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zoom RSS 『花戦さ』(2017)野村萬斎主演の権力を手玉に取る時代劇。

<<   作成日時 : 2017/06/13 13:13   >>

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 野村萬斎主演の時代劇だと映画館まで観に来たのは『のぼうの城』以来、五年ぶりくらいの鑑賞です。先週観に行った『LOGAN』『パトリオット・デイ』からの二日連続の鑑賞になります。

 時代劇というのは信長・秀吉・家康の誰かが出ないと盛り上がらないのだろうか。大河ドラマなども三人の周りにいた人たちを主役にしたりしていて、いわば小粒なスピンオフばかりになってしまい、どんどん地味になっております。

 こうなると誰か三人と同時期に存在し、活躍を見てきたというていで創作キャラクターを登場させる等の荒業を使う日が来るかもしれない。

 創作でない人物で主役を張れそうなのは前田利家や黒田官兵衛でしたが、もう大河でやりましたし、後は足利義昭、今川氏真、蜂須賀小六、石田三成、加藤清正、長曽我部元親くらいでしょうか。悲劇的な最期で終わるのは年末に相応しくはないでしょうから、上記で制作できそうなのは蜂須賀小六くらいでしょうか。

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 この映画では華道の名門、池坊専好を主役に持ってきて、信長・秀吉の天下人を対比させ、千利休と池坊の交友と秀吉への応対の対比をも描く。

 花を使った戦を仕掛けるという発想はユニークではあるが、難しい見せ方にならざるを得ない。そのためか、信長に仕掛ける華道と秀吉に仕掛ける華道でのエピソードの筋が似通ってくる。天下人二人の対応と器量の大きさを比較するのも見どころかもしれない。

 出演は野村萬斎(池坊専好)、市川猿之助(豊臣秀吉)、中井貴一(織田信長)、佐々木蔵之介(前田利家)、佐藤浩市(千利休)、高橋克実(吉右衛門)、和田正人(池坊専武)、森川葵( れん)、吉田栄作(石田三成)らが物語世界を埋めています。

 作品そのものには関係ないのでしょうが、高橋克実は月代いらずで自然なので笑ってしまいました。わざわざ“さかやき”部分は作るのでしょうか。それとも地肌なのだろうか。メイクさんは楽だったのでしょうか。

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 見ていて綺麗なのは池坊一門が監修しているであろう生け花(華道だと花は華なのでしょうか)の美しさと迫力でしょう。昇り竜と名付けられた信長への献上の松、利休の野点用に彩られた花々の楽しさ(花笑う)、秀吉を諫めるために盛られた花々や草木の見事さは大画面で見た方が良い。

 金ピカに飾り立てた秀吉の茶室に対比させるように質素に野の花を木々に盛った空間は細やかではあるが、生命力の強さと儚さを感じさせる見事な演出です。

 またそもそも専好の華道は死者を弔うためのものでもあることが冒頭の使者への手向けの花だと示される。何度も繰り返される弔いシーンはそれだけ無情に死んでいく者が多かったということでしょう。

 作品では応仁の乱以後の名もなき死者たち、親友でもある利休(実際に付き合いがあったかは知りません)、太閤秀吉の粛清の犠牲となった町人たち、秀吉の嫡男となるはずだった鶴丸に花が捧げられる。そして太閤秀吉を諫める武器としても花を使う。

 自分を笑った者はたとえ女子供であろうと首を刎ねて、河原に晒すという蛮行に走り出すとついに専好は立ち、秀吉に文化人らしく向かっていく。

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 信長が残した言葉とされる茶道と華道へ精進していくことを思い出す秀吉というフィクションで物語を締めるのは強引ではありますが、それほど無茶にはなっていない。

 殺された絵師の忘れ形見という設定の森川葵は三成の讒言と追手により捕縛されるが、毒草を口にして死んだと思われて、河原に捨てられる。実は仮死状態であったことが示されるが、強引に過ぎる。

