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zoom RSS 『顔のない眼』(1959)天才外科医が若い女の顔を剥ぎ取るフレンチ・ホラーの傑作。

<<   作成日時 : 2014/07/26 19:51   >>

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 ジョルジュ・フランジュ監督の代表作と言えるのがマッド・サイエンティストになってしまった外科医を描いた『顔のない眼』でしょう。ピエール・ブラッスールが狂気の外科医を演じていますがもっともインパクトが強いのは一人娘役を演じたエディット・スコブです。

 上映が始まると、まずモーリス・ジャールがオープニングにつけた、どこか不自然なワルツ楽曲が流れてきます。とても洒落ていて、これから見るのがフランス映画なのだとすぐに認識できます。

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 ホラー映画にしては楽しげな旋律ではありますが、どこか奥底に異様な狂気を秘めているような曲はかえって対位法的効果があり薄気味悪い。被害者を物色するシーンでのアリダ・ヴァリのテーマのような使われ方をしています。

 テーマが鳴り響く中、乗用車の運転席にはアリダ・ヴァリがいて、後部座席には妙に帽子を深く被った若い女性がいます。

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 若い女性は疲れているのか眠っているようです。しばらくのドライブののち、女性が深夜に向かう目的地にしては不自然に思われる人気のない河原に着く。

 レインコートを身に付けたアリダが若い女を引きずり出してきて、無造作に川へ放り投げたことで、見る者はこれまで自分たちが見ていたのが眠っていたのではなく、殺害された遺体だったのだと思い知る。

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 観客は死体が投げ込まれる残酷な犯罪の様子を断片的に見ていたのだと気づかされる。ぼくらもすでに凶悪犯罪の目撃者となっています。

 導入部の10分間で観客はこの異様な物語に吸い寄せられてしまうでしょうし、テレビでいきなり放送されていたら、この不意打ちに動けなくなる。

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 アクシデントで顔を失った娘エディット・スコブの顔を取り戻すために他の若い女性を犠牲にしていく、あまりにも利己的な外科医ブラッスールは最終的に打倒されるべき悪役なのでしょうか。もっともショッキングな場面は1959年度作品としてはあまりにも生々しい顔面形成手術の克明な描写でしょう。

 若い女の子の顔の皮を剥ぎ取って、自分の娘に移植する様子は最上級に禍々しい映像だと言えます。さらにリアリズム描写は徹底していて、手術前には顔の皮膚を除去するためにクレヨンで印をつけて切りやすくしたり、鉗子で皮膚を固定して手術しやすくしていく様子は見ていて気持ち悪い。

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 剥ぎ取るシーンに至ってはかなりリアルで目を逸らす方もいるでしょう。他人の皮膚が拒絶反応を起こし、部分的にどす黒く腐って行くさまが恐怖を倍増させます。徐々に壊死していく様子が独白で淡々と語られるのも異様な演出です。

 またブラッスールが当初の目的(自分の愛娘をなんとかしたい。)を見失い、ただの人体実験を繰り返し、興味本意の研究がメインになっていくさまがかえって恐ろしい。

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 娘エディットもそれに気づき、父親への不信が増していく。顔を失った娘は眼のところをくり貫かれたマスクを被せられていますが、これを見た僕が思い出したのは『犬神家の一族』で圧倒的なヴィジュアル・インパクトを放っていたスケキヨでした。

 顔のない眼というのは事故で顔がぐしゃぐしゃになりながらも、両目だけは損傷することなく見ることが出来たために残った臓器が目玉だけだったから付けられたタイトルだったのでしょう。英語タイトルも「THE EYES WITHOUT A FACE」ですので万国共通のようです。

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 劇中、数人の若い女性が皮を剥ぎ取られる犠牲者として登場し、最後の一人はエディットによって逃がされ、献身的に狂気の手術に協力していた助手のアリダの喉をメスで突き刺し、殺害する。殺されかけた女性は実験動物として移植手術の対象として飼われていた多くの犬や鳥たちとともに解放される。

 エディットには可愛がられていたが、ブラッスールには無慈悲な実験を繰り返されていた犬たちは彼に襲い掛かり、噛み殺してしまう。皮肉にも彼の顔は噛み砕かれて、彼の利己的な手術により顔を失った犠牲者たちと同じように見分けがつかないほどに無残な屍をさらす。

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 すべてを決意したエディットは目の前に広がる深い森に消えていく。おそらく自らの生命を断つために森をさまようのでしょう。救いのないエンディングですが、ハッピーエンドにはなり得ないテーマなのでこうなるしかない。

 現在、整形手術はより発達し、外国や芸能界だけではなく、一般的にもごく普通に行われるようになっていて、整形手術を受けるためのツアーまであるので、この映画で語られる話はあながち驚くほどのものではなくなっていますし、臓器売買に関しても、貧しい国では闇で取引されているという。現実がフィクションを超えてしまっています。

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 『顔のない眼』はモノクロ映画ですが、実際の現場では少女が被っていたマスクは何色(本当に顔の皮を剥ぐわけにはいきませんし、やってしまうとエド・ゲインだし。)だったのだろうか。

 この映画での被害者は白人女性なので白なのでしょう。モノクロに映える色彩設定とかがあるのであればはっきりしますが、さすがに調べようもありません。もし黄色だったら、オリジナルのアイデアはこれだったのだろうと察しがつきます。

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 フランスのホラー映画の印象はアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの『悪魔のような女』であったりとモノクロの印象が強く、カラー映画でホラーというとあまり思い付かない。あまり好まれないのでしょうか。それともただ僕が知らないだけなのかもしれない。

 今回はレンタルでは出回ってない作品でしたので、Amazonで探したところ、DVDはけっこう高く、ビデオを購入して見ました。なんでもかんでもクリアな映像である必要はない。

 モノクロ作品やアメリカン・ニュー・シネマ時代の作品群、さらにホラー映画はザラザラだったり、映像にチラツキがちらほらするビデオテープでの再生の方が良い雰囲気を持っていることも多い。

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 ブルーレイが現在発売中で5000円以下ですので購入を検討中でしたが、DVDやブルーレイで5000円以上を越える場合は一本のソフトにそこまで払いたいとも思わないので、ビデオを探します。

 無理やりトリミングされていたり、カットされているシーンもありますが、安価は魅力です。現在探しているのは『恐怖の振り子』『骸骨軍団処女虐殺』『狂人の日記』などです。

総合評価 90点


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