テーマ:黒澤明

『どですかでん』(1970)黒澤明が放つ、救いのない世界観。

 『どですかでん』は黒澤明監督作品のなかではもっとも異彩を放っています。自身初の試みとなるカラーフィルムの仕上がり具合を手探りで試すようなセットや手作り感覚溢れる独特の色使いはヨーロッパの作品のようでもあり、現代版の『どん底』のようでもある。  カラー映画を撮っているのですが、カラーを憎むような汚らしいというか、あえて薄暗くて、ど…
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『生きものの記録』(1955)原水爆よりも根深いのは老いと次世代に追い抜かれる恐怖では。

 黒澤明監督作品で今でも有名な作品と言えば、『七人の侍』『椿三十郎』『用心棒』『影武者』などの時代劇であったり、社会派作品でも『生きる』『天国と地獄』などであり、これらについて語られることが多いようです。  代表作となった『七人の侍』が大ヒットした直後の作品として公開されたのがこの『生きものの記録』です。主人公の三船敏郎が今度は独…
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『悪い奴ほどよく眠る』(1960)異色の社会派作品で、黒澤プロ設立後の第一弾。

 黒澤明監督作品に関して、10年越しでぼちぼちブログ記事をアップしていってはいるもののいまだに書けずに残っているのは『悪い奴ほどよく眠る』『どですかでん』『生き物の記録』『まあだだよ』の四本の現代劇です。  政治腐敗の闇を描いた『悪い奴ほどよく眠る』、風変わりでエグ味があるファンタジー『どですかでん』、奇抜な設定で狂人化していく三…
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『赤ひげ』(1965)黒澤明、最後のモノクロ作品にして最高傑作。

 良い映画とはどんな映画だろうか。楽しい映画、興奮する映画、感動する映画、時間を忘れる映画、何度も見たくなる映画などなど数え上げれば切りがないほどに映画ファン各々でこだわりがあるのでどれが一番か決めるのはかなり難しい。  個人的にはストーリーだけではなく、活動写真である以上は映像表現が美しく、映画でなければ撮り得ない、深い意味を持…
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『どん底』(1957)社会の底辺で暮らす人々は虚無的で自堕落に落ち込み、朽ちて行く。

 『どん底』はゴーリキーの有名な戯曲ですが、ぼくはなぜかこの原作ではなく、ジャン・ルノアールが手掛けた映画を思い出します。  トボトボと道を歩く敗残者たちへの温かさと愛情がフィルムを通して伝わってくる。当然ロシアでも映画化されています。そして、ロシア文学に傾倒していた黒澤明監督もまたドストエフスキーの『白痴』に続き、ゴーリキー作品…
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『白痴』(1951)無残に切り刻まれた4時間半の大作。オリジナル版は松竹倉庫に眠る?

 携帯メールで文章を作ろうとして、普通にひらがなで“はくち”と入力しても、一回目にはこの映画のタイトルは変換候補に浮かんできませんでした。  Wordの変換ではさすがに出てきますが、どうやらこの言葉も過剰な配慮のために規制対象になっているのか、それともあまり使われなくなっていて、すでに死語になりつつあるからなのかは定かではありませ…
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『静かなる決闘』(1949)梅毒と独りで向き合う超人的な青年医師を演じる三船敏郎。

 たぶん黒澤明監督作品中でこれまでに自分が見た回数がもっとも少ないのがこの『静かなる決闘』です。主演が三船敏郎なのですが、他の作品とはかなり異質な印象を受けます。  彼の代表作の一つでもある『酔いどれ天使』で観客に定着してしまった悪漢やヤクザというワイルドなイメージを払拭し、一度イメージをリセットして演技の幅を広げるためにはこうい…
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『羅生門』(1950)永田社長は理解できなかったが、外国人によって理解された黒澤ブランド。

