『宇宙大怪獣ドゴラ』(1964)東宝最後の単体物怪獣特撮映画。実験的な意欲作だったが、興行的には失敗したそうな…。

 1964年に『モスラ』(https://yojimbonoyoieiga.at.webry.info/200608/article_17.html)と『三大怪獣地球最大の決戦』(https://yojimbonoyoieiga.at.webry.info/200609/article_8.html)の合い間に公開された『宇宙大怪獣ドゴラ』は実は単体でタイトルになった怪獣としては東宝最後の作品となります。丘美丈二郎『スペース・モンス』という原作が存在する特撮映画には珍しい作品でもあります。

 いわゆる対戦物としては平成、令和と時代が変わっても続いていきますし、すでに登場していた怪獣ならば、ゴジラが単体で出演したものが幾つもあります。そういった意味では東宝史上では重要な位置づけを与えられた作品であることは間違いない。

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 またこれをキッカケに単体物が製作されなくなったことにも意味があるのでしょう。今回のドゴラはその後、どの東宝作品にも登場することなく、忘れ去られようとしています。まずもって、その造形が特異過ぎて、当時の特撮技術では対戦相手と格闘し辛かったのだろうというのは想像できます。

 ドロドロな状態になっているのが容易に想像できるはずのヘドラの最終形態の造形が妥協の産物(個人的には深夜のゴーゴーハウスに侵入してくるヘドラが好きですし、もっとも印象的でした)なのでしょう。

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 ヘドロとアメーバ(クラゲかな?)は双方特撮の着ぐるみで制作するならば、似たような形状になるでしょうから、ドゴラの時の苦しみを活かしたのがヘドラだったのかもしれません。

 アメーバをモチーフにした着ぐるみも見たかった気がします。結果的には操演とオプティカル合成、重力に左右されないという設定から選択された水中撮影を駆使しながら、特異なキャラクターを動かして行きました。

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 『宇宙大怪獣ドゴラ』で興味深いのはまずは本筋であるドゴラが炭素を求めて、各都市に出現して暴れまわるのに対して地球科学を駆使した防衛側がどのように対処していくのかという未知の生物対人類のテーマが太い線として貫かれています。

 ただこれだけでは息苦しい展開になるのを避けるためか、ダイアモンドをめぐる夏木陽介やアメリカ人俳優ダン・ユマのとの共闘や若林映子が所属するダイヤ強奪団との捕物をコミカルに描くことで緊張と弛緩が交互にやってきて、観客を飽きさせない工夫がされています。

 本編部分がしっかりしているかと言われれば、微妙としか言いようがないお話がガードとして用意されていますが、ここがよりしっかりとドラマになっていれば、より評価されたかもしれません。

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 特撮技術がしっかりと活かされている中盤までと比較して、後半の盛り上がりに欠けるという致命的な欠陥はあります。舞台が九州に移っていくことで、一気にローカル色が強くなるのも難点です。

 それでも真っ黒な煙をモクモクと上げる工場の石炭置き場に大量に野ざらしで積まれている石炭を意思を持ち、真っ黒な雲のようなドゴラが吸い上げていく様子を俯瞰で捉えた映像の臨場感と緊迫感が素晴らしい。

 夜間に再度現われて、大きな鉄橋を破壊しながら先ほどと同じように石炭をどん欲に吸い上げて喰らうもののいったんは自衛隊の攻撃で追い払われていく。その刺激で再び姿を変えて、より巨大化する様子は薄気味悪いが、見どころはこの辺くらいまでだろうか。

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 意外な弱点として、地蜂という蜂の毒に弱いという真夏の山登りみたいな弱みが分かり、一気に退治モードに突入していきます。動きが付けにくい造型のために夜間戦闘シーンが多かったが、最終的には空でフラフラ漂うドゴラを軍用機とヘリが蜂毒スプレーを噴霧し、地上からも噴霧車で倒しに行くクライマックスに持って行きます。

 しかしこれが一方的にドゴラがボコボコにやられてしまうだけで、なんともイマイチで呆気なく抵抗もないままに石になってしまう結末だったので、観客のテンションがダダ下がりになって終わってしまいます。

 個人的には伊福部昭が付けた音楽が大好きで、ドゴラ登場を告げる生物としての鼓動音、重力を無視するような電磁波のような音、伊福部独特の旋律などがミックスされた音響が素晴らしく、とても印象的です。

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 こういう実験的な作品がヒットしていたら、東宝や円谷プロ特撮の流れも変わっていたかもしれませんし、東宝と円谷プロが変われば、他社の企画も安易にヒーローや怪獣に頼らない見応えがある作風がメインにならないまでも大人向けに進化したのかもしれないと思うと、少々残念な思いがあります。

 特撮パート以外の本編では夏木陽介とダン・ユマが途中からバディ物のようにともに戦い、強奪団を追い詰めていきますが、この映画の美女二人(藤山陽子と若林映子)のうち、ファム・ファタールの若林はダイアモンドを奪い損ねて、不二子ちゃんのようには上手く行かずに銃殺されてしまいます。

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 なかなかテレビで放送されず、小学生の頃、放送を見たのは一回だけで、それまでは怪獣雑誌に掲載されたスチール写真でイメージするしかありませんでした。どんな動きをするのだろうかとか体長が無限大というのはどういうことなのだろうかと子供なりに想像しました。

 予告編だけしか作られず、その後にそのフィルムまで破棄されてしまった幻の作品『大群獣ネズラ』(https://yojimbonoyoieiga.at.webry.info/201609/article_8.html)とは違い、しっかりと公開まで導いてくれただけでも東宝と円谷プロには感謝したい思いです。

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 ビデオ時代にレンタルがお店に並んだ時はウキウキしながら借りに行きましたし、DVD、CSと媒体が変わっても、一度は目を通してきた作品です。現在の映像処理技術があれば、よりリアルに素晴らしい特撮映画を撮れそうですので、東宝には21世紀版の製作をお願いしたい。

 まあ、実際問題として単体物を再び製作するには東宝のゴーサインが必要でしょうから、かなり難しいでしょうし、配給側からすれば、一度失敗したもので再度失敗する訳にもいかないので、ゴジラ映画の対戦相手として出演できれば十分でしょう。

総合評価 72点

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この記事へのコメント

さすらいの映画人
2019年09月26日 21:41
用心棒さんこんばんは。この映画、円谷プロではなく東宝の作品じゃないのでしょうか?この映画、ポスターや怪獣図鑑で見たものと違ってましたが、独特の怪獣として楽しめましたね。不定形もしくは恐竜・動物・昆虫型とは違った形の怪獣は東宝よりも円谷プロの方に受け継がれたような気がします。バルンガ、ブルトン、アンノン、プリズ魔・・・。
用心棒
2019年09月27日 00:39
こんばんは!

>東宝
円谷英二が関わっている意味で円谷の名前を出していましたが、紛らわしいので東宝に戻しておきますねwww

この作品って、とても影が薄いのですが、何とも言えないトボけた本編と感情移入しにくいが変態を繰り返すドゴラの印象もあり、思い出深い作品です。

>バルンガ
けっこうこの時のアイデアがバルンガに活かされているような気がします。ブルトンの特異な形状は子供心に未知なる恐怖を感じましたし、ダダイズムの影響を受けているだろうダダなどにも知性を感じました。

ではまた!