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zoom RSS 『決死圏SOS宇宙船』(1969)英国発の観念SFの傑作。ディティールへのこだわりが凄い!

<<   作成日時 : 2014/11/26 20:14   >>

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 今回はこの作品を取り上げて欲しいとお望みのベラデンさんからのリクエストをいただき、この作品を取り上げています。タイトルは『決死圏SOS宇宙船』でオリジナルタイトルは『JOURNEY TO THE FAR SIDE OF THE SUN』ですから“太陽の向こう側への旅”くらいでしょうか。

 劇場公開はされていませんが、小学生の時に東京12チャンネルで放送されたのを見たことがあります。その後はビデオレンタルで借りてきましたし、VHSがワゴンセールに消えていたころに格安で手に入れ、DVDに保存しておりました。残念ながらVHSは手元に残っていはいませんが、今回はDVDを自宅で再鑑賞しました。

 まず作品の制作はイギリスで、特撮パートを請け負ったのは『サンダーバード』の特撮で評価が高いジュリー・アンダーソンで原案も彼が関わっています。つまりSFファンと特撮ファンにとっては名作になるに違いないと勘が働く作品です。

 イギリスらしく、シニカルな展開がそんじょそこらのアメリカンなSF映画とは一線を画していて、できれば10代くらいまでに観ておけば、映画鑑賞態度が変わるかもしれないほどのインパクトを与えてくれます。

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 政治や設定にもブラックな洒落が効いてて、スウィンギング・ロンドンの残像がファッションにも残っていて、出てくる女性たちはとても魅力的です。オープニングだけを見ただけではスパイ映画なのかなあと思わせる展開ですが、リアルな政治事情が味わえる一品です。

 東西冷戦下、ソ連のスパイが暗躍して、宇宙開発計画の中枢にまで侵入してくると、それまでは探査宇宙船への出資を渋っていた西側諸国がようやく足並みをそろえるくだりはとても現実的で、できればお金を出しなくないという姿勢が明確なドイツやフランス、議会を通さねば身動きが取れないアメリカの苦悩が描かれる。

 また、さんざんゴチャゴチャ言っていても、いざソ連の脅威が示されると渋々ながらお金を出すところが見ていて楽しい。欧州主体の組織なのに結局はアメリカ主導になるのは資金提供の3分の1を拠出しているという点がなかなかリアルで、30パーセントともなると筆頭株主みたいなものなので、こういうふうになるのかなあという感慨もあります。

 普通、SF映画を観ているとこういう現実的なことはすべてカットされていて、すぐに探査宇宙船を出して、目標に到達してしまっていたりしますが、ここは偏執狂的にディティールにこだわりを見せます。

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 スパイの下りから始まって、ソ連に出し抜かれる前にさっさと宇宙船を送りたい西側は突貫工事のようにまずは熟練パイロットを決める。パイロットが本部に到着するときもサンダーバード的なカッコいい軍用機が着陸し、いくつかのトランスフォームを経て、ただ到着用タラップに横付けするだけなのに(笑)かなりの手間をかけ、普通に空港に迎えられる。

 このシーンに何の意味があるのだろうかとは思いますが、SFで絶対不可欠なのはディティールなのでここは最後まで付き合いましょう。

 一方、彼を支えるパートナーとなるべき科学者イアン・ヘンドリー(ジョン・ケイン)をわずか数週間の訓練だけで無理やり宇宙船に乗せてしまう。

 その間も熟練パイロットの主人公ロイ・シネス(グレン・ロス大佐)と妻(リン・ローリング シャロン・ロス)の不倫騒動と夫婦のDVと性的不能に悩む不仲ぶりを挿入したり、スパイ暗殺を挟んだりとキャラクターの肉付けもしっかりと行われる。

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 さらに唸らせられるのはそこまで選りすぐったはずの科学者兼オブザーバーとしての活躍を期待されていたイアン・ヘンドリーは目的地に到着後、爆発炎上に巻き込まれ、人事不詳に陥り、まったく動かずに隔離病棟の生命維持カプセルに入れられたまま、死亡してしまう。

 パイロット側も良い味を出していますが、なんといっても強く印象に残るのがパトリック・ワイマーク(ジェイソン・ウェブ)が演じる宇宙船開発の総責任者でしょう。強引なリーダーシップを持ち味に剛腕で計画を進めていく野獣のような彼の昔気質な感じが個人的には好みです。