 黒澤明監督作品中、おそらくは『七人の侍』『生きる』とともに、半世紀以上に渡って、世界中の映画ファンによってあれやこれやとさんざん語り尽くされてきたであろう『羅生門』について、今さら何を書けば良いのやらと少々気が引けます。  それでも40歳過ぎの映画ファンとして、自分が何度も見てきた『羅生門』を整理するために、この作品についてあれ…
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『デルス・ウザーラ』(1975)さまざまなトラブルを乗り越えて放った起死回生の一撃。

 この作品『デルス・ウザーラ』はかつてはビデオ化されていて、つい10年前までは普通にレンタルビデオ屋さんで借りることが出来ました。しかしながら、レンタルビデオ屋さんの在庫がVHSビデオからDVDに切り替わっていく過程で『デルス・ウザーラ』は店頭から消えていきました。  それでも東宝からは販売用DVDが発売されておりましたので、この…
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『生きる』(1952)黒澤映画というより日本映画の代表的な一本。年齢を重ねるごとにズシンと響く。

 最初にこの映画を見たのはたしか13歳の中学生のときでした。その後、レンタルビデオを借りてきて、二十代までの若い頃に何度も見た『生きる』は確かに良い映画でしたが、どこか共感できない部分がありました。  たぶんずっと後ろ向きに生きてきて、煮え切らない人生を送ってきた主人公にイラついたからでしょう。若い頃にはウジウジした大人は嫌いなの…
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『影武者』(1980)流行語にもなった影武者。勝新降板、カンヌ映画祭グランプリなど話題になりました。

 黒澤明が生涯で監督した映画はデビュー作『姿三四郎』から遺作となった『まあだだよ』までで全三十作品あり、小学生の頃から黒澤映画ファンだったぼくは多くの作品をビデオで何度も繰り返し見てきました。  年齢的にモノクロ時代には間に合わなかったぼくが映画館で観たのは『乱』以降になります。5年位前に『デルス・ウザーラ』も大阪で行われていたロ…
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『乱』(1985)シェイクスピア四大悲劇のひとつ『リア王』を翻案した黒澤明、最後の時代劇。豪華絢爛!

 黒澤明監督の最後のモノクロ作品となった『赤ひげ』は武骨な立ち回りなどのいわゆる一般の方が黒澤映画に持つであろう男祭りの派手さはないものの、風景や人物の描写や構図でモノクロ映画の美しさの極致を堪能させてくれました。  『赤ひげ』完成後に黒澤明監督は多くの作品で栄光の日々をともに過ごした三船敏郎ともコンビを解消し、戦前のP・C・L以…
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『わが青春に悔なし』(1946)原節子の黒澤映画デビュー作品。強い女として描かれるのは初めてでは。

 昭和の名女優、原節子がその生涯で出演してきた映画に見る彼女はどれを見ても上品な女性という印象のものが多い。『新しい土』での清潔で初々しい彼女、日本映画最高の巨匠として知られる小津安二郎監督の傑作『東京物語』『晩春』などに出演していた彼女、女を描かせたら天下一品と呼ばれた成瀬巳喜男作品での彼女、稲垣浩監督の『日本誕生』に天照大神として出…
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『蜘蛛巣城』(1957)水墨画のような映像美。黒澤映画史上もっともドロドロとした作品でもある。

 半世紀以上も前になる1957年に製作された『蜘蛛巣城』は黒澤明監督の撮ったモノクロ映画の傑作のひとつである。1950年に国内では永田雅一社長に解りづらいと不評だった『羅生門』がヴェネチア映画祭に出品されていて、黒澤監督は結果として誰も予想していなかったグランプリの栄誉を得た。  このときの喜びは自身の自伝的作品である『蝦蟇の油』…
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『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008)黒澤リメイク第二弾。うーむ…

 ここ数年、堰を切ったようにリメイク企画が進行しているのが黒澤明監督作品です。テレビドラマ化されたものには『生きる』『天国と地獄』、そして映画化されたものには『椿三十郎』とこの『隠し砦の三悪人』があります。またアニメまで幅を広めると『七人の侍』も加えねばなりません。  なぜ今黒澤作品なのかは疑問ではありますが、ハリウッドだけではな…
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『椿三十郎』(2007)黒澤映画最大のキャラクター、椿三十郎を復活させたのは吉か凶か?

