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zoom RSS 『ファウンダー』(2017)マクドナルド兄弟vs強欲セールスマン!

<<   作成日時 : 2018/02/21 20:43   >>

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 外食でハンバーガーを食べた最初の場所がマクドナルドという日本人は多いのではないか。特に昭和世代にとって、小さい頃に連れて行ってもらったマクドナルドで食べたハンバーガーやマックシェイク、マックフライポテトの美味しさは格別だったはずです。

 まだフレンチやイタリアンを知らず、中華料理とはラーメンとギョーザだと思っていた僕らは贅沢をバブル時代まで知らず、むしろ幸せだったのかもしれない。

 ぼくは幼少期に大阪に住んでいましたが、奈良のおじいちゃんの家に遊びに行くと毎朝、散歩がてらに必ずマクドナルドに連れて行ってくれて、ハンバーガーやマックシェイクを買ってくれるのを楽しみにしていました。

 ウチは残念ながら裕福ではなかったのと外食でのファーストチョイスはお寿司屋さんで、洋食に行く家ではなかったので、マクドナルドに食べに行けるのはおじいちゃんの家に行ったときくらいでした。

 戦勝国アメリカを象徴する食べ物であるハンバーガーやコカコーラを売っている明るい店構えと近所の食堂みたいに薄暗くない清潔でカラフルな雰囲気は鮮烈な印象を与えてくれました。

 成功者のイメージを拡散し、メディア戦略にも長けていたので大量に流されるCM「あじ〜なことやる〜♪マック〜ドナルド〜♪」のフレーズを覚えている方もいるでしょう。

 中学生くらいまでは田舎に移り住んだために繁華街まで遠くなり、さらに滅多に行けなくなり、たまに出掛けたときは楽しみにしていました。

 日本マクドナルド社長の藤田田が書いた『ユダヤの商法』などのベストセラーは僕も高校生の頃に読みましたし、考え方が普通の日本人とはかなり違い、スケールが大きいなあと感心したのを覚えています。

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 やがてバブル時代が到来し、日本人全体が一億総中流社会に組み込まれ、お金回りが良くなると僕らにとって憧れだったマクドナルドはマクドと呼ばれるようになり、サラリーマンや学生たちにとっての日常的な食べ物になってきます。

 1990年代後半から2000年代になると不景気で小遣いが少なくなったオジサンには吉野家の牛丼とともにデフレ時代を象徴する貧相で栄養バランスなど二の次のただお腹がいっぱいになればいいだけの存在に成り果てていきます。

 コーヒーも買えないので会社に帰ってきてからインスタントコーヒーをOLたちが向ける蔑みの視線に耐えながらコポコポ注いでいたオジサンがあちこちにいました。

 羽振りが良さそうで革新的に映っていた藤田田社長とオーナー一族は最終的にはマクドナルドの経営から追い出され、表舞台で名前を聞くことも無くなりました。

 暗黒の民主党政権が終わり、地獄の一丁目手前の自民党政権に戻るとようやくあちこちの外食に食べログを見ながらOLたちが食べ歩きしだすとデフレ御用達のマクドナルドの業績も下降し続けました。

 景気が悪い頃に食べていたモノって、思い出すと寂しくなるので食べなくなるのかもしれません。僕が知っている、戦後の食糧難を経験している70代以降の人は脱脂粉乳やサツマイモの団子汁などを嫌がります。

 個人的には大学生になった頃、ビッグマックを食べてから動悸が激しくなり、体調が悪くなる経験をしたあとはずっとモスバーガーに通っています。

 選択肢にはマクドナルドは消えましたが、一年に一度くらい、妙にマックシェイクやマックフライポテトが食べたくなるので、たまに行くことがあります。

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 四十代の中年を迎えると、流石に脂っこく、臭いもかなり強いマクドナルドのハンバーガーを食べるのはキツくなってきています。そんな僕らよりも更に年齢を重ねた五十代になってからマクドナルドを起業したのがしがない地方周りのセールスマンだったレイ・クロックです。

 彼は周りの成金投資家たちにも馬鹿にされ、鬱々と過ごしていましたが、田舎街のハンバーガーショップに立ち寄り、合理的かつ革新的なマクドナルド兄弟の経営スタイルに感銘を受け、安定と品質保持に注力する彼らを口説き落として、フランチャイズ化に道筋をつける。

 いまでは当たり前になっていること(店で食べるのではなく、お持ち帰りする。ウエイトレスが注文を聞きに来ない。容器は紙パック。システマチックな調理動線管理。ナイフとフォークを使わずに手づかみで食べる!)が実はマクドナルドから生まれたものだったという描写がてんこ盛りで前半から中盤にかけてはかなり興味深い。

 オリジナルのマクドナルド兄弟のお店で出されるハンバーガーは今のマクドで出てくるパサッパサで味気なく、肉汁など期待できない代物ではなく、手作り感満載で古き良きアメリカを思い起こさせるようなパティが出てきます。

 マックシェイクを保存するための冷凍庫の維持コストが大きすぎるからミルクではなく、粉シェイクで代用すべきだという改悪などはレイ・クロックという人が革新的だったわけではなく、たまたまビジネスモデルを“見つけ出した人”に過ぎないことを暴き出します。

 その後も嫌がる兄弟を説き伏せての起業と拡張だったため、初期契約はレイにとってかなり不利なもので本業は上手く行っているのに所詮安価のハンバーガーがもたらす1.5%に満たない利益率のキャッシュフローでは微々たるものに過ぎず、破産しかけますが、そこから会計士の助けを得て栄光の筋道をつけて行く。

 経営状態を劇的に改善したのが不動産ビジネスとミックスした新たな契約形態でアメリカの郊外のタダ同然の敷地を購入し、店舗を建ててオーナーからの家賃収入を確保することで金の大きな流れを作り出し、ますます巨大化させて行くスタイルで世界展開していきます。

 つまりマクドナルドのビジネスは不動産業であり、オーナーは彼らの土地に付加価値をつける店子に過ぎない。

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 巨大化したレイのビジネスにとって厄介なマクドナルド兄弟との契約を破棄したレイは売上げ1%を彼らに渡すという紳士協定を無視し、彼らが経営していたオリジナルのマクドナルド1号店の目の前にデガデカと彼らの店のシンボルだったMのビッグアーチの看板を掛けて廃業に追い込みます。

 苦楽を共にした奥さんを捨て、創業者兄弟を追放し、創業一号店は自分がお金を出した店だと虚偽の宣伝を行う彼を尊敬は出来ない。

 美化された立志伝ではなく、成り上がり者の執念と欲望を描いた本作品はマクドナルドの集客アピールには繋がらないでしょうが、リアルな構成は見る者に様々な視点を与える。

 見応えのあるドラマなのでTSUTAYAさんに借りに行きましょう。ただ、皮肉に満ちたこの映画を見てもマクドナルドに食べに行こうとは思わない。マクドナルドも協力していない。

 こういうのをまだ映画として配給できるアメリカの映画業界はまだ腐ってはいないのでしょう。日本だったら、あちこちに忖度した結果、まったく面白みのない作品に仕上がるでしょう。

総合評価 72点




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