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zoom RSS 『キングコング対ゴジラ』(1962)日米怪獣スター夢の共演!喜劇的要素が強く、見応えあり。

<<   作成日時 : 2006/08/31 01:28   >>

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 『キングコング対ゴジラ』はゴジラ・シリーズとしては初のカラー作品であり、東宝設立30周年記念作品として製作された映画でもあり、アメリカの大スター怪獣キングコングとの夢のシングルマッチもあり、はじめて「OO対ゴジラ」や「ゴジラ対OO」という題名を使った作品でもあります。とにかく初物づくし、記念づくしの映画となったのがこの作品「キンゴジ」でした。

 製作に田中友幸、監督に本多猪四郎、特撮に円谷英二、音楽に伊福部昭を起用したこの作品は黄金のカルテットがおのおの良い仕事をしています。コングを持ってくるという企画と高島忠夫や有島一郎を上手く配役した田中、喜劇と特撮を融合させた本多、オブライエンへのオマージュと彼を超えることにただならぬ情熱を燃やしたであろう円谷、熱帯秘境音楽を提示して作品の詩情を豊かに演出した伊福部とそれぞれが素晴らしい貢献をしました。

 昔からのゴジラ・ファンの間でも、この作品の人気は根強く、この作品をベストに挙げる人も多い。ゴジラの造形はおそらくこのときのものが一番カッコ良いのも事実です。塩ビ・フィギュアでも、オリジナル版とキンゴジ版がもっとも人気があります。背びれ、顔付き、尻尾、ボディの質感など惚れ惚れするほどにスタイルが良く、絵になるゴジラだと思います。

 不細工に作られたコングとの対比を楽しむのも一興です。なぜあのようにコングだけがブサイクに作られたのかは謎であり、コング・ファンとしては許せないご面相だったのではないだろうか。落ちてお尻を掻いたり、ゴジラの攻撃から急所をかばったり、頭を掻いて退散したりするコングを観たい人がいたのだろうか。

 あまりにもコミカルに道化のように振舞うコングにはエンパイア・ステートビルでフェイ・レイを叫びまくらせた初代コングのような南海の大王としての面影を見出すことが難しい。もしかするとコングではなく、ジョーヤングだったのかもしれません。

 せっかくハリーハウゼンばりのストップ・モーション・アニメーションも使われているオオダコとの闘いシークエンスを与えられているものの、キンゴジ全篇を通しての印象としては、彼はあまり良い待遇を東宝から得たとは言い難い。それなのにさらに東宝で『キングコングの逆襲』で再オファーを受諾した理由はもっと分からない。権利者はよほどこの頃お金に困っていたのでしょう。

 その反動からか数十年の時を経て、満を持して製作された米国版『ゴジラ』はあまりにもリアル路線を突っ走ったため、大コケしてしまいました。歌舞伎という演劇の素養がある日本の観客はこういったジャンルを観る時にはリアルさよりも様式美を重んじる感覚を持ち合わせているので、あまり細かすぎるリアリティには反って興を削がれてしまう。

 キンゴジは個人的にも思い入れの非常に強い特撮映画でもあります。なぜならばこれは僕が劇場で観た初めての作品だからなのです。もちろんリバイバル上映ではありましたが、劇場の大迫力で観るキンゴジは素晴らしかったのを覚えています。

 当時はまだテレビの画面は場所をとる割りに非常に小さく(普通のノートパソコンの画面くらいでしょうか)、モノクロのものも随分多く残っており、迫力の面ではスクリーンに比べて、かなり劣勢でした。

 ちょうどその頃にギラーミン監督版の『キングコング』も上映されていたため、地方館が独自の企画を立てたのでしょう。両方ともに連れて行ってもらいましたが、キンゴジの方が楽しかった記憶があります。

 ストーリーとしては、ファロ島を舞台にした前半はほぼオリジナル・コングの焼き直し的なお話を高島忠夫や藤木悠を狂言回しとして機能させて、コミカルタッチで描いていき、島民との交流などを見せて、和やかなムードで作品を進めていきます。この作品でも『モスラ』と同じように原色を多く使った、カラーならではの良さが出ています。

 有島一郎が扮する多胡部長のキャラクターが秀逸で、彼の存在がかなり大きく作品の明るさに貢献しています。喜劇と特撮というと本来は水と油なのではないかと思いますが、良い俳優と脚本があれば、十分に機能するのですね。特撮怪獣喜劇映画という名称はありませんが、この作品は是非そう名付けたい。ドラマ部分も怪獣戦闘場面も喜劇の要素がかなり多いのがなんともいえない魅力を画面から発散させています。