総合評価 74点  観に行ったのは12月6日、木曜日の初回上映時でした。いつもならば平日のこの時間だと僕の町の劇場では、客入りは半分以下が当たり前になっていて、座席指定はあるものの実際は「自由席」というのがいつもの風景なのですが、今日はなにやら違っています。  なんとチケットを買うのに列が出来ていて、30人以上並んでいるでは…
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『銀嶺の果て』(1947)黒澤明脚本にして、三船敏郎の記念すべき銀幕デビュー作品。

 黒澤明監督の脚本『山小屋の三悪人』をもとにして製作され、公開時にタイトルを改めて『銀嶺の果て』として公開された谷口千吉監督、三船敏郎主演による隠れた名作です。この作品で銀幕デビューを飾った三船敏郎の他を圧倒する個性は眩いばかりである。ギラギラした目と身体の魅力はこの作品でも発散されている。  東宝ニューフェイスの第一期生として最…
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『隠し砦の三悪人』(1958)一作で燃え尽きた、上原美佐の一世一代の大仕事。

 『隠し砦の三悪人』は黒澤明監督の手がけた作品の中でも、映画ファンには根強い人気を誇る作品ですが、黒澤フリークの間ではそれほど評価の高い作品ではありません。なぜなのでしょう。個人的には好きな作品でして、年一回は必ず見るのですが、その都度新しい発見があります。  ストーリー自体はのちに『スター・ウォーズ』でほぼそのまま使われたことか…
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黒澤明版シナリオ『暴走機関車』(1966)挫折した、男だけが登場する武骨な作品。

 とうとう映画化されることなく挫折してしまい、黒澤明監督のスランプ時代の幕開けとなってしまった忌まわしい企画、それがこの『暴走機関車』です。1985年になって、突然コンチャロフスキー監督によって、映画化され、ようやく日の目を見ました。  しかし出来上がった作品からは黒澤版のシナリオが本来持っていた、シンプルな暴走機関車の迫力と疾走…
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『八月の狂詩曲』(1991)果たして、これは駄作なのだろうか?そんなことはない。

  日本映画界、最後の巨匠、黒澤明監督の1991年の公開作品にして、初上映された時に、欧米の記者達に散々叩かれた後に、日本公開されたためか、「右へならえ」とばかりに、国内でも相当叩かれてしまった不幸な作品でもあります。もう一本だけでも、観客が望むような時代物を作る時間と機会、そして体力があれば、汚名挽回が出来ていたかもしれないと思う…
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『椿三十郎』(1962) 『用心棒』の続編という枠を打ち破って、真のヒーローとなった三十郎。

 黒澤明監督の1962年制作作品です。キャラクターの名前からも明らかな通り、大ヒット作『用心棒』の続編作品です。『用心棒』は、その後イタリアでも『荒野の用心棒』として、黒澤サイドの許可も無く丸ごとコピーされました。そのコピーが世界的な大ヒットとなった、といういわくつきの作品である『用心棒』の続編が、この『椿三十郎』です。  続編と…
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『用心棒』(1961) スーパーヒーロー三十郎誕生。それまでの時代劇を根底から覆した革命的作品。

 黒澤明監督、1961年製作作品であり、スーパー・ヒーロー「三十郎」という黒澤作品の中でも一二を争う人気キャラクターを生み出した作品でもあります。一般的に「チョンマゲ」をしていて日本刀が出てくると、すぐにその作品は時代劇というレッテルを貼られて、ある意味で現実味がなくとも許されてしまうという甘えの構造がまかり通る安易なものになります。た…
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『七人の侍』(1952) 歴代日本映画最高の活劇作品にして、黒澤時代劇の最高峰。ネタバレあり。

