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zoom RSS 『大魔神怒る』(1966)一年間で三回劇場に登場した伝説の巨人の二作目。

<<   作成日時 : 2010/11/20 00:15   >>

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 『大魔神』のインパクトは強烈で、たった三本しか映画が製作されず、そのうちの3本目である『大魔神逆襲』に関してはほとんど記憶に残っていませんが、子どもたちはみんな大魔神を知っていましたし、喜怒哀楽のどれでもない顔からの怒り顔への変化は一度は物マネをしたはずです。

 漫画でも『ストップ!ひばりくん』で組長同士の喧嘩でペギラ対大魔神という夢のカードが何度か実現していた記憶があります。テレビ放送自体も一作目と二作目に集中していたように思います。ぼくも記憶に残っているのは一作目と二作目でそれぞれがゴチャゴチャに覚えている有様でした。

 この二作目のハイライトはなんといっても火薬で粉々に吹き飛ばされた大魔神が神の島から復活してくるときに海を割って悪党どもを退治しに行く有名なシーンでしょう。モーゼの十誡をベースにしているシーンであり、オリジナルとは言えませんが、子どものときに見たイメージは強烈で、ずっと覚えています。

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 中学生のときにセシル・B・デミルの『十誡』を見たときに思わず「大魔神だ!」と笑いそうになりました。ぼくにとっては『大魔神怒る』での海を割るシーンの方が先だったので、『十誡』の印象が薄くなってしまっているという逆転現象が起こっています。

 ぼくら世代の方ならば、そういう方のほうが多いのではないでしょうか。当時は女の人が泣くと現れるというのと特撮場面しか覚えていませんでしたが、大人になって見てみるとじつはドラマシーン、特撮映画においては本編シーンということが多い部分がかなりしっかりと作り込まれていて、監督には三隅研次を起用し、しかも音楽は特撮映画には欠かせない伊福部昭が担当しています。大映も中途半端な気持ちではなく、きっちりとした作品を送り出そうという気概があったのでしょう。

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 特撮映画で伊福部が発揮した才能は今になって分かることが多く、彼の曲は観ていたぼくらみんなが覚えていますし、この映画においても鐘がオープニングとエンディングで不気味に響く独特の音楽が雰囲気を大いに盛り上げてくれていました。不思議なことに、オープニングでは気味が悪かったあの鐘の音がエンディングでは平和の象徴に聴こえるのは何故だろう。

 お話が勧善懲悪なのは時代劇であることから考えても当然ですし、顔の変化、つまり感情の変化を表すあの二つの顔はまるで京劇のようで、世界中どこへ出してもすぐに感情を理解してもらえることでしょう。あの表情に加えて生身の人間の目(橋本力)の与える怖さは半端ではありませんでした。

 出演している俳優も本郷功次郎と藤村志保を中心に、神田隆(悪党の親玉)、丸井太郎(藤村志保の従者)、内田朝雄などしっかりした脇役陣を固めて、ドラマパートを作り上げている。水戸黄門の代わりに大魔神が悪を退治するという内容でした。前回はほぼ無差別に人間をぶったおしていましたが、今回はきちんと悪党だけを倒していました。

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 たぶん正義の味方であろうが、よく分からないというスタンスの方が不気味さが増していたでしょうが、これはこれで描き分けをしっかりとしているので見やすくなったのではないだろうか。

 特撮部分では先ほども言いましたように海が割れるシーンは圧巻で、こういうのを見るにつけ、やはり特撮を見るならば劇場が最適なんだろうなあという印象を受けました。ただし現在の技術でデジタル処理されてしまうと見えなくても良い部分まで否応なく見えてしまうのが残念です。

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 マット処理の甘さや画面のズレ、場面転換での光の明るさの違いなど言い出したらキリがなくなってしまいますが、良いものを作ろうという気概は伝わってきますので、あまりそういう粗は探さないようにしていました。

 印象的なシーンとしては神の島での魔神像(今回は魔神とは言いませんでしたね。)爆破がまずは第一に浮かぶ。前回は鉄杭を魔神の眉間に打ち込むというバチ当たりなシーンが印象的でしたが、今回はなんと魔神像自体を爆破するというさらにバチ当たりな孫子の代まで祟るような暴挙に出ました。

 すぐに魔神の怒りの蓄積が始まり、水しぶきが血の色に変わったり、本郷らへの追っ手の船が姿を現さないままの魔神に沈められたり、島の大鐘を海に沈めた刹那に怒りに触れ、地震によって追撃隊が全滅させられる。このへんの見せない場面作りが素晴らしく、じらして、じらして緊張を高めていく。

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 とりわけ鐘が降ろされて、崖を転がりながら海に沈んでいく際の落ちる音は長く記憶に残っていて、これから怒ることへの期待感を煽る。