 二大スターの共演、しかも製作会社が違うというハンディとお互いの面子があるために、かなり制約が多かったのではないでしょうか。対決物であるにもかかわらず、対戦に完全な白黒を付けられないのです。プロレスの興行で両者の思惑が錯綜する場合には、結果として導き出される答えは「両者リングアウト」、「無効試合」、「ノンタイトルマッチ」、「タッグマッチで両者のパートナーがやられまくるケース」のいずれかになります。

 実際にこの勝負は90分3本勝負で幕を開けましたが、一本目はゴジラがリングアウト勝ち、二本目は両者リングアウト、三本目は両者がリングに戻ってこなかったために無効試合となりました。優勢だったのはゴジラですが、コングの健闘も忘れられません。

 常にコミカルな動きをし続けるコング、だんだんスクリーン慣れしつつあったゴジラの両者はお互いに素晴らしいライバルに恵まれたためにハッスルし、日本中を股にかけ、あちこちでその存在を示します。南の島から日本に来日し、国会議事堂で浜美枝とともに決めのポーズをとるコング、氷の中から現れて、北から富士山麓を目指してやってくるゴジラ。日本全国の街道を花道のように使ってやってくる様子はまさにプロレス興行です。

 二枚目悪役スターのゴジラ対演技派スターのコングの対決は非常に興味深い。この対戦の後、ゴジラは徐々に演技派への道を歩むことになります。

 特撮面で興味深かった映像のひとつに行方不明になった恋人を探すために浜美枝らが電車に乗るシーンがあり、夕暮れに海岸沿岸を通過していくショットで、ミニチュア電車のなかで乗客が荷物を上げ下ろしして、動いているような細工を施しているのが見えたとき、円谷英二のプライドの大きさを垣間見ました。
 
 夕暮れ時にこちらに向かって、ゆっくりと歩いてくるゴジラは本当に不気味でした。ゴジラが山と山の間から港を見下ろすショットはこの作品中で最も恐ろしいショットです。

 映像を含めた演出は冴えていて、演技も暖かみがあり、心地よい。さらに素晴らしいのが伊福部昭によって付けられた音楽です。コングのいたファロ島での原住民のコングを迎える歌、ラジオから突然掛かる日本の歌、そして力が漲るテーマ曲など印象的な曲が多い。

 高島忠夫が劇中にて、ドラムを叩きながら生CMを演奏するシーンがあります。それはセントラル製薬の「パッシン」のCMで、これは頭にこびりつきます。「精力の源!パッシン!セントラル製薬のパッシン!」うーん。飲んでみたい!

 注目の対戦は90分3本勝負です。一本目は草原で行われ、ゴジラのパワーと放射能光線に圧倒されてしまったコングが頭を掻きながら戦意喪失して退散してしまったので、ゴジラの勝利でした。コングはその後、武者修行を行い、電気ゴリラに生まれ変わり、ゴジラに対抗するために十分なパワーを得ました。

 このとき超高圧電流に晒されたコングに対して高島忠夫が言った台詞に「コングがロースト・チキンになるぞ!」というのがありますが、ロースト・ゴリラの間違いではないだろうか。まさにエレキの猿大将でした。

 二本目は富士山麓と熱海を舞台に熱戦が繰り広げられます。富士山麓コング鳴く!雪辱に燃えるコングは哺乳類の知恵を駆使して、爬虫類代表のゴジラに頭脳戦を仕掛け、二本目ではおおいにゴジラを苦しめ、熱海城まで引っ張りまわします。両者必殺技を駆使し、なかなかの熱戦になりますが、海(リング外)に落ちてしまい、両者リングアウトで二本目を終えます。

 続いて行われるはずの三本目でしたが、時間切れと両者が三本目のリングに戻ってこなかったために、この三本目は行われず、結局は無効試合となりました。再戦を望む多くのファンがいましたが、45年が経とうとしている今現在でも行われておりません。

 またゴジラが復活するならば、できれば2012年公開にして欲しい。東宝設立80周年記念映画として、『キングコング対ゴジラ』の因縁の三本目が観たい。当時よりもさらに権利関係がうるさくなってしまっているので、再戦は限りなく難しく、昭和のプロレス・ファン的に言えば、『アントニオ猪木対ジャイアント馬場』なみの確率でしょう。

 対戦成績 キングコング対ゴジラ(ノーコンテスト 引き分け) 通算成績 一勝一敗一分け(初代、二代目合算で)

総合評価 88点

キングコング対ゴジラ
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OOH LA LA - my favor...
2006/08/31 12:09

