『続 猿の惑星』(1970)今見るとかなりスカスカだが、小学生が見たミュータントは恐かった!
なんといっても強烈なイメージを残したのは地下住人であるミュータントたちがミサのシーンで自分たちが神前でマスクの下に隠された、ケロイドで焼けただれた素顔をさらしていく場面。美しい讃美歌と醜悪な素顔、異様に光り輝くコバルト爆弾の三点セットの残像は数十年経っても消えません。
世界的に大ヒットした『猿の惑星』に味をしめた映画会社は「もっと金が欲しい!」という資本主義経済では根源的な欲望をあらわにして、嫌がる脚本家に無理矢理書かせたかのような猿真似の続編の製作を決定します。
それがこの『続・猿の惑星』です。脚本家はこれ以上の続編などは真っ平御免だったためか、最後は地球を爆破させて物語を閉じました。
しかしながら、安易に儲けた映画会社はさらなる続編、というか前日譚まで何本も製作してしまう始末で、さすがに映画ファンにも飽きられて、ようやく『最後の猿の惑星』とともにいったんはこの無限ループを収拾しました。
それでもあのバナナの味を忘れられない映画会社は21世紀になっても相変わらずで、特撮技術が大いに進化した作品群を乱発しています。リンカーン像が猿だったときには驚きましたが、どうせだったら自由の女神を猿にした方が洒落が効いていたのになあとぼんやり考えていました。
そもそもお金を払って、わざわざ欧米人に“サル”と蔑視される黄色人種の我々が劇場まで観に行く必要性はありません。どうせやるなら、豚同士がヒエラルキー闘争を繰り広げる『動物農場』でも人間版(二足歩行に擬人化した感じ。)で白人と黒人で作れば良い。
西部劇に出てくるインディアンや戦争映画に出てくるドイツ軍や日本軍のような悪役を他者に求めず、『マンディンゴ』『ロリマドンナ戦争』を見習い、自国の恥部をメタファーで世界に晒せば良い。
白人内での差別をイメージさせる設定や変えられない人種差別意識を他国に転嫁せずに向き合うべきでしょう。
この『続 猿の惑星』はブレンド(ジェームズ・フランシスカス)がチャールトン・ヘストンと再会する手前で、遠隔による超能力のせいでノヴァの首を絞めたり、地下住人たちのテレパシー拷問を受ける段階でオリジナルでファンになった多くの観客の期待という貯金をほぼ使い果たしてしまう。
立場が逆転することによって起こる、哲学的な展開は影を潜め、ただただ続編のための続編製作へと舵を切っていく。そのなかで、本当の意味での紅一点であるリンダ・ハリソンがラクエル・ウェルチみたいに頑張ってはいます。
が、いかんせん何もしゃべらず、知能は猿以下という設定なのはコミュニケーションが取りにくいのでつらい。それでも一人の雌として存在する彼女は野性のセクシーさとフェロモンを振りまいているので、もしザルドスのコネリーがそばを通ったら、すぐに襲われるでしょう。
もしシーザーが人類にとって初めてのしゃべる猿だったように、彼女とヘストンとの間に子供が出来て、ブルータスと名付けてサル社会と戦う続編を作っていたのならば、もっとうまくお話がつながっていたかもしれません。
低周波の「ぴぃー、ぴぃ~」という耳障りな音(テレパシー)で意思を伝えるようになっている地下住人の隠れ家にはコバルト爆弾が鎮座し、最終兵器こそが平和を維持する神であることが示される。いきなり出てくる彼らには驚きますし、かなり科学的なのにもっと驚かされる。
武器が相手を惑わす幻覚だけというのは人間が強みだと思っている思想や科学知識などは実行力がない妄想に過ぎないという意味でしょうか。
核兵器を賛美する薄気味悪い歌がミサで披露され、最終決戦に向かっていく地下住人。彼らがミサの最後で、秘めたる自分を神の御前にさらけ出すと彼らがマスクを取り、核戦争の影響で焼け爛れたケロイドだらけの正体を晒したときは小学生だったぼくはおおいに驚いたのを覚えています。
しかし大学生の頃にビデオで見たり、CSでシリーズを通して見たときにはさすがに「こりゃ、キツいな…。」とあちこちの粗が気になっていました。