 物語の本筋はいわゆる観念的なSFで、主人公らが通常往復に6週間かかる太陽の裏側にある新惑星を調査しに行くとなぜか3週間後に地球へ逆戻りしてしまうところから展開する。

 まったくこの惑星が見えなかったことの説明としては太陽と地球からちょうど見えないようなスピードと軌道で回っているためであると述べます。

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 わずか3週間での突然な帰還に本部は職務怠慢を疑い、彼を尋問に掛けるが、嘘はついていないことを確認する。つまり精神異常者として扱われ出す。死にかけている科学者も徹底的に検査をされるが、内臓がすべて反対側に位置していることに“別”の地球人科学者たちは首をかしげる。

 ストレスがたまったシネスは妻に八つ当たりし出すが、部屋の照明の配置や反対側から文字が書かれているさま、皆が左利きになっていたり、車の進行方向が反対側だったりすることから、ある仮説、つまり自分がいるのはもうひとつの“地球”であり、鏡のような関係なのだと持論を展開する。

 そのことを確かめるために着陸用カプセルを修理した後(パラレル世界なので技術レベルは同じ!)に再び探査宇宙船に戻ろうとするも、ドッキング時の逆噴射(ボタンが逆!)に失敗し、大気圏に突入して、本部に帰還するも着陸できずに爆発炎上してしまう。

 このときに本部スタッフの大半が事故に巻き込まれ、責任者パトリックだけが生き残る。しかし彼の話を信じる者は誰一人存在せず、異常者として最後を迎える。

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 この映画では誰一人として救われる者はいません。出演者だけではなく、見ていた僕らもモヤモヤした気分を背負い込んだまま、物語は終わってしまいます。爽快感は皆無ですし、楽しかったとは言えません。

 しかしながら、この映画が与えるインパクトは尋常ではない。リアルの裏付けに最大の貢献をしているのがジュリー・アンダーソン制作の特撮パートです。飛行機や自動車の質感やデザインの無機質な美しさ、ロケットや軍用機を捉える近めの仰角や遠目からの仰角でぼくらは身近な関係者の視点や傍観者としての冷静な視点を提供される。

 出演者の人間の苦悩に迫る脚本の素晴らしさ、リアルな世界を構築する特撮の見事な出来栄えなどは他の作品ではなかなか見かけないオリジナリティを堪能してほしい。これを久しぶりに見て、『サンダーバード』が見たくなりました。このシリーズではビル火災の回が強く印象に残っています。
 
 総合評価 90点




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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
リクエストありがとうございます。
この作品、本当によくリアルに作られてありますよね。特撮パートはもちろんの事、政治経済の本質もよく目を逸らさずに描きこんであるのに本当感心しました。
でも、丁寧に作りすぎたためにストーリーが中だるみしてるのが残念ですが。(特にスパイのくだりは蛇足としか思えなかったです。)

あと主演のロイ・シネスとリン・ローリングの夫婦共演には驚きました。しかも二人は後に離婚してるじゃないですか!!よくあんな冷め切った夫婦の役を引き受けましたよね凄いですwだからこの映画の二人のやり取りが一番生々しくリアルに感じましたね!wなんか映画と現実がシンクロした例でもあるんじゃないですか!?w(「悪魔のような女」、「ローズマリーの赤ちゃん」と並んで)

それにしてもこの作品って内容的にわざわざ長編大作にする程の話でもないと思うんですよね〜wだって太陽の反対側に左右の違いこそあれ100%同じ地球があるってだけじゃないですか。「へ〜太陽の裏にも地球があったんだ。...それがどうした?」って終わっちゃうじゃないですか!w要するにSF大作としてはスケールがデカい割に内容のスケールが小さいんですよw例えばその反地球ではウェッブ所長が世界の独裁者になっていたとか、地獄のようなディストピアだったりとかって内容だったら面白かったと思うんですが。(それじゃセブンの「第四惑星の悪夢」になっちゃうんですがw)
この作品は大作向きじゃなく前にも書きましたが、「ミステリーゾーン」や「アウターリミッツ、」「世にも奇妙な物語」などの1エピソードで事足りる話だと思うんですよね〜。

用心棒さんが監督だったらこの話をどんな風にアレンジしますか?