 黒澤明監督の1952年に公開された代表作です。制作費は通常の6倍(当時、時代劇一本の制作費の平均は二千万円強)、そして製作そのものに一年近くかかるという、当時としては異例尽くめの作品でした。全てを語りつくすことはとうてい不可能な映画であり、映画に必要な全ての要素が詰め込まれている奇跡の作品です。  しかも我々は監督と同じ日本人な…
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『荒木又右ヱ門 決闘鍵屋の辻』(1952) 黒澤明監督の脚本による『七人の侍』のテストパターン。

 森一生監督による1952年製作の作品ではありますが、スタッフ、キャストともに黒澤組が大勢参加して、黒澤明監督が脚本を書き上げた知る人ぞ知る時代劇の名作です。ほとんど知られていないのがとても口惜しい作品であり、のちの『七人の侍』や『蜘蛛巣城』への布石もしくは予行練習としても意味を持ってきます。  黒澤監督と、のちの『座頭市』シリー…
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『夢』(1990) 夢というモチーフを借りた、黒澤明監督の私小説的作品。ネタバレあり。

 オムニバス形式というよりも、自らの見た「夢」をモチーフにして短編八作品を自身の歴史として紡いでいった作品集であり、後期の黒澤監督らしい審美的な映像美で満たされた作品に仕上がっています。ただ単に八本の短編を羅列しただけではなく、自身の幼少期の思い出から青壮年期の葛藤、そして老境での達観までを描いています。  同じような「夢…
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『天国と地獄』(1963)黒澤明監督、現代劇の最高傑作にして完璧な作品。ネタバレあり。

 黒澤明監督の、というよりも歴代の日本映画の中でもジャンルを問わず、これぞ最高傑作と呼ぶに相応しい見事な出来栄えであり、彼の現代劇の中でも一二を争う素晴らしい作品です。昭和三十年代という時代に、警察の科学捜査と、知能犯かつ愉快犯との攻防という今でも通用するテーマを扱っていたことは斬新であるのみでなく、彼の持つ幅広い興味の対象と先見の明に…
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『醜聞』(1950)テーマが優れているにもかかわらず、何か違和感のある作品。ネタバレあり。

 黒澤明監督の1950年の作品ですが、本来の職場である東宝の労働争議のために、他社で撮らざるを得ず、大映や松竹で製作された作品のうちのひとつであり、これは松竹で撮られたものです。  東宝作品には無い違和感と、よそよそしさのある作品です。具体的にどこがとは、はっきりとは言えないのですが、何かが違うような気がしました。撮影スタッフが違…
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『雨あがる』(2000)後期・黒澤明監督作品を支えた小泉尭史監督のデビュー作品。ネタバレあり。

 2000年製作の小泉尭史監督デビュー作品。黒澤監督の残した遺稿から映画化された作品であり、黒澤監督が持っていた映像作りのエッセンスをそこかしこに見ることができます。とても美しい作品ではありますが、もっと小泉監督の個性を見てみたいという不満も感じる一本です。  黒澤監督の残した脚本からなるこの作品を見て、最初に感じたのは『どん底』…
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『酔いどれ天使』(1948) 黒澤明と三船敏郎。ついに2人が巡り合った記念すべき作品。ネタバレあり。

 黒澤明監督がようやく彼の「主演」俳優に巡り会うことのできた記念碑的な作品です。この作品の主役はあくまでも志村喬ですが、実質の主役は間違いなく三船敏郎です。彼の圧倒的な存在感を得て、ようやく黒澤作品の完成形を見ることになります。  ヤクザ同士での銃撃戦の後に、怪我の治療のために場末の診療所に駆け込んできた松永(三船敏郎)、そして彼…
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『野良犬』(1949) いわゆる刑事物の先駆けとなった、黒澤明監督の現代劇の傑作。ネタバレあり。

 オープニングの、狂犬病のような荒々しい息を吐く「犬」のアップ映像が、強烈なインパクトを持っていて、すぐさま映画世界に引き込まれていきます。映画では観客を集中させるために、出だしの5分間が最も肝心なので、このオープニングの映像は秀逸でした。  実際には、この犬はただ撮影所内を走り回らされただけだそうです。もっとも今ならば、それでも…
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