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zoom RSS 『地獄』(1960)どろどろした猟奇的な欲望より恐ろしいのは支離滅裂な虚無だろうか。

<<   作成日時 : 2016/08/10 17:44   >>

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 夏休みということもあり、最近は特撮映画ばかりを書いていましたが、夏と言えば昔は納涼肝試しなどの名目で子供会主催の映画上映会があり、かなり古そうな怪談物映画を野外で校舎の壁などにスクリーンを掛けて映写したりしていました。

 電気コードを巻いた蚊取り線香リールみたいな何と言ったら良いのか知りませんが、校舎の電源が取れるところから無理矢理引っ張ってきて、機械モノに強いお父さんたちがお母ちゃんたちの監視の目のもとで強制労働のように浮かない顔で蚊に咬まれながら、上映会場を設営していました。

 座席などは当然なく、みなゴザに座る感じなのでお尻が痛くなります。当時は女の子たちや自分達より小さい兄弟たちの手前、古めかしい怪談物に半分(強がってはいますが、本当は八割くらいビクビクしています。)怖がり、泣き出すチビッコを半分茶化したりと忙しい状態で見ていました。

 著作権とかなんだかんだとやかましいことを言う輩が増殖する一方の現状ではこうした上映会も減っているのだろうか。定番だったのは「一枚、二枚…」の番町皿屋敷、悪質な浮気者のダンナに復讐する四谷怪談、累ヶ淵の話など人間の欲望の深さや物への執着などを戒めるような内容が多く、幽霊モノに代表されるオカルトが主体でした。

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 今のように麻酔なしで止血処理もしない外科手術を見るような直接的なスプラッターだけが見所になってしまっている下品な作品とはかなり毛色が変わっていました。

 しかしながら、いつまでも古くさい江戸時代を描いていても、当時の観客やぼくらが生きているのは戦後昭和なので、少しばかり現代要素を加える必要があったのでしょう。

 そういった昭和30年代後半から40年代の雰囲気に合わせて製作されたのが新東宝らしい、もっと言うと中川信夫監督らしい、見世物小屋的ないかがわしさが今となっては独特の魅力を持つ『地獄』です。

 大物ゲストに嵐寛寿郎という当時の超大物俳優を地獄の閻魔大王に起用するというキャスティングや主人公を演じる天知茂(学ランを着ているww)を誘惑するメフィストフェレスの役回りに沼田曜一を配置しています。

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 黒澤明監督の『素晴らしき日曜日』で演じていた好青年とは180度違う役回りを怪演しています。彼の怪しげな友人役の圧倒的な存在感がこの映画のカルトとしての価値を数段引き上げているように思えます。彼に向けられる不気味な照明、何を考えているのか分からない薄気味悪さは彼の代表作と言ってもいいかもしれませんが、本人にとっては不本意でしょう。

 呆気なく事故死する三ツ矢歌子(ゆきことさちことで二役)も揃っていて、妖しげな雰囲気満載です。地獄絵図を描いている画家の下りは芥川龍之介作品『地獄変』から発想を得ているのだろう。

 暗く陰惨な画面からはカビのような厭な臭いが漂い、なんともいえない雰囲気に仕上がっていて、けっして楽しいものではない。童謡や民謡が歌われるシーンが何度もあるのですが、不気味な展開の中なので、異化効果が凄まじく、厭な気分になることは確実です。地獄のオペレッタみたいな悪趣味な世界観は居心地が悪い。

 出てくるヤツがどいつもこいつも胡散臭くて強欲で、しかも上映60分後には登場人物のほぼ全員が殺害されるか、自殺する。すると暗転してみな三途の川を渡っていく。いったい、なんて映画だろう!またこの川は日本庭園みたいでより気色悪い。

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 どちらかというと一度見たら、嫌悪感から再見するのは苦痛になるかもしれませんが、ふとしたきっかけに何だか奇妙なな映画だったなと思い浮かべた作品でした。テレビで夜中に見たのが最初でしたので、不意を突かれるでしょう。

 見どころは吊り橋での突き落としをカットや角度を変えながら、橋の上からや逆さまにカメラを構えてから撮る斬新な構図が満載のシーン、死んで地獄に落ちてから生まれてくるはずだった娘を助けるために地獄めぐりツアーをさせられる天知茂のシュールな様子でしょう。

 クライマックスのグルグル回る時計盤のようなセットで娘を追いかける様子は狂気に満ちています。ラストではとってつけたような優しい音楽がかかるが、誰も救われていないので、これがまた悪夢のようです。

 ホラーではありませんが、松本清張原作で映画化された『影の車』でも同じような気持ちを味わいました。ビデオレンタル時代は大きなお店に行けば、端っこの方に細々と一本だけジャケットが色褪せた状態で在庫されていましたが、現在では見かけません。

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 この作品は現在在庫は少ないようですが、DVD化はされています。何故か海外では普通に販売されているのに本国ではソフト化されていなかった作品は数多く、将軍のサディズムという海外タイトルがつけられている『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』はようやく発売されました。

 同じく『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』や『日本暗殺秘録』ですらまさかのDVD化で発売されましたので、未発売のカルト映画作品群もなんとか普通に見られるようにしてほしい。

 エロ・グロ・ナンセンスが売りで、かつての見世物小屋以来の伝統を守ってきた(?)新東宝は時代の波に飲み込まれて倒産してしまいましたが、ソフト化技術が発達している現在ではフィルムさえ残っていれば、なんとか商品化に漕ぎ付けられるようです。

総合評価 58点


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