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zoom RSS 『UTU/復讐』(1983)シリアスで見応えのあるニュージーランド映画。激しい怨念に驚きます。

<<   作成日時 : 2014/04/22 19:33   >>

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 『UTU/復讐』はかなり前から注目していたニュージーランド映画でかつてはビデオテープが販売されていました。

 しかしながら、DVD時代になってもフォーマットが更新されないまま今日に至っています。海外版DVDは販売されてはいますが、リージョン1なので再生に不安があるだけでなく、もちろん日本語字幕も収録されてはいません。

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 ハリウッドの単純なコメディなどであれば、字幕の必要性はあまり感じませんが、征服者であるイギリス軍と原住民であるマオリ族との激しい戦い、マオリ族同士が思惑の違いから殺し合いに突き進んでいく悲劇を描いています。

 そんなシリアスで複雑な物語の性質上、字幕をきちんと理解した上でこの作品を楽しみたい。となるとビデオテープを落札するしかなくなりますが、出品が少ない上、かなりの高額で取引されていて、だいたい見ているとヤフオクで8000円程度、Amazonだと高いときで30000円近くしています。

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 さすがにこれほどの金額となると、ふつうに見るのは無理なのかなあと諦めかけていたところ、ビデオテープを収集しているマニアから連絡があり、入手したので見せてくれることになりました。この前も『恋人たちの曲/悲愴』を貸してもらいましたので彼には頭が上がりません。

 そして今日になって、ようやくこの貴重な作品をじっさいに見る機会に恵まれました。まずはジャケットのインパクトにまずは圧倒されます。顔中に入れ墨を入れている部族のアイデンティティは台湾映画の『セデック・バレ』の勇猛果敢な現地人たちを思い出させてくれました。

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 白人たちに虐げられて、土地と家族を奪われ、帰順しても搾取され続け、民族の誇りを踏み潰された非支配層の徹底的な反抗を描いたのがこの『UTU/復讐』という映画で、アメリカ西部劇映画でのインディアンの立ち位置が彼らの役割です。

 『UTU/復讐』はジョフ・マーティ監督の1983年度公開作品です。ジョフ・マーティ監督作品でぼくが知っているのは他に『クワイエット・アース』『明日なき疾走』がありますが、日本ではあまり知名度が高いとは言えません。

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 “UTU”という言葉から日本人が連想するのは憂鬱の鬱であり、鬱病の鬱でしょう。この映画での“UTU”が意味するのはニュージーランド原住民であるマオリ族の言葉で怨念のこもった復讐のことです。物語はゲリラの英雄テ・フェケ(アンザック・ウォレス)を軍事裁判に掛けるシーンと各々の回想で語られます。

 妻を目の前で殺されたブルーノ・ローレンス、味方であるはずのイギリス軍に家族を虐殺されたマオリの戦士テ・フェケ(英国に反乱して捕えられる)、愛する女をテ・フェケに殺害されたニュージーランド生まれのイギリス中尉(ケリー・ジョンソン)。

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 テ・フェケに従兄弟を銃殺された部族の女、イギリス本土から追討作戦に派遣された大佐(ティム・エリオット)、イギリス軍に従順に従うテ・フェケの兄(ウィ・クキ・カー)ら各々の思惑や立場が複雑に絡み合い、現地での差別問題にも鋭く切り込んでいく。

 見所はニュージーランドの奥深い山岳地帯でのゲリラ戦、複雑な人間関係、味方内でのあからさまな差別、イギリス軍に所属しつつも忘れない民族の誇りなどで、とにかく骨太な漢たちの躍動する肉体と強固な意志、それを支え続ける女たちの深い愛情でしょうか。

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 オーストラリア映画にも言えますが、とにかく火薬の使い方も西部警察のように豪快で、四連射撃による爆音と共に崩れ落ちる山小屋、殲滅戦に使用される小型の砲台などが強く印象に残る。何気ないシーンにもインパクトが強いものがあります。

 それは訓練シーンでのカットで、最初はイギリス式に銃を構えて、ヨーロッパ風に武器を扱っていたのが、奇声と共に次第にマオリの戦闘の儀式へと変わっていく様子はゾクゾクします。