ベラデン
2014/11/28 15:20
 こんばんは!
>アレンジ
そうですね…。たとえばすべてが反対になっていくとして、こちら側よりも圧倒的に進化していた向こう側の地球が徐々に退化していっている状況であり、それがこちら側のレベルに落ちてきているとします。
 そしてロス船長が帰れる技術力を持つラストのタイミングが物語での時間軸に持ってきます。
 日に日に退化していく技術力をサスペンス要素にしていくというのがひとつ。また価値観が真逆で、民主主義ではなく、ファシズムが絶対的な価値観を持つ別の地球を持ってくる。
 これはご指摘の通り、ウルトラセブンの世界観ですね。というか今回“SOS”を観ていて感じたのはセブンに似ているなあというもので、特撮シーンのときはなぜか「ワン、ツー、スリー、フォー♪ ウルトラ〜♪セブ〜ン♪」の挿入BGMを口ずさんでいました。
 そういえば、乗っている車もポインターみたいでしたし、映像で話しかける電話も出てきますしね。

 あとは人間の進化が止まり、サルが支配する世界になっていたら、それは猿の惑星(笑)向こうへ行ったのはサルだったりしたら無限ループですね(笑)
>ミステリーゾーン
大好きでしたよ!特に覚えているのは価値観の違いの回で、美容整形をしている手術中の様子が描かれていて、なぜか登場人物たちの表情が写らない。
 いよいよ手術が終わり、顔の包帯を取ると綺麗な(僕らが見たら。)白人女性の顔が現われるが、なぜか彼女はショックで絶叫します。何故だろうと思っているとようやくカメラが医師たちの顔を映し出す。そこに映っているのは僕らの感覚で見ると化け物にしか見えないというエンディング、つまり価値観の相違を表現した回でした。
 最近はこういった考えさせられるSFが少なくなっていますし、クレーマーを恐れてヌルイものが増えているのは残念ですね。
ではまた!
用心棒
2014/11/28 18:46
それにしてもラストの悲劇を見返すたびに「なんでそうなるの!?」と、ツッコミ入れたくなりますw
ぶっちゃけあの悲劇を回避する方法はいくらでもあったはずですよ!大体、反地球の電極が+か−か解らなければ、
1、スーパーコンピューターに解析させる。
2、高名な物理学者に答えを解析させる。
3、万が一の事態に備えて、着陸艇の電極回路を+と−に切り替えが可能な仕掛けに改造する。etc...。

と、幾らでも手はあったはずだと思いますw
なので主人公の憶測だけで何の対処もせずにドッキングさせたのがかなり無茶だなと思いましたねw
ベラデン
2014/12/07 20:59
 こんばんは!

結局のところ、間違えるのは常に人間であり、機械は人間の操作通りに正確に動くということでしょうね。

結果として最悪な結果を招いたのは人間のケアレスミスでしたもんね。PCが誤作動したと騒ぐ人がけっこういますが、これもほとんどが操作している人間の失敗ばかりですもの。PCは反論しないから悪者扱いされますが、冷静な人は人為的なミスであることが分かっているでしょうね。

この映画を観ていてもう一本思い出したのは『原子怪人対未来怪人』というタイムトラベルものがありましたよ。

ではまた!
用心棒
2014/12/08 00:46
>結果として最悪な結果を招いたのは人間のケアレスミス

成程、結局は使う側である人間の責任という訳ですね〜。
ある意味これはアンダーソン流の「機械文明への警鐘」ともとれる内容ですね。

しかし、主役のロイ・シネスの妻役に実妻のリン・ローリングをキャスティングするのは驚きますねwしかも役どころが完全に冷め切った夫婦の役なんてwしかも脚本ではこの妻が不倫してる現場を目撃したシネスが、妻をプールに突き落とす場面があったとか!
実の夫婦が演じてるだけあってかなり生々しく感じましたねwよくシネス夫妻はこんな役を引き受けましたよねw
しかもこの後二人は現実でマジに離婚することになるんですから(汗) シネス夫妻はどんな思いでこんな役を演じたんでしょうかね?w
ベラデン
2014/12/08 14:11
 こんにちは!
実際の夫婦が演じていて、しかも冷え切った仲だったら、事情を知らない人が見れば、なんて演技が上手い人たちなのだろうとなるのでしょうが、知っている人にとってはやっぱりにじみ出ちゃうんだろうなあという感慨でしょうね。

