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zoom RSS 『スラム砦の伝説』(1984)15年にも及んだ雌伏の時を経て、ようやく撮影できた新作。

<<   作成日時 : 2016/11/05 00:24   >>

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 『スラム砦の伝説』はビデオでは所有していましたが、映画館で観るのははじめてです。ビデオで見ていた限りではあまり良さが理解できなかった作品でもあります。

 三枚綴りの前売り券を使い、本日の一本目に選びました。整理券番号が三番だったので最後列の真ん中に陣取れたのでかなり見やすいポジションです。

 内容はスラム砦の人柱伝説に題材を採っています。図形の配置の仕方がセルゲイ・エイゼンシュテイン監督を思い出させます。左右対称への極端なまでの執着にも見えるが、よく見ると微妙にずらされた構図が奇妙であり、居心地はかなり悪く、不安な気持ちで満たされていく。

 何も知らずにタイトルだけで判断するとスペクタクル時代劇なのかなあと誤解するでしょうが、じっさいに観ていくと能の世界に近い様式美に溢れる作品である。ただし楽しく見られるかと言われれば、「否。」と答えざるを得ない。

 敷居がかなり高い作品であり、多くのセルゲイ・パラジャーノフ作品を観てきた人が久しぶりのパラジャーノフ作品に接するだけでも良しとしなければならないと自覚して観るべき一本であろう。

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 難解かつ個性的すぎる作風で知られるセルゲイ・パラジャーノフ監督の作品群のなかでは一応、ストーリーのガイドラインが示されているので何を見ているのかが分からなくなることはないが、分かりやすさに徹したハリウッドや邦画の単純さとは比べ物にならない複雑さを持っていますのでまずは簡単にストーリー展開を押さえていきます。

@グルジアの王様のお召しを受けた主人公ドゥルミシハンは将来を誓った女性のヴァルドーを伴い、御前での踊りを披露しに行こうとするも彼女の猛烈な反対に合い、一人で自慢の馬に乗って城へ向かう。

 しかしすべては王が仕掛けた策略で、目的は彼の駿馬を奪い取るための罠だった。絶望した彼はトルコとの国境地帯まで彷徨しているとイスラム風の異国情緒溢れる隊商人の多くの人馬と遭遇する。そして彼は隊長ナダール・ザリカシビリ(オスマン・アガ)に気に入られ、隊商に合流する。

 イスラムとキリスト教に揺れるオスマン・アガは生きていくために、心のなかで葛藤しつつも、キリスト教に背を向けてイスラム教に染まっていく。彼はイスラムに同化し、隊商に欠かせない人物として出世していき、隊長が引退する折りに財産の半分をもらい受ける。

 グルジアの発展した街でオスマンは抑え難いキリスト教への思いを捨てきれずにふたたび教会で改宗を願い出るが、教会の人々は彼を取り押さえ、首を切り落とす。

A時は経ち、彼にも子供が生まれることになり、妻が男ならズラプ、女ならばグリスヴァルディ(ヴァルドーの本名)と名前をつけようと告げると主人公は驚愕し、なぜその名前をつけようと思うのかと詰め寄る。

 妻は評判の占い師に男か女かどちらなのかと将来を占ってもらおうと出掛けていく。そこで出くわす女占い師こそが結果的に主人公が見捨てたことになるヴァルドーその人であった。彼女は生まれてくるのは男の子であると告げ、はたして男児が誕生した。

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Bさらに時は経ち、王国(グルジアのトリビシあたり)は辺境への防備のために何度もスラム砦の建設に国力を費やすが、呪われたようにすぐに瓦解してしまう。

 ズラプの夢の中ではトルコの異教徒に責め立てられるグルジアの民衆は羊の群れで表現されています。砦建設の対応に迷った皇帝は評判の占い師(今も昔もいざとなったら神頼みのようです。)ヴァルドーに相談する。

C皇帝の相談を受けた占い師ヴァルドーは紺碧の目をした聡明で背の高い優秀な若い男を人柱として捧げれば、スラム砦は無事に建設できるとのお告げを伝える。つまり自分を捨てた男への復讐劇です。

 こうして王国の生け贄として選ばれたのが主人公ドゥルミシハンの息子ズラプであった。果たして、彼が地中に埋められてから、砦の建設は順調に進み、ついにグルジア念願のスラム砦は瓦解することなく完成した(終)。

 見るべきなのはストーリーではなく、独特な感性によって紡がれていく映像の集積です。一つ一つの映像が絵画のようで、まさにこれこそが動く絵であり、動画なのです。

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 左右対称にこだわるりつつもどこかバランスを崩した独特の構図は映画ファンよりも、絵画ファンを魅了するのかもしれません。旧ソ連当局は何度もセルゲイ・パラジャーノフを投獄しましたが、彼は別に共産思想を批判したわけではない。

 ただ彼が劇中で言外に描き続けたのは民族の誇りであり、自然な宗教観でした。きらびやかな民族衣装や各地方の民謡や個性的な楽器による演奏は被支配地の文化が豊かであることを人々に伝えてくれます。

 非人間的な共産主義への懐疑的な思いは映画に示されています。象徴的に配置される豪華で民族の誇りを体現する衣装の生地、短剣や地元産と思われる果物(ザクロは今回も大活躍。)、拝火教のような力強いイメージなどは共産圏映画とは思えない荒々しさを持つ。

 思想統一を図りたい共産党指導部にとっては危険思想を映像で体現する厄介な人物として認識されていたのでしょうし、なんとか排除したい対象だったのでしょう。

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 よく見ていると頭に船型の帽子を被って行き交う船を表現し、青い綺麗な布で海を表現したり、ショックで倒れるシーンでは後ろに配置してあった大きな花瓶のような陶器を同時に倒すというナンセンスな表現が出てきます。

 大真面目にこういったシュールな手法を選択したのか、洒落を利かせたのかは解りかねますが、一般的な商業映画を見慣れて、感性を毒されてしまったぼくらには衝撃的な見せ方に映ります。

 ただただ綺麗な動き続ける絵画に浸りきるのも良いでしょうし、象徴が何を表すのかを探求するのも良いでしょう。映像の可能性を問いかけてくるセルゲイ・パラジャーノフの世界は映画ファンであるならば、ぜひ一度は見ておきたい。

 今回は二年前に大阪九条の名画座シネ・ヌーヴォで見たときの感想から記事にしていますので時制が一部、当時のままになっています。下書きは出来ていたのですが、記事をアップするのを忘れたままで今日に至ってしまいました。

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総合評価 75点


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