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zoom RSS 『ゴンドラ』(1987)AVで有名な伊藤監督の才気溢れるデビュー作。

<<   作成日時 : 2017/03/06 22:05   >>

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 政府や経団連は月間残業時間の上限を100時間にすべきという意見を吐き、鬼畜ぶりを発揮しています。労働時間を100時間ではなく、残業時間を100時間です。

 欧米(EU)では月間30時間だそうなので、過労死基準になるその差に驚きます。基本的に日本企業のほとんどは綺麗ごとを言うだけのブラック企業であり、サービス残業という強制労働は当然であり、真っ黒と真っ白の間にはどす黒いグレー企業から比較的マシなグレー企業まであります。

 どうしても無理やりに大多数の国民に負担を強要するのであれば、プレミアム・フライデーとかいう愚かなキャンペーンを行う前に経団連会長榊原氏(東レの経営者)は東レで率先して100時間残業を実践すべきです。

 完全週休2日制が普通の中、一か月で働く日数は20日前後のはずで、100時間を20で割ると毎日5時間残業するペースになります。

 これを通常勤務8時間に足すと13時間労働です。富国強兵時代の富岡製紙工場では17時間労働が普通だったそうですが、それほど大差はない。

 もし労働時間を13時間にするのであれば、まずは公務員と東レ社員が5年ほど見本を示し、誰も過労死やうつ病などの健康被害を起こさないという検証を得てから導入すべきである。

 当然ですが、過労死を出したり、うつ病患者を多く出した企業は新聞や政府広報で問答無用で公表すべきであり、懲罰的意味合いを持つ巨額賠償を行うべきである。

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 マスコミや野党はどうでもいい私立小学校の話題をごちゃごちゃ言う前に大多数に負担をかける働き方改革(じっさいは”働かせ方”改悪の国民奴隷化計画)というふざけた政策に批判を注力すべきであろう。

 AV監督に転身した伊藤智生監督は現在はTOHJIROを名乗り、有名な監督になっているようですが、あの業界もポルノが海外無修正動画サイトで無料で見られる時代になってしまっている中でいつまでもボカシが入る状況が変わらないようではますます苦しくなるでしょう。

 労働条件も劣悪なようで、ちょくちょく元AV女優らがいかにひどい状況だったかとか、無理やりに出演させられたかなどを切々と語っています。しかも性病に感染しやすい環境なので、生死にかかわります。

 いつの時代も労働者は経営側から搾取され続ける運命にあります。経済界とグルになった政治家もわれ関せずで地元に帰った時だけ良いことを言いますが、誰も信じてはいない。

 こうなったら、ぼくら労働者(特に都市生活者)は保険代や駐車場代、ガソリン代などがかさむ自動車や資産価値が単なる幻でしかない不動産など買わずに株やETF(もちろん日本企業ではなく欧米や新興国)を購入し、経営側からお金を取り戻す算段をすべきです。

 今回採り上げる『ゴンドラ』の主人公の青年(界健太。監督の実弟)も青森の田舎から東京に働きに出てきたものの成功とはかけ離れたビルの窓掃除スタッフで夜遅くまで働いた後は木造の古い安アパートに戻るという暮らしぶりに精神のバランスを崩しかけていた矢先に自閉症気味の少女と出会うところから始まります。

 バブル時代全盛の1980年代後半、月刊宝島がまだサブカル雑誌だった頃、古今東西を問わず、多くのカルト映画を紹介しているコーナーがあり、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』、レズビアン芸術家を描いた『エゴン・シーレ』、尖っていたころのブライアン・デ=パルマの一連の作品群などを特集していました。

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 邦画の問題作も色々と取り上げていて、深作欣二の『軍旗はためく下に』、山本政志監督の『ロビンソンの庭』、原一男の『ゆきゆきて神軍』等とともに伊藤智生監督(のちにAV監督に転身。)のこの『ゴンドラ』をはじめて知ったのも月刊宝島でした。

