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zoom RSS 『清須会議』(2013)三谷ワールドを期待する向きには肩すかしかも…。

<<   作成日時 : 2014/05/22 23:23   >>

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 面白いはずだという過剰な期待が大きすぎる三谷幸喜監督作品。今回、挑むのは時代劇。さてどうなるのかなあと思いつつ、コメディ好きにも時代劇好きにも納得できる内容に仕上がるのかという疑問はぬぐえない。

 常連俳優陣は今作品でも健在で、唐沢寿明ら一部に「あれっ?あの人出ていないなあ。」というのもありますが、多くの三谷組的な俳優さんはみんな出演しているのではないか。

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 主な出演者は役所広司、大泉洋、小日向文世、佐藤浩市、鈴木京香、妻夫木聡、伊勢谷友介、剛力彩芽、浅野忠信、寺島進、松山ケンイチ、でんでん、近藤芳正、中谷美紀、戸田恵子、西田敏行です。新顔の人もいますし、いつもの人も大勢います。昔の監督たちは同じ俳優を多く使い続けましたが、見ている者にも安心感があります。
 西田敏行は生前の六兵衛さん役で出演しているので、前作の『ステキな金縛り』を見ていた方はクスッと笑えたのではないでしょうか。こういったサービス精神あふれる部分も真面目な映画ファンが見ると批判されてしまったりするのでしょうが、オヤジギャグ的なこういう笑わせよう精神はずっと忘れずに持っていて欲しい。

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 戦国時代を扱った映画というと通常は合戦シーンだったり、切り合いのシーンなど戦闘描写が多い。しかしこの映画ではそういったシーンは忍者の襲撃シーンくらいで他には全くない。役所広司、佐藤浩市、浅野忠信と時代劇で活躍した俳優さんが揃っているのになぜ彼らに見せ場を作れなかったのかが疑問であり、もったいないなあと思いました。

 本能寺の変という内乱で主・織田信長を突然失った大勢力の権力闘争に際し、会議で勢力地図を塗り替えるという離れ業をやってのけた羽柴秀吉(大泉洋)の凄味を再認識すべき作品です。

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 どうしても後世の人は大向こうを唸らせるような大合戦に勝利してきた武将を評価するのでしょうが、江戸城明け渡しの勝海舟同様に、結果的に戦国時代の混乱と無用の戦争を避けた秀吉及び黒田官兵衛コンビの大勝利となったこの評定は地味ではありますが、もっと知られるべきイベントだったのではないか。

 この会議にスポットを当てたのは素晴らしいのですが、映画としての問題点もあります。密室劇を描いているので、当然室内での応酬が主になります。『12人の優しい日本人』で見られたような切れ味が残念ながら、この作品には見られない。

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 密室での撮り方や構図にメリハリがあまりない。演劇ならばそれでも構わないのですが、映画というジャンルで描くのであれば、より工夫が必要だったのではないか。息詰まるような権謀術数の会話の後に室外に出た時には解放感があるべきなのですが、海岸での旗取りシーンや漁師や三法師丸との邂逅エピソードを見ても、どこかこじんまりしてしまっています。

 秀吉にとっては起死回生の策略だった信忠の遺子を担いで織田家を仕切る作戦を思いついた重要なシーンのはずなのでもっと時間を割いてもよかったのですが、色々と詰め込んでしまうとただでさえ上映時間が140分間近くになっていたのがより長くなる可能性もありましたのでちょこちょこ切っていたのでしょうか。

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 お市の方(鈴木京香)や剛力彩芽のメイクがかなり気色悪くなっていて、まるで黒澤明監督の『乱』での楓の方(原田美枝子)を彷彿とさせます。特に鈴木京香の動きは原田を思い出させてくれました。

 人の欲望や本音に迫ってくる大泉洋が演じる秀吉のリアリストぶりと任侠的な武人という枠を超えられなかった柴田勝家(役所広司)の対比が素晴らしく、彼らの間で揺れ動く丹羽長秀(小日向)や池田恒興(佐藤)の打算や見限りまでの悩みも上手く描かれています。佐藤でなくともカニと領地ならば、迷わずに領地を選ぶでしょう。

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 武人である柴田については仇敵であるはずの秀吉ですら「おやじ殿!」と明るく接し、表面上ではあっても上役だった彼を一応は立てています。ここで描かれる勝家像は御人好しの武人であり、大勢力をまとめ上げられるような器量は全くない。史実ではお市の方が再婚相手に選んだのは勝家であり、秀吉は心の底から蔑んでいたようですが、この時代において女性に選択肢はないでしょうから、よほど嫌われていたのでしょう。

 天下人になってからの秀吉は長女である茶々姫を側室にして、秀頼を生んだ彼女は淀君として確固たる地位を得て、一時は我が世の春を謳歌するも、母親と同様に大阪城の戦火の中で生涯を終えます。

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 晴れ渡った清須の空をバックにエンドロールが流れる中、鬨の声が聞こえ、軍勢の歓声が響き渡るシーンがあります。これは賤ヶ岳合戦へとフラッシュフォワードしているのだろうか。柴田勝家(役所)を見送った大泉と中谷を写しだした後にティルトしていき、大空のカットへと繋がっていきます。

