『ヴァン・ヘルシング』(2004)はモンスター総出演の顔見世興行映画なのか、単にネタがないだけか。

 スティーブン・ソマーズ監督の2004年の作品ですが、これはまたえらいものを作ったものです。この何年かのハリウッドやわが国における「リメイク(大まかにオリジナルではないものとしてここでは使っています。続編やドラマの劇場版も含む)」物の、あまりにも多すぎる状況は目を覆うばかりになっています。昔の映画のリメイクならまだしも、「漫画」のそれには驚きを通り越してあきれてしまいます。またドラマの映画化もほとんどが酷いものばかりです。

 『宇宙戦争』、『スター・ウォーズ シスの復讐』、『NANA』、『CASHERN』、『リング(アメリカ版)』、そして悪夢の『デビルマン』・・・。これらはまだ単品の原作を汚しただけです。しかるにこの最低の製作者はオールド・ファンが大切にしているベラ・ルゴシ、ボリス・カーロフ、ロン・チェイニー親子、クリストファー・リー、ピーター・カッシングなどの印象が強烈なモンスター達を、わずか一作で薄っぺらいものに価値を貶めて、怪物そのものを汚す事に成功しました。

 CGなどがどれだけ凝っていても(美しいとは思えなかったのでこう表現しております。)、内容が伴わず、キャラクターへの愛情を全く持っていないのは明白です。これらのモンスター達は、やむにやまれぬ事情から人間を襲うために、哀愁を帯びているはずなのです。実際にオールドフィルムで描かれる彼ら怪物たちは、むしろ人間よりも人間臭さがあり、そのためにファンの心を掴んだのです。

 それなのに、この作品で描かれる彼らからは悲壮感が全く感じられません。「ハイド氏」は超人ハルクかWWFのプロレスラーのようで、泣きそうになりました。「狼男」、「ドラキュラ」はただ飛んだり、跳ねたりしているだけでした。唯一フランケンシュタイン博士の怪物のみが弱感哀愁らしきものを漂わせてくれていたのが救いではありました。

 そして何よりも最悪だったのは主人公「ヴァン・ヘルシング」その人でした。ヒュー・ジャックマン?ヘルシングは教授なのです。威厳に満ちてモンスターを退治する知性の塊であり、意志の人なのです。あれではまるで、インディー・ジョーンズと全く変わりがない。(インディーも学者の設定ではありますが。)主人公が納まりの悪い映画は、方向が定まらず大抵こけますが見事にこれも失敗作でした。あんなに若くて、肉体を見せつけるヘルシングは悪夢でした。ヒューさんのキャリアをも汚してしまいました。

 それに拍車をかけたのが、CGを使いすぎて、デジタル化しすぎて質感が全く無くなってしまった映像でした。序盤ではそれなりに雰囲気を出していたものの(結構期待しました。)、怪物たちが動き出してからは、無意味に速すぎて全く恐さは描けていませんでした。「次恐くなるよ、さあ恐くなるよ」というのがバレバレの音楽や演出にはほとほと情けなくなりました。ボクシングで相手に見切られてしまって避けられるパンチを「テレフォン・パンチ」といいますが、この作品でのスリル演出はまさに「テレフォン・ホラー」とでも言ってよいような惨憺たる出来でした。

 漫画のような、出来の悪いルパンのコピーのようなクライマックスの救出シーンでの綱渡りシーンには思わず椅子から転げ落ちそうになりました。なんという脱力感。リラクゼーションのためにモンスター物を見ているのではないのだ。ユニバーサルの怪物製作者が草葉の陰から泣いてるぜ。

 違和感と脱力感に支配された時間を過ごしました。初めて映画を見る子供たちならば、東映漫画祭りのノリで楽しめる作品かもしれません。あと場面転換、アングル、カットが節操なく、ばたばた変わり、とても見づらい作品になっています。

 昔のモンスター・ホラーの良いとこ取りをしようとして、『フランケンシュタイン』、『吸血鬼ノスフェラトゥ』などからシーンをパクリ倒していますが、痛々しすぎて切なくなります。おお、切なくなった。モンスター映画を切り貼りした、この映画こそ「映画のフランケンシュタイン」であり、最低のリメイクかもしれません。最低の映画は『デビルマン』ですが、リメイク部門ならば、『ヴァン~』はワースト10に入るでしょう。いっそのこと『怪物君』のリメイクでも作ってくれたほうが、よほど楽しく見れることでしょう。「フンガ~」、「ザマス、ザマス」、「ソーデ、ガンス」を復活させてくれれば、観に行くね。