 その後、レンタルビデオ屋さんを探し回り、なんとか数年越しでたどり着いたときは嬉しかったのを覚えています。久しぶりに見たくなり、Amazonで検索すると案の定、DVD化されておらず、大昔のビデオテープが1万円超えで出品も稀という、いつもながらの状況でした。

 なんとか四方八方手を尽くし、大昔のビデオテープを見ることが出来ました。重くて、ガシャッと音が鳴るビデオテープを再生するときはいつもテープが絡みませんようにと祈りながらの動作になります。

 大まかに説明するとこの映画は高層ビルの窓拭きを生業としている生真面目でおとなしい青年(界 健太)とプールでの授業で初潮を迎えた、自閉症ぎみの少女(上村佳子)との不器用な交流を描いた、つまりマイノリティーに目を向けた作品なのです。

 物語としては飼っていた文鳥が死んでしまい、遺骸を冷蔵庫に隠していた少女(上村佳子)は母親である木内みどりに死骸を棄てられ、この文鳥を葬るための場所を探すために界青年と彼の故郷である下北半島に家出を図る。このへんだけを見ていると思い出すのはメーテル・リンクの『青い鳥』そのものです。失ったものは何だったのか。得るものは何なのか。

 成長するとはどういうことなのか。分かりやすい記号があちこちにセットされています。映像も素晴らしく、都会の機能的な高層ビルの設計と構図、地元の町での美しすぎるほどの自然の景色のギャップに目を奪われます。

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 そんな彼女に近づいた界健太は話をするうちに自分の故郷へ連れ去って(未成年略取と誘拐ですね。)しまう。タモリ主演の『キッドナップ・ブルース』みたい。

 キーになる音叉や波、雑踏、そして無音のサイレントシーンでの音の使い方や構図の作り方が独特かつ斬新で、若いクリエーターたちが表現したいように撮り切った感じがよく出ており、才能が爆発している傑作です。過去を振り返る時にモノクロになるのですが、それは登場人物にとってとても重要なことを表す、激情のシーンです。

 こうした感情表現は内田吐夢監督の最高傑作映画となった『飢餓海峡』で何度も使用され、多くの映画ファンの記憶に残っています。

 無音シーンには二種類あり、一つは分かりやすい音のない世界ですが、もうひとつに凄みがあります。外界と隔てられたガラスの窓を拭く青年は無音の環境でビルの外から内部で働く人々を見るのですが、誰も彼を存在しないかのように気にも留めず、黙々と生きています。

 まるで別世界の住人のようで、多くの人間が蠢く、車が騒々しい大都会のはずですが、絶対に越えられない壁が存在しているようです。たまに彼の存在に気づいた者も彼を遮断すべくカーテンを下してしまう。お洒落なレストランで彼女をモノにしようとしている馬鹿な白人が労働者を見たくもないものとしてウェイターに偉そうに要求するさまが見苦しい。

 そんなガラス越しの存在にしか過ぎない別世界の彼と目が合い、怪我をした文鳥を病院に連れて行ってくれた彼に不器用ながらも接触するのが同じく孤独で、初潮を迎え他の子供よりも先に大人の領域に入り、疎外感を深めてしまった少女でした。

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 交流を通じ、徐々に解りあい、主人公青年と少女が下北に逃避行する前にアパートの部屋で少女が文鳥のお礼に描いた水彩画を見るシーンがあります。聳え立つビルとゴンドラの絵を見た彼は少女を地元に連れて行こうと決心します。

 決心が決まると迅速に行動に移したのをセリフでなく、映像で語ります。その方法は黒澤明の『天国と地獄』での三船邸から鉄道に切り替わるシーンの見事さに似ています。水彩画と彼の何かを思い詰める表情から一転して画面が切り替わると、下北に向かっていく鉄道が上方向に猛烈なスピードで進んでいく構図と切り替わりが素晴らしい。

 薄汚れた都会からビルを飛び越えて行くと自然いっぱいの天国に昇天していくような錯覚が起こります。自然を美しく描くのはもちろんですが、初潮を迎えた少女の不安とけだるさ、精神的な辛さを映像表現で伝えてくる監督の才能に感心しました。

