ディズニーの顔役、ミッキー・マウスのデビュー作品『プレーン・クレイジー』他、モノクロ作品。

 ミッキー・マウスがはじめて我々の前に姿を現してから、もうすぐ80年になります。当初、ミッキーの声を務めたのは、かのウォルト・ディズニーでした。彼にとっても、ミッキー・マウスというキャラクターはずば抜けた輝きを放っていたのでしょう。

 ミッキーの記念すべきデビュー年は1928年であり、この年はといえば、日本では大正デモクラシーの古き良き香りがなくなり、軍部が台頭してくる昭和初期でした。映画でもアニメなどは皆無であり、実写しかありませんでした。まあ、もしあったとしても映画自体が活動写真、働く人は活動屋と蔑まれた時代ですから、さらに低く『活動紙芝居』などと陰口を叩かれていたかもしれません。

 『プレーン・クレイジー』(1928)
 第一作目として製作されたのが、『プレーン・クレイジー』でした。お話としてはリンドバーグに憧れたミッキーが、お手製の飛行機を作り、ミニーと一緒に空を飛び、彼女に迫り、キスしようとして喧嘩になり、飛行機もろとも墜落するという「ナンパ」な物語です。

 スピード、スリル、そして「ボーイ・ミーツ・ガール」を描いたのが、最初のお話だったのです。現在のような、可愛いだけの彼とは違う、毒気とウィットを作品の中に感じます。彼の顔も小さめで、ずる賢さと抜け目なさを彼の表情から読み取るのは、それほど難しくはない。

 丸い顔、愛嬌ある顔にはなりきっていない初期の素晴らしさが見れるのが嬉しい。商売が大きくなるにしたがって、子供に可愛がられなければならない必要性からか、顔が丸く大きくなり、笑顔が一杯になってきます。顔の造形まで変えられて(整形か?)、世界中で営業に回り、今も現役で、80年も働かされるなんて、彼は大変です。そろそろ定年を迎えさせてあげて欲しいですね。

 『ドラえもん』や『サザエさん』でも同じことを思ったのですけど、いくら商売第一といっても、声が変わるときには、彼らキャラクター達も一緒に引退させてあげて欲しい。擦り減ってしまいますよ。また、最初から、ミニー・マウスが登場していたのも驚きではあります。

 『蒸気船ウィリー』(1928)
 これも1928年に作られた作品で、前作と同じように毒気があり、小憎たらしい表情が魅力の我らがミッキーが大活躍しています。今回はダンスと楽器演奏、そしてどたばた動き回る、ボードビリアンとコメディアンを合わせたような芸風になっています。マルクス兄弟、チャップリンの初期短編を見ている思いがします。

 サイレントからあまり時間が経っていない時期に製作されたため、映画のエッセンスはきちんと継承されていて、必要最低限だけ、音が付けられています。台詞らしきものがあまりなく、動きや表情で伝える事に力点が置かれています。もっとも映画的な分野かもしれないアニメ、その原点を見る機会があったことに喜びを感じました。「見れば分かる」という基本に忠実で、好感が持てます。

 『ガラ・プレミア』(1935)
 『ガラ・プレミア』にはハリウッド・スターが大挙出演し、チャップリン、マルクス兄弟、アーバックル、クラーク・ゲイブル、ジョン・バリモア(らしき)、ディートリッヒ(らしき)に加え、ユニバーサルの怪物たち(フランケンシュタインの怪物、ドラキュラ伯爵、狼男)も登場して盛り上げてくれます。

 その他
 その他見たものには『消防士』、『自動車修理』、『バースデイ・パーティ』、『ガリバー旅行記』などがありますが、どれも1935年までに作られたもので、モノクロ作品です。今見ても、全く見劣りしない技術とアイデアの素晴らしさ、キャラクターの作り込みの見事さ、映画的楽しさに溢れる興味深い作品群でした。アニメだから出来るナンセンスで可笑しいシーンも多く、充分に大人の鑑賞に堪える作品であり、子供向けになりきっていない毒気溢れるミッキーに惹かれます。

 ドナルド・ダックやグーフィーも登場しますが、彼らの顔やスタイルもまだ造形がしっかりと定まっていなかったようです。ドナルドは「ガアガア」わめきますが、顔が細く、やせ気味でした。グーフィーもどちらかというとやせ気味で、ゼロゼロ・ワンワンに似ていました。

 もうじき(あと20年弱)100年を迎えるディズニー映画ではありますが、何か物足りない要素が確実にあります。それが毒気であり、皮肉であり、教訓ではないでしょうか。あまりにも甘すぎるオブラートで作品を包み込んでしまい、作為的で、偽善的な匂いに戸惑ってしまう昨今のディズニー映画にはついつい斜に構えてしまうのです。初期はこんなに素晴らしいのにね。
総合評価 90点
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この記事へのコメント

和登さん
2006年04月05日 22:38
今晩は 用心棒さん。「蒸気船ウィリー」
が最初だと 思ってました。「プレーン・クレージ」是非見たくなりました。 初期ならではの 苦心や工夫など 興味をそそられますね。
ドナルド・ダックや グーフィーなど 脇役も主人公なみに スターですよね。
  
2006年04月05日 23:33
 和登さん、こんばんは。僕も長年、『蒸気船ウィリー』だと思っていたのですが、何気なく近所のレンタル屋で、モノクロ時代の短編を眺めていたら、これが最初のように書いてあったので、迷わず借りました。

 初期らしい、チョイワルねずみなミッキーがいい味出していました。借りて見たのは『ミッキー・マウス・メモリー』と『ブラックアンドホワイト』の二本です。『プレーン・クレージー』は前者に、『蒸気船ウィリー』は後者に入っていました。
 大人でもニヤリと楽しめる、初期作品が好きです。まあ、比較的新しい『ミッキー・マウス・クラブ・マーチ』(たしか50年代か、60年代だと思います)も好きなんですけどね。

 ドナルドも、グーフィーも、プーさん(もともと)も、そして『ドラえもん』もそうですが、顔が丸くなりだすと、一気に子供向けになりますね。

 顔が丸くなっても、ヤバイ路線をひた走ったのは『パタリロ!』くらいでしょうか。
「パパンがパン! だ~れが殺した、クックロビン! あ、そ~れ だ~れがころした クックロビン。」まだおぼえてますよ。ではまた。

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