『怪異宇都宮釣天井』(1956)作品の存在はかなり前から知っていたものの、なかなか見ることが出来なかった作品。

 しかしまあ、オドロオドロしいタイトルです。『怪異宇都宮釣天井』というのは大袈裟すぎる付け方で、”怪異”に当てはまりそうなのは終盤に城普請で暗殺された岬洋二が仇である江川の屋敷に化けて出るところくらいで、他のシーンのほとんどはありがちな時代劇です。

 何度かメインどころの出演者が斬り結ぶ場面が出てくるのですが、どちらがどちらなのかがモノクロのためなのか、それとも演出の問題なのか、演者の識別が付きにくいのが難点です。

 斬り結んで、川に落ちたのはどっちだったのだろうかとか、さっき高所移動する滑車(どう見ても20m以上は高さがある。)から落ちたばかりなのになぜすぐ翌日くらいに一対多数の斬り合いを涼しい顔をして出来るのだろうとか不思議ではあります。

 上映時間80分間のうち、ほとんどのシーンは普通の時代劇であり、どこに"怪異"があるのか分かりかねますし、中川信夫監督って、ゲテモノばかりではなく、普通の映画も撮れるのだなあと妙な感慨があります。

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 それでも最後に奇天烈な場面を連打してくるのは悪役プロレスラーが中盤まではベテランらしい良いレスリングをするのに突然時間を見計らって、凶器攻撃に走って、場外乱闘で反則負けを繰り返すのを毎回見ているようで、なんだか哀しみを感じさせます。

 本当に無茶苦茶な展開の速さで、さっきまで本田正純一味の陰謀とその証拠を暴こうとする隠密同心小笠原らとの戦いを描いていたはずですが、突然古井戸から幽霊が登場して、ぬるい感じの怪奇物に変わってしまう。

 三島は悪だくみで城普請の職人たちを毒殺し、棟梁の岬が恨みとともに突き落とされたお城の井戸からではなく、なぜか三島の屋敷の井戸から幽霊としてオドロオドロしく登場してきます。しかしなぜよその家の井戸から這い出てくるのかが分かりません。繋がっているのかなあ。

 その前には自分の屋敷の鳥かごで飼っていた小鳥を襲って食べた猫(これも自分の飼い猫)を分捕まえて井戸に放り込む場面もあります。井戸に落とされる際に「ふにゃあ~!」と猫が鳴きながら、突き落とされます。昔は井戸と言うのはゴミ箱代わりだったのでしょうか。

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 クライマックスとなる釣天井落下シーンは『オペラの怪人』を彷彿とさせますが、なにぶんセットの特撮部分があまりお金が掛かっている様子はなく、細かいカット割り(天井裏で仕掛けを稼働させる滑車が回るカットの方が長い!)と編集であっという間に短すぎるスペクタクルは終わってしまう。

 つまり、もしこの瞬間に目をつぶっていたら、急に城内で斬り合いが始まり、訳が分からなくなりますので、夜中に見る場合にはここだけは目を開けていましょう。予算が少ないためか、白黒の強みで色々と隠している感は否めない。

 主な出演者は以下の通りですが、かなり昔の映画のため、若い人にはなじみない名前ばかりかもしれません。小笠原竜三郎(利根)、筑紫あけみ(志乃)、藤木の実(お藤)、杉山弘太郎(与七)、岬洋二(幽霊の藤右衛門)、丹波哲郎(用心棒 典膳)、三島雅夫(越後屋みたいな鍵屋)、江見渉(本多正純)、江川宇礼雄(家老の河村)、沼田曜一(家光)というラインナップです。

 丹波哲郎の悪役ぶりはさすがの雰囲気で良いなあと感じましたし、沼田は黒澤明映画『素晴らしき日曜日』では主役を張っていましたが、中川映画では『地獄』でのメフィストフェレスのような役をしています。今回の将軍様役というのは彼にとっては良い役のほうでしょう。

 もっとも役名では家光でありましたが、史実では宇都宮釣天井事件の頃の将軍は二代目将軍秀忠でしたので、歴史を脚色しているフィクションでもあります。この映画を見て、日本史の試験に宇都宮釣天井事件の首謀者と狙われた将軍の名前は誰かという設問が出た場合、正答としては首謀者は本田正純で映画と同じですが、将軍名を家光と書いてしまうと減点対象になってしまいますね。

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 もともとこの映画を知ったきっかけは雑誌か何かで中川信夫監督についての記述があり、フィルモグラフィのなかにこの『怪異宇都宮釣天井』を見つけた時のタイトルのインパクトがあまりにも大きく、いつか見てみたいと思っていたのが始まりです、当時、隆盛期を迎えつつあったビデオレンタル屋さんを探し回り、ついに見つけられなかった作品でした。

 もっとも探してもないはずで、実はビデオ時代にはそもそもリリースされていませんでした。ようやくDVD化されているものの売値は最安が5000円超えで、新品だと25000円となっていて、さすがに手を出せませんでした。

 何気なく、YouTubeを見ているときに『怪異宇都宮釣天井』と打ち込んで見たところ、おそらく海外マニアと思われる方が全編動画をスペイン語字幕付きでアップされていたので、念願の鑑賞が30年越しに叶いました。

 もうちょっと安かったら、普通に購入を考えますが、20000円は高いなあ。ヤフオクでLPレコードを5~10枚くらい落札できそうですし、CDならもっと買えそうです。

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総合評価 55点

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