『ブラック・レイン』(1989)カリスマ松田優作、39歳で病魔に倒れる。最後の勇姿を見て欲しい。

 リドリー・スコット監督、1989年製作作品にして、松田優作、初のハリウッド進出作品です。そして、これは松田優作の遺作でもあります。1989年というと、バブル全盛期の真っ只中であり、今ではもう17年以上前になってしまいました。当時、大学生であった僕は、公開された初日に福岡で観ました。かっこええ、という印象があまりにも強かった優作でした。健さんもよかったですし、島木譲二や若山富三郎も良い味を出していました。しかし、彼らをなお、ひとりで圧倒する松田優作はかっこよすぎました。

 迎え撃つアメリカ・ハリウッド俳優陣にも、その年の『ウォール街』でアカデミー賞に輝いた、マイケル・ダグラスがいて、結構渋かったのですが、アメリカ人の中で、もっとも印象に残ったのは、あっさり殺される「とほほ」なアンディ・ガルシアでした。『ゴッド・ファーザーⅢ』での演技が光っていた彼ですが、ここでの彼はただの殺され役でした。映画としてはキャスティングのバランスが、優作の大きすぎる存在の前で崩れています。

 それほどの迫力を、ガンとの闘病生活の中で出し切った優作は、この作品と共に、殉職する道を選んだようにも思えました。演技バカ一代として、作品に命を懸け、燃え尽きました。ファンにとっては悲しいことですが、優作が選んだ道なのだから、彼のやりたいようにすれば良いし、それでこそ彼らしいとも思います。

 見た後に、真っ先に思ったのは優作って、ハリウッドの連中よりも、ずっとかっこいいなあということでした。遺作になってしまったのが本当に残念です。この存在感を持ってすれば、一躍ハリウッドスターの仲間入りを容易に出来たかもしれないと思うと、早すぎた死を悔やみます。

 松田優作というと、僕ら30代後半の人間にとっては、『蘇る金狼』、『最も危険な遊戯』、『ア・ホーマンス』、そして『竜馬暗殺』で見せてくれた、どこか陰のある、力が全身からあふれ出て、気魄が画面に充満する圧倒的な存在感を思い出します。また『家族ゲーム』やTVシリーズ『探偵物語』、『太陽にほえろ!』でみせた憎めないユニークなキャラクターなど、他の俳優では持ち得ない独特な魅力を沢山持つ、不世出の俳優でもありました。

 公開当時はあまり深く考えずに見ていたため、もしかしたら劇中の指詰め場面において「なんじゃこりゃー!」を言ってくれるかも知れないとひそかに期待しました。そしてやってくれたならば、きっと笑えたのになあとも友人とともに語っていました。あれからもう十七年もたつんだなあ。優作が死んだ年齢に、だんだん近づいていく今日この頃です。

 彼が死んでから、息子さんの松田龍平君を見るたびに、彼の面影を残す龍平君の活躍を願いながら、彼の出演作も見ています。お父さんのプレッシャーに潰されずに、自分の味をどんどん出していって欲しいものです。
総合評価 82点
ブラック・レイン
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この記事へのコメント

2006年10月23日 00:13
>それほどの迫力を、ガンとの闘病生活の中で出し切った優作は、この作品と共に、殉職する道を選んだようにも思えました。

同感です。
あの内なる凄み、存在感。死を覚悟してもものかも・・・
2006年10月24日 00:25
 こんばんは。
 彼のような巨大な存在感をフィルムに定着させる俳優は未だに出ていません。独特の凄みと個性、ユーモアと哀愁を同時に表現できる俳優も現れていません。
 彼が上手い俳優だったかどうかなどは判りません。彼がただそこにいるだけで観る者には大いなる緊張を与え、大きな劇場のスクリーンを引き締めるのです。それこそが彼の価値だったのかもしれません。
 『ブラック・レイン』は死を賭した彼の死の舞でもあります。
2006年10月24日 00:30
TBありがとうございました。
>『ブラック・レイン』は死を賭した彼の死の舞でもあります。

そのとおりですね。このコメントまさにおっしゃるとおりだと思います。
2006年10月24日 01:21
 イエローストーンさん、こんばんは。
優作出演作品に関しては、ストーリーがどうこうとかいうのはまったく気になりません。だっているだけで十分に貢献しているのですから。
 乱暴なものの言い方かもしれませんが、お話じゃなくて優作を観に行っていたのです。そういう観方をしても良い数少ない俳優の一人でした。ではまた。
トム(Tom5k)
2008年07月21日 21:08
用心棒さん、こんばんは。
久しぶりに映画を観てきました(笑)。
『インディー・ジョーンズ』『ランボー』・・・どうも観たいという欲求が起こらず、地味な『カメレオン』を観てきました。何だか当初より上映期間を短縮、早めに終えるようですね(笑)。
全く予備知識なしで行ったので、期待していなかった分、楽しめました。まさにB級ノワールで、何だか古めかしい雰囲気でしたねえ、松田優作&大藪春彦風だなあといった感想を持ったのですが、どうりで帰って調べたら、松田主演予定の30年前のシナリオを引っ張り出してアレンジしたそうです。
いいノワール雰囲気だったんですが、もう少し夜の都会を舞台として多用して欲しかったですねえ。
>藤原竜也も悪くなかったんですけれど、できれば、松田龍平にやって欲しかったなあ。
わたしとしては、なかなか楽しめました。場末の「東映」で、禁煙の赤い点灯表示に煙が漂っていた昭和が懐かしく思い出せました。
では、また。
2008年07月22日 20:19
 こんばんは!
 ノワールは都会の夜とダンディズム、そしてファム・ファタールが揃ってはじめて成り立ちますので、舞台がないときついですね。

>松田龍平
ですよね!彼の目って、お父さんを彷彿とさせますね。デビュー当時からずっとチェックしていますが、彼が出ていると保護者の気分で作品を見ています。

 いい作品に巡り会って欲しいですね。
ではまた!
さすらいの映画人
2017年05月18日 18:43
用心棒さんこんばんは。この映画は健さんの印象が薄いですよね。やはり松田優作の存在感ですね。ガルシアとデュエットとガッツ石松には笑えましたが(笑)健さんの外国映画で「ザ・ヤクザ」でも剣道を教えてましたが、この映画でも同様。偶然でしょうか?
2017年05月18日 21:30
こんばんは!

