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zoom RSS 『県庁の星』(2006)期待していなかった作品でしたが、結構毒がありました。

<<   作成日時 : 2006/12/05 00:23   >>

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 織田裕二と柴咲コウが主演を務めるというのを聞いたとき、「トレンディ・ドラマか?」という思いが募り、予定調和の現実味のまるで無い絵空事をえんえんと見せられるのはかなわないという判断を下し、劇場までは行きませんでした。

 DVDがリリースされたのをきっかけにはじめて内容を知りました。エリート公務員の胡散臭さと浮世離れした感覚、それに対比して描かれる女性フリーターの地に足をしっかりつけた、たくましい姿を観客に見せる。決して交わることの無い官と民のお話。

 お役所的発想から全く抜けられない公務員が徐々に己の価値を問い、やがてなにをするべきかに目覚めていく。役所の論理から飛び出すことは彼らの社会の中での「死」を意味する。しかし「死んだ」彼はまた新しい「生」を授かる。グダグダで意味不明のストーリーが多い邦画の脚本の作りとしては十分及第点を与えられる。

 つまんないスター映画かと思いきや、民間と役所のお互いの悪い所を結構辛辣に描いています。どっちが悪いというのではなく、どっちにも言い分と短所があるというスタンスを感じます。ただ、もっと悪いのは役所を動かす議員や知事であるというのは持って行き方としては最も陳腐なところに持っていったなという印象です。

 柴咲は民間、織田は役所なのでどっちかに責任を持っていってはどちらかが傷つく。それでは困るので、誰からも非難されないスケープゴート、つまり政治家を持ってくる。政治家を演じるのは石坂浩二と酒井和歌子、とりわけ酒井の豹変には驚かされます。最も印象に残るシーンであり、彼女は少ない登場場面ながら、おいしい所をすべて持って行きました。

 ただすべてを政治家に押し付けるのは陳腐ではないか。「役所のせいじゃないもん!」的な責任転嫁には無理がある。癒着構造が描かれてはいるが、何故癒着が必要なのかという深いところまで踏み込んではいない。

 コメディだからそんなのは描かなくても良いというのは大間違いで、笑いとラブロマンスの中に、ドキッとする毒を盛ってこそ、はじめて映画作家なのです。毒の無い作家は映画から去るべきだと思います。

 ただのハッピーエンドに終わらせず、癒着構造は未来永劫続いていくというのは軽いノリを期待する向きには不満があるかもしれませんが、あの知事と議員、そして若手公務員が交わす悪の会話があればこそ、あの映画は締まったのではないか。

 もちろん柴咲と織田がカップルになり、ハッピーエンドで物語が閉じられるのは現実味が全くありませんが、映画館から明るい気分でカップルたちに帰ってもらおうという製作サイドの意図は汲み取れました。好きではないのですが、無理やりにハッピーエンドにしないと広告代理店や配給サイドからOKが出ないのでしょう。

 この作品で致命的なのは織田をヒーローにしてしまったことでしょう。公務員以外で、いったい誰がエリート公務員をヒーローにしてしまう映画を見たがるというのだろう。せっかく地方のおんぼろスーパーという素晴らしい舞台装置があるのだから、場末の切羽詰った民間サイドの視点で語り続けたほうが共感を得たのではないだろうか。

 柴咲コウの視点を活かした映画にしてくれたほうが一般のお客は見やすかったのは明らかであろう。タイトルは『県庁の星』でも、中身は『バイトのねえちゃんは見た!』のほうが笑えて、よりブラックな作品に仕上がったのではないか。彼女の個性を考えても、「どっこい あたいら 生きてる」的なノリがあれば、より楽しめただろう。

 また織田と柴咲のコンビのような人気のあるタレント俳優たちを使うのは興行上必要なので仕方ないとは思いますが、もう一本それに掛ける予算の五分の一で良いので、骨のある現実的な作品との二本立てとかもやってほしい。

 昔、映画館に行ったとき、何度も経験があるのはA級作品(宣伝費をたっぷり掛けた作品やスター映画)の印象が全く無いが、同時上映作品(つまりB)の方が気に入ったというケースが結構あるのです。

 そういった作品はストーリー、演出、演技のどれかが際立っていたり、個性的だったりして強い印象を与えてくれたものです。昔は各映画館や地方によって、三番館や二番館などで併映作品が違うというのも結構ありましたので、具体的にどれというのは難しいのですが、目当ての映画がコケテも同時上映作品に救われたことも何度もありました。

 現在の配給システムでは大手映画会社は損をしないシステムを作り出しているのですから、自主制作系の映画監督たちにチャンスを与えて欲しい。はっきりいって現在のステレオタイプの邦画に満足をしている映画ファンがどれだけいるというのだろうか。清濁併せ呑む同時上映興行の復活を強く望みます。

 TVドラマの映画化、アニメの実写版、続編、リメイク、ベストセラーの映画化とヒットしている邦画の内幕を覗けば、いかに貧困な状態に陥っているかが容易に分かる。つまり良い脚本が無いのでしょう。だから数字がある程度予想がつくこれら上記の条件を満たす作品が劇場を埋め尽くす。

 TVの強力な後押しがあってこその作品ばかりなので、俳優達も宣伝部隊に回され、笑いたくもないのにTVカメラの前に顔を出さなければならない。いつになったらこのような負の連鎖が終わるのだろうか。まだまだ続きそうでウンザリします。

 そのなかにあって、完全なるハッピーエンドにしなかったのは救いでしたが、どうせならば織田と柴咲はそのまま会わずに終わらせて欲しかった。そのほうが現実的です。砂糖をまぶしたようなエンディングではこの作品の場合、価値がぐんと下がってしまいます。せっかく本が良かったのだから、もっと上手く現実味を持たせてほしい。もったいない。

総合評価 58点
県庁の星 スタンダード・エディション
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