そういえば数年前にCSで『熱中時代』をやっていたのですが、当時はドラマを見ていても仲が良いなあと思っていたら、のちに結婚した水谷豊と外人女性が離婚したことを知る僕たちは数十年ぶりにこの作品に接してなんだか時の経過って凄いなあと感じました(笑)

もうすぐ日本版のゴジラも復活しますし、再来年が待ち遠しいですよ。

ではまた!
用心棒
2014/12/08 16:28
ラストで所長を除いて全員死亡したんですか?確か管制室ごと地下に避難したはずじゃ無かったんでしょうか?

あと、実写版の「寄生獣」を観てきましたがなかなか面白かったです!
見る前は不安でしたが、その不安が吹き飛びましたね!原作のダークな雰囲気を見事に映像化していて非常に満足な出来栄えでした。用心棒さんもまだ未見なら是非ご覧になってはどうでしょう?
ベラデン
2014/12/14 13:45
 こんばんは!

>避難
見たバージョンが違うんですかね?
映画って、けっこういろんな編集がされていたり、吹き替えで違う結末になっていたりしてまったくちがう印象を与えるモノも多いですね。『ゾンビ』などは有名ですね。

 >『寄生獣』
アニメや漫画の実写版って、思い入れが強ければ強いほど観に行くのが怖いですね。満足されて何よりです。

ではまた!
用心棒
2014/12/14 21:38
私が言った「管制室ごと地下に避難した」というのは、緊急サイレンが鳴った際に建物が「スティングレイ」のマリンビル基地みたいに沈む感じに地下に下降していく場面がありましたよね。あの建物が所長たちのいる管制室なのかなと思ったからですが、違いますかね?
ベラデン
2014/12/15 09:29
続き…

もし違ったのなら、思い付くとすれば、ロケットの大爆発の場面で、飛んできたロケットの残骸が当たって爆発した建物がありましたが、もしやアレが管制室だったんでしょうか?

本編では管制室の外観が説明されてないので非常に解りづらいですよね(苦笑)
ベラデン
2014/12/15 09:37
 こんばんは!

僕が持っているVHSでは爆発炎上シーンの後に年老いた所長が庭で車椅子に乗って散歩していたのが老人ホーム室内(病院?)に連れ戻され、一人になった時に不意に鏡に映った自分の姿に狼狽し、車椅子のまま突っ込んでいき、激突していくというラストでしたよ。

 アイデアに走り過ぎていたためか、分かりにくい場面もありますね。

ではまた!
用心棒
2014/12/15 20:30
「良い映画を褒める会。」サイト運営者様

「6畳間でも映画館!お手軽ホームシアター」というサイトの運営しております、
新井と申します。
突然のメールで失礼いたします。
本日は、貴サイトと相互リンクをさせて頂ければと思い、
ご連絡をさせていただきました。

お願いに先立ちまして、
すでに私のサイトからリンクを掲載させて頂いております。
下記URLの105番目になります。
(相互リンクのサイトページを整理した場合、掲載順位が変動する場合もあります。)
http://otegaruhometheater.com/link/link1/
「良い映画を褒める会。」というサイト名で掲載しております。

相互リンクして頂けるのであれば
以下の当サイト情報をご参考にリンクをお願いいたします。

―――――――――――――――
サイト名:カーテンはどんなものを選べばいいの?
サイトURL:http://otegaruhometheater.com/curtain/
サイト説明:お好きな紹介文を掲載してください。宜しくお願いいたします。
―――――――――――――――
(加筆修正して頂いて構いません。)

誠に恐れいりますが、相互リンクして頂けましたら
一言、ご一報頂けますと助かります。

サイトデザインは未熟ですが記事の内容はしっかりと書きました。
何卒、ご検討のほど宜しくお願いいたします。

━−━−━−━−━−━−━−━−━−━−━−━−━
サイト管理人:新井
サイト:http://otegaruhometheater.com/
メール:greengreengreen794@gmail.com
管理人 新井
2015/01/16 17:50
 新井様、こんばんは。そして、はじめまして。

>相互リンク
ご連絡いただきまして、ありがとうございます。

さきほど、こちらからもリンクに加えさせていただきました。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 ではまた!
用心棒
2015/01/16 23:06

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