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 苛烈な主人公テ・フェケ(アンザック・ウォレス)はアメリカ・インディアンの酋長ジェロニモのようであり、武骨な体つきは『セデック・バレ』を思い出させる。民族の誇りを貫き通すリーダー像は類似するのだろうか。

 この映画を見ていて興味深いのは差別意識が幾層にも重なっていることだろうか。ピラミッドの頂点に位置するのはイギリス本島から派遣されてきた生粋のイギリス人大佐(ティム・エリオット)です。南半球の最果てでも風呂とワインを欠かさないこの侵略者が嫌なヤツであればあるほど後々のシーンが生きてきます。

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 彼の傘下にニュージーランド生まれの若い青年中尉(ケリー・ジョンソン)がやってきますが、大佐が連れてきた兵隊たち(イギリス出身者)はこの植民地出身者を軽く扱う。

 兵隊たちのなかには帰順したマオリ族の若者たちも大勢いて、彼らはイギリスと共存する道を選んでいます。もちろん彼らにとっても、同胞同士での殺し合いとなるので苦渋の選択に違いない。疑問を感じて、兵隊を辞めてゲリラに身を投じる者も出てきますが、排他的なゲリラには認めてもらえず、悲惨な最期を遂げる者の様子も描かれています。

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 しかも彼らは軍隊内部で本国側からの差別を受けているだけではなく、抗戦ゲリラたちからも誇りを失った者として軽蔑されている。そんななか、部族の女たちは比較的自由に行き来していて、英国軍側とゲリラ側のどちらの側にも顔を出したりしているのが興味深い。

 マオリの女でありながら、植民地育ちのケリー・ジョンソンと幼馴染だった若い女は部族の主導するゲリラに属しながらも、頻繁に彼のもとにやってきて、何度も彼の命を救い出す。

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 最終的にはこういった行動が仇となり、アンザックにばれてしまい、粛清されてしまうという過酷な運命が待ち受けている。女子供にも容赦がないのはゲリラだけではなく、イギリス軍も同じであり、意味もなく部落を襲撃して皆殺しにしていきます。勝者は何をやっても許され、敗者はすべてを否定されます。勝つしか道はないのが現実なのでしょう。

 主人公テ・フェケは部族の英雄ではあるが、彼に家族を殺害された者たちにとっては彼もまたUTUの対象でもある。私怨による思惑と怒りが渦巻く簡易裁判ではみながテ・フェケを殺そうとするが、私怨が絡むとあらたな戦いを生むだけだと諭すテ・フェケの兄(ウィ・クキ・カー)によって厳かに処刑される。

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 この兄の立ち位置と役割こそがもっとも重要で、彼の冷静な視点は両者の感情剥き出しの戦いのなかでかなり異質に思える。それでも山岳での殲滅戦時にマオリの同胞を虫けらのように殺そうとしたエリオットの姿を見つけると、鬱蒼と繁る木陰から彼を狙撃し、知らん顔をしているのが心情を表していて、なんだかブラックで笑えてしまう。

 ニュージーランドが誇る大自然の美しい描写が随所に見られるにもかかわらず、それが隠隠滅滅と映るほど、とても重苦しい映画であり、上映時間100分間あまりはあっという間に過ぎていきます。マオリ族ゲリラとイギリス軍、ゲリラと戦い続け、執念深くテフェケを追い詰めていくブルーノ・ローレンスは激しく戦う描写が多く、見応え十分です。

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 この映画での強い意志のある一匹狼の追跡者の演技が評価されたのか、ブルーノはこのあとのジョフ・マーティ監督作品『クワイエット・アース』では主演を務める。ちなみにアンザック・ウォレスも出演しています。ブルーノはなんだか大昔のプロレスラー、アレックス・スミルノフやイワン・コロフを思い出させてくれます。

 これほど素晴らしい作品がかつては日本語字幕版ビデオとしてリリースされていたもののDVD化されずにきてしまい、残念ながら現在は視聴が難しくなっています。見るべき重要な作品ですので、ソフト化してほしい。安くても8000円以上では手が出ません。

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 総合評価 90点


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