 果たして監督の意図はどうだったのだろうか。コメディとしては中途半端だと言われるのでしょうが、武士の世がガチガチの真面目一辺倒になってしまうのは江戸時代になってからであり、裏切りも下剋上も当たり前だった戦国時代においては人々もより快活であり、猥雑で野放図な武将も実際には多かったのではないか。

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 あとぼくは戦国時代の武将たちを描いた小説だったり、戦国武将の言行録などを好きで読んだりしていたので、人物関係や幼名だったりを知っていたのですんなりと入っていけましたが、歴史についての知識が全くないような人がこれを見ても、人間関係の機微だったりとかが理解できなかったのではないか。

 丹羽長秀を五郎左と呼ぶ柴田勝家は権六と呼ばれていますし、秀吉を藤吉郎と呼ぶ前田利家は犬千代と呼ばれます。人物の相関関係がこういう呼称にも出てきますので、ただ一本の映画を見るというだけではなく、普段からいろいろな歴史などの知識や地理を頭に入れておけば、より深く楽しめたのではないだろうか。

総合評価 70点


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清須会議  なんのことはない太閤記Rising やはり残念な三谷幸喜監督作
三谷幸喜監督作品がいつも、いまいちピンとこない。 演劇を楽しむ素養がないからなの ...続きを見る
背面飛行がとまらない
2014/10/11 20:58

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
>お市の方(鈴木京香)

今、話題の大河ドラマ「真田丸」では秀吉の正室北政所。

>丹羽長秀(小日向)

秀吉役。

>羽柴秀吉(大泉洋)

堅物の真田信幸

お気に入りの役者さん達を再び使っているのでしょうか?

蟷螂の斧
2016/07/01 21:48
こんばんは!

>お気に入り
演出側の意図を読み取る能力を持っている俳優を使い続けるほうが結果的にスピーディに撮影が進んでいくでしょうから、みなストレスをためることもなく、スムーズに製作できるメリットは大きいのではないでしょうか。

黒澤明は三船敏郎や志村喬、小津監督は笠智衆、溝口監督は田中絹代を好んで使っていましたね。各監督は脇役も同じ人を何度も使っていますし、意図を組んで動いてくれる俳優陣がいてこそ、演出に集中できたのかもしれませんね。

ではまた!
用心棒
2016/07/02 00:51
>妻夫木聡

彼が演じる「バカ殿」大笑いしながら見ました

>演出側の意図を読み取る能力を持っている俳優を使い続ける

まさに黒澤明監督方式です
他の人では、わかってくれない部分をわかってくれる事でしょう

>表面上ではあっても上役だった彼を一応は立てています

僕の職場でも再雇用爺が威張りまくって顰蹙を買っています
蟷螂の斧
2016/07/06 21:03
こんばんは!

>再雇用
かれらは今の自分が置かれている儒お経を全く理解していない老害ですね。パートなのだという謙虚さもなく、嫌がられていることにも気づかない。

シルバー民主主義の一環なのでしょうね。バカ爺どもの年金を支払っているのは現役世代ということすら分かっていないでしょうね。物価倍増インフレが5年くらい続けば、破綻するでしょうwww

年寄りの年金を若い人が負担するだけでなく、世代内で3割くらいは金持ちの爺さん婆さんが支えるべきでしょう。

ではまた!
用心棒
2016/07/06 22:28
>老害ですね。
>パートなのだという謙虚さもなく、嫌がられていることにも気づかない。

さすが、用心棒さん一刀両断です

>物価倍増インフレが5年くらい続けば、破綻するでしょう

怖すぎです

>世代内で3割くらいは金持ちの爺さん婆さんが支えるべきでしょう。

贅沢してる爺婆もいる事でしょう

>ただでさえ上映時間が140分間近くになっていたのがより長くなる可能性もありましたのでちょこちょこ切っていたのでしょうか。

2時間を超える映画は退屈だと言う人もいます。
蟷螂の斧
2016/07/07 21:45
 こんばんは!
日本の賃金体系だと新入りは安いのは仕方ないにしても、年功序列は依然鉄壁のようになっていて、役に立たない年寄りが一番多く持って行くのが役所を筆頭にまだまだ残っていますね。

まあ、だんだん齢を重ねるとそっち側になってしまいますがww

彼らのころよりも随分と厳しくなっているのは事実で、20年くらい前なら経費で飲み代も落ちたんでしょうが、今じゃ考えられないですものね。

法人税を10%くらい下げても良いので、その分を5%くらいは給与に回すか、ベースアップが出来ないのであれば、それを接待費として使えるようにすれば、あちこちにお金が流れていきますね。

あと10年ちょっとであの世に行く爺さん婆さんにカネをばらまくよりはこれからの国を支える子育て世代と子供たちにお金を使ってほしい。

>2時間
昔はフェリーニやキューブリックの映画は3時間越えが普通だったので、2時間を我慢できないのは映画ファンではないでしょうね。

ではまた!
用心棒
2016/07/08 01:15

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