テーマ:素晴らしきモノクロの世界

『グリード』(1924)シュトロハイム監督の運命を大きく変えてしまった狂気の9時間。

 21世紀も、もうすぐ最初の10年が過ぎようとしている今となっては、エーリッヒ・フォン・シュトロハイムという名前を聞いてもピンとこない映画ファンがほとんどでしょう。僕自身も彼の作品を観たのは『愚かなる妻』『グリード』という二本の監督作品、そして俳優として登場した『大いなる幻影』『サンセット大通り』の二本、合計でも四本でしかありません。そ…
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『愚なる妻』(1921)来るべき『グリード』へと繋がる狂気の完璧主義への第一歩。

 エーリッヒ・フォン・シュトロハイム監督が1921年にユニヴァーサル映画で監督・主演した『愚なる妻』は数年後の1924年に製作された、上映時間が9時間にも及ぶ狂気の大作映画『グリード』に繋がっていく露払いともテスト・パターンともいえる。  まずは大抵の観客が呆気に取られるのはオープニングの演出でしょう。物語を始める前に、主演女優の…
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『アルジェの戦い』(1965)帝国主義はそもそも英仏の専売特許であった。大戦17年後の報い。

  『アルジェの戦い』はアフリカ大陸に位置するアラブ諸国のひとつであるアルジェリアが、宗主国である侵略者フランスから多くの犠牲者の血の代償を払いながら、念願の独立を勝ち取った過程をセミ・ドキュメンタリー・タッチで描いた60年代映画の傑作である。  監督であるイタリア人、ジッロ・ポンテコルヴォは素人俳優を多数起用したことによって、…
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『希望 テルエルの山々』(1939)スペイン内戦を間近で見たアンドレ・マルロー唯一の監督作品。

 ファシストで、ファランヘ党総統のフランコ将軍の率いる軍隊の侵攻に立ち向かうべく、共和派の戦線に参加するためにスペイン入りした、アンドレ・マルローが書いた小説を彼自身が監督して撮りあげたのが、この『希望 テルエルの山々』です。  この映画は戦後の1945年にルイ・デリュック賞を受賞しました。完成してから6年も経ってからの受賞ですが…
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『パリは燃えているか』(1966)敵味方にかかわりなく、ヨーロッパ人は深いところで繋がっている。

 作品が始まる前、幕が閉じられたまま、五分弱の序曲がかかる。『ザッツ・エンターテインメント』みたいです。観客に、この映画が大作であることを宣言しているようでした。パラマウント映画の映像が出てきますが、米仏合作映画となっています。  ただ、合作とはいっても、何度観ても、老獪なフランス人たちに、単純なアメリカ人が母屋を乗っ取られている…
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『結婚哲学』(1924)エルンスト・ルビッチ監督の素晴らしい一本。映画に台詞は要らない。

 ビリー・ワイルダー監督が師匠と仰ぐエルンスト・ルビッチ監督の渡米後の第二作目となったのがこの『結婚哲学』でした。なんてお洒落なセンスを持っていた人なのでしょう。彼の演出には脱帽するしかありません。  ドイツの監督というとすぐに思い出すのはフリッツ・ラング監督に代表されるどこかグロテスクな作風ですが、ルビッチ監督にはそういった部分…
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『失われた週末』(1945)アルコール中毒症患者の苦しみを見事に捉えた映画。

 これはアルコール中毒症患者のどうしようもない苦しみと弱さを描いた社会派映画である。それはそれでシリアスで素晴らしい作品に仕上がっているのですが、ビリー・ワイルダー監督が本当に描きたかったのはドラッグ中毒患者の禁断症状(コールド・ターキー)の恐ろしさはもとより、さらに身体に害を及ぼす麻薬などの薬物摂取への警告だったのではないだろうか。 …
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『第十七捕虜収容所』(1953)ビリー・ワイルダーの描く戦争映画は異色の名作だった。

 のちの映画でも多用される勇ましいテーマ曲『ジョニーの凱旋』が幾度も流れる、巨匠ビリー・ワイルダー監督による異色の戦争映画がこの『第十七捕虜収容所』です。口笛で吹かれたり、みんなで勇ましく歌われるこの曲は最高にカッコよい。誰でも一度は聴いたことのある御馴染みのナンバーなので、見ているとすぐにフィルムに没頭できます。  アーノルド・…
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バスター・キートンの師匠、“ファッティ”・アーバックルの勇姿を見よ。『おかしな肉屋』(1917)。

 ロスコー・“ファッティ”・アーバックルの名前を聞いて、すぐにピンと来る方はかなりの映画通でしょう。チャーリー・チャップリン、ハロルド・ロイド、バスター・キートンを称して「三大喜劇王」とすることが多いが、「デブ君」ことロスコー・アーバックルを忘れてはいけません。  彼はバスター・キートンに映画界入りを勧め、キートンのデビュー作『お…
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『素晴らしき哉、人生!』(1946)毎年必ず見る大切な映画の一本です。どっぷり浸りましょう。

 作品から受けるのは「希望を捨てるな!君を必要としている人々が必ずいるのだ!」という単純だが、もっとも心に響く力強いメッセージである。「生きねばいけない!」といわれるよりも「君が必要なんだ!」と言われるほうがどれだけ力強く、傷ついた人を勇気付けられるかはすぐに分かるはずです。  何千本と映画を見ていくと、ついつい展開を予想してしま…
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『殺人狂時代』(1967)岡本喜八が放った傑作ブラック・コメディ。見るべし!