 映像として興味深いのは戦国時代後半までは五重塔を残し、まだ廃墟であった京の街が徐々に活気を取り戻し、秀吉の治世では繁栄を謳歌してくる様子が描かれる。

 難点は野村萬斎の演技があまりにもオーバー過ぎてどうしても違和感があることです。歌舞伎陣が自然体で、今では邦画に欠かせない個性となった佐藤浩市の利休が素晴らしい。

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 『利休』で父親である三國連太郎も利休を演じており、1989年公開時には観に行ったので個人的にはとても興味深くスクリーンを眺めていました。

 傑作とは言い難い作品ですが、池坊一門だけではなく、表千家・裏千家・武者小路千家が製作に協力しているのをスタッフロールで見るだけでも貴重かもしれません。

 とにかくお花はとても綺麗ですし、三千家が監修したであろう茶器や庵の様子を見るだけでも価値があります。

総合評価 65点


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒サン、こんばんわ。
この映画も観たくなりましたね。
さて、各地に各時代の英雄は確かにいますね。
けれども、信長時代以降にならないと地域性が強すぎて、現代まで引き摺っている柵、たくさんありそうですね〜。
蜂須賀家も映画「北の零年」が確か幕末の徳島藩からの淡路島の独立騒動に取材していたように思います。
この独立騒動も結構な残虐ぶり、それゆえの北海道移住だったようです。
だから、日本統一という大義名分で犠牲も美化できる範囲が安全パイって逆説なのかな〜と愚考します。
ちなみに石田三成ですが、「三成の不思議なる条々(岩井三四二)」など読むと、意外と知られていない事実があるのだな〜と思いますよ。
最近は家康史観が随分と払拭されつつあり、その辺を描いてみることで、リメイクではない人物像が描けることもありそうな予感です。
そうした観点からすると、秀吉は華道を助けた主役だった筈では?そうでなければ華道も根刮ぎやられていたのでは?とも想像します。
たしかに利休は自害を強要されますが、どうも秀吉の周囲には有力者を追い込んで秀吉を孤立させようとする遠謀があった可能性が最近の歴史学会では唱えられているようです。
一例が秀次。
秀吉は切腹を強要していないのに、詰問使の福島正則(だっったかな?)が大いに詰って追い込んだことが真相なんだそうです。
信長も秀吉も滅ぶべき理由を後世に加工された、家康史観の材料にハマリ過ぎていない労作を期待しております。
きやらはん
2017/06/13 19:12
こんばんは!

歴史というのは時間が経てば最後の勝者が好き勝手に書き換えても良いというのは中国を見れば分かりますwww

南シナ海の領海の主張など無意味ですし、歴史上そうだと言うなら、あの領土はモンゴルだった訳ですし、中共が900年前から存在していたというなら、元寇時の損害賠償をさせましょうwww

>家康史観
最後に勝った名古屋のオッサンが他の名古屋の先輩たちの手柄を横取りしただけでしょwww

もし信長が天下を収め続けていれば、今みたいに辛気臭いせこい国民性ではなく、自由闊達な国になっていたでしょうし、地球儀で見る外交が子供まで浸透していたでしょう。残念です。

そもそも石田三成がただの茶坊主の官僚ならば、大谷刑部、宇喜多秀家、島左近、島津義弘、真田親子など、あれほど多くの戦国武将を自軍に集められませんよ。

ではまた!
用心棒
2017/06/13 20:38
用心棒サン、こんばんわ。
そういえば島左近の墓は新大阪駅から暫く歩いた処に鎮まっていましたね。十三駅だったかな?
島家の子孫は淀川改修や広島に渡り酒造業を興したりしたらしいですね。
石田三成が優秀な部下を使い切れなかったダメ夫化するという家康史観に合致していたがために生き残らされたのですかね?
私は優秀な人材を根絶やしにすると流石に家康がダメ夫になってしまうので、そこまで出来なかったくらい優秀な人材だったのかな、と思いますね。
真田昌幸・幸村父子も、後に大阪城を主戦論に引きずり込む家康の陰謀の手先だった、とか言われちゃうくらい大坂に近いところで生かされていましたしね。
きやらはん
2017/06/15 21:16
こんばんは!