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この記事へのコメント

2005年11月11日 02:25
 こんにちは。我が拙い映画評をTBさせて戴きました。
 僕もこの映画には憤慨しまくりました。原作やオリジナル映画への尊敬のなさ、下手なお話の展開や編集、CGに頼った映画作者の精神性の問題。
 これなら「凸凹フランケンシュタインの巻」の方がはるかに面白いですよ。用心棒さんにしてみると、僕の4点は甘いということになるかもしれませんが。
 また、リメイクと続編の多さを嘆いている一人。現在リメイク・リスト作成中で、いずれ本館で発表するつもりです。
用心棒
2005年11月11日 16:52
 こんにちは。リメイク&続編物なんですが、きちんと作られているものや、いくつかの面でオリジナルを越えているものも中にはあるのですが、数えるほどしかないのが現状です。

 個人的にオリジナルを超えているのではと思えるもののリストを5,6本書いておきます。

 『ターミネーター2(全てが)』、『椿三十郎(娯楽として)』、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲(一番精神性を感じます)』、『遊星からの物体Ⅹ(モノクロの良さ以外)』、『ゴッド・ファーザー2(ドラマの深さや、業の深さが)』などです。どうですかね。
2005年11月11日 18:06
 こんにちは!
 無条件に賛成できるのは、「スター・ウォーズ」と「ゴッドファーザー」です。
 「ターミネーター」はオリジナルの見通しの良さ(タイム・パラドックスは別にして)が捨てがたく、「用心棒」は初めて鑑賞した時のインパクトが強すぎて冷静な判断が出来ません。「遊星からの物体X」は30年間に劇的に製作環境が変わった故に比較が難しいですが、総合的にリメイクの方が上でしょうね。
 それ以外で、「フレンチ・コネクション2」は活動写真としてはオリジナルより上と思いましたよ。
 「サイコ」はオリジナル脚本を殆ど変えずに作ったはずなのに、オリジナルに到底及ばない。演出というのは奥が深いものです。
用心棒
2005年11月11日 19:21
 ひどいリメイクがまかり通ってしまうのは、製作者のアイデアが貧困なのか、観客の映画を判別する力が退化してしまったのか。
 案外、映画という分野が芸術としても娯楽としても曲がり角というか、底の時期に来ているのかもしれません。
 寂しいことですが現実かもしれません。
豆酢
2008年04月04日 15:43
用心棒さんとプロフェッサーが咆えてらっしゃるように、映画としての出来は、これは近年まれに見る愚作だと思います。
私もホラーやモンスター映画は大好きなクチでして、これも観たのですが、ぐるぐる廻る映像に気分が悪くなっただけでした。これはリメイクと呼んじゃいけないシロモノのようにも感じますね。仰るとおり、ただの下手くそな切り貼り映画です。映画ですらないかもしれない…。オーストラリアの、人気も実力もある俳優達が集まっているのが余計に悲しいです。子沢山ドラキュラ伯爵を演じたのはリチャード・ロクスバーグという男、この人本来は舞台が主戦場の役者さんです。非常に良い俳優さんなんですよ(涙)。英国でシャーロック・ホームズに扮したテレビ映画もあります。
リメイクに良い作品があまりないのは悲しい現状ですね。大好きな「ボディ・スナッチャー」にもリメイク作がありますが、第1作目と第2作目はどちらもいい味わいがあって面白かったです。第4作目の「インベージョン」は酷い出来でしたが。
2008年04月05日 11:39
 こんにちは。
『恐怖の街』が最初ですよね。オリジナルを未見なので、それを先に見てからほかのを見ようと思っているのですが、いつまでもオリジナルが見つからない状態です。
 リメイク版が出るということはオリジナルが素晴らしい場合が多いので、それを超えようとしたいクリエイターが多いのか、それともある程度の収益が見込めるからという皮算用が働くためか毎年作られますが、どれも中途半端ですね。ではまた。

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    Excerpt: ☆☆(4点/10点満点中) 2004年アメリカ映画 監督スティーヴン・ソマーズ ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2005-11-11 02:12