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zoom RSS 『ゲティ家の身代金』(2018)実話に基づく富豪の肝っ玉の小ささ。

<<   作成日時 : 2018/05/28 22:20   >>

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 四十代も後半に差し掛かり、だんだん草食動物化が進み、主なたんぱく源も魚介料理が増え、お肉はあまり食べなくなってきています。

 食べるにしても、良いお肉をふるさと納税で取り寄せしたり、少量のみで満足できるようになっていますが、たまたま焼肉屋さんの前を通った時に中から立ち込めてきた煙とジュージューと音を立てて、食欲を掻き立てる二つが重なり、気がつくとお店に入っていました。

 流行っているお店のようで、僕が席に案内されてしばらくすると店内は満員になり、あちこちからジュージュー音と香りがいっぱいになり、運ばれてきたお肉をドンドン焼いて、次々に口に運んで行きました。

 そんなこんなで満腹になりながら、今日のお目当ての映画『ゲティ家の身代金』の下書きを書いています。誘拐自体は映画の素材になることも多く、それほど珍しくはない。

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 犯罪者への共感を持つようになるパティ・ハーストのケース、本人たちに誘拐の意図があるかどうかも定かではないタモリ主演の『キッドナップ・ブルース』のようなケース、企業社長を追い詰める『天国と地獄』のようなケースもあります。

 今回はお金を持っている血縁者がドケチすぎて、支払いを拒むというケースを扱っています。一般庶民の感覚では支払いを拒む人がいれば、ケチだとか冷たいとか非難する人が多いのでしょうが、長い間音信不通だったり、仲が悪い血縁者が急に自分の都合だけで親戚面して身代金を出してくれと言われても、右から左に金を動かせるだろうか。

 皆が皆、ホームドラマのような善人ではなく、厄介者で爪弾きにされている者もいるだろう。数年前に親が生活保護を受けているのに売れっ子のクセに援助をしていないとして、売れっ子芸能人がマスコミで叩かれていましたが、日頃仲が悪い親子なら、意思疎通もないでしょうし、頭ごなしに批判するのもどうなのだろうか。

 家庭には各々事情があり、骨肉の争いもあるでしょう。この芸能人の家族関係がどうだったのかは知りません。日頃から行き来していて仲も良く、援助もしていないのならば、叩かれて然るべきでしょうが、離婚していたり、音信不通だったりしたならば、責められるのはおかしい。

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 ではゲティ家の場合はどうだろう。イギリス在住の富豪ゲティ氏(クリストファー・プラマー)は当時、世界一のお金持ちだったが、誘拐された孫の身代金1700万ドルをケチり、自分には14人の孫がいるので今回お金を払ってしまうと模倣犯が出てくるから拒否するとして一切かかわろうとしない。案の定ですね。自分の都合で出て行った義理の娘と孫にかなり冷たい。

 ただ彼女たちを手助けするべく交渉役として元CIAのマーク・ウォールバーグを派遣する。彼は雇い主であるゲティ氏の指示に従いながら母親(ミシェル・ウィリアムズ)と解放交渉に当たるが、お金を出そうとしない大富豪に次第に軽蔑の念を強くしていく。

 すぐに身代金を出すだろうとタカをくくっていた誘拐犯側も辟易し、ついにマフィアに彼を売り飛ばしてしまう。素人ではないマフィアは本気であることを示すため、孫の耳をそぎ落とし、会社に送り付ける。

 このシーンはかなり強烈で、めちゃくちゃ丁寧に耳削ぎの舞台を整え、ヤクザの手下に手足を押さえさせ、クロロホルムを嗅がせ、耳周りの髪の毛を刈り取り、耳をゆっくりと切り取っていきます。しかもそれをすべて隠さずに見せ続ける。

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 ようやく事の重大さに気づいたゲティ氏はそれでも身代金が税控除になるかならないかでゴチャゴチャ言い出す始末で、盗品の絵画には150万ドルでも平気で出すクセに孫の身代金を値切り続ける。

