『シングル・マン』(1976)この歌の良さが、いつかきっと君にもわかってもらえるさ。いつかそんな日になる。

 はじめてRCサクセションのアルバム『シングル・マン』に収録されている『夜の散歩をしないかね』『スロー・バラード』を聴いたのは当時のニュー・アルバム『BLUE』をラジオで特集していた番組で、『ガガガガガガ』『多摩蘭坂』などとともにカセットテープに録音し、何度も聴いていました。

 RCサクセションはバンドとしては『ロックンロール・ショー』だったか、シングル『Summer Tour』のプロモーションで出た人気歌番組『夜のヒットスタジオ』でキヨシローが演奏中、テレビカメラに噛んでいたガムをくっつけるという事件(最近じゃ、もっと刑法上ヤバいことがちょくちょく起こるので、こんなのはイタズラだ!)が起こり、昭和のバカな小学生だったぼくは単純に「こわそうな兄ちゃんだな…」と恐れ、彼らを聴いているファン層をも恐れていました。

 それから一年が経ち、春休みの頃に忌野清志郎&坂本龍一で『い・け・な・いルージュマジック』(ひょうきん族の紳助&さんまのお化粧マジックもインパクトが強かった!)が大ヒットし、夏には『Summer Tour』がベストテンに入り、チャボたちとスタジオで演奏していたのを今でも覚えています。

そしてまた冬が来た頃にこたつを囲んでいた親戚のお兄ちゃんたち(バンドを組んでいました)からアルバム『BEAT POPS』を何度も聴かされ、B面ラストの『ハイウェイのお月様』がいかに最高のナンバーだと言うのをさんざん聞かされていました。

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 ぼくも徐々に好きになっていた頃にまたRCサクセションのアルバム特集があり、『BLUE』『シングル・マン』などからセレクトされたナンバーが聴いたことのないメロディとともに流れてきました。

 FMラジオからは上記のアルバムからだけではなく、『君かわいいね』『SWEET SOUL MUSIC』『窓の外は雪』も掛かっていたので、今思えば、かなりマニアックな選曲だったと理解できます。

 ラジオ(残念ながら、カーラジオではない。)から流れてきた『スローバラード』が実は一度は廃盤になったものの有志の力で再発にこぎつけられたのだと知ったのもそのラジオからでした。だからといって当時はお金がない中学生でしたので、アルバムを手に入れたのは高校生になってからでした。

 中学生でビートルズ教の熱烈信者となり、レッド・ツェッペリン、キング・クリムゾン、ポリス、プリンス、YMO、RCサクセションにポセイドンのように目覚めてしまったぼくのお小遣いの多くはビートルズがカバーした『バッド・ボーイ』に出て来るバッド・リトル・キッズのようにレコードへと消えて行きました。

 高校3年生までにはかなりコレクションを増やしていきましたが、田舎町では上記のバンドのアルバム群を揃えるのは難しく(店に注文するという発想がなく、店に在庫があるものから選んでいました)、集め終わるまでに大学二回生くらいまでかかりました。

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 が、ようやく揃えた満足感もつかの間に時代はバブル絶頂期から崩壊期を迎え、オーディオ・フォーマットもレコードからCDに変わっていきます。RCサクセションに関しては『キング・オブ・ライヴ』『EPLP2』『フィール・ソー・バッド』『ハートのエース』あたりからは発売日に買っていました。

 地元で行われたライヴにも通うようになり、RCサクセション名義では二回、忌野清志郎率いるブロック・ヘッズ名義で一度見に行って来ました。1985〜1986年のライヴでは古い曲が何曲かセレクトされていて、『シングル・マン』からは『ファンからの贈り物』『ヒッピーに捧ぐ』『スロー・バラード』がステージで披露されていて、ライヴ盤『ティアーズ・オブ・クラウン』にも『ファンからの贈り物』以外は収録されていました。

 大好きなアルバムからの曲が演奏されるのは嬉しく、レコードとは違う迫力とアレンジで迫ってくる生演奏に大満足でした。アナログ時代、A面は『ファンからの贈り物』『大きな春子ちゃん』『ぼくはぼくの為に』『やさしさ』『レコーディング・マン』『夜の散歩をしないかね』でした。A面ではブラス・ロック全開の『ファンからの贈り物』と夜のバーでピアノで奏でられるような深い味がある『夜の散歩をしないかね』が秀逸です。このナンバーでのキヨシローの歌声はいつにも増して粘っこく、マニア以外を拒絶するような個性的な演奏です。

