『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1960)製作日数わずか2日!の怪作。さすがミスターB!

 1960年に、わずか2日という製作日数をかけて製作された伝説の映画、それがこの『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』です。このような荒業をやってのけたのはもちろん、B級映画界の巨匠、ロジャー・コーマン監督です。

 ロジャー・コーマン監督作品は一流作品とは言い難いのですが、ほとんど予算がなくても出来るだけの事はやっていこうという前向きな姿勢がどの作品からもうかがえます。「特撮がしょぼい!」、「セットがしょぼい!」など言い始めるときりはありませんが、「金がないんだから、しょうがないさ!」と自分の中でもすぐ合点がいくほどのしょぼさなのであまり気にならないんです。

 反対に、仮にもっと潤沢な予算があったならば、ここに使うんだろうなあとかいろいろ想像できて楽しい作品です。本当にTVのコント並みのセットと特撮?で、ほとんどのシーンを撮りきっているのが、むしろ爽快ですらあります。これだけ徹底されると、中途半端に金をかけて、安っぽい作品を作るよりもよほどましです。

 白黒の紙に街並を描いて、カメラのレンズの前にカラー・フィルムを通過させるか、コマに直接カラーフィルムを貼り付けたような、とても商業映画とは思えないほど超節約型でインパクトの強いオープニング・シーンからすでにわれわれ観客は圧倒されてしまいます。

 ファンにとって嬉しいのは、出演者の中に売れる前のジャック・ニコルソンが端役で出演していることですが、彼は事故で死んだと思ったら、次のシーンではバラバラにされて、オードリーJrの胃袋の中に納まっていました。

 オードリーJr!彼こそがこの作品の主役です。食虫植物「ハエジゴク」の変種で、冴えない花屋の従業員シーモアによって育てられた、人間を喰らう植物です。シーモアは花に語りかけながら、世話をしていきます。

 話しかけながら世話すると、植物はとても成長すると聞きますが、このオードリーJrもどんどん大きくなっていきます。最初は10センチくらいだったのが、人の生血をすする度に巨大化し、それにつれて人の言葉をしゃべるようになっていきます。きちんとした特撮でこれを撮ると結構気持ち悪いシーンの連続になってしまうかもしれません。

 彼の造りがとてもいい加減で、植物という設定なのに、布製の大きなぬいぐるみである事が誰の目にも明らかなのが笑えます。口を開いた時、口の中が赤くなっているのですが、それも生物としての色ではなく、着ぐるみの布の色です。とりあえず赤っぽかったらいいよ、という感じなんです。

 動かせるのもオードリーの口のみで、蔓も葉っぱも全く動きません。このへんが動いたら、ホラーっぽくなるんですが、予算の関係上動きません。操作できるのは口の部分のみなのです。ビオランテのような気味悪さは全くなく、むしろ可愛い印象すら与えてくれています。

 「メシだ~!」、「ハラへった~!」など喰うことのみを考えるオードリーJrは、昭和の親父たちの「フロ!メシ!ネル!」よりひどいコミュニケーション能力しか持ち合わせていません。その割にはシーモアに催眠術をかけるなどという高等能力を持っているのがなんとも不思議でした。

 またご馳走(人間)を食べる時に、オードリーJRが歌うのがフランク・シナトラがクリスマスか何かで歌っていた陽気なナンバーなのが、不気味で気持ち悪い。キューブリック監督の『時計仕掛けのオレンジ』で用いられる『雨に唄えば』のような効果を上げています。

 音で言えば、歯医者での抜歯するシーンで、歯が抜ける時の「すぽっ!」という効果音のバカバカしさが最高です。

 特撮、演出などバカバカしいシーンがオンパレードのこの作品ではありますが、会話シーンは毒が効いていて、ドラマ自体はわりとしっかりと考えていたような形跡がうかがえます。出てくる出演者が、「苦痛マニア」、「サイコドクター」、「花を食う男」など変人ばかりだったのは何故なんでしょうか。

 撮影自体もさらにいい加減で、セットも花屋の中、アパートの一室、歯医者の一室くらいで、もしかするとそれすら使い回しかもしれません。花屋なのに置いてあるのは造花や葉っぱばかりで綺麗なのはまったくありません。

 さらに酷いのはロケで、その辺の近所の場所を適当に使ったのが、もろに分かるほどの徹底したいい加減さに笑いが込み上げてきます。よほど早く撮るように言われていたのか、どこかに遊びに行きたかったためにさっさと撮る必要があったのでしょう。

 ラスト・シーンも凄まじく、強烈なコント落ちが待っています。どちらかというと関西方面の「落ち」というよりも、ドリフ落ちに近い出来に仕上げられています。笑えるか呆れるかは人それぞれさまざまだと思いますが、これもまたB級映画の代表作でもあるのです。

総合評価 73点

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この記事へのコメント

2006年05月14日 17:59
こんばんは。
こちらもミュージカル版リメイクも観ました。相変わらずのコーマン節で、全く大したことはありませんが、構えだけが立派で中味がない最近のハリウッドCG大作よりずっと面白いですね。
リメイク版が傑作で、結構ご機嫌なんですよ。
2006年05月14日 21:53
 オカピーさん、こんばんは。フランク・オズ版のほうですか?僕らにとってはオリジナルよりも、オズ版のほうがリアルタイムで見た分、強い印象があります。
 しかしよくこんなのをリメイクしようと考えたものです。ビル・マーレーやらジョン・キャンディがいい味出してました。
 リメイクといえば、まさかとうとう『ポセイドン・アドヴェンチャー』までリメイクするとは情けない限りです。しまいには『ディア・ハンター』やら『トップ・ガン』なんかもされてしまうかもしれないと思うと、うんざりします。ではまた。
2006年05月15日 03:05
おっと、文章が全く混乱しておりますね。失礼致しました。
ミュージカル版は勿論フランク・オズのほうです。
私のHPでいずれ怒りのリメイク・リストを発表致します。コメントは一切ない資料にするつもりですけど。純粋なリメイク以上に、続編の多さには呆れます。アメリカ映画の3割はこの類、ハリウッド映画に限れば40%くらいではないでしょうか?
2006年05月15日 19:10
 オカピーさん、こんばんは。リメイク、続編、TVドラマの映画化、マンガの映画化には本当にうんざりしますね。
 今年に入ってからでも『プロデューサーズ』、『ポセイドン・アドヴェンチャー』、『ガメラ 小さき勇者たち』(広い意味で)、『海猿』など枚挙に暇がない。
 映画はいつからこんな貧困な脚本家しかいなくなったのか、映画会社にプライドはなくなったのか、観客はなぜリメイクや続編で満足できるのか、金を払ってまで観に行く価値があるのか疑わしい。寂しいですね。
2007年02月08日 18:39
 こちらもリメイクですが、TBさせて戴きました。
 オリジナルのほうは☆☆★(5点/10点満点中)ですが、これだけのB級ですから感覚的には大絶賛に近いです。B級ならではの面白さも十分ありますからね。
2007年02月08日 18:58
 『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』に関しますとロジャー・コーマン監督版、フランク・オズ監督版の両方とも好きな作品です。
 洗練されたミュージカル要素もあるオズ版もいいですし、アイデア一発のコーマン監督版もそれぞれの良さがありますね。ではまた。

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