 最終的に1700万ドルを330万ドルまで値切りますが、どっちもどっちだという感じが否めない。命の重さがどんどんダンピングされていくさまは異様である。

 1970年代のイタリアが舞台になっていて、地元警察とマフィアはズブズブな関係で、やっとの思いで監禁場所から逃亡してきた孫のチャーリー・プラマー(クリストファー・プラマーの孫ではないのでご注意!)を警官が金に目がくらみ、親分に引き渡してしまう酷さです。

 この映画で最も印象的なのは骨董品にまつわるもので、第一は最初に母と孫がこの守銭奴ジジイに会った時に骨董品のミノタウロス像(120万ドルの価値を持つと豪語していた)を譲り受けたのを思い出し、サザビーズに持って行くが、二束三文の土産物に過ぎないことが分かる、ミノタウロスに関わるシーンです。

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 もう一つは誘拐犯との交渉の真っ最中で身代金の170万ドルを値切り続ける守銭奴ぶりを発揮していても、盗品と思われ、世には出せないとされる絵画を150万ドルで買い取る。孫の生命よりも趣味の絵画の購入費のほうを重視する鬼畜ぶりは圧巻です。

 守銭奴エピソードはどれも凄まじく強欲で、自宅に客用(自分の家の電話からだと電話代を請求されるため!)の公衆電話を義理の娘が使うシーン、ホテルの洗濯料金は高いからという理由で自分で高級ホテルに泊まっているのにパンツを洗ったりするなど落語に出てきそうなくらい徹底しています。

 なぜそこまで金銭に執着するのか分かりかねますが、誰も信用できず、誰も友人がおらず、絵画に話しかける孤独な老人には他人は寄り付かないでしょう。彼は事件後に一人で寂しく死に絶えるようですが、広大な邸宅で誰もいない風の強い夜に死ぬというのは恐怖でしょう。

 しかも地獄には持って行けないので、結局は彼の死後、莫大な遺産は孫のポール3世(つまり誘拐されて耳をそぎ落とされた少年)が成人になって相続するまで彼の母、つまりさんざん誘拐事件でやりあったミシェル・ウィリアムズが管理することになります。

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 音楽が洒落ていて、『2人のシーズン(ゾンビーズ)』『マンズ・マンズ・ワールド(ジェームス・ブラウン)』『ワイルド・ホース(ローリング・ストーンズ)』などが印象的です。

 監督はエイリアンのリドリー・スコットですので、当然ながら出演者は女性の方がしぶとく逞しい。彼の作品に出てくるヒロインです。ギャラはかなり少なかったようですが。

 ちなみに今回の被害者だった孫のゲティ3世は劇中でも明かされるように狂言誘拐を企んでいたフシもあり、数か月放置されてしまい、耳を切り落とされました。身から出た錆のようなところもありますが、事件後は精神を病んだようで、つい数年前に自宅で孤独に生涯を終えたそうです。

 ケビン・スペイシ―の降板や急に参加したクリストファー・プラマーの活躍など話題が多いこの作品ですが、シンプルに出来が良いので133分スクリーンに向き合ってはどうでしょう。

総合評価 85点


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「ゲティ家の身代金」
本当にあったお話。石油開発で巨万の富を築き上げたゲティ家の当主ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)は、老いて尚現役で事業を展開し、屈指の石油王となっている。そのゲティ氏の孫息子がローマで誘拐され、犯人グループは、大金を要求してきた。身代金目的の誘拐で、恐らく組織が絡んでいる。つまり、かなり組織的に仕組まれた犯行のため、カネさえ払えば孫息子は助かるはずだった。ゲティ氏の息子は親父の仕事を手伝う為にローマに来たものの、ヤク中となってしまい禁治産者となった男であった。愛想を尽かした妻のゲ... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2018/06/20 11:27

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