『七つの会議』(2019)池井戸潤原作だが、堺雅人と野村萬斎が入れ替わったら、半沢直樹じゃないか?

 なんだか急にお肉を食べたくなったので、『七つの会議』を観る前にステーキを食べに行きました。まあ、昔に比べると食べられる量も減っていますし、食べたいお肉もヒレステーキなので、肉好きというわけではないのでしょう。

 ほとんど映画化作品の情報を入れずに観るのが普通ですが、さすがに半沢直樹シリーズで有名な池井戸潤作品でしたので、期待度はグンと上がってしまいます。

 今回の主役を張るのは野村萬斎で、共演に香川照之、及川光博、片岡愛之助、音尾琢真、藤森慎吾、朝倉あき、岡田浩暉、木下ほうか、吉田羊、土屋太鳳、小泉孝太郎、溝端淳平、春風亭昇太、立川談春、勝村政信、世良公則、鹿賀丈史、橋爪功、そして北大路欣也を揃えています。

 キャストが出てきてびっくりしましたが、野村萬斎と堺雅人と入れ替えると、ほぼ半沢直樹になってしまいます。これはもし堺雅人のスケジュールを押さえていたら、『銀翼のイカロス』になっていた可能性が高いということです。もったいないなあ。

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 会場は残念ながらババアばかりでうるさくて仕方がない。社会性がない者は公共の場に来て欲しくない。内容は会社で苦悩の年間を過ごし、定年まで社畜としてやり過ごせばなんとか生きていける男たちのお話なので、内容と客層がマッチングしているようには思えない。

 サラリーマン生活を長年送っていると、圧倒的な実績を積み、誰もかなわない功績を上げ、社内で権力を持つようになった人がつまらないことや直属の上司の失脚、トカゲの尻尾切りなどであっという間に存在感がなくなったり、閑職に飛ばされることがあります。

 絶頂期を迎え、すべてを思い通りに采配していた人がいつの間にか会議の席から消えてしまい、数ヶ月後には会社からいなくなっていることも一度や二度ではない。

 僕らがペーペーの頃に威張りくさっていた上司が気付いたら、部下になっていたこともあります。反対にぼくが若手の頃にブイブイいわせていた頃にニコニコしながら、追従をしていた同僚や部下、取引先もいざ、失脚した時には手のひらを返したようにまったく無視してきたり、あからさまに下に見る輩も出てきました。

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 一方で、そんな時でも変わらずに親交を続けてくれる人もいます。そういう人とは今でも深い繋がりがあります。つまり、会社生活では良い時に驕らずに威張らず、悪い時に絶望しないことが生き残る為に必要なのかも知れません。一寸先は闇ということを肝に銘じて日々の仕事に当たれば、慎重に事に当たるようになるのではないか。

 この作品のタイトルは『七つの会議』です。一つ一つの会議で権力を持ち、他者を威圧していた者も局面が変われば、またたく間に落ちぶれる。目まぐるしく攻守は変わり、忖度しながら会社を生き抜いてきた者も次の局面では左遷の憂き目に遭う。逃げ延びる者もいますが、裏では陰口をたたかれるのでしょう。

 クライマックスは子会社を呼び出して、大株主の大会社の経営者が出席する御前会議での不正の報告と会議の顛末でしょう。大会社であっても、会社経営の論理の前にはコンプライアンスなどは無視されていくさまは異様に映ります。

 しかしながら、バレなければ、それは真実であっても、明るみになった“事実”ではないという会社の対応はある意味、日本株式会社の現実なのかもしれません。

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 社内ルールやコンプライアンスはどの会社にも存在しますが、それが適応されるのは下っ端だけであり、経営者やオーナーには適応されません。いわゆるダブルスタンダードです。

 社内ゲームの中で勝ち負けが決まっていきますが、コップの中での争いに過ぎず、しょせん狭い世界の話でしかない。組織ぐるみの製品品質不正を隠蔽し続ける会社は社内ではそれで完結したつもりでも、世間に内情を晒されると狭いルールはデフォルトされ、世間の雰囲気で裁かれる。

 会社はそれでも、トカゲの尻尾切りで事態の幕引きを図ります。会社の中では最高権力者に思えた社長も子会社であれば、系列の最上部に位置する会社の経営者から見れば、単なる駒に過ぎない。己の身が危うくなれば、迷うことなく処分されてしまう。

 それでも不正はなくならない。主人公も全くの清廉潔白という訳ではなく、皆がよごれているのは真実味があります。観終わっても、そこに爽快感はまるでありませんが、人生は単純ではないので良しとしましょう。

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 僕らが観に来たのは映画であり、無料で見られるテレビ番組ではないのでビターテイストも大いにアリです。作品では厳しいサラリーマン生活が描かれ、日陰者生活が数十年続くかつてのエリートを主役に物語を進めていく。

 野村萬斎は少々オーバーアクション気味であり、どこか白けてしまう部分はありますか、脚本は優れていますし、テンポ良く、進んでいきますので、二時間以上を一気に走り抜けていきます。

 終わってみれば、退屈することなく、上映が終了します。少々、端折り過ぎのシーンもなきにあらずではありますが、すべてを丁寧に2時間で描き切れるわけではないので、仕方がない。

 しかし、観終わってからの半沢直樹感は消えませんでした。それほどあのドラマは五年以上は経っても、消えないインパクトがあったということなのでしょう。

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 個人的には最後の会議、つまり御前会議に参加する大会社の最高責任者役の北大路欣也が登場したときには彼が水戸のご老公のように裁きを下し、会社の不正をただすものと思いましたが、「議事録は残っていない。」と嘯き、まさかの保身を謀ったシーンに驚きました。どこの会社でもありそうで、日本の会社の闇を見る思いでした。

 悪役の良い面構えを見せてもらいました。まあ、今でこそ、北大路欣也は大御所役が多いですが、昔は『仁義なき戦い』などで組長や鉄砲玉を演じていましたので、久しぶりに意外な役柄で楽しませてもらいました。

総合評価 78点


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