 会社の枠に収まりきらない映画人の一人、岡本喜八監督が1967年に製作した傑作ブラック・コメディがこの 『殺人狂時代』です。喜劇王チャーリー・チャップリンの名作『殺人狂時代』があるために、単なる模倣かと思われる方もいるかもしれませんが、これはまったくの別物の映画です。  何故このようなタイトルをつけたのかは分かりません。ただ出来上…
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『クレオパトラ』(1934)豪華絢爛な衣装と舞台装置。デミル映画らしさが楽しめる!

 クレオパトラの映画化作品というと、一般的には20世紀フォックスを破滅させる寸前まで追いやったエリザベス・テイラー主演の『クレオパトラ』(1963)が有名であり、1934年度版のこの作品を知る人は少ないかもしれません。  しかし映画としての出来栄えではこちらの方がはるかに素晴らしく、1963年度版と同じく映画としての大きさと豪華さ…
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『アンジェラ』(2005)洗練されている21世紀型モノクロ映画。ベタですが、この感覚は好きです。

 モノクロの新作映画をほとんど見かけなくなってから、もうずいぶん経ちます。最近の有名なモノクロ作品というと、洋画では『シン・シティ』、邦画では『ユリイカ』『サムライ・フィクション』まで遡らねばならないほど思い出せません。  そのなかでリュック・べッソン監督はあえてモノクロを選択しました。白黒はっきりした世界を表現するのはカラー製作…
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『グランド・ホテル』(1932)ガルボ、J&Rバリモア、クロフォード、ベアリーが奏でる人間模様。

 のちにグランド・ホテル形式と呼ばれるようになる、エドムンド・グールディング監督によるドラマの語り方は当時は斬新であったろうと思われる。たったひとりでも、一本の主演映画を撮ることができる俳優たちを5人集め、五人それぞれに見せ場を作り、ただの顔見世興行的な作品の枠には収まりきらない活き活きとしたシネマを作り出した意気込みに対して与えられた…
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『ライムライト』(1952)これは自身のセルフ・ポートレイトである。そして最高の映画である。

 チャーリー・チャップリン監督には喜劇王としてのイメージが強い。しかし注意深く見ていくと、彼が監督したほとんどの作品において、ていねいに描かれているのは悲惨な環境にいる人々の悲劇的なエピソードである。  ある時は彼の孤独であり、絶望であり、愛への渇望である。深い悲しみに満ちた物語に、ささやかな喜びやナンセンスな笑いの場面を配置して…
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『幕末太陽傳』(1957)喜劇の凄み!若くして亡くなった天才監督、川島雄三の最高傑作。

 川島雄三監督というと今では、なかなか顧みられる事も少なくなった映画人の一人でしたが、スカパーでは今年に入ってから大特集を組んでいたため、いくつかの作品を見ることになりました。  その中でも今回取り上げた『幕末太陽傳』は彼の代表作のひとつであるだけではなく、日本喜劇映画のベスト・ワンと呼んでも良い作品です。落語『居残り佐平次』を主…
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『黄金狂時代』(1925)見れば分かる映画がある。しかも最高の映画である。

 1925年という、サイレント映画黄金期に制作された、チャーリー・チャップリン監督の最高傑作であるばかりではなく、映画芸術そのものの到達点のひとつがこの『黄金狂時代』である。  帽子にステッキ、ちょび髭にぶかぶかのズボンと靴、という浮浪者スタイルがトレードマークだった頃のチャップリン監督、不朽の名作となった作品であり、喜劇といって…
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『チート』(1915)日本人初のハリウッド・スター、早川雪洲が登場する貴重な作品。

 『THE CHEAT』は第一次大戦前の1915年に、後の巨匠、セシル・B・デミル監督が撮った傑作シネマ(劇映画)であるばかりではなく、日本人として初のハリウッド・スターとなった早川雪洲の代表作といってよい作品でもあいます。  ミステリアスな雰囲気を持つ雪洲ですが、彼の気味の悪いニヤリとした表情がなんとも言えない不思議な魅力を放っ…
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『伊豆の踊子』(1933)何度もリメイクされた、川端康成の原作をはじめて映画化した作品。

