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zoom RSS 『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』(1960)ドラマ部はリアルで見応えあり。特撮は寒い…。

<<   作成日時 : 2009/06/18 00:50   >>

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 去年、記事にした『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』の後にカルト映画や見ることの難しい映画の文章を書くに当たり、何を持ってこようかと悩み、『ノストラダムスの大予言』『丑三つの村』『犬神の悪霊』『第三次世界大戦』『九十九本目の生娘』『鬼畜大宴会』などを思い浮かべました。

 そして、そのとき選んだのは『鬼畜大宴会』と『第三次世界大戦』でした。『鬼畜大宴会』は自主制作なので今回のテーマからは逸れますが、同じメジャーである東宝がもっとも得意とする特撮映画の分野で、ヤクザ映画などの安易で、安上がりなものを作りがちだった東映がどこまでやれるのかに関心があり、』『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』を選びました。まだ観たことのない映画でしたので、どういうつくりをするのかに興味がありました。

 東宝は翌年に『世界大戦争』で似たようなテーマの傑作をモノにしています。いかにも東宝らしく、特撮部分の作り込みもしっかりとしていました。これに対して東映はどうしたのでしょう。おそらく特撮美術にはなるべくお金を掛けずにロケーション中心の撮影となり、パニック映画らしくして、ドラマ性で押し切ろうとするに違いない。

 ただそうなると、脚本家の腕と編集者の力量、そしてエキストラを含めた俳優陣らの人海戦術が作品の浮沈を決定することになる。この作品で注目すべきなのはこれらの点であろう。モブ・シーンさえきちんと撮れていれば、特撮シーンがなくとも、観客もリアルさに納得する部分もある。録画したDVDを見ていくと、逃げ惑うシーンなどは臨場感はありました。ドラマパートもしっかりしていました。

 しかしそこだけでは支えきれない特撮部分でのマイナスがありました。なかでも世界の危機的場面をすべてラジオ放送を流しているという設定の下で、セリフのみで語ってしまう荒業には呆れはてました。韓国と北朝鮮の38度線を挟んだ緊張感、米国空母の撃沈、韓国京城上空での核爆発などを言うだけで、実際にその特撮シーンを用意せずに、すべて言葉のみで押し切ってしまいました。

 東京の爆破は東京タワーと国会議事堂のみ、アメリカはゴールデン・ゲート橋のみ(なぜニューヨークでないのか?)、イギリスはビッグベンのみ、しかも恐るべきチャチさです。ソ連基地から発射される核弾頭ももっと丁寧に作って欲しいシーンです。両陣営の戦闘シーンが皆無なのはいただけません。ただ、逃げ惑う群集の利己主義的な行動の描写は人間性を抉り出していましたので、おもわず唸りました。

 最初、青春ドラマ的な展開があり、何組かの小市民の生活が政治家の思惑や世界情勢の緊張の狭間で、いとも簡単に崩されていく様は悲惨で良い出来になっていました。危機的な状況の中で試される人間性というテーマも見えました。

 水爆の恐怖で語るのであれば、黒澤監督の『生きものの記録』がありますが、あそこまで突き抜けていく覚悟はなく、『世界大戦争』ほどに予算もかけない。ドラマ部分は案外きちんと作られているので、かえって勿体ない作品でした。『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』という仰々しいタイトルをつけずに、小品として世に出すのであれば問題はなかったでしょうが、このタイトルでリリースするには内容が看板倒れである。

 充実した特撮セットを組めないのであれば、他の部分で補強しなければ、会社として大恥をかきかねない。こういう企画に挑むのは東映にはあまり利益がないのではないか。東映がこの映画に独自の味を加えるにはどうすべきだったのだろう。

画像


 上手くいってもそこそこの評価で、下手をすると、「しょせんはヤクザ映画と時代劇しか出来ない二流会社さ!」という確信を他社のファンに与えるのみである。よくもこんなリスクを背負いながら製作したものです。邦画の会社というと、映画ファンが思い出すのは東宝、日活、大映、松竹、そのあとに来るのが東映でしょう。

 別に恨みは無いのですが、どうも作品の出来自体、というか社風というか、この会社の作品には愛情が湧かない。ヤクザ映画が好きではない、チャチな特撮には腹が立つという性分のせいかもしれません。

 松竹が得意そうな庶民の暮らしぶりの描写が良く、カラッとした東宝とはまた違う味を出している。ただ若者たちの描写はまるで日活映画、とりわけ鈴木清順監督の初期作品を見るような感じでした。ドラマ自体は良い線行っていただけに、重ね重ね特撮の手抜きが悔やまれる。

 現在この作品はソフト化されてはいませんが、5年位前にスカパーの東映チャンネルで放送されたものを録画してあったものを今回はじめて見ました。お金はかかっていませんが、真面目に作ろうとしているのは分かります。ただ残念ながら、この映画を知っている方は稀でしょう。

 カラーで撮られた東宝の『世界大戦争』は東宝特撮中ではどちらかといえば地味な部類に入る作品ですが、いまでも評価の高い作品です。いっぽう、モノクロで撮られた、この『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』は歴史のなかに埋没していきました。だれも気にも留めない状況はこの映画にとって不幸である。作品はもっと正当に評価されるべき時期に来ているのではないでしょうか。

 劇中では北朝鮮と韓国の緊張が沸点に達すると、第三次世界大戦の序章となる。お互いへの不信感から、結局は共倒れになってしまう米露のゲーム的な考え方もいかにもありそうです。またこういった状況下でも、右往左往して何も出来ない日本がしっかりと描かれている。

 製作は1960年ですので、いまから50年近く前の映画となります。これはつまり、この映画に先見の明があったというわけではなく、いまになっても何もこの戦後体制が変わっていないことの証拠でしかない。よく昔の映画を観て、現在の様子と比べてみて、さもその映画に先見性があったかのように語る人もいるでしょうが、そうではなくて、人間や国際社会が何も変わっていないというだけにすぎない。

 見所としては、なんといっても特撮がわりに使われた人海戦術としか言いようのない大人数のエキストラの迫力でしょう。核爆弾から逃げるために富士の裾野まで東京から歩いてきている人々の不安と焦りに満ちた様子はまだ戦後十数年しか経っていない時期に製作されたことと無縁ではないでしょう。

 延々と舗装されていない道を歩んでくるエキストラの数には驚くかもしれません。富士の裾野までしっかりと見える核爆弾のきのこ雲は不気味な映像でした。その後に彼らの頭上に降り注ぐ死の灰はベタな演出ではありますが、身近に死が迫ってくることを分かりやすく見る者に示す。

 エキストラが大勢出てきますが、このなかの何人が俳優なり女優になるという夢をかなえたのだろうか。主演は梅宮辰夫、ヒロインは三田佳子であり、二人ともかなり若い。芝居の方はがんばっています。ラストの廃墟となった東京シーンは低予算の中、リアルで見所の一つです。

 ストーリーは最後、生き残った人々による戦争放棄のラジオ放送で閉じられる。当時の地球人口28億人中、20億人が死に絶えたポスト第三次大戦後の世界では、核と無縁だった南米の雄、アルゼンチンを主体にして、新しい秩序が構築されていくようでした。

総合評価 65点

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2009/06/18 20:35

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