『戦闘機対戦車』(1973)上映時間70分ちょっとの中編ですが、良質のスリリングな戦争映画です!

 戦争映画の宣伝で話題になるのは製作費の大きさや出演する大スターたち、そして迫力のあるスペクタクル・シーンであり、中身が問われることはあまりない。

 戦争の記憶が鮮明に残っている時期であれば、悲惨さや厭戦気分を色濃く伝える作品が出来上がるが、一時のアメリカのように圧倒的に優位な立場に立っているときの作品は命の重さなどまったく考えていないマンガのような戦争映画が出来上がる。

 そんななか、たとえ低予算で短い上映時間でも観客をハラハラさせてくれる戦争映画を作ることが出来るのを証明してくれるのがこの『戦闘機対戦車』でしょう。

 もともとテレビ映画ということもあり、上映時間は80分にも満たない中編映画です。テレビ局にとっては編集の手間も掛からないし、CMも入れやすいという一石二鳥のプログラムです。

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 そんな短い尺でもこれほどスリリングな映画に仕立て上げる編集の巧みさを味わって欲しい。はっきり言うと連合国軍の払い下げに違いないオンボロな戦車をペンキで塗りたくって鉤十字を入れて、無理矢理にドイツ軍の戦車だと言い張る強引さにひっくり返りそうになります。

 が、そこは低予算なのだから野暮を言わないようにしたい。見る側も目くじらを立てずにナチの戦車なのだと言い聞かせて、70分間を有意義に過ごしましょう。お金を掛けずともアイデア一発で楽しめる。

 出てくるのは戦闘機が2機、戦車が1台、装甲車両が数台、英国軍戦車という設定の戦車(装甲車)が1台。出演者も連合国軍パイロット役が2人、ナチス側将軍と戦車クルーが4人、その他を合わせても10人にも満たないのにしっかりと戦争映画に仕上がっています。

 もちろん派手な銃撃戦はなく、大量の爆弾が飛び交うわけもない。ここは設定が絶妙でドイツ軍が撤退し、連合国軍の主力も他の戦線に移動してしまった時期で、残存のドイツ軍の掃討作戦が進んでいるという状況下なので、そもそも大軍が存在していないという時期のお話なのです。

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 掃討作戦中に部隊から逸れたドイツ軍戦車のまさかの攻撃により一機の連合軍戦闘機(昔、小さいときに作ったプラモに似ている!)が撃墜されてしまう。残る一機もパラシュートで降下した兵士を救うために砂漠に着陸する。

 ここからラストまで延々と続くのが飛べない戦闘機とアフリカ戦線に取り残されたドイツ戦車の追いかけっこです。これが素晴らしく、飛べないわけですから本来のスピードはまったく出ないし、戦闘機の優位性もない中でも、簡単に降伏することなく、ひたすらにモグラ叩きをしているようなコントのような楽しさで、飽きることはない。

 戦争の狂気もしっかりと描かれていて、飛んでいるときに装甲車両を爆撃しているうちは面白半分だったのが、地上戦に入り、地べたを這いつくばって逃げるうちに自分たちが爆撃したドイツ軍の亡骸に遭遇する。

 一滴の水を求めて略奪しようとするも何一つ得ることの出来なかったアメリカ軍兵士たちは死んだドイツ兵に笑われているようにも見える。

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 極限状態における上官殺害という重いテーマも提示される。このまま進んで犬死にするか、降服して生き長らえるかは非常に難しい問題です。

 師団は自分たちを見棄てて、すでに撤退してしまい、助けに来ることはない状況でそれでも徹底抗戦を主張する無能な指揮官をどこまで支え続けるべきなのか。

 玉砕は美談なのか、それとも無駄死になのか。結論は出ませんし、映画でも狂気の指揮官が無慈悲な対応を繰り返すうちについに自分が的になり、殺害されてしまう。残された兵たちは人間に戻り、水を分け合うシーンで映画は閉じられる。これを70分で見せた脚本と演出の勝利なのでしょう。

総合評価 70点


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