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zoom RSS 『早春』(1970)輸入版DVDはやっと発売されましたが、字幕版で見たい傑作青春トラウマ映画。

<<   作成日時 : 2014/08/26 01:11   >>

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 九条シネ・ヌーヴォで来月後半に集中上映されるのはイエジー・スコリモフスキー監督作品群です。公式サイトにはまだどの作品を上映するのかの詳細は記載されていませんでした。

 先週、セルゲイ・パラジャーノフ特集で劇場を訪れた折にスタッフの方とお話しする機会があったので、色々とパラジャーノフのことをしゃべっていたついでにイエジー・スコリモフスキー特集の上映予定作品のことを尋ねました。

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 『出発』や『シャウト』などは入っているとのことでしたので、ぼくはもっとも観たい『早春』が今回の特集に含まれているかを聞きましたが、残念ながら、集中上映ラインナップからは外れてしまったそうです。ソフト化されている作品のうち、『アンナと過ごした四日間』『エッセンシャル・キリング』などは見ましたので残りも楽しみたい。

 長い間、版権問題がなかなか片付かず、ビデオ化を飛び越して、最近になって、ようやくBlu-ray化がされましたが、あくまでも海外版であり、一応はリージョン・フリーで英語字幕が選べるようなのですが、日本語字幕版はビデオ時代を含めて、一度も実現していない。

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 もっとも会話の内容はティーンエイジャーの恋愛映画でもあり、とりとめもないものばかりなのでそれほど理解するのに難しいわけではない。

 ぼくがこれを見たのはテレビ放送の吹き替え版での一度きりでしたが、動画サイトを探していると、英語オリジナル音声版のフランス語字幕入りという、日本人にはただややこしいだけの無意味なバージョンや字幕なしのオリジナルがアップされていたので喜んで観ていました。

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 早く日本語字幕版が出ないかなあと思いながら、ずいぶん月日が経っています。日本語のタイトルは『早春』。なんだか小津安二郎作品や純文学の趣があります。

 当時のアイドル俳優の一人だったジョン・モルダー・ブラウンが主演で、ヒロイン役にはビートルズ・ファンには馴染みが深いジェーン・アッシャーを起用しています。

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 ビートルズを取り巻く女性のなかでもっとも人気があったイギリスの女優で、美しくチャーミングな彼女を見るだけでチケット代やBlu-ray購入代金の元は取れます。

 舞台は60年代にポップ・カルチャーの発信地だったロンドンですので、ジェーン・アッシャーが着ている衣装も原色のものが多く、かなりカッコいい女に撮られています。

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 気が強そうで、アバズレ風の役。それでいて表情や眼差しの奥に寂しさがこぼれ落ちているような彼女を見ているだけで十分です。

 ポール・マッカートニーの浮気が原因で婚約を解消してしまった彼女がそのままポールと結婚して家庭に入っていたならば、ショービズを知り尽くしていた彼女がビートルズ崩壊を救ってくれていたかもしれない。

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 作品に出てくる金持ちだが、恋人をポルノ映画館に連れていく気持ち悪い婚約者がどうしても女好きのポール・マッカートニーと被ってしまう。

 原題は『DEEP END』で意味は室内プールの一番深いところという意味ですが、それ以外にもなんだか奥に深い意味を持っていそうです。

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 まずはオープニングでの自転車のサドルを超ドアップにする異様な構図と真っ赤に変化していく画面、そこへキャット・スティーブンス『But I Might Die Tonight 』の絶叫が重なってきて、恋愛映画のはずなのにとても禍々しい雰囲気に変わってきます。

 このころの映画だと『傷だらけのアイドル』などもロックを上手く使った名作でしたが、『早春』同様にファッション・センスも素晴らしく、ロンドンが最先端の町だったことが理解できる。

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 物語は簡単に言うと思春期真っ只中の童貞少年が仕事先の二十代中盤(ジェーンは当時、24歳!)の若くて、魅力的な先輩スタッフに惚れてしまい、クソガキのようないたずらやストーカーまがいの行為をエスカレートさせていった結果、獣性と情けなさが入り混じる激しい衝動から取り返しのつかない行動を取るという内容です。

 この勤め先は乱れに乱れていて、体育教師とジェーン・アッシャーは不倫関係にあり、それ以外にも彼女は風俗店で働いていた経験があったり、職場でも性的なサービスを客に行い、チップを稼いでいる。

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 ジョン・モルダー・ブラウンは初日に肉塊と化した熟女ダイアナ・ドースに言い寄られ、逃げ回るのが可笑しい。彼女はマンチェスター・ユナイテッドに所属していた北アイルランド出身の大スター選手、天才ドリブラーとして一世を風靡したジョージ・ベストに抱かれる妄想(そうそこよ!ドリブルしてシュートよ〜!)を抱きながら、青年に自慰行為の手伝いをさせる。