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
おのころです。You Tubeで、古今東西のSF映画の予告編ばかり集めてるサイトを見つけたので「異国人の眼」で紹介しています。このキンゴジも予告編としてあります。英語に吹き替えして公開しているのですね。初めて知りました。声が各々の俳優さんにマッチしていて、楽しいですよ。
おのころ金造
2006/08/31 23:31
追加です。記憶を便りに書いてますが、確か米国本家のキングコングはRKOの製作です。ここは、B級映画が多く、50年代の末に倒産した筈です。
キングコングの権利を日本に貸し出したのも、その辺の台所事情があったんではないでしょうか。
おのころ金造
2006/08/31 23:35
 おのころさん、こんばんは。
 RKOは70年代まではまだ倒産はしていなかったのではないでしょうか。資産管理会社自体は存続していたようです。
 東宝はRKOからコングの権利を買っていますし、ユニヴァーサルとパラマウントが争い、パラマウントが権利を得た70年代初めのギラーミン監督の『キングコング』にしても、権利関係の窓口はRKOの弁護士でした。
 まあ、新作映画を公開しない会社を映画会社と呼ぶのかといえば、「ちがう」と答えることもできます。わが国の大映や日活の例もありますしね。
 RKOも昭和30年代当時の日本の会社に、自社の虎の子だったコングの権利を譲るくらいなので、ご指摘の通りの経済事情だったのでしょうね。
 ユニヴァーサル版がもし権利を取っていれば、ハリーハウゼンを呼ぶ企画もあったようです。
 実際には彼は『シンドバッド 虎の目大冒険』に取り掛かっている最中だったので、断ったそうです。観てみたかったですね。
 ではまた。
 
用心棒
2006/09/01 00:05
この間は、ゴジラよりモスラの方が好きだとコメントさせていただきましたが、実はこのキング・コングもゴジラより好きです。どうも、わたしはヒールよりベビーフェイスのほうが好きだったようです。映画館に観に行った記憶は昭和48年頃ですから、リバイバルの東宝チャンピオンまつりだったと思います。
この対決を夢の対決とし、アメリカ市場でも通用する作品として製作したことは円谷プロのゴジラというキャラクター創作の素晴らしさとプライドを感じますね。
今あらためて、この作品のストーリーを振り返れば・・・
第一戦のコングの敗退から、自らを電気コング化した第二戦への展開には、再生・復活をテーマとした後期のゴダール作品を想起させてくれます。あるいはファンクスVSシーク、ブッチャー戦でテリー・ファンクがシークとブッチャーの反則に一端は退場し、再び包帯を巻いてリングに上がってきたときのような熱い感動を思い出させてくれました。
どちらもこの作品より新しいということが、また“円谷プロの先見性なのかもなあ”と感慨深いです。
トム(Tom5k)
2006/09/03 01:37
 トムさん、こんにちは。
『怪獣大戦争』までの初期ゴジラシリーズには製作者たちのアイデアと熱意を強く感じますね。アメリカン・ヒーローのコングを持て余すことなく、上手く料理したのではないかと思います。コングの顔をもっと「男前」にしてくれていれば、さらに特撮映画ファンの評価が上がっていたはずです。
 ファンクス対ブッチャー、シーク組!!!
昭和50年くらいから53年くらいまでのチャンピオン・カーニバルや世界最強タッグ・リーグでの最大のカードですね。
 最後はたしかブッチャーとシークが仲間割れして、シークの火炎放射でブッチャーが逃げまどう場面を覚えています。
ではまた。
用心棒
2006/09/03 11:03
コングの顔が不細工なのは版権を持っていたRKO側がコングの顔そのままでは困ると東宝側に要望が有りその為に顔の造形を変えざる得なかった。
そこまで調べて居ないで批判するのは辞めなさい。
四素地
2017/03/27 15:01
用心棒さんこんばんは。コングの顔が不細工と言われても気になりませんでした。ゴジラも哺乳類と戦うから恐竜らしい顔立ちでしたね。コングは「キングコングの逆襲」の方が親しみやすかったですね。
さすらいの映画人
2017/10/10 21:47
こんばんは!

>不細工
映画自体はゴジラ映画のなかでも屈指の傑作ですよね。大好きな作品の一つです。なんたって、覚えている中で映画館に観に行った最初の作品がこれでしたものww

>逆襲
あれも素晴らしい作品に仕上がっていますね!

ではまた!
用心棒
2017/10/10 23:26

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『キングコング対ゴジラ』(1962)日米怪獣スター夢の共演!喜劇的要素が強く、見応えあり。 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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