 また特筆すべきは子供の残酷さと大人になりかけている諦めの感情が入り混じ、その瞬間瞬間で別の顔が出てくる少女、上村佳子の圧巻の演技であり、彼女の表情は必見です。現在は活動していないようですが、女優の評価は出演数だけではなく、一本にどれだけ魂がこもっているかも見るべきなのかもしれない。

 一本で消える女優はたくさんいますが、そういう女優さんもまた僕ら映画ファンの記憶に残り続けます。『隠し砦の三悪人』の上原美佐、『悪い種子』のパティ・マコーマックなどその後も女優活動は行っているものの代表作のインパクトが強すぎて、他の出演作が霞んでしまっている人も多い。

 視線の位置も人間的な温かさがありますが、当初は上から少女を見ていた青年、一方の少女も視線を全く合わせることもない。それが徐々に互いの目線まで下りてきたり合わせたりして、最後は同じ高さで話しています。距離の接近だけでなく、高さも接近もあるのが表現としてとても繊細です。劇中に何度も出てくるカーテンやガラスは自分と他者を隔てる象徴なのでしょう。

 ときおり登場するアホ丸出しの白人や黒人たちは当時の浮かれていたころの時代の名残でしょうし、そんな世の中の風潮になじめない界青年や上村佳子との対比でより違和感がある。

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 劇中、まったく笑わずに生気のない寂しそうな眼とまぶたが厚ぼったい上村佳子の存在は圧倒的で、木内みどり、出門英(僕と同じ年齢で死去されたので他人ごとではない)、佐々木すみえ、鈴木正幸(金八先生に出てくるお巡りさん役が思い出深い)ら共演しているベテラン俳優たちが添え物に見える。言い換えると彼女を引き立たせるために抑制の効いた演技をしているとも言える。

  バブル経済に浮かれていた当時の日本ではこの作品はあまりにも地味すぎたために専門家筋では称賛され、多くの海外映画祭に出品されたものの、本国ではたいした話題にもならずにワゴン・セールや燃えないゴミとして消えていきました。

 ぼくももし当時の宝島を読んでいなければ、この作品に巡りあうこともなかったでしょうし、四半世紀も経ってから、ふいに思い出すこともなかったでしょう。音楽や映画、風変わりな小説についてよく特集してくれていた雑誌でした。

 今の若い映画マニアはたぶん『映画秘宝』を読んで、未だ見ぬ強豪のカルト映画を追い求めているのでしょう。ライターさんたちには昔の映画をカルトだろうが、超メジャー作品だろうが食わず嫌いにならないように若いマニア候補たちを導いて欲しいものです。昔はそういう役割は東京12チャンネルが担っていたものですが、今はCSやWOWOWなのかなあ。

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 現在この作品はDVD化をされることもなく、歴史の片隅に追いやられてしまっています。商品化されない理由としては監督をはじめとする関係者の意志なのか、それとも少女の全裸での入浴シーンがあるために倫理上難しいのか、両方、もしくはそのどちらかなのか。

 真相はよくわかりませんが、学生時代に見た思い出深い作品でもありますので、そのへんは上手くやってもらって、普通に自宅でDVD鑑賞できる態勢を整えてほしいものです。

 そんな気持ちで見ていましたが、ふと関西の名画座であるシネ・ヌーヴォの2017年3月公開予定作品をチェックしているとなんとこの映画のリバイバル上映の告知があり、かなり驚きました。

 ようやく伊藤智生(ちしょう)監督が二作目を撮る決心がついたようで、監督も今度、関西での上映時には劇場に訪れるとのことです。公開ついでに30年越しのDVD化も果たして欲しいですし、映画製作に資金が必要ならば、クラウンドファンディングを呼び掛けて欲しいですね。

 今なら一口10000円とかで募集すれば、4000万くらいは集められるのではないでしょうか。この映画の制作当時は5000万円の製作費用を集めるのに富士銀行から4000万円借り入れたり、上映館がなくて、あちこちのホールで上映したりとかなりの苦労をされたようですので、もし出資を募るのなら、利用してほしいものです。

総合評価 82点


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