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zoom RSS 『石の上の花』(1962)これを見て、パラジャーノフだと分かる人はいるのだろうか?

<<   作成日時 : 2014/08/28 00:32   >>

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 さて本日最後に上映された『石の上の花』はセルゲイ・パラジャーノフ監督の初期作品のひとつではありますが、モノクロ・フィルムであり、かつ民族衣装を身に纏う者はいない。

 パラジャーノフらしい要素を見つけるのがかなり難しいので、たぶん誰も気づかないでしょう。旧ソ連時代のいかにもプロパガンダ的な体裁をとっている。

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 化石となった花、つまり石の上の花や仰角で捉えられた高圧鉄塔などはデザイン・フェチのパラジャーノフらしい映像に違いないのでしょうが、何せ控え目なので、この映画の監督が後に何度も国家権力に刃向かう奇人になるなどとは想像がつかない。

 共産主義体制下での宗教や言論への弾圧が暴力的に行われたソ連において、映画は芸術ではなく、ただの宣伝手段に過ぎませんでした。

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 そこを逆手に取り、共産主義体制を称賛し、歯が浮くような台詞を連発する、なんでもかんでも無批判に受け入れている多くの登場人物たちを見て、むしろアメリカにおいて、戦時下や戦後すぐに作られた『マリファナ』『リーファー・マッドネス』などの一連の極端な教育映画を笑い飛ばすパーティの光景を思い浮かべました。

 真面目にやればやるほど、結果的にすべてがジョークになってしまう。本気でそんなことを思っていないのに表向きには共産主義万歳を唱え、心のなかで嘲りの舌を出す。

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 皆でつるはしやシャベルを持って、勤労に励み、笑顔で若者同士がふざけあい、ヒロインがシャワーを浴びるシーンなどを見ていて、パラジャーノフが舌を出して、中指を立てているような感覚を味わいました。

 「石炭は全産業のパンである。(byレーニン)」だったり、「ガガーリンは宇宙へ。ぼくらは炭鉱へ。」など産業の近代化が国是だった頃のソ連の古めかしいスローガンの数々が当時は最新だったのが感慨深い。

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 宗教は徹底的に薄気味悪いものとして排除すべきと断罪しているようにも思えるが、裏を返すとそれだけ民衆の心の底にはロシア正教がしっかりと根付いている証拠でもある。

 ただあくまでも後の彼を知るからこそ、そういった断片的なカットにも有意義に深い意味を見いだそうとしているだけで存外本人は何も考えていなかったのかもしれない。

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 彼が当局と決定的にぶつかるのは代表作『火の馬』撮影以後である。ここではザッケローニ前監督にそっくりな宗教家が新興炭鉱町で暗躍し、健全(笑)な共産主義者を惑わしていく。

 パラジャーノフらしい遊びは仕込まれていて、娘の様子を見に来た父親が別れ際にバスから手を振るとドアが閉まり、そのまま苦笑いして車内で立ち往生したり、入院した主人公の回復を願い、親しい人々が次々にホット・ミルクを大瓶で差し入れする様子がコミカルに描かれる。

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 構図としては主な登場人物を捉える場合には仰角が使用される。揺れ動く男女の感情の機微を描くときにはわざと突き放した視点で語られる。

 陰影をしっかり付けて、登場人物の心情に意味を持たせていたりと映像にもさまざまな工夫とこだわりがあり、プロパガンダにしてはかなり劇的にセンス良く物語を積み上げています。

 現代劇である『石の上の花』ですのでさすがにパラジャーノフ映画につきものの、駿馬を登場させるのは無理だろうなあと思って諦めていました。

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 すると、炭鉱夫が化石を見て夢想する場面において、王様となった自分に化石を献上するために使者が馬に乗って、丘を駆けて持参するというシーンがありました。意地でも馬を撮りたかったのでしょうね。

 遠くへ向かってヒロインが歩き出すラスト・シーンも変にベタベタしない感じがクールです。尻切れトンボ気味に幕を閉じる本作品ではありますが、すべての後日談をわざわざ語らなくとも、ラスト・シーンでの人々の関係性の変化を見せるだけで理解できます。

 ただ繰り返しにはなりますが、何も知らずにこれを観て、パラジャーノフ監督作品であると確信できる人は皆無でしょう。また知らなければ、これを観て有難がる人も皆無でしょう。

総合評価68点


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