 今では知る人も少ない、日本映画初期の巨匠、五所平之助監督が1933年に、この川端康成原作の本作品を、はじめて映画化した時には、まさかそのあとに、何度もリメイクされるとは思っても見なかったのではないだろうか。  物語自体はそんなに起伏のある話ではないし、見所満載のスペクタクル作品ではない。あえていえば、ほんのりと爽やかな淡い恋物語…
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『ロゴパグ』(1963)ロッセリーニ、ゴダール、パゾリーニ、グレゴレッティ。4人の頭文字が題名。

 1963年度に製作されたもので、監督に、 ロベルト・ロッセリーニ、ジャン=リュック・ゴダール、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ウーゴ・グレゴレッティという4人の個性豊かな映像作家を迎えて、製作されたオムニバス作品である『ロゴパグ』は今から考えると、とても贅沢なメンツで作られた事に驚かされます。    短編集というのは昔からあったよう…
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『ローマの休日』(1953)オードリーって、なんでこんなに可愛いのだろう。

 ウィリアム・ワイラー監督、1953年度製作作品というよりは、時代を超えて人気のある女優 、オードリー・ヘップバーンの大ブレイク作品といったほうが、わかりやすいですね。題名だけでも聞いたことのある人も含め、これを知らない人がわが国に存在するのでしょうか。  ハリウッド映画の、もっとも華やかかりし頃の、主役を張れる女優の魅力が、ど…
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『真昼の決闘』(1952) 西部劇の名作であるだけではなく、むしろ人間ドラマの傑作。

 フレッド・ジンネマン監督、1952年制作作品。オープニング・シークエンスでの、悪党達の集合シーンの不穏さ、それと好対照となる保安官(ゲーリー・クーパー)と妻(グレース・ケリー)の結婚シーン。対照的なこのシーンが、後に保安官が味わう孤独の85分間を暗示する。この作品で、まず斬新な点は、上映時間である約85分間と、現実の時間の進行を合わせ…
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『太陽の季節』(1956) 大スター石原裕次郎、銀幕デビュー作品だが実は脇役。ネタバレあり。

 古川卓巳監督、1956年製作の作品。というよりも石原慎太郎原作・脚本、そして実弟である石原裕次郎の銀幕デビュー作品です。見る前は、完全に裕次郎の主演作品だとばかり思っていました。ところが、タイトルの後に出てきたのは、長門裕之・南田洋子夫妻だったので、かなり面食らってしまい、一瞬、もしかすると別の作品と間違えてしまったのかと疑いました。…
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『イヴの総て』(1950) アカデミー賞を取ったのも頷ける、名作中の名作。ネタバレあり。

 ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の最高傑作であり、映画でなければ表現できない映像が非常に多い、テクストとして見ても素晴らしい作品です。映画の主要要素である脚本、演技、演出、音響、環境に加えてアイコンである女優の人選がとりわけ素晴らしい作品でもあります。アン・バクスター、ベティ・デイヴィス、そしてマリリン・モンロー。女優さんを見ている…
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『狂った果実』(1956)ヌーヴェル・ヴァーグにも影響を与えたとされる石原裕次郎の初主演作品。

 中平康監督による、原作が石原慎太郎現都知事、主演が故・石原裕次郎という今考えるととても豪華な、彼の記念すべき初主演作品です。この作品は前回の『太陽の季節』と同じく、湘南の雰囲気を上手く捉えた良作に仕上がっています。波の音や風の音、海の香りが漂ってくる愛すべき作品です。  圧倒的な存在感を示す裕次郎ですが、この作品はそれだけのもの…
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『水の中のナイフ』(1962) 鬼才ロマン・ポランスキー監督のポーランド時代の傑作。ネタバレあり。

 ポーランド時代の1962年製作のロマン・ポランスキー監督、初期の傑作として評価の高い作品です。倦怠期に入った休暇中の大使夫妻と偶然出会ったヒッチハイカーの三人のみで、一本の長編映画を作ってしまった、というたいそうシンプルな作品でもあります。 倦怠期の描き方はとりわけ優れています。何も起こらないのに、何かが起こるかもしれないとい…
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『ベルリン 天使の詩』(1988) 当時のおしゃれな人達がたいそう褒めていたドイツ映画 ネタバレあり

 ヴィム・ヴェンダース監督の1988年の作品ですが、1988年から1990年というと、バブルの時代の真っ只中でありまして、子供から大人まで株に手を出して、素人でもおこぼれに預かれる、という今では考えられない時代でもありました。  外国といえばアメリカだった時代は終わり、憧れだった、かの国に対する気持ちに変化が生まれ、日本人は戦国時…
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『キッド』(1921) 上映時間50分は、今では短いものですが当時は十分長編でした ネタバレあり。

 喜劇王チャーリー・チャップリン(アルコール先生)が監督・脚本・音楽・主演という八面六臂の活躍を見せるサイレントの長編作品。短く感じるかもしれませんが、無駄なシーンや会話を一切省いて、良い部分を凝縮した印象を持ちました。  とても素敵な作品です。チャップリン監督はモノクロとサイレントという映画創生期の巨星であり、トーキーに入っても…
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