 妖怪に絡まれているようで、とても醜悪なシーンですが、彼が欲しいのはジェーン・アッシャーだけであって、他の女には目が行かない、視野が狭くて一途な思いが遠回しに暗示されているようです。

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 十八歳くらいの元気があり余る男ならば、女であれば誰でもいいと思うのは間違いで、頭のなかがセックスでいっぱいでも、ヤりたいのはたった一人の歳上の女だけ。

 すぐそばに美しく魅力的な女性がいて、しかも性格もイマドキ風でさばけていているとなれば、惚れても仕方ない。

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 女扱いに自信がない自分にも普通に毎日話しかけてくれて、じゃれ合うだけでもあれこれ想像して夢見心地になるでしょう。成人間際のときに出会う年上の女性というのはとても魅力的で、同世代の女どもとは全く違う大人の落ち着きと大胆さに引き込まれていくものです。

 たとえ彼女が自分が思っているような理想的な女、つまり妄想通りの女でなくとも、無理矢理に枠にはめ込もうとするだろう。向こうは何とも思っていないのに自分だけが激しく身も心も燃え上がり、身体がいきり立つ様子が見えてくるようです。

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 ジェーンと婚約者の関係を邪魔(歓楽街にあるクラブへ侵入し、取り締まりをしている警官から隠れるためのホットドックを買い続けるジョーク(一連のシークエンスでかかるのはTHE CANの『マザー・スカイ』)や置き屋での娼婦との邂逅が笑えます。)したり、体育教師との不倫関係を妨害したりと忙しい主人公は徐々に犯罪すれすれの行き過ぎた行為に走っていく。

 しまいにはあまりにもやり過ぎるジョンにジェーン・アッシャーはダイアモンド・パンチを浴びせる。相手が何を配偶者に求めているかなど理想と現実はまるで違うことを知らない世間知らずの青年が引き起こす重大事件は今も昔も数多く、衝撃的な結果に世間は驚くが、案外当事者たちは勢いでそうなっただけなので、さして殺意などはなかったのかもしれない。

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 もっとも印象に残る映画的なシーンはジェーン・アッシャーが素っ裸で挑発している写真パネルをプールに浮かべて、“彼女”に向かって飛び込んで、パネルに抱きついてDEEP ENDに沈んでいく有名なシーンでしょう。

 二次元でも満足してしまう様子は当時の感覚ではただただ異様に映ったのでしょうが、むしろ現在ならば自然に受け入れられるだろう。

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 ジョンの行為はエスカレートしていきますが、ポルノ映画館での痴漢行為はさすがにとがめられ、留置所送りになりそうになるが、未成年を入場させた劇場側にも問題があるという理由で釈放されてしまう。

 事件を起こしても何とかなるという悪しき知恵をつけてしまったことがのちの大きな禍をもたらしたわけですから、早いうちにお灸をすえた方が良いのかもしれない。

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 とかく、世間は未成年者に甘すぎるように思います。小さな事件を起こした者が初犯であればなおさらに厳しい対応を示し、社会の秩序を体で理解させるべきでしょう。

 あまりにもしつこいジョンに根負けし、ついに身体を許してくれたジェーンを目の前にしても、男性機能がプレッシャーに押し潰されて物の役に立たなかった深い悲しみと無力感、マザコンに嫌気がさしたジェーン・アッシャーへ与えてしまう致命的なダメージが人生を狂わせていく。

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 オープニングでの血に染まったサドルと対を成すように頭から大量出血してフラフラと崩れ落ちるように絶命したジェーン・アッシャーは透明感溢れるプールの底へと沈んでいく。

 そんな彼女の亡骸にしがみついた主人公は無抵抗な彼女の亡骸を抱きしめて、(おそらく)挿入していく。見方によれば、これは屍姦であり、かなり病的な性衝動ではあります。

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 それでもジェーン・アッシャーは美しく、限りなく透明に近いブルーなディープ・エンドに沈み行く彼女の全裸の姿はむしろ神々しく、十代だったぼくの脳裏に焼き付いて離れない。

 思い出の映画のひとつですので、なんとかTSUTAYAさんかイマジカにがんばってもらって、日本語字幕版を発売して欲しい。紀伊国屋は高いから困るなあ。ボックス・セットを販売しているのは紀伊国屋なので、いつものような足元を見る売価付けをされるのは迷惑ですね。

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 それでも見たいものは見たいので、ボックス・セットだけに収録するような狡すっからいマネさえしなければ、良しとしよう。

 本当にボックス・セットを買わなきゃ見せないモンネというやり方だけは勘弁してください。

 頼みますよ、紀伊国屋さん!ね!

総合評価 92点


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