 ただ破壊シーンにおいて、大魔神が壊しているのは主役側の人たちのお城であるわけで、彼が暴れたあとの修復はかなり大変だったろうと思いました。このお城はセットなのですが、よく作られていて、製作者の気持ちがこもっているように思えました。

 日本が誇る特撮映画といえば、どうしても『ゴジラ』でしょうが、この大魔神にはゴジラにはない怖さがあります。それは目線です。20メートルくらいの大きさというのは現実的に一番恐ろしく感じる大きさなのではないか。

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 ゴジラくらいの大きさになると現実離れしすぎていて、どこか作り物であることを意識しながら見てしまうのですが、大魔神だったり、ジョーズくらいの大きさというのは現実的で怖さを感じます。なんかマンションの窓の外からこちらを睨み付けてくるような感覚です。

 特にこの映画でのクライマックスである逃げ回る神田隆を追いかけていき、海に逃亡して行った彼に追い火を放ち、火炙りの磔にしてしまうシーンは悪夢のような恐ろしさでした。実際、ぼくも何度も夢で大魔神やゴジラに追いかけられる夢を見ましたので、恐ろしさは体験しています。

 上映時間も80分弱でちょうど良く、集中が途切れない時間になっています。ピーター・ジャクソンの『キングコング』みたいになると長すぎて、子どもたちはじっとしてられなくなるか、寝てしまうでしょう。特撮映画は大人も子どもも一緒に楽しめるというのが大切なわけですから、長くても100分くらいで収めるべきなのではないかとも思います。

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 もちろん大人が見ても大丈夫な程度には本編パートを作り込まなくてはならないのは当然ですが、この映画のようなシンプルな構成も潔い。無駄な部分を削ぎ落とし、エッセンスをきちんと伝えるというのが脚本の大切さでしょうから、そういう意味ではこの映画は上手く行っている。

 俳優陣で思い出に残っているのはヒロインの藤村志保で、ぼくは清楚な感じの彼女の方が一作目の高田美和よりも好みでした。まあ、好みですので、どっちがどうとは言えませんが、巫女のような役割を果たす役どころですから、藤村の方がリアルに見えました。

 しかし魔神は乙女の涙に弱いなあ…。

総合評価 80点



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『大魔神』(1966) 日本特撮史上に残る、大映の傑作。怪獣映画というよりは神話である。
 安田公義監督、1966年製作作品。『大魔神』という響きは僕らを小学校時代にタイムスリップさせる懐かしい言葉です。はじめて見たのは、たしか幼稚園か小学生の低学年の時でした。昭和50年代の初旬には、このシリーズと『ガメラ』シリーズ、そして『ゴジラ』シリーズが(たまに『ガッパ』も)、春・夏・冬休みの午前中や午後3時過ぎに頻繁に放送されていて、小学生だった私達はその時間になると、野球をやめて帰宅するか、友達の家とかで夢中になって見たものです。 ...続きを見る
良い映画を褒める会。
2010/11/20 20:15

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さん、こんばんは。
地元紙、2月2日付けの北海道新聞に小野俊太郎氏のコラムが載っていました。わたしは知らなかったのですが、氏は「モスラの精神史」「大魔神の精神史」などのコラム集を発刊しているそうですね。
安倍 晋三氏の「美しい国」が流行っていたときに、「モスラ」と60年安保、「大魔神」と明治100年などのテーマを扱ったそうです。道新のコラムでは、氏は文化のイコンとして、モダンなものと土俗的なものとが奇妙に絡み合った存在が、現在でも脚光を浴びることの理由だと締めくくっていました。氏の期待するところは、現在の閉塞状況の払拭だそうです。
わたしも、そんな意見に十分に同調でき、地元紙の文化コラムもなかなか棄てたものじゃないと感じているところです。
では、また。
トム(Tom5k)
2011/02/26 20:37
 トムさん、こんばんは!
>モダンなものと土俗的なもの
興味深いですね。最新の音楽を聴いていても、凄く速いリズムなのに、歌詞は演歌とそう変わらないものが多いように思いますし、

 スターウォーズなどはアーサー王伝説を土台にしたストーリーをエイリアンやクリーチャーたちが演じています。人間の好むストーリーや映画の本質というのは実は今も昔も変わっておらず、見せ方が上手いか下手かだけなのではと思っています。

構造主義的な感覚だと物語の発展は神話⇒冒険小説⇒叙事詩⇒リアリズム⇒アイロニーと進化し、また神話に戻るそうです。

20世紀から21世紀にかけては神話に戻ってきているそうですので、今後は冒険小説・恋愛小説・伝奇小説が復興してくるのかもしれません。

ハイテク時代に流行る冒険譚というのがどのような形態なのかは分かりませんが、3Dなどのハード面でのモダンと見た目は今風だが本質は古いストーリーとの融合が見られるのでしょうか?

文学だけではなく、映画にもそういったモダンと土俗との融合がソフトとハードの両面で進むと楽しそうですね。ではまた!
用心棒
2011/02/27 22:01

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