『未知との遭遇』(1977)スピルバーグは素晴らしい監督なのです。もっと、こんなの作ってよ。

 1977年に公開され、全世界で、超のつくほど大ヒットしたSF作品が、この『未知との遭遇』です。監督は『激突』(1971)、『ジョーズ』(1975)と素晴らしい企画をもとに、映画監督として確実にステップ・アップしてきたスティーブン・スピルバーグでした。

 今では『カラー・パープル』、『太陽の帝国』、『シンドラーのリスト』、そして去年の『ミュンヘン』と、シリアスな大作ばかり作る、巨匠になってしまいましたが、『ET』、『レイダース』、『インディー・ジョーンズ』、『グレムリン』、『トワイライト・ゾーン』、『ジュラシック・パーク』などの「映画」らしい映画を作る、一流の娯楽映画を作る達人でもありました。

 個人的には、製作を務めた『抱きしめたい』も含め、上に列記した作品群の方が、愛着があり、記憶に強く残っています。アカデミー賞を狙うのならば、シリアス路線で行かなければ、賞を取れないのは分かります。しかし、多くの映画ファンが望んでいるのは、心の底から楽しめる、スピルバーグ・ワールドではないでしょうか。

 重々しく、深く考えるために、映画館に足を運ぶのが大嫌いな、ダメ映画ファンもいるのです。映画の基本は娯楽であったはずです。芸術と娯楽が上手くミックスされたのが、名作映画であり、どちらか一辺倒では名画とは言い難い。

 スピルバーグ監督は最高の娯楽映画を作れるのに、『宇宙戦争』のようなズッコケ映画も作ってしまいました。あれはあれで良いのですが、わざわざ手垢の付いた他人様のリメイクなどしなくても、オリジナルで十分に勝負できる彼が、何故あのような企画に乗ったのかが、不可解です。

 ハリウッドの製作会社、特にユニバーサルがもっとも望むのは、ユニバーサル・スタジオで商売しやすいキャラクター物の映画である事は明らかなのです。ファンも会社も望んでいるのに、彼が新たな娯楽企画に興味を示さないのが非常に残念です。『インディー・ジョーンズ』の続編が出来るようですが、リメイクなどスピルバーグ監督の映画を観てきた人は本気で待望するはずがありません。

 『ジュラシック・パーク』を撮る代わりに、『シンドラーのリスト』を撮影出来るようにするという条件があったようですが、インディーの復活を聞いた時は、おそらく『インディー~』でお茶を濁してから、よりシリアスなものを狙っているのだろうという底意が見えて、複雑な気持ちになりました。

 もし登場人物がショーン・コネリーじいちゃん、ハリソン・フォードとうちゃん、そして子供がヘイデン・クリステンセンだったら、もう悪夢としか言いようがない。さらにかあちゃんがキャリー・フィッシャーで、敵役がサミュエル・L・ジャクソンだったら、笑いも呆れも飛び越えて、フォースの世界に浸るしかない。ここまでやってくれると、パロディーとしては最高で、『1941』以来のお笑い映画になるかもしれないという期待感が大きくなります。まあ、ないでしょうね。

 それはさておき、『未知との遭遇』。指の動きと共にUFOが同調して出るシンセサイザーによる「ぱらりろれ~」の音階には嬉しくて、思わず顔がほころびました。映画館で観た時、あのシーンの壮大さは凄かったのです。大画面一杯に描かれるUFOの馬鹿でかさ、ジョン・ウィリアムズによる、未来派野郎なシンセ音楽、なんだかよく分からないのですが、迫力に圧倒されました。

 映画の楽しみを知っている、スピルバーグ監督は当時、あまり評価をされませんでしたが、映画ファンの心にいつまでも残り続ける傑作映画を数多く世に送り出しました。低く見る人も多いスピルバーグ監督ですが、才能の幅と深さは凡庸な監督が十人まとめてかかっても勝てないほどの差が確実に存在します。