 B面は『ヒッピーに捧ぐ』『うわの空』『冷たくした訳は』『甲州街道はもう秋なのさ』『スロー・バラード』となっていて、収録時間は40分弱です。つまり、ファンの方ならば同意してくれると思いますが、この作品はB面の方が充実していて、ぼくの持っていたLPレコードもB面の方が摩耗していきました。今でいうヘビー・ローテーションですね。

 一番の聴きものは『ヒッピーに捧ぐ』で、当時のサブマネージャーだったオオシロくんという方が突然死したことに対する曲だとか、ヒッピーというあだ名の知りあいのことを歌ったのだとか、『日隈くんの自転車のうしろに乗りなよ』にも出てくる日隈権座のことを歌ったのだとかいろいろとあります。

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 キヨシローの古くからの友人だった日隈権座が電車に飛び込んで自殺したのはたしか1977年なので、アルバム収録の時期にはまだ存命です。日隈君を歌ったのは『きみはそのうち死ぬだろう』だったのを本(なんだったか忘れてしまいました)で読んだ記憶があります。いずれにせよ、かなり近い人が絶望的な時代に亡くなっているわけですから、キヨシローが受けた精神的なダメージは大きかったと予想できます。

 切ない響きが醸し出す雰囲気で情景が思い浮かぶようなアコースティックな楽曲の構成が美しく、クライマックスのコーラスと叫びというよりは嗚咽のようなキヨシローのシャウトと演奏の盛り上げ方が素晴らしく、何度でも新鮮な気持ちで聴くことが出来ます。

 『甲州街道はもう秋なのさ』でのゆったりと時が撫ぜて行くような揺らぎといら立ちは独特で、とてもローカルなタイトルが付けられた曲にもかかわらず、ウッドベースの余韻がインド音楽を聴いているような不思議な感覚を味わせてくれます。『スローバラード』の前に配置されるこの曲があってこそ、ラストがより際立ってきます。

 お馴染みの『スローバラード』はレコードでもライヴでも何度も聴いた曲ですが、綺麗な曲でこれも情景が目に浮かんでくるスナップショットのような出来栄えです。そうです。ここに収録されている曲からはすべてリアルな生活感とそれらを昇華して素晴らしい歌を歌ったキヨシローの苦悩が見て取れる。売れない頃から、すでに完璧なアーティストになっていたのでしょう。ただ毒が多い彼らを受け入れる土壌は高度経済成長期の日本にはなかったのでしょう。

 最近のアーティストは新作CDにコスパしか気にしない輩を忖度する無慈悲なレコード会社の圧力からか、無理矢理に80分近くまで詰め込みますが、人間が音楽を楽しく聴くには80分は長過ぎる。

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 ファンならば、出来が良い曲だけで満足するでしょうし、昔のレコード時代の感覚では毎回2枚組を出さなければ行けないような出血大サービスをやる必要性はない。アーティストへの忠誠を示すファンからの最大の贈り物はレコードセールスとライヴでの集客人数でしょう。

 名曲揃いのアルバムはカセットテープ→レコード→CD→SHM-CDと、次々にメディアが時代に合わせて変更されていくたびにその都度買い換えてきています。そんな話をするとだいたい「同じのをまた買うんですか?物好きですね」と呆れられます。

 ちょこちょこ音のバランスやニュアンスが変わっていくので楽しいのですが、なかなかわかってもらえません。いつかきみにもわかってもらえるさ。いつかそんな日になる。ぼくはなにもまちがっちゃいない。

 あれこれ書いていたのは通勤時の電車待ち時間でしたが、ぼくが立っている三両ほど前に大声で中国語をしゃべる若い男があちこちにツバを吐き、マスクも付けずにゴホゴホと咳をしながら、周りの人を威圧している様子を見かけました。

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 本当に中国人なのか、ヘイト狙いの異常者なのか判別はつきませんが、この時期に近寄りたいとは思わない人が大半なので、周りの人は皆出来る限りこの輩から離れていきました。早く、この騒ぎが終息してほしいものです。

 最後になりますが、来る3月5日にようやくシングル『つ・き・あ・い・た・い』のB面に収録され、のちにキヨシローに無断でレコード会社が出したベスト盤『EPLP2』にも収録されていた名曲『窓の外は雪』がCD化されます。タイトルは『COMPLETE EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~ 』という長ったらしい題名ですが、“EPLP”名称を使ってくれているのは古いファンとしては嬉しい。

 ついでに『元気が出る音頭』とミニアルバム『ノーティ・ボーイ』も一緒にリリースして欲しいものです。特典として『笑っていいとも』で使用されたジングル「おじさんは怒っているんだぞ~♪」もお願いしたい。

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シングル・マン+4 - RCサクセション


BLUE+2 - RCサクセション, 忌野清志郎, RCサクセション, G忌麗, 仲井戸麗市, 奥津光洋

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