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zoom RSS 『黒薔薇の館』(1969)いまだ国内ではDVD化されない深作&丸山コンビの第二弾。

<<   作成日時 : 2016/10/10 00:14   >>

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 深作欣二と丸山明宏(若い人には美輪明宏と言った方が通るでしょう。)が組んで松竹で製作された『黒蜥蜴』に続き、再び両者が挑んだ作品が『黒薔薇の館』です。日本映画らしくない独特の色彩と世界観にクラクラ来てしまいます。

 有名な作品であるにもかかわらず、両作品ともいまだにDVD化されていません。なぜか深作作品には未DVD化作品が多く、これ以外にも『軍機はためく下に』もビデオ時代にはリリースされていたものの、DVD時代になってからはCSで放送されただけで、商品としてリリースされていません。

 主な出演者は若かりし頃の田村正和、内田良平、小沢栄太郎、西村晃、川津祐介、松岡きっこ(彼女は『黒蜥蜴』にも出ていました。)らがいて、作品世界を支えています。ほとんどの出演者の男たちがこの世のものとは思えない浮世離れした丸山明宏と関わるうちに人生を狂わせていき、ある者は自殺し、ある者は破滅していく。

 世の中にはその人とかかわるだけで運気を吸い取られるような妖怪のような人物が現実に存在し、じっさいに知り合いにもいますが、周りの人たちを苦しめるのに自分だけは何事もなかったかのように災難を乗り切り、人の屍を越えて、淡々と生きている人もいます。

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 映画のオープニングを飾る『愛のボレロ』での丸山明宏の声は今聴いても重厚な中に怪しげな雰囲気を持っていて、圧倒的な存在感で迫ってきます。シャンソン歌手という括りだけではなく、人間としての凄味が歌声から伝わってきます。

 その他には『うす紫』『薔薇のルンバ』がこの作品では『愛のボレロ』とともに歌われますが、メインはあくまでも『愛のボレロ』であり、オープニングと中盤のステージ・シーンでの美声は圧巻です。彼の歌だけではなく、作品を彩るインドの民族音楽のようなエスニックな雰囲気が心地よい。

 デカダンな調度品や黒薔薇の御屋敷、社交界の煌びやかに見えるが、内実はドロドロとした世界観は一般庶民には無関係なものです。夜の世界を覗き見するような独特な雰囲気は邦画ではなかなか見られるものではないのでこういうのも魅力の一つでしょうか。

 若き日の田村正和が普通に演技をしているのが不思議に見えるが、駆け出しの彼もまた初々しくてファンが見れば感慨深いでしょう。ジョー山中も出演していますが、昔の作品なので亡くなった方も多い。

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 作品で大活躍しているのは丸山明宏と田村正和ですが、陰の功労者は小沢栄太郎でしょう。彼の安定感が抜群であるために物語世界にリアリティが生まれています。

 はたから見れば異様な世界なのですが、彼の演技が浮世離れしがちな作品世界を地面から舞い上がってしまわないように支えています。

 この作品は『黒蜥蜴』と同じく、いまだにDVD化はされていません。理由としてはセリフに“キチガイ”“めくら”などの放送禁止用語を連発している点もあるのではないか。雰囲気を大切にしている映画なので、音声をブツりとカットしたり、シーンを編集してしまうと詩情が薄れてしまいます。

 コクトーの『詩人の血』のような雰囲気を持つ絵画が映りこむシーンがあり、これはセットなのかと調べてみたところ、ミュシャという画家の絵であるようです。独特な作風なので、見ればすぐに凡庸な画家ではないことに気づかれるでしょう。

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 謎が多く、触れる者すべてを毒牙にかけていく美女(いわゆる美人女優よりも綺麗です。まさに麗人。ゴツゴツはしていますが…)が丸山明宏の役回りです。