 それは何が映画的であるかを知っているという事であり、自分の撮りたいものとビジネスを上手く融合させてきた天才であるという事です。映画でしか表現できない事を、映画で観客に伝えきるコミュニケーション能力が備わっている監督こそが、スピルバーグ監督なのです。その彼が、彼に貼り付けられたレッテルを剥がす為だけではないでしょうが、妙にシリアス物を撮りたがるのがとても残念です。

 まあ、真面目に語るのはこれくらいにします。この作品は、小学校低学年の頃に観たのが最初で、次に見たのがTVで、この時は、学校で次の日に「ぱらりろれ~」をやり、ついでに「ベントラ ベントラ」をやって宇宙人を呼ぼうとして、近所の山にみんなで登り、お祈りを捧げました。

 決死の努力をしましたが、ETもヨーダも現れることなく、またXファイルのように誘拐されることも無く、あれからもう、二十五年の月日が経っています。いまのところ、接近遭遇とは無縁の暮らしを送り続けています。

 宇宙ネタで言えば、1986年だったかに、ハレー彗星が僕らの星にやってきた時に、天体観測が趣味だった友人がいて、彼に誘われて、望遠鏡を使い、かの彗星を見ましたが、次に見るのは76年後という、途方もない事を聞き、なんというか感慨深くなったことも合わせて思い出しました。

 『トワイライト・ゾーン』の最初のエピソードでも、ハレー彗星がらみの話が出てきますが、当時は当時の思い出と共に、未来は未来の生活の中で、再度、あの綺麗な星を見ることが出来ると良いですね。レベッカのノッコさんも昔「76thスターズ」だったかで、かの彗星の曲を作っていました。

 昔のエスエフを見ているとよく思う事があります。それは確かに映像は現在の水準から見ると「ちゃっちい」のですが、その語ろうとすることの大きさは、今の作品の何倍もの大きさを誇っているように思えることです。

  過去のものばかりを褒めるのは、年のせいなのかも知れませんが、どうしても過去の作品のほうに評価が高くなる傾向があり、「いかんいかん」と思うこのごろです。映画の歴史というものはゴダール的歴史観でいうと、すべての映画は繋がっていくものなので、全ての過去の作品を基にして、新作が生まれてくるわけだから仕方ないことなのですが、年々新しいアプローチは少なくなってきているのが残念です。

 ですが、映画が生まれて、まだ百年ちょっとしか経っていないわけなので、新たな技術が必ず生まれ、トーキーがサイレントを席巻した時のような大革新が必ず来ることを信じて、今日もまた一本見よう、というところで、今日はこれくらいにしておきます。ハレー彗星がまた来る頃には、映画も革新していますよ。ついでに何故か、フランソワ・トリュフォー監督が出てきます。
総合評価 85点
未知との遭遇 ファイナル・カット版
未知との遭遇 ファイナル・カット版 [DVD]

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2006年03月29日 13:45
 オカピーさん、TBありがとうございました。こちらからもすぐにかえさせて頂きました。UFOの造形のイメージに、この作品が与えた影響は大きそうですね。ではまた。
和登さん
2006年03月29日 21:15
こんばんは用心棒さん。「未知との遭遇」は期待してみただけに あとで、いろいろカットしてたのを知って むかつきました。作品は和登好みで、手塚治虫風の 宇宙人と地球人が コンタクトするというメルヘンは あの時代がまだ 今ほどギスギスしてなかったてことですね。和登は「シンドラーのリスト」「カラーパープル」は 苦手で 娯楽SF作品がすきですね。
2006年03月29日 22:20
 和登さん、こんばんは。僕もシリアス路線が駄目で、敬遠する傾向が強いです。見る時は、覚悟を決めて見る感じになってしまうので、あまり手を出さないよう心がけています。
 誰も否定してはならない映画である『シンドラーのリスト』は苦痛でした。やいやい言える作品が好きです。ではまた。
蟷螂の斧
2019年11月03日 06:26
おはようございます。