>健さん
たしかに優作の印象があまりにも強く、引き立て役になっていますね。

>ガッツ
この前亡くなった島木譲二なんかも出ていますし、さすがに公開から30年近く経つと鬼籍に入る方も増えてきますね。この映画は公開時に観に行きましたので思い入れも深いですよ。

>剣道
偶然でしょうwww
ただ武士のイメージを監督たちが持っていたのかもしれませんね。
ではまた!
蟷螂の斧
2019年05月04日 06:30
今でも思い出します。朝刊を見たら「松田優作さん急死」の見出し心筋梗塞でも起こしたのかと思ったら膀胱癌。
数日後、映画館に「ブラック・レイン」を見に行きました。優作さんがスクリーンに登場したら、観客が一斉にシーン・・・と静まりました。「本当に亡くなったの?」と言う感じ。
この映画で優作さんが演じる「サトー」は本当に憎たらしい役でしたそれだけ優作さんの演技力が凄い証拠です
あれから30年。今でも思い出します。

>ちさ子さんの家

そりゃ、ないでしょう・・・

>でも、聴かないwww

そういう運命なんですね
2019年05月06日 18:34
こんばんは!

>急死
好きな俳優さんでしたので、驚きましたし、ショックでしたよ。レンタル屋さんに行ったら、全部借りられていました。

これからハリウッドに羽ばたいていくのかなあと期待していたら、まさかの死でした。息子さんたちが映画やドラマに出ていたら、無条件にひいき目で見てしまいますwww

>そりゃ
案外、関係者っていう人はそんなに大切にしないものかもしれません。知り合いだったら、速攻でもらいに行きますww

ではまた!
蟷螂の斧
2019年05月06日 20:44
優作さんが亡くなった頃に見た週刊誌。葬儀で、まだ何もわからない息子さんが笑顔を見せてる写真を見ました。今思えば、ご次男の方かな?

>「とほほ」なアンディ・ガルシア

彼が殺される場面は、佐藤(優作さん)に対して「何という酷い事をする奴だ」と怒りながら見ていました。そう思わせる優作さんの演技は凄かったです

>『探偵物語』

映画版を見ました。それほど強くない主人公。等身大の演技という人もいます。

>松田龍平君

先日見た「長州ファイブ」も良かったです。ちょっと前に見た「舟を編む」も
2019年05月06日 22:02
こんばんは!

>息子さん
葬儀後に残っていた勝新が美由紀さんを座の中心に据え、俳優仲間全員に「お前ら全員財布を出せ」と切り出し、全員が財布をスッカラカンにして美由紀さんに渡したため、帰りのタクシー代まで無くなって困ったというエピソードを聞いたことがあります。

今の時代だったら、あの頃のイカツイ俳優さんたちはほとんどが表舞台には出てこれないだろうなあと思いますwww

ではまた!
蟷螂の斧
2019年05月07日 18:09
>「お前ら全員財布を出せ」

さすが勝新言う事を聞いた俳優仲間も立派

>帰りのタクシー代まで無くなって困った

それもまた愛すべきエピソード

>健さんもよかった

「レイ・チャールズ
グラサンかけてアンディ・ガルシアと一緒に「ヘーイヘイ
往年の健さんファンは・・・
2019年05月08日 21:52
こんばんは!

勝新っていう人がもし身内にいたならば、とてもじゃないけど付き合えないし、敬遠したでしょうが、はたから見る分には魅力的な人ですね。

>往年
たぶん嫌だったでしょうねwww
でも受け入れて、しっかりとやりきるのが健さんなんでしょう。たしか『ミスター・ベースボール』という映画で中日の監督をしていましたねwww

ではまた!
蟷螂の斧
2019年05月09日 07:14
>『ミスター・ベースボール』という映画で中日の監督

僕も含めて中日ファンは喜んでいました
そして巨人が悪役?

>とてもじゃないけど付き合えないし

金の面でも苦労するかも・・・
2019年05月09日 17:10
こんばんは!

>悪役
強いチームじゃないと悪役にならないので、当時ならば巨人しかいないでしょうwww

>金
金で済めばいいのですが…www

ではまた!
蟷螂の斧
2019年05月12日 09:08
>この作品と共に、殉職する道を選んだようにも

この映画の後にフローレンス・ジョイナーとドラマ(刑事もの)で共演。僕は見逃してしまいました。

>『家族ゲーム』

森田監督が最後に余韻(謎)を残しました

>金で済めばいいのですが…www


悪い事に巻き込まれる?
2019年05月12日 09:36
おはようございます!

>ジョイナー
ぼくは見てしまいましたwww
とってつけたようにダッシュするシーンがクライマックスでありましたwww

>家族
みなが横に並んで食卓テーブルに座り、会話する位置取りの違和感を忘れられません。

>巻き
悪運や不運を運んでくる人がいて、皆はそんな人を疫病神と呼びますwww

ではまた!

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