千年以上の時間経過を経て、子孫がすべてケロイド顔を持ち続けるとは思えませんし、軍事上、重要な最新兵器だったコバルト爆弾がマンハッタンの地下に新品同様にメインテナンスされたまま、発射の時を待っているとは考えにくい。
また更なる続編である『新 猿の惑星』の冒頭ではジーラとコーネリアスが修理した宇宙船に乗って、地球爆発前に現代のアメリカにタイムワープしてくるという荒唐無稽を飛び越えて、もう無茶苦茶な展開になっていきます。
彼らの子供こそが猿たちが崇め、石像が立っている大猿であり、始祖となるシーザーです。現在上映されている続編でも猿のリーダーはシーザーでしたね。
最大の問題点はオリジナル版『猿の惑星』に衝撃を受けてファンになり、続編を見ていこうとしたときにまずはこの映画が続編として待ち構えていることだろうか。
『新 猿の惑星』や『猿の惑星 征服』はけっこうSF映画としては見せどころが多い作品群ですので、公開順序通りに『続 猿の惑星』に進むよりも、“続サル”を飛ばして、『新 猿の惑星』『猿の惑星 征服』『最後の猿の惑星』までを見たほうが楽しめる。
最後に眠い目をこすりながら、外伝的な扱いで“続サル”のDVDを眺めるのがもっともしっくりと頭に入ってくるでしょう。たぶんこの映画で覚えていられるのは地下ミュータントのミサと恐怖の顔、コバルト爆弾発射場面くらいでしょうから。あとはセクシーなリンダ・ハリソンですね。
あくまでも現在、冷静な目で見るとあちこちのほころびが気になりますが、当時はミュータントの不気味さに恐怖を感じ、米ソの全面核戦争が起こったら、『ノストラダムスの大予言』と同じように異形が跋扈するのかなあという嫌な思いを抱きながらテレビを見ていました。
最後にジーラとコーネリアス夫婦ですが、実はコーネリアス役の俳優さんが変わっているそうなのですが、まったく気が付かずでした。また、もしラストにかけてのミュータントや猿軍団との銃撃戦の前にトイレに行ってしまうと、せっかくチョイ役で出てくるチャールトン・ヘストンとジェームズ・フランシスカスを混同してしまうかもしれない。
総合評価 57点
世界的に大ヒットした『猿の惑星』に味をしめた映画会社は「もっと金が欲しい!」という資本主義経済では根源的な欲望をあらわにして、嫌がる脚本家に無理矢理書かせたかのような猿真似の続編の製作を決定します。
それがこの『続・猿の惑星』です。脚本家はこれ以上の続編などは真っ平御免だったためか、最後は地球を爆破させて物語を閉じました。
しかしながら、安易に儲けた映画会社はさらなる続編、というか前日譚まで何本も製作してしまう始末で、さすがに映画ファンにも飽きられて、ようやく『最後の猿の惑星』とともにいったんはこの無限ループを収拾しました。
それでもあのバナナの味を忘れられない映画会社は21世紀になっても相変わらずで、特撮技術が大いに進化した作品群を乱発しています。リンカーン像が猿だったときには驚きましたが、どうせだったら自由の女神を猿にした方が洒落が効いていたのになあとぼんやり考えていました。
そもそもお金を払って、わざわざ欧米人に“サル”と蔑視される黄色人種の我々が劇場まで観に行く必要性はありません。どうせやるなら、豚同士がヒエラルキー闘争を繰り広げる『動物農場』でも人間版(二足歩行に擬人化した感じ。)で白人と黒人で作れば良い。
西部劇に出てくるインディアンや戦争映画に出てくるドイツ軍や日本軍のような悪役を他者に求めず、『マンディンゴ』『ロリマドンナ戦争』を見習い、自国の恥部をメタファーで世界に晒せば良い。
白人内での差別をイメージさせる設定や変えられない人種差別意識を他国に転嫁せずに向き合うべきでしょう。
この『続 猿の惑星』はブレンド(ジェームズ・フランシスカス)がチャールトン・ヘストンと再会する手前で、遠隔による超能力のせいでノヴァの首を絞めたり、地下住人たちのテレパシー拷問を受ける段階でオリジナルでファンになった多くの観客の期待という貯金をほぼ使い果たしてしまう。
立場が逆転することによって起こる、哲学的な展開は影を潜め、ただただ続編のための続編製作へと舵を切っていく。そのなかで、本当の意味での紅一点であるリンダ・ハリソンがラクエル・ウェルチみたいに頑張ってはいます。
