所が増えてきます。

 嫌だからといって逃げ続けるわけにもいきません。困難に打ち克つ人もいるでしょう。何事もなく、平穏に一生を終える方もいるでしょう。すべてが報われる人生はありません。

 生きてから死ぬまで楽しいことなく暮らす方もいるでしょう。イヤなことがあったりした夜に電車に揺られたり、クルマで赤信号を待っている、ふとした瞬間にこの歌を思い出すこともあります。

総合評価 75点


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内 容 ニックネーム/日時
用心棒さん、こんばんは。
私も用心棒さんの感想とほぼ同じです。海援隊のテーマソングも素晴らしいですね。
武田鉄也は自己満足的だとの意見もありますが、わたしは魅力ある教師像を演じていたと思います。
>青春ドラマの何が原因で視聴困難な状況になってしまっているのか・・・
この時代の教師像のキャラクターはとても魅力的ですが・・・モデルとなっているのが日教組、日高教などの教育者の在り方にかなり接近していて、金八のモデルは当時は日教組反主流、後の連合結成後は全労連議長ともいわれており、金八が日教組の研究会の発表事例を話すシーンもあります。
後半のシリーズには、そのへんも意識されてか文部科学省への派遣や区教委勤務の経験もあるのですが・・・(しかし現場復帰が管理職ではないという不自然さはあります)。
わたしは、左派系への理解や当局への迎合なんかは抜きにして、教師と生徒たちとの人間ドラマが、主人公の政治的立場で判断されないような世評は必要だと思います。
ただ難しいのは、公教育を扱ったドラマは法令等の抵触の場面が無頓着にでもとても自然に使用されうることが多ということです。
例えば、編集でカットされていたと思うのですが、山田洋次の「学校」での修学旅行のシークエンスで、酔った生徒の田中邦衛に教師の西田敏行が「慰安旅行と違う」と戒め、田中が「同じようなもんじゃないか」と返すセリフがありました。
これは、鑑賞する段階では田中のユニークなキャラクターを描いた普通の冗談程度の一断片かもしれませんが、社会的影響力は大きいかもしれません。

教師もの、青春ものの作品を制作することが難しい時代となっているのかもしれないですね。考え込んじゃいますよ。
では、また。
トム(Tom5k)
2012/10/11 23:50
 こんにちは!
>後半のシリーズ
いろいろと取り組んでいたのですね。ぼくが熱心に見たのは第一と第二シーズンで、第一の杉田かおるの15歳の母親は衝撃的でしたし、東大受験に失敗する兄の自殺もそれ以上に驚きました。

また第二シーズンの腐ったみかんのインパクトは凄まじく、「卒業前の暴力」での中学校占拠は社会的にもセンセーショナルを起こしました。

その後のシリーズにはあまり思い入れはないのですが、続いていったということはその後の難しい中学教育にも取り組んでいったという証なのでしょうね。

映画の表現に国家や団体のイデオロギーが妨害してくるというのは情けないですね。

>田中邦衛
昔はオッケーで今はダメというのは理解しますが、こういう描写をむやみにカットしたり、お蔵入りさせたりするのは問題の本質を隠そうとする別の意図を感じてしまいます。

単純にこの歌を映画で聴きたいなあというだけなんですけどね。

今回、久しぶりにこの映画を見て、心に浮かんだのは文中に書いたように故郷への懐かしさやホッとした感情でしたので、多くの人にも日本人らしさを取り戻して欲しいなあと思い、今回、記事にアップしました。

ではまた!
用心棒
2012/10/13 14:15
用心棒さん、こんばんは。
昨日、近所のツタヤでVHSテープをレンタルしてきました。わたしもこの作品が好きで、生徒と武田鉄也の演ずる教師像が好きで以前から何度も鑑賞してきましたが、今回は用心棒さんの記事の影響から、故郷を離れ見ず知らずの土地で生きているところを注意深く読みとるように観てみました。
わたしにも経験がありますが、生まれ育った土地ではないところで自分の役割が生まれてくる歓びは故郷に対する郷愁と比例しているのかもしれません。
本来なら郷土に根ざした生き方をすることが理想なのでしょうね。
アラン・ドロンもハリウッドで根ざせなかった理由をキャリアの選択ではなく人生(生活)の選択だっと述懐しています(ドロン2記事TBします(笑))。
また、今回の鑑賞で印象的だったのはマドンナあべ静恵でした。女性として選択肢のない生き方をせざるを得なかった彼女は本当にせつなかったです。武田鉄也も若く彼女を受け止めることができない。わたしは若い頃は武田鉄也のに共感していたのですが、今回はあべ静恵の気持ちに同化してしまいました。彼女は武田に引きとめて欲しかったんでしょうね。
では、また。
トム(Tom5k)
2012/10/14 18:08
こんばんは!

熊谷真美とあべ静江に囲まれ、どちらかを選ぶというポジションでしたね。熊谷は武田を男としては見ていませんでしたが、あべのほうは武田にわかりやすく想いを伝えていたように思えます。

バスや喫茶店で何度も引き留めて欲しいそぶりを見せていたのに教師という立場だったりのしがらみで告白できませんでしたね。

フォーク世代で自由な気質を求めるアイコンが長髪だったように思えたのですが、中身は古かったのでしょうかね。

良い映画ですし、レンタルなどで気軽に楽しめるといいですね。

ではまた!
用心棒
2012/10/14 20:17

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