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zoom RSS 『マッキラー』(1972)まさかブルーレイ化されるとは。あれをディズニーは許可したのか?

<<   作成日時 : 2016/09/12 12:27   >>

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 オープニングでは古くから土地で歌われているのであろう素朴な歌が力強く響きます。明らかにど田舎と思われる山並みと似つかわしくない巨大な高速道路のギャップ。

 それにつながるのが暇を持て余している少年で、彼がパチンコの射撃でトカゲの頭をつぶして鮮血が飛び散ります。『ワイルド・バンチ』のサソリみたいに何とも悪趣味全開で、この映画が残虐を売りにするのだろうなあと予感出来ます。

 現代はクルマを移動に用いる文明社会であり、国中に高速道路網が張り巡らされています。一本のアスファルトで立派に舗装された自動車専用道は数十キロメートル、時には百キロメートルを越える長さもあるでしょうが、その道の麓には田舎町津々浦々に独自の文化と暮らしがあります。

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 しかし移動時のドライバーにとっては高速は目的地までの導線に過ぎず、風景すら興味ない者がほとんどでしょう。街中はある程度道路は整備されていても、一本道を街から隔てられると砂利道ばかりだというのも1970年代後半ではごく普通でした。

 お話はイタリアが舞台でしたが、こういう感じの風景は今の日本でも田舎に行けば、頻繁に見かけます。地元に根付く閉鎖的な宗教観や迷信、よそ者に対する強い排他性、新しい文化を受け入れられない頑迷さは老人よりもむしろ若い人のもののほうが性質が悪い。

 地域内のみで完結する暮らしは地産地消ともてはやされ、素晴らしいことではあるが、弊害もある。オープニングのカットが表すのはどうしても踏み込めない壁のように立ち塞がり、交わることはない都会と地域社会を象徴しているようです。

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 ルチオ・フルチ監督作品というと下劣な血まみれホラーの印象しかないでしょうが、この作品『マッキラー』や『野獣死すべし』(1980)を見れば、その印象は変わるでしょう。

 もちろん若くて綺麗な女(バーバラ・ブーシェ。メチャクチャ綺麗で驚きます!小振りのおっぱいも可愛らしい。)の裸、年端もいかない子供たちの喫煙、地元の子供たちの連続誘拐殺人事件、呪術、大人の恋愛、拷問、スプラッター描写、崖っぷちの戦いなど見世物映画の要素を取り込みながらも、しっかりとミステリーをものにしています。見終わってから、「あれっ!?まともやん!!」と唸らせてくれます。

 ルチオ・フルチ監督作品らしく、いわゆるジャーロ(見世物スリラー映画)に属します。1970年代初頭に撮っていた作品で、ビデオ時代は大きなレンタルビデオ屋さんには在庫がありました。

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 こちらが先ほどから触れているバーバラ・ブーシェで、彼女の役柄は父の故郷に休暇を利用して訪問しているという設定で、薬物中毒者であり、禁断症状があるために夜間はあちこちをフラフラしていたり、欲しくなったら軍人の知り合いがいる基地までお薬を調達しに行きます。

 劇中では年端もいかない少年たちを何人も誘惑し、ドギマギする様子を見て満足するという児童虐待も行っています。昔だったら、艶っぽい笑いで済んだのでしょうが、今ならどうなるのだろうか。

 世知辛い世の中になってしまったアメリカや日本とは違い、イタリアやフランスではまだ大らかな性描写も許されるのであろうか。

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 話を戻しますと、この『マッキラー』はDVDにフォーマットが切り替わってからは全く見なくなり、探してみると日本版は出ておらず、ヤフオクなどでVHSテープを落札するしかなくなりました。

 レンタル屋さんの在庫がビデオからDVDへの切り替え時には三本百円とかまで下がっていて、そんな頃にこのビデオも手に入れていました。

 今回はビデオ版の視聴になります。長い間、DVD化されなかった原因をいろいろと考えてみます。そもそも需要が少なかったことが第一でしょう。次はジプシー(しかもタイトルにもなった女呪術師マッキラー(フロリンダ・ボルカン)は住民に殺害される。)など流浪の民の描き方が現在の放送コードに抵触する可能性があるためだろうか。

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 第三は子供の描写が容赦なく、殺害後の死骸を何体もしっかりと写す悪趣味かつ残酷なカットであったり、喫煙や幼児虐待とも受け取られかねない大人の女による誘惑シーン、障害者やマイノリティ登場シーンでの差別的な扱いや前時代的な地元住民を批判するくだりなどどれなのか分かりかねるほど、問題点が多そうです。

 ただこの作品に関してはもうひとつ思い浮かぶ原因があります。それは作品の中に権利問題に地球一口うるさく、自社の権利のためならば、百年以上もアンフェアな特例に守られていて世界にそれを強要している、あの会社の有名キャラクターを使用し、しかもそれを傷つけるというカットが入っているからです。

 ご察しの通り、あの会社とはディズニーであり、あのキャラクターとはミッキーマウスと並ぶ人気者で古株のドナルドダックです。

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 このアヒル君は劇中で首をもぎ取られた哀れな状態で殺人現場にこれ見よがしに放置されてしまう。イメージが売りのアニメ・キャラクターを消費文化へのアンチテーゼのように無惨な姿にしてしまう感覚はルチオ・フルチ独特のものなのか、それとも反米意識が根強かったからなのかは解りません。