 影の中で悪魔や日陰者が蠢くような構図、犯罪組織との関わり、愛に翻弄される男の破滅、浮世離れした豪奢な場面設定、生き残った者の問わず語りの回想の数々…。『黒薔薇の館』を見て気づくのはこの作品が邦画には珍しいフィルム・ノアールであることでしょう。

 フランス映画のフィルム・ノアールを見る思いです。また主演が丸山明宏ということもあり、本人による歌唱場面が三回ほど挿入されていて、暗黒のミュージカルの様相を呈しています。

 冷静にストーリーを追っていくと現実的ではないとは分かっても、丸山明宏と小沢栄太郎の存在感と演技力が観客を納得させ、映画の見た目を決定する深作欣二監督が作り上げた退廃的な雰囲気を持つ演出が見事に決まり、とても魅力的な作品に仕上げられています。

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 あらためて、未だにこの素晴らしいフィルム・ノアールを気軽に楽しめない状況が残念です。CSでは放送されていますので、完全封印というわけでもなさそうです。

 2014年の『マジカル・ガール』でも『黒蜥蜴』が取り上げられるなど海外版では深作監督のDVDが発売されているのですから、本国で発売されていないのは不自然に思います。

 よくみるとゴツいなあとは思いますが、歌舞伎の女形と同じ魅力を放つ丸山明宏の才能を堪能できるこの『黒薔薇の館』を見られないのは映画界にとってよくないのでTSUTAYAさんの発掘コーナーあたりに頑張ってもらい、洋画ばかりでなく邦画のリクエスト・コーナー企画も始めてほしい。

 第一弾として『黒蜥蜴』『黒薔薇の館』『闇の中の魑魅魍魎』のおどろおどろしい三作品やソフト化されたことのない『夕映えに明日は消えた』『博徒七人』『ノストラダムスの大予言』『獣人雪男』などを復活させてほしい。

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 無期懲役でも20年くらいで出所してくるのに芸術娯楽作品だけにいつまでも重い運命と責任を負わせ続けるのは止めにして欲しい。

 台詞が現在の価値基準に合わないからというのであれば、開巻前のテロップで「現在の価値基準には合わないが、作品の歴史的価値と差別を意図した台詞ではない。」とあらかじめ免責事項を入れておけば無用なトラブルも避けられるのではないか。

 丸山明宏の若かりし頃の妖艶な魅力に触れるには最適の作品ですので松竹関係者やその他の権利者にはこの作品のDVD化を待望している多くのファンの願いを出来るだけ早く叶えていただきたい。

 スチール写真を眺めるだけでも魅力は伝わります。彼が動けば、彼が歌えば観客は満足するでしょう。ビデオ時代に大学生だった僕は幸運にも両方とも見られましたし、CS放送でも楽しめました。より身近に彼の才能に触れる機会を提供して欲しい。

 海外版DVDが発売されているようですので、リンクを貼っておきました。ファム・ファタールとしての丸山明宏に興味がある方はご覧ください。

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 総合評価 78点



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
三島由紀夫氏の肉声テープが発見されたそうです。
美輪明宏氏が先ほどのニュースでコメントしておりました。
「あまりにも無防備。日本少年のモデルのように素が出ている。懐かしゅうございました。」とのこと。
公開規制作品の多くも出演者にとっては青年期。
今なら回顧できる季節になっているように思います。
入社直後の社員が、入社までの若気の至りを語り難いような時期があることと同じような過程が、映画にもあるように思われました。
きやらはん
2017/01/12 23:21
こんばんは!

>肉声
けっこうニュースで話題になっていますね。こういう話題をきっかけに昔の作品や小説を試す若い人が増えてくれると嬉しいですね。高校時代に彼の小説を読みましたが、最近の学生も小説を読むのでしょうかね?

国語力が上がりますし、深く考えるには絶好の芸術分野ですので、少しずつでも読んでいってほしいですね。

ではまた!
用心棒
2017/01/12 23:38

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