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zoom RSS 『出発』(1967)孤高の映画作家、イエジー・スコリモフスキーによる傑作青春映画。

<<   作成日時 : 2014/09/04 23:28   >>

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 8月のセルゲイ・パラジャーノフ特集に続き、今月末から来月にかけて、アルメニアやグルジアと同じく、共産圏だったポーランド出身の亡命監督、イエジー・スコリモフスキーの集中上映が行われます。

 『出発』『シャウト』『アンナと過ごした四日間』『ムーン・ライティング』『エッセンシャル・キリング』の五本が上映予定作品のようです。数はまあまあ揃っているのですが、作品群に関しては正直言って微妙なラインアップです。

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 ぼくらが観たいのは初期作品『不戦勝』『身分証明書』『手を挙げろ』であり、最大の問題作『早春』なのです。版権問題等でなかなか上映出来ない事情は重々承知しておりますが、なんだか民放が放送したい映画の放映権を得るために抱き合わせで不人気作品を買わされるのを思い出します。

 『ムーン・ライティング』以外はTSUTAYAさんで普通にレンタルされているので、今回の見所はこの作品とデビュー作『出発』、いち早くドルビー・システムを採用したという『シャウト』の映画館での臨場感を体感することでしょうか。

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 出発と書かれると「しゅっぱつ」と読まれるでしょうが、この作品の邦題は「たびだち」と読ませます。普通に読ませるよりも、なんだかカッコ良く聞こえる。

 はじめてこの『出発』を見たのはレンタルビデオでした。クラシック・コーナーを借り漁っていた当時、何気にこのビデオのパッケージに惹かれ、いわばジャケ借りしました。

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 フランス語の歌とジャズが都会的な雰囲気を醸し出し、モノクロの映像とマッチしていて、見ていて気持ち良い。さらにドイツのスポーツ・カーの代名詞でもあるポルシェが艶かしくブリュッセル(ベルギー映画って、珍しいですね。レオーが出ているんで、フランス映画と勘違いするかも…)の街中を疾走する様は車好きにはたまらないスタイリッシュな演出でしょう。

 モノクロならではの艶っぽさが強く印象に残ります。ヌーヴェルヴァーグ的な映像を組み立てながら、時折シンメトリーを意識した構図を持ってこられるとハッとします。

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 会話シーンが素晴らしく、特に主人公ジャン=ピエール・レオ(トリュフォーの『大人は判ってくれない』の少年ですね。)とヒロイン役のカトリーヌ=イザベル・デュポールとのカット・バックを多用する。

 そんななか、相手はまだしゃべっているのに、重要なワードだけははっきりと伝わるが、そのワードに反応している間は他のことを考えているので、まったく聞いていないという普段の会話ではありがちな様子を映像で表現しています。

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 このまま放っておくと、彼女から「ねえ、聞いてるの!?」と怒られるヤツです。男性ならば、みな納得してくれるでしょうが、この映画では男女どちらかがしゃべっていても、頻繁にこのような会話音声オフの会話で片方だけが一方的にダラダラ話を続けています。

 ビデオで一度は見ていたはずですが、当時は気にもしなかったことが今になって再発見出来たことは楽しい。鏡を使った悪ふざけ、路面電車の進行を妨害しようとしてかえって間が抜けた行動を取るのも笑えます。

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 途中で水着ファッション・ショーを入れ、若くて綺麗なモデル女性のカットと年老いた招待客の老婆を交互に写し出すのは残酷にも見えます。

 空想もしくは妄想的シーンが何度か挿入され、ラスト・シークエンスとなるホテルのベッドで一夜を過ごした二人の様子が肉体関係を持ったパターンと何もなくただ寝坊したパターンが出てきているように見えます。

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 どちらも肝心のラリー・レースには間に合わず、何のためのドタバタ騒ぎだったのかが解らなくなります。ただ肉体関係を持った時に見せるジャン=ピエール・レオの顔には幼さが消え、子供の夢でしかなかったラリー・レースへの参加などはすでにどうでもいいこととして急速に興味が失せてしまったように映る。

 少年の心が数日の経験がきっかけとなって、大人の男に変貌していく瞬間を切り取ったのがこの『出発』なのでしょう。若い人に観て欲しい映画なので、イエジー・スコリモフスキー特集を観に、シネ・ヌーヴォへ向かいましょう。

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 ヌーヴェルヴァーグ的なハッピーエンドとは程遠い苦い結末でしたので、テレビで流れるアメリカ映画とは違い、かえって現実味を感じました。

 現実味が良いのか悪いのかははっきりとは言えません。ストレスに囲まれた世の中で働いているのに余暇まで重いテーマの作品を選ぶ必要性があるのか。とも思いますが、悲喜劇関係なく、人間をしっかり描いている映画であればしっかりと楽しませてくれます。

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 今回は観に行く前に昔のビデオを引っ張り出してきて自宅での予習でしたので、特集上映が始まったら、ボチボチ出掛けよう。

 『早春』では憧れの女性との関係につまづいた主人公ジョン・モルダー・ブラウンにやってくる破滅的な将来が暗示されますが、この『出発』ではちょっぴり大人になった主人公ジャン=ピエール・レオが新しい人生へと旅立って行くところで幕を閉じる。

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 長編デビュー作品としては未来に繋がる『出発』が来た方がイエジー・スコリモフスキーのキャリアにとっても良かったのだと思います。少々クセがあるというか、映像の技巧に走り過ぎている感はありますが、言葉でシーンを語り尽すものよりは良い。

 ヌーヴェルヴァーグに影響を受けているであろうモノクロの映像の繋がりはとてもスタイリッシュで、新しい才能のデビューに相応しい。

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 古臭く感じたならば、そんなジャンプ・カットなどの演出があまりにも多くの模倣を生んだからであろう。瑞々しいこのデビュー作はレオとイザベルとのベッドでのやり取りの直後、ポルシェのエンジン音とともに唐突に幕を閉じる。溶けていくフィルムと爆音が強烈な余韻を残す。

 劇場の大スクリーンで映えるであろうラリー仕様のポルシェのフォルムとエンジン音を堪能したい。CMでよく使われるような構図があちこちに出てきますが、車を美しく撮るための工夫だったのでしょうか。

総合評価 85点


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