が、いかんせん何もしゃべらず、知能は猿以下という設定なのはコミュニケーションが取りにくいのでつらい。それでも一人の雌として存在する彼女は野性のセクシーさとフェロモンを振りまいているので、もしザルドスのコネリーがそばを通ったら、すぐに襲われるでしょう。
もしシーザーが人類にとって初めてのしゃべる猿だったように、彼女とヘストンとの間に子供が出来て、ブルータスと名付けてサル社会と戦う続編を作っていたのならば、もっとうまくお話がつながっていたかもしれません。
低周波の「ぴぃー、ぴぃ~」という耳障りな音(テレパシー)で意思を伝えるようになっている地下住人の隠れ家にはコバルト爆弾が鎮座し、最終兵器こそが平和を維持する神であることが示される。いきなり出てくる彼らには驚きますし、かなり科学的なのにもっと驚かされる。
武器が相手を惑わす幻覚だけというのは人間が強みだと思っている思想や科学知識などは実行力がない妄想に過ぎないという意味でしょうか。
核兵器を賛美する薄気味悪い歌がミサで披露され、最終決戦に向かっていく地下住人。彼らがミサの最後で、秘めたる自分を神の御前にさらけ出すと彼らがマスクを取り、核戦争の影響で焼け爛れたケロイドだらけの正体を晒したときは小学生だったぼくはおおいに驚いたのを覚えています。
しかし大学生の頃にビデオで見たり、CSでシリーズを通して見たときにはさすがに「こりゃ、キツいな…。」とあちこちの粗が気になっていました。
千年以上の時間経過を経て、子孫がすべてケロイド顔を持ち続けるとは思えませんし、軍事上、重要な最新兵器だったコバルト爆弾がマンハッタンの地下に新品同様にメインテナンスされたまま、発射の時を待っているとは考えにくい。
また更なる続編である『新 猿の惑星』の冒頭ではジーラとコーネリアスが修理した宇宙船に乗って、地球爆発前に現代のアメリカにタイムワープしてくるという荒唐無稽を飛び越えて、もう無茶苦茶な展開になっていきます。
彼らの子供こそが猿たちが崇め、石像が立っている大猿であり、始祖となるシーザーです。現在上映されている続編でも猿のリーダーはシーザーでしたね。
最大の問題点はオリジナル版『猿の惑星』に衝撃を受けてファンになり、続編を見ていこうとしたときにまずはこの映画が続編として待ち構えていることだろうか。
『新 猿の惑星』や『猿の惑星 征服』はけっこうSF映画としては見せどころが多い作品群ですので、公開順序通りに『続 猿の惑星』に進むよりも、“続サル”を飛ばして、『新 猿の惑星』『猿の惑星 征服』『最後の猿の惑星』までを見たほうが楽しめる。
最後に眠い目をこすりながら、外伝的な扱いで“続サル”のDVDを眺めるのがもっともしっくりと頭に入ってくるでしょう。たぶんこの映画で覚えていられるのは地下ミュータントのミサと恐怖の顔、コバルト爆弾発射場面くらいでしょうから。あとはセクシーなリンダ・ハリソンですね。
あくまでも現在、冷静な目で見るとあちこちのほころびが気になりますが、当時はミュータントの不気味さに恐怖を感じ、米ソの全面核戦争が起こったら、『ノストラダムスの大予言』と同じように異形が跋扈するのかなあという嫌な思いを抱きながらテレビを見ていました。
最後にジーラとコーネリアス夫婦ですが、実はコーネリアス役の俳優さんが変わっているそうなのですが、まったく気が付かずでした。また、もしラストにかけてのミュータントや猿軍団との銃撃戦の前にトイレに行ってしまうと、せっかくチョイ役で出てくるチャールトン・ヘストンとジェームズ・フランシスカスを混同してしまうかもしれない。
総合評価 57点
この記事へのコメント
>彼女とヘストンとの間に子供が出来て、ブルータスと名付けてサル社会と戦う続編
なるほど。そう言う展開もいいですね。
>ミュータントたち
第1作とは全く違う雰囲気の映画でした。
オリジナルが凄すぎたためにどうしても評価が落ちる本作ではありますが、テレビで初めて見た時はラストシーンに驚きました。
設定も今の眼で見ると陳腐に映るのでしょうが、当時はそれほど違和感なく見ていましたね。
ではまた!