家を存続するためには嘘も方便と割り切って徳川に寄せていったのかもしれませんねwww

大阪は豊臣が滅びた町ですし、いまでも家康は嫌われていますよww

ではまた!
用心棒
2017/06/16 00:11
用心棒サン、こんばんわ。
昨夜のNHK番組で、信長は非常に気遣い多く細心の人物であることが描かれていました。
その意味では、信長が茶道華道の培養基を拵えたことも或る程度は史実なのかも知れませんね。
ところで奈良県に所縁の用心棒サン、コチラは御存知ですかね。
御所の後継者不在の神社サンを継がれた女性神職サンです。日本人は歴史の再興に熱心ですね。喫茶店も併設されているようですよ。コチラで今度オフ会でも如何ですか笑。
葛木御歳神社(奈良県御所市東持田字御歳山)
http://www.mitoshijinja.jp/yuisyo.htm
御祭神は、私たちが正月に祭り親しんでいる年神様(としがみさま)。大年神、御歳神、若年神といわれています。現在の本殿は、春日大社の本殿第一殿を移築したものであります。
鏡餅は御歳神へのお供え物であり、このおさがりのお餅には御歳神の魂がこめられており、これを 「御歳魂(おとしだま)」と呼んでいたものが今の「お年玉」の起源であります。貞観八年(866年)の「三代実録」には、本社が、朝廷の任命した神祇官を拒否しているとあります。これは、おそらく、朝廷の意向を曲げる程権威のある、別の奉斎集団が独自にお祀りしていたのではないかと推察されます。
きやらはん
2017/06/18 17:27
こんばんは!

信長は茶器なども集めていましたし、信貴山に籠もった松永弾正久秀に対し、彼が所持していた平蜘蛛茶釜を差し出すように迫っていたようです。結果として、久秀は茶器を破壊し、自害して果てました。

>御所
奈良県民ですが、じつは奈良市民の僕は御所には行った記憶がないんですよ。

>神社
あちこち神社だらけですし、ちょっと原付に乗れば、教科書に載っている寺社仏閣がたくさんありますww

 叔父の家に歩いていくときは興福寺や春日大社の前を通りますよww

ではまた!
用心棒
2017/06/19 01:06
用心棒サン、こんばんわ。
確かに信長は文化財には細心の注意を払っていましたね。
御所はJRの方の駅は本当に寂しい感じでしたね。
実は若かりし頃に御所から大阪まで歩いたことがあるのです。
でも、橿原等へのアクセスも良いので暮らしぶりの良い地域もある、とは最近知った次第です。
奈良も広いですから。
自身の住む都道府県でも行ったことが無い所も多々ありますよね。というか、自分の住んでいる街でも行ったことの無い飲食店も普通にあります。
実は先日に地元の広島焼の店に初めて行き「この世界の片隅に」の話をしたら、店員いわく「ウチの店長が広島弁のアドバイザーだった。トイレにも映画の資料が貼ってある。」とのことで、ソースの味も二倍になった感がありましたよ。
きやらはん
2017/06/19 20:39
こんばんは!

たしかに地元でもすべてのお店に出入りしているわけではありませんし、食わず嫌いをしている所もありますよね。

ここ数年は会社の帰りにひとつ前の駅で降りて1時間程度歩いて帰宅していますが、できるだけ違う道も通るようにしています。

今のところ、職質を受けたことはありませんwww

>アドバイザー
取材に来られたのでしょうね。映画ファンとしては楽しいですね。

ではまた!
用心棒
2017/06/20 00:24

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