>『ジュラシック・パーク』を撮る代わりに、『シンドラーのリスト』を撮影出来るようにするという条件

なるほどね。そういう事情があったんですか。
映画も商売ですから。

>声優さんたちが興味深かったのを覚えています。

日テレ版ドラえもん。最終回を見逃しました。お祖母ちゃんがNHKの民謡番組を見たいという事で。youtubeでは最終回の音声だけ聞けますね。
用心棒
2019年11月03日 15:00
こんにちは。

日テレ版はヒットすることなく、ひっそりと終了し、現在のテレ朝系に権利が移行して、声優陣をテコ入れしたら、まさかの国民的キャラクターに成長しました。

そのへんの事情やプライドもいつまで経っても、CS放送ですら流さない理由かもしれませんね。

映画はビッグビジネスですから、暗くて深刻な作品よりも、二次利用もしやすい恐竜物を作って欲しいのが本音でしょうね。

ではまた!
蟷螂の斧
2019年11月04日 13:50
こんにちは。今日は暖かいです。天気も良いし。

>そのへんの事情やプライド

日テレにしてみれば悔しかったでしょうね。

>声優陣をテコ入れしたら

日テレ版は、ドラえもん( 富田耕生→野沢雅子)、野比のび太( 太田淑子)、しずか( 恵比寿まさ子)、ジャイアン( 肝付兼太)、スネ夫( 八代駿)・・・etc.それも良きかな。

>映画はビッグビジネス

北野武監督も自分が作りたい映画の為に、その前の映画は色々と・・・。
用心棒
2019年11月05日 00:21
こんばんは!

>日テレ
民放はお互いにライバル意識が強いですから、色々あるのでしょう。

>それも
ジャイアンとスネ夫が戸惑いますねwww

>北野
自分が撮りたいものを取るためにビジネスに応じるということでしょう。エンタメと芸術性の乖離は現実的に考えると厳しいのでしょう。

ではまた!
蟷螂の斧
2019年11月05日 06:11
おはようございます。

>ジャイアンとスネ夫が戸惑いますねwww

肝付兼太さんと言えば「スネ夫」ですからね。あ、でも「オバQ」ではゴジラつまり身体が大きいいじめっ子を演じていました。八代駿さんと言えば「トムとジェリー」のトム。あるいは「いなかっぺ大将」の西一(にしはじめ)。

>未知との遭遇

やっぱり、あの山ですね。デビルスタワーと呼ばれ、地元一帯の先住民にとって、聖なる山となっているそうです。

>自分が撮りたいもの

『みんな〜やってるか!』『TAKESHIS'』『監督・ばんざい!』あたりでしょうか?
用心棒
2019年11月05日 08:25
おはようございます!

>いなかっぺ
なつかしいですね。
ひとつひとよりちからもち~♪

>聖なる山
名所作りに貢献しているわけですね!

>TAKESHIS'
フェリーニ作品を見ている感じでした。名声は十分ですし、これからは好きな企画を通せる映画界であって欲しいですよwww

ではまた!
蟷螂の斧
2019年11月06日 06:08
おはようございます。

>ひとつひとよりちからもち~♪

天童よしみ。当時は吉田よしみでしたっけ?

>名所作りに貢献しているわけですね!

大河ドラマや朝ドラと同じです。

>フェリーニ作品を見ている感じでした。

岸本加世子や石橋保がいい味を出してました。
用心棒
2019年11月06日 21:44
こんばんは!

>よしみ
さすがに覚えてないですよwww
>ドラマ
アニメも聖地とか言われますし、町おこしになっていますね。
>いい味
脇役が光って、映画の奥行きが広がります。

ではまた!

この記事へのトラックバック

  • 映画評「未知との遭遇(ファイナル・カット版)」

    Excerpt: ☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1977年アメリカ映画 監督スティーヴン・スピルバーグ ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2006-03-29 01:07
  • 未知との遭遇

    Excerpt: {{{ 1980年製作 米国 原題:Close Encounters of the Third Kind 監督:スティーヴン・スピルバーグ 脚本:スティーヴン・スピルバーグ 音楽;ジョン.. Weblog: PANAの言いたい放題 racked: 2006-12-15 21:02