僕が用心棒さんのブログにお邪魔したのは、この記事だったんですね
>テレビで初めて見た時はラストシーンに驚きました。
僕も中1の時にテレビで見て驚きました。
>オリジナルが凄すぎたために
そうです。しかし・・・。
「続 猿の惑星」や「続 荒野の七人」のように評価が低い
>早いもの
これだったんですねwww
ビートルズか何かと思っていましたww
>中1
衝撃的でしたよね!ぼくも中学時代だったので小学校のころに見たノストラと被りました。
>評価が低い
映画的にはどうかというのは映画マニアが言いがちなことですが、オリジナルが凄かったから続編が出来るわけですから、売る側にすれば、「よし、もう一丁!!」となるのは当然でしょうww
ゴジラやスターウォーズなんかいまだに量産されてますものねw
ではまた!
僕はテレビで見ました。うろ覚えですが、若者達が集団でバイクに乗って海に落ちて自殺する予言があった気がします
>「よし、もう一丁!!」
柳の下に泥鰌は何匹いるのか
>リンダ・ハリソン
彼女が40歳の時「コクーン」に出ていました。
「あれっ
>バイク
あります、あります!終盤にバイクごと飛び降りる衝撃的なシーンがあります。
グリフィンがらみで『ノストラダムスの大予言』『獣人雪男』は流出しましたので、『遊星より愛をこめて』とともに裏ビデオで出回っていましたよww
>何匹
たくさんいるんですが、ほとんどは美味しくないww
>コクーン
なつかしいですね。ぼくはロバート・パトリックがXファイルの二代目主人公になった時にエイリアン相手に苦戦していると、「お前は液体型ターミネーターじゃないか!さっさとやっつけろ!」と思いながら見ていましたよww
ではまた!
>たくさんいるんですが、ほとんどは美味しくないww
うまい事を言いますね~
>裏ビデオで出回っていましたよww
便利な時代になりました。
>Xファイル
これも未見です。いつかは
>リンダ・ハリソンがラクエル・ウェルチみたいに
そう言えば「コクーン」にはラクエル・ウェルチの娘さんが出ていました。やっぱりお母さんに似ています
泥鰌を探す人は多いですね。ゴースト・バスターズまでリブートされましたし、スターウォーズも延々作られていますね。
>ウェルチ
可愛かったですねえww
そろそろ孫が出てくるかもですねえw
ではまた!
ボリビアとアイルランドのハーフ。エキゾチックな魅力があります
4回の結婚歴
娘のターニー・ウェルチが既に55歳。結婚しているのか?子供がいるのか?調べたけど不明です
>スターウォーズも延々
もしかしてまたインディ・ジョーンズも?
今日は決算処理で徹夜になりますwww
3月末の方が年末年始よりも多忙ですので何事もなくさっさと済ませたいですよw
>インディ
カリビアン海賊も延々と作られていますので、インディも俳優を代えてやり直すかもしれませんね。
ではまた!
お疲れ様です
>何事もなくさっさと済ませたいですよw
案外鬱陶しい同僚が邪魔な時も?
それは今年度の僕の事です・・・
>やり直す
猿の惑星シリーズ。
第1作と第4作がリメイクされました。
この際、第2作も
無事に終わりましたが、毎年毎年うんざりします…
>リメイク
多すぎますねえ。ネタがないんでしょうが、もう少し捻ってほしいですね。
ではまた!
とうとう「続 猿の惑星」がリメイクされるそうです。
ブレンド役がシルベスター・スタローン。
テーラー役がアーノルド・シュワルツェネガー。
檻の中での格闘場面が見ものです
>リメイク
エクスペンダブルズみたいですねwww
ターミネーターvsランボーというのはどうでしょうw
両者の身体はCGで声の出演ですww
ではまた!
>両者の身体はCGで声の出演ですw
大笑いしました
>自国の恥部をメタファーで世界に晒せば良い。
それは大変良い事です
それではまた。
関東は桜が満開のようですが、関西では二部咲き程度で今年はお花見は盛り上がらなさそうです。
ターミネーターとランボー二人で北朝鮮に攻め込み、北の豚まんと戦わせたいですw
ではまた!
>萬屋
ぼくもBSかCSで見たことがありますが、おっしゃるように僕らの世代は吉右衛門のイメージがあまりにも強く、小説を読んでいても顔や声のイメージは彼ですよww
>岡村
人気が出たころから見ていますが、最初はサルみたいなヤツだなあという印象で、今見てもやっぱりサルみたいだなあという感想ですww
ではまた!