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zoom RSS 『ラビッド』(1977)マリリンの腋から生える吸血男根!クローネンバーグらしいけど…

<<   作成日時 : 2016/09/29 18:06   >>

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 デヴィッド・クローネンバーグ監督は風変わりな作風で知られています。僕らが見たのは昭和のころのテレビ洋画劇場でもちろん吹き替え版であちこちカットされまくっていたまがい物でした。ビデオレンタルが全盛期を迎えた1980年代後半になってようやくオリジナル字幕版を見た作品が数多くあります。

 この作品も東映が出したビデオが全長版だったようで、ようやく作品のすべてを見ることができました。ただフォーマットがDVDに移行するようになるとビデオは廃盤となり、しばらくはこの作品もDVD化されることもなく、ずっとビデオ版を見ていました。

 二年くらい前でしたが、カルト作品までDVD化される世の中になるとようやくこの作品もDVD化されてTSUTAYAさんにも並ぶようになりました。

 そしてすぐに借りてきてみたのですが、何かがおかしい。なんだろうと思いめぐらせてみたが分からなかったので、所有している東映ビデオ版と見比べると原因がわかりました。

 まず第一は字幕の日本語対訳セリフがちょこちょこ変わっていたこと、そして第二は画面サイズと音声です。ぼくが持っている東映ビデオ版はビスタサイズ、つまり横長の映画館で見る感じの画面なのです。

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 冒頭の事故シーンでは爆発後に事故現場を入院患者が双眼鏡で覗いていますが、DVD版の彼女目線の映像では両端の円が見切れています。しかし僕が持っているビデオ版ではしっかりと二つの円が写っています。

 パニックになるシーンが多い映画ですので、あちこちにやじ馬が登場しますが、彼らの多くが見切れてしまっていて、スケールが小さく見えてしまいます。せっかく商品化するのであれば、できるだけ最善の映像状態のモノを販売すべきではないか。

 規制など事情があってカットせざるを得ないものであれば仕方ないでしょうが、ただトリミングしてしまうというのは視聴者とするとただただ残念です。

 そして音声も変更があり、DVDはモノラルなのですが、僕が持っているビデオはステレオ・ハイファイなのです。音声はともかく、画面サイズまで違っていたのには驚きました。どちらが正式な仕様なのかは分かりかねますが、画面に関してはビデオ版のほうがいい。

 なぜDVDが画面が見切れるトリミング仕様なのかは不明ですが、もしかすると原版が残っていなかったのでしょうか。映像自体はもともと暗い色調の作品で、夜のシーンが多いので、DVDのほうが見やすいのかもしれませんが、テープはフィルムの独特な暗さと相性が良く、暗いほうがホラーにはふさわしいのでビデオ版で十分です。

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 ブルーレイで今度出るのはワイド・スクリーン版なので、もしかすると家のテレビで見ると黒帯ばかりが大きいちょっと残念な規格かもしれないので、まだまだビデオ版が手放せません。

 クローネンバーグ作品は『ステレオ/均衡の遺失 』(1969)『クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立』(1970)など初期作品が持つ観念的難解さに比べると、その後の作品に関しては意味不明な性衝動的カットが増えてくる分、まだ理解しやすい方だと思います。

 彼の作品中にはよく知られるように性衝動がモチーフになっていると思われる直接的ビジュアルが多いのですが、初期ならともかく、2000年代を迎えても、いつまでも保たれている衝動への持続力にも驚かされます。

 今回の『ラビッド』には皮膚移植手術を受けたという原因があるにしても、男根そのものを表すような鋭利な針を持つ突起物が大人気ポルノスター、マリリン・チェンバースの腋の下から生えてきます。

 なぜそれが生えてくるかは一応はケロイド病院(なんて名前だ!)で受けた中性化手術という皮膚移植の突然変異が原因のようですが、不条理にも最後まで謎のままですし、生えてきたマリリンも吸血衝動(性衝動かも)を抑えられぬまま、周りの人々を次々に仕留めていき、カナダの田舎町の郊外からモントリオールまで感染源としてヒッチハイクしながら移動していきます。

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 誰かを襲うときに最初は小さく鳴り、徐々に大きく鳴り響く、血管が脈打つような音楽は力強い感染症の生命力と感染力の力強さを表すようです。襲いたくて襲っているわけではないのに、手術が原因で吸血体質になってしまう悲劇のヒロインをマリリンは熱演しています。

