『花戦さ』(2017)野村萬斎主演の権力を手玉に取る時代劇。

 野村萬斎主演の時代劇だと映画館まで観に来たのは『のぼうの城』以来、五年ぶりくらいの鑑賞です。先週観に行った『LOGAN』『パトリオット・デイ』からの二日連続の鑑賞になります。

 時代劇というのは信長・秀吉・家康の誰かが出ないと盛り上がらないのだろうか。大河ドラマなども三人の周りにいた人たちを主役にしたりしていて、いわば小粒なスピンオフばかりになってしまい、どんどん地味になっております。

 こうなると誰か三人と同時期に存在し、活躍を見てきたというていで創作キャラクターを登場させる等の荒業を使う日が来るかもしれない。

 創作でない人物で主役を張れそうなのは前田利家や黒田官兵衛でしたが、もう大河でやりましたし、後は足利義昭、今川氏真、蜂須賀小六、石田三成、加藤清正、長曽我部元親くらいでしょうか。悲劇的な最期で終わるのは年末に相応しくはないでしょうから、上記で制作できそうなのは蜂須賀小六くらいでしょうか。

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 この映画では華道の名門、池坊専好を主役に持ってきて、信長・秀吉の天下人を対比させ、千利休と池坊の交友と秀吉への応対の対比をも描く。

 花を使った戦を仕掛けるという発想はユニークではあるが、難しい見せ方にならざるを得ない。そのためか、信長に仕掛ける華道と秀吉に仕掛ける華道でのエピソードの筋が似通ってくる。天下人二人の対応と器量の大きさを比較するのも見どころかもしれない。

 出演は野村萬斎(池坊専好)、市川猿之助(豊臣秀吉)、中井貴一(織田信長)、佐々木蔵之介(前田利家)、佐藤浩市(千利休)、高橋克実(吉右衛門)、和田正人(池坊専武)、森川葵( れん)、吉田栄作(石田三成)らが物語世界を埋めています。

 作品そのものには関係ないのでしょうが、高橋克実は月代いらずで自然なので笑ってしまいました。わざわざ“さかやき”部分は作るのでしょうか。それとも地肌なのだろうか。メイクさんは楽だったのでしょうか。

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 見ていて綺麗なのは池坊一門が監修しているであろう生け花(華道だと花は華なのでしょうか)の美しさと迫力でしょう。昇り竜と名付けられた信長への献上の松、利休の野点用に彩られた花々の楽しさ(花笑う)、秀吉を諫めるために盛られた花々や草木の見事さは大画面で見た方が良い。

 金ピカに飾り立てた秀吉の茶室に対比させるように質素に野の花を木々に盛った空間は細やかではあるが、生命力の強さと儚さを感じさせる見事な演出です。

 またそもそも専好の華道は死者を弔うためのものでもあることが冒頭の使者への手向けの花だと示される。何度も繰り返される弔いシーンはそれだけ無情に死んでいく者が多かったということでしょう。

 作品では応仁の乱以後の名もなき死者たち、親友でもある利休(実際に付き合いがあったかは知りません)、太閤秀吉の粛清の犠牲となった町人たち、秀吉の嫡男となるはずだった鶴丸に花が捧げられる。そして太閤秀吉を諫める武器としても花を使う。

 自分を笑った者はたとえ女子供であろうと首を刎ねて、河原に晒すという蛮行に走り出すとついに専好は立ち、秀吉に文化人らしく向かっていく。

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 信長が残した言葉とされる茶道と華道へ精進していくことを思い出す秀吉というフィクションで物語を締めるのは強引ではありますが、それほど無茶にはなっていない。

 殺された絵師の忘れ形見という設定の森川葵は三成の讒言と追手により捕縛されるが、毒草を口にして死んだと思われて、河原に捨てられる。実は仮死状態であったことが示されるが、強引に過ぎる。

 映像として興味深いのは戦国時代後半までは五重塔を残し、まだ廃墟であった京の街が徐々に活気を取り戻し、秀吉の治世では繁栄を謳歌してくる様子が描かれる。

 難点は野村萬斎の演技があまりにもオーバー過ぎてどうしても違和感があることです。歌舞伎陣が自然体で、今では邦画に欠かせない個性となった佐藤浩市の利休が素晴らしい。

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 『利休』で父親である三國連太郎も利休を演じており、1989年公開時には観に行ったので個人的にはとても興味深くスクリーンを眺めていました。

 傑作とは言い難い作品ですが、池坊一門だけではなく、表千家・裏千家・武者小路千家が製作に協力しているのをスタッフロールで見るだけでも貴重かもしれません。

 とにかくお花はとても綺麗ですし、三千家が監修したであろう茶器や庵の様子を見るだけでも価値があります。

総合評価 65点


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