『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』(1970)南海海鮮三種盛りの出来栄えは?

 この映画『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』のタイトルを映画館やレンタル屋さんで見たら、子供連れ以外は見向きもしないでしょう。

ゲゾラ…。イカ!?スルメかよ?じつはカミナリイカ。

ガニメ…。カニ!?ズワイかタラバか?じつはカルイシガ二。

カメーバ…。海亀!?食えるのか!?(バリ島で食った!しかもうまい。)


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 海の幸溢れる特撮映画って、どんなカオスが待ち受けているのだろうか。何だか伊東のハトヤの海鮮ツアーみたいなタイトルに特撮映画への期待感はない。

 しかしながら、大映や東映みたいなタイトルと雑すぎる登場怪獣のネーミングながら、じつは東宝の作品だったという真実に驚く。製作陣はリラックスしまくってます。

 ぼくはビデオレンタル時代になるまでこの作品は大映か東映製作だと勘違いしていましたが、パッケージ裏の解説を読んでいてはじめて東宝製作だと気づきました。

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 ゴジラ映画が迷走中ということもあり、いろんなのを出していたのですね。で、肝心の内容については良い意味で裏切られました。

 タイトルが酷いのと怪獣のネーミングが雑なのとが重なって、ずいぶんと誤解されてしまい、借りたり購入する際の選択肢から外れて、結果としてメカニコングが活躍する『キングコングの逆襲』と同じく、この佳作を見たこともない特撮ファンも多いでしょう。

 人体に侵入してくる寄生型エイリアンとの戦いを描いた今作品はもっと広く知られるべき名作だと思います。特撮シーンは南海の孤島を舞台にしているので緻密な都市ミニチュアをコツコツと組み上げる必要もなく、特撮スタッフのプレッシャーも予算的障害も大幅に減るでしょうし、本編に集中しやすかったのではないか。

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 音楽は東宝らしく伊福部昭ですので安定感があります。ただ使用されている楽曲はキンゴジに近いので“はて?”と思いますが、本人の作品ですので著作権問題は発生しない。原住民の祈祷シーンなんてそのまんまではと引っくり返りそうになります。

 原住民小林夕岐子の結婚式シーンで流れる音楽がポコポコしていた南国風(?)な感じが突然キンゴジ風のメインテーマに変わる展開が強引過ぎて楽しい。

 そしてこの映画、最大の難点はゲゾラ、ガニメ、カメーバという三種盛りの海鮮大怪獣が出るのになんと三匹一緒に格闘する場面はもちろん、登場するシーンが一つもないことです。

 前半大活躍していたゲゾラは人類に退治されてしまいますし、次に地球の生体を探して佐原健二に憑依したエイリアンは液体人間と被る。人間に憑依するエイリアンというとX-ファイルで何度も繰り返されるモチーフですので、現在のファンが見ても違和感なく見ることが出来るでしょう。

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 残りのガニメとカメーバの二匹の戦いも異星人のコントロールを無効化させるコウモリさんたちがワーワー言う中でダラダラやっていますし、佐原健二の体内及び精神世界で繰り広げられる意志対寄生エイリアンの戦いのインパクトの方が強く、どうもかすんでしまう。

 ただ三大怪獣による格闘はないのですが、オープニングで伊福部音楽が鳴り響くシーンではちょこっとだけ三種盛りそろい踏みの映像が挿入されます。ゲゾラは着ぐるみプラス操演も必要なので、三匹絡ませるのは難しかったのでしょう。

 一般に出回っている画像はスチール写真であり、本当にこれを観たことがあるかどうかは「格闘シーンをどう思った?」と聞いて、もし相手が「三体でも迫力がなかったね。」などと言おうものなら、すぐに「こいつ、観たことないな…」とバレるでしょう。

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 自分に入り込んだエイリアンと戦い、死を選ぶ産業スパイ(佐原健二)の葛藤が見所となり、ただの子供向け怪獣映画とは次元が違う趣を漂わせています。人体に侵入してくるエイリアンは昔から映画で取り上げられてきましたが、一番の理由はおそらくは経費削減でしょう。

 宇宙人に侵入された人類を演じれば良いわけですし、上から下まで人体ではないエイリアンをリアルに演じるのはかなり難しいはずである。お手本となるエイリアンが東京やニューヨーク、ロンドンなどであちこち歩いているわけではないので、すべて想像上だったり、「私は宇宙人に誘拐された!!」と宣言する危ない人の体験談などから推察して演じなければならない。

 その点、人体侵入型エイリアンならば、ちょっと他人に違和感を与える風変わりな人を演じれば、どことなく異化効果が出さえすれば、それは名演技として捉えられる。

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 よりリアルに見せようと思えば、一点だけ人間ならば考えられないような所作や特殊効果を入れて、その他はまったく普通の人たちと変わらないという設定にすれば、それは観客からは迫真の演技としてもてはやされるのかもしれない。

 今回、エイリアンに体内を侵略されても、最終的には人類として尊い決断をすることになる佐原健二は本編の演技によって、作品世界に深みを与えてくれました。土屋嘉男と久保明、そして高橋厚子が良い味を出していますが、佐原健二が演技面ではMVPでしょう。

 また個人的には原住民のサキ役を演じた綺麗な女優さんが気になりました。どこかで見たことがあったので、調べてみると名前は小林夕岐子という人で、円谷特撮の最高傑作と言えるウルトラセブンの第九話『アンドロイド0指令』にアンドロイド役で出ていたことが分かりました。謎が解けたのがなんだか嬉しい。綺麗な人は何年経っても覚えているものです。

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 この作品では本編が比較的上手く行っているのになぜ、ゴジラ映画では人間を描けなくなってしまったのだろうか。ゴジラはあくまでも人類にとっての理解不能で圧倒的な脅威で居続けてこそ価値があるのです。

 腑抜けのようにジェット・ジャガー、流星人間ゾーンやミニラの世話をしている場合ではなかったのです。ダイゴロウやゴリアスと共演しないだけマシだったのかもしれないが…。

 仕上がりは素晴らしいものの、なかなか大きなレンタル屋さんに行かないと在庫を置いていないでしょうが、あれば即借りしましょう。

総合評価 70点





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