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zoom RSS 『マネー・ボール』(2011)アスレチックスの快進撃を支えたGMビリー・ビーンを描いた実話作品。

<<   作成日時 : 2011/11/15 20:21   >>

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 その昔、ブラッド・ピットが『セブン』『12モンキーズ』に出演していた頃、一緒に見に行った友人は「ブラッド・ピットの映画って、カッコいいけど意味が分かんないの…。」とよくこぼしていました。

 たしかにその後に出演していた『ファイト・クラブ』も単純とは言い難く、どちらかというと難解な部類に位置付けられる作品でした。ぼくの周りでは“カッコいいけど、変な映画に出る俳優”というイメージがすっかりついてしまい、誰も行かなくなってしまいました。

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 それでも近年は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『ディパーデッド』『イングロリアス・バスターズ』などファンタジーやバイオレンス色の強い分かりやすい作品に出るようになってきていたので、そういったイメージはなくなってきています。

 こうして彼の映画を劇場まで見に行くのは『イングロリアス・バスターズ』以来で、約2年ぶりになります。行くきっかけになったのも、ブラッド・ピットではなく、予告編で流れていたAC/DCの90年代のヒット曲『マネー・トークス』に引っかかったからでした。『サンダー・ストラック』も収録されていたアルバムをよく聴いていたのを覚えています。

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 残念ながら、本編を見終わってから、「あれっ?あのナンバーがかからなかったぞ?」と気付かされますが、内容が良かったので、些細なことに過ぎません。2年ぶりのブラピ映画はぼくを楽しませてくれました。

 見る前のイメージとしてはアル・パチーノとキャメロン・ディアズが出ていた『エニイ・ギヴン・サンデー』に近いのかなあという感じでした。かつてはカンセコ、マグワイア、エカーズリーなどの名選手を擁し、強豪だった1980年代のオークランド・アスレチックスはいつのまにか弱小チームに成り下がっていました。

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 この作品はオークランド・アスレチックスが2002年に見せた快進撃を映画化したもので、結論からいうとワールドシリーズに勝ち進んだわけではなく、リーグ優勝を逃したわけですので、けっして大成功とは言い難いのですが、諦めずに置かれた環境のもとで考え抜いて全力を尽くすというストーリー展開がむしろ共感を呼ぶ。

 凡庸なハッピーエンドのストーリーにはない現実の厳しさがほろ苦い味わいを作品に与えています。野球には楽しませる野球と勝つための野球が確かに存在し、スピードとパワーで押しまくるかつてのアメリカ大リーグのスタイルとスモール・ベース・ボールと呼ばれる日本スタイルのせめぎ合いは見ていて楽しい。

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 サッカーでいうとそれはヨハン・クライフがFCバルセロナで推進した美しく勝つスタイルや芸術的なブラジルやフランスのセンス溢れるサッカーか、イタリアのカテナチオや中東でよく見られる引いて守るカウンター主体の守備的スタイルの戦いのようなものでしょう。

 主人公ビリー・ビーン役のブラッド・ピットはヤンキースの20パーセントくらいの経営規模しかないオークランド・アスレチックスのゼネラル・マネージャーとしてベストを尽くす一環で取ったのが確率論に基づく野球球団運営でした。

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 具体的には打率ではなく、出塁率の良い選手を集めていき、フォアボールをたくさん取れるプレーヤーを重視する。ピッチャーも一癖あるが、個性のある投手を集めていく。盗塁は禁止で、大振りする選手はいらないという基準を徹底させていく。

 不公正なルール、つまり掛け金(予算)がぜんぜん違うのに、同じゲームに臨まなければならないという言われてみれば当たり前のことに正面切って挑戦するのは無謀です。

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 ではどうするか。こういう奇抜なスタイルしか取れなかったから、彼はそうしただけであり、賭け金を多く積めるのであれば、ヤンキースやレッド・ソックスのように大金を投じることもできたでしょう。

 野球のセオリーではなく、確率論のセオリーでシーズンに臨むのはかなり無謀に思われたようですが、徐々に結果を出し始めると皆が手の平を返したように賞賛する。

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 ただこういう地味なスタイルは当初は新鮮で支持されるでしょうが、わが国の中日ドラゴンズが常勝チームを作っても、つまらないので観客動員が下がっていくというのと似たように飽きられていく。

 新鮮だったマネー・ボールのスタイルも他チームが同じようなスタイルを模倣し始めると優位性が薄れ、アスレチックスも低迷していく。それでもビリー・ビーンはこのチームを見捨てることなく、このチームでワールド・シリーズに勝てるように挑戦し続けている。

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 この姿勢こそが賞賛されるべきであり、大金をかけて強化するだけでは最終的には何も残らないことを示唆してくれる。野球だけに限定される出来事ではなく、すべての職場には何故か分からないが、“常識”とされている暗黙のルールがあり、それが機能しているのかどうかを誰も分かっていなくても、漫然とオートマチックに疑問もなく続けられている。

 映画の出来は素晴らしく、無駄なシーンがなく、気がつくとエンディングを迎えているでしょう。期待していなかったので、余計にそう感じました。今回の映画で一番印象的だったのは彼の右腕のアシスタント役を務めたジョナ・ヒルでした。

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 彼のオタク的な選手判別法はとても新鮮で、野球を何十年も前から見てきたぼくら世代のファンがこの映画を見ても、「へえ〜!」と唸らされるシーンが続出します。送りバントや盗塁の禁止も理詰めで迫ってくるので、納得せざるを得ない。3アウトで交代するという基本ルールの中では送りバントは無意味だとするのは興味深い。

 じっさい、ぼくも野球を見てきて思ったのは先頭打者が出塁することが多いチームは勝利することが多いのかなあという単純明快なことでした。

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 ノーアウトからランナーが出る。たとえば投手が次のバッターに暴投をしたとする。ランナーは2塁に進む。これがもし先頭打者が打ち取られていたら、普通にワン・アウト、ランナーなしで1ボール・ノー・ストライクのよくある局面でしかない。

 元に戻すと、ランナー2塁の場面で、次打者が進塁打を放つと1アウト、ランナー3塁になる。さらに次の打者が外野フライを打ち上げると、ランナーはホームインして1点が入る。

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 先頭打者が出ていないと、普通に内野ゴロと外野フライが続くだけなので、3者凡退の攻撃でしかない。つまり言いたいのはこの映画で繰り返し要求される進塁率の重要さです。

 日本の野球ファンにとっては普通であるスモール・ベース・ボールの考え方もアメリカ人には新鮮だったのだなあというのが感慨深い作品でした。ブラッド・ピットの孤独さを表すような影の濃いカットもセンスがあり、全体的に抑えた色調も個人的には好みでした。

総合評価 80点




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