 たまたま首チョンパのアイデアを思い付いて、適当な人形を調達しようとしたがフランス人形やその他の民芸品やオモチャも高く、一番安かったのがワゴンセールで山盛りになっていたドナルドダックだっただけなのかもしれません。

 ただ映像インパクトは倍増したのは確かで、ラストシーンでも少女が大事そうに抱えているドナルドダックは胴体だけで首はない。ただドナルドだけが首をもがれたわけではなく、聾唖の少女が持っていたほかの人形も首がなくなっている。

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 太陽が光り輝く街並みを首がない人形を持って歩き回る少女の姿はかなり異様なさまで、けっこう怖いなあと思いました。

 連続殺人事件の犯人として無能なイタリア地元警察が逮捕したり取り調べをするのは最初が知的障害者、次がジプシーの呪術師マッキラー(つまり真犯人ではないのに住民にリンチされて死亡する。)、三番目が綺麗なバーバラ・ブーシェ(4人目の被害者と事件直前に交流があり。子供をここでも誘惑する小悪魔。)で真相にはたどり着かない。

 捕まえてくる者がすべて地元では異質な容疑者であるという点は見逃せない。警官も地元民なので、コミュニティの異物を犯人として検挙したいという姿勢があるのではないか。容疑者が捕まった時に大騒ぎして警察署を取り囲む住民の姿は中世の魔女狩りを想起させます。

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 因習に凝り固まっている住民や警察には真相に近づくことはできません。結果的に犯人を追い詰めたのはなぜかすぐに釈放されたバーバラと地元記者で、彼らは助けに行ったのに神父の妹(ドナルドダックの持ち主の聾唖の少女)に噛みつかれ、神父にボコボコに殴られる。

 あちこちにミスリーディングさせるべく、地元の呪術師が人形に釘を突き刺したり(わら人形みたいで不気味。)、マッキラーが死産した子供の白骨死体を掘り起こしたり、子供たちの死後に人形を埋葬するシーンなどがあります。

 フルチらしい血みどろシーンは子供を彼女(フロリンダ・ボルカン)に殺されたと思い込んだ地元住民によるリンチシーンで、彼女の手指を鉄の門で挟んだり(血が噴き出るのが痛そうです。)、太い鎖で殴られるたびに肉が裂け、鮮血がしたたり落ちるシーンでこの辺に異常に力を入れているのがはっきりと分かります。

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 フルチの変態性は映像よりも、むしろここでバックにかかるバラードの美しさにあります。女性ボーカルが気持ちよさそうに歌うストリングスも入ったこのバラードが画面で行われるリンチの残虐さを異化効果として高める。

 死にかけて、瀕死の状態で何とか高速道路横まで這いずってくるマッキラーをドライバー全員が無視して、関わり合いにならないように気づかないふりをするところまでの描写に凄みを感じます。

 後半の崖っぷちシーンは土曜ワイドなどで日本ではおなじみですが、最後の対決が綺麗なねえちゃんバーバラと地元記者、そして真犯人である神父との間で繰り広げられ、神父は崖から落ちる。なんかフェリーニの『崖』みたいです。また落ちて行くスローモーションは『江戸川乱歩全集 恐怖畸形人間』のラストを思い出す。

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 墜落時に彼の回想が走馬灯のように蘇り、お話の顛末が語られる。神父が落ちながら、石にぶち当たるたびに火花を散らす演出に笑いそうになります。最後は再び素朴な歌と大きな高速道路が映し出されて、幕が下りる。

 今回二度ほど見直しましたが、思ったよりもよく出来ているというのが素直な感想です。話の筋もご都合主義はあるにしてもまとまっていますし、残虐シーンもあちこちにあるので飽きることはありません。スプラッター描写もリンチシーンなど必要に合わせて行われています。

 わが国では長らくDVDでソフト化されることもなく今日まで来ましたが、今年中についにこの作品もめでたくリリースされることが決定しました。前述のドナルドダックのカット(首だけのものと胴体だけのもの。)が挿入されるかどうかは解りかねますが、是非とも完全版でのブルーレイ化を期待したい。首ちょんぱシーンをカットしてしまうと価値は大いに下がりますので、どうなるのだろう。

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 英語タイトルは『DON'T TORTURE A DUCKLING』で確信犯的に“DUCK”を入れているので、偶然に首ちょんぱをしたとも思えない。ただ後付けで英語圏での公開時にアヒルを入れたのかもしれないとも思いましたがそうでもないようです。

 イタリア公開時の原題も『Non si sevizia un paperino 』でずばり“小鴨をいじめないで”という意味なので、やっぱり確信犯なのでしょう。首をもがれた状態で登場するドナルドは薄気味悪く、見ていて気持ちいいものではありません。

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 商品化される際に好き嫌いではなく、後で編集のハサミを入れるのは良くない。最初に現在のコードには合わないが、歴史的価値を重視してリリースするよとかのメッセージを入れておけば、あとは視聴者が各々で判断すれば良い。

 解りやすいホラーを撮っていた頃のルチオ・フルチ監督作品を素直に楽しみたい。フルチを知らない世代にも見て欲しい作品は色々あります。レンタル屋さんに並んだら、借りてみましょう。

 とりあえず埋もれしまうのはもったいないバーバラ・ブーシェの美貌を確認するだけでも十分に価値がありますし、後期の作品のように綺麗な女性を必ず血まみれにしてしまうルチオ・フルチにしてはかなり好待遇を彼女には与えています。

総合評価 70点


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