 地下鉄車内で感染者が暴れだし、他の乗客に噛みつき、他人を巻き込んでいく様子もゾンビに近い。無機質な地下鉄車内が突然修羅場に変貌するさまは恐ろしい。またショッピングモールで感染者を警官がマシンガンで射殺するさいにサンタクロースを巻き添えにしてしまう悪趣味な演出にクローネンバーグの底意地の悪さを見ます。

 自らが保菌者であると知るマリリンは最後は感染してゾンビのようになっている男にわざと噛まれ、自分が安全かどうかを試します。

 皮膚中性化移植手術を受けた感染症発祥の地から彼氏に会うために大都会モントリオールの街にたどり着くまで、結果として数百人以上を感染の巻き添えにしてしまう。

 そして本人も保菌者であったものの感染した上にさ迷い歩き、最終的にはごみ溜め場で躯をさらし、生ごみとしてゴミ収集車で運ばれていきます。まるでポルノ女優である自身が使い捨ての消耗品だと言わんばかりなのが、あまりにも寂しく見える。

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 この映画だけでなく、何本かの一般映画に彼女は出演していますが、いつまでも彼女は元ポルノ女優という呪縛から解放されることなく生涯を終えます。この映画を見る限り、普通に演技ができていますし、才能を埋もれさせてしまったのはもったいない。

 このバッド・エンディングは明らかにジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)や『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』(1973) の影響を受けているでしょう。彼はゾンビ要素と吸血鬼要素を足して二で割ったような作品を作り出しました。

 この映画のヒロインは前述のとおり、有名ポルノ女優だったマリリン・チェンバースですが、四十年以上が経っているため、彼女が『グリーンドア』という『ディープ・スロート』『ミス・ジョーンズの背徳』と並ぶ三大ポルノに出演していて、昔は大人気を誇った美人ポルノ女優だったとは知らない人が多いでしょう。

 さらにそれを見たという方も少ないのでしょうが、当時はまだまだタブー視されていた異人種間性交、乱交プレー、薬物接種を匂わせるオプティカル合成などAVで今でも見られる構成を1970年代にすでに行っています。

 たぶん有名になる前にしっかり彼女のお世話になっていただろうスタッフの趣味で彼女を選んだに違いない。まあ、『ディープ・スロート』のリンダ・ラブレイスが出ていても美しくないので、恐らく誰も見たがらない。

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 深夜上映でも集客が期待できる商業用セクシー・ホラー映画に分類されるだろうこの作品のヒロインには美しいマリリン・チェンバースのほうが一般受けするだろう。もっとも着替えシーンでのヌードがあるくらいです。それよりもバスルームで下着姿でもだえる様子のほうがエロティックです。

 なぜ人工皮膚移植手術を受けて、肛門みたいな腋の傷口の中から、男根らしき吸血組織が生えてくるのかはあまりにもシュールすぎて凡人には解りませんが、伝染病の恐怖や他人の臓器を移植することへのステレオタイプの不安を表したのだろうか。

 初期からすでに内臓の蠢く様子をヴィジュアル化することに執念を燃やしていたようですが、それが『スキャナーズ』などで世界的な名声を得た現在になっても持続するのが凄い。

 当時はまだ1970年代ですので、最新医療に対する不安があったのかもしれない。心理学者がこれを見れば、もっともらしい講釈を垂れるのでしょう。

 でもいったいそれがなんの意味があるのかはホラー映画に足を運ぶぼくらのようなボンクラの観客には関係ない。ぼくら映画ファンが興味を持って映画館まで向かわせる原動力は興味本意であったとしても楽しい時間が過ごせるかどうか、家ではなく映画館まで観に行く価値があるかどうかである。

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 エロ・グロ・ナンセンスが期待できる映画には深夜映画劇場で育ったぼくらボンクラが引っ掛かってきます。比較的分かりやすい作品ではありますが、世間一般の人がこれを見れば、十分に訳が分からない作品の範疇に入るでしょう。

 まあ、付き合い始めの彼女と観に行くには敷居は高く、デニーロが『タクシードライバー』で気になる女性をいきなりポルノに連れていくよりはマシでしょうが、品格を疑われるのは間違いない。

 プリンスの容姿を見て、彼の音楽性までも否定してしまうのが女性ですので、デヴィッド・クローネンバーグの映画はたとえ斬新であったとしても正当な評価は受けにくいのでしょう。

 でもついつい見たくなるのが彼の作品で、特に初期作品群には独特の魅力がありますので、夜中に何を見るか迷った時にはDVDプレーヤーの開閉ボタンを押して見てしまいます。

総合評価 75点



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