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zoom RSS 『恐怖の雪男』(1957)ハマー・フィルム製作の異色の雪男映画。雪男の登場はなんと!

<<   作成日時 : 2014/04/04 19:19   >>

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 血の臭いが漂ってくるようなスプラッター描写の先駆けだったハマー・フィルム映画には今でも多くのファンがついていて、多くの作品のDVDがリリースされています。

 そんななか、この『恐怖の雪男』も発売されていますが、この映画はハマー・フィルム製作のホラー映画としてはかなり異色の作風で演出されています。

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 上映時間は90分弱だということが分かった時点で、普通のホラー・ファンならば、「ははあ、この尺ならば、雪男登場は30分後くらいかなあ。」などと自分で予想を立てます。

 「ちょっとだけよ〜!」とばかり、ちらりちらりと手だけとか、影だけとかを見せながら、徐々にサスペンスを盛り上げていくのがこの手のジャンル映画の特徴になっています。

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 ところが、この映画ではもうすぐ映画が終わるという80分を過ぎても、いっこうに雪男の全身ショットが出てきません。カメラは雪男に驚く人間たちの表情や行動ばかりを追いかけて、肝心の主役をいつまでたっても写そうとしない。

 映し出されるのは熊用を改良した罠で殺した雪男の“手”だけのショットと全身を持ち帰るために包装した大きな袋、銃を探ろうとする“手”、キャンプに忍び寄ってくる影、金網を突き破る時の影と声、そして頻繁に登場する大きな足跡くらいしか映らない。

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 監督がやりたかったとしても、特撮ショットを作ろうとすると時間が掛かり、人件費が上昇し、製作費を圧迫するから仕方がなかったのだろうなあと同情してしまいます。

 ここまでくると未見の方ならば、もしかするとこれはサスペンスだけで一本を乗り切ろうとする力技の怪物が出てこない作品なのかもしれないという興味、または詐欺にあったような失望が頭の中を駆け巡ります。

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 本当にこのまま終わるのだろうかと思っていた矢先に突然、二体の雪男がピーター・カッシング植物博士兼登山家の前に姿を現し、恐くない表情を浮かべる雪男とボ〜っとしているカッシングが見つめ合った瞬間にカッシングは気を失い、なぜか雪男に助けられ、妻の待つキャンプ地近くで解放されます。

 なんと雪男登場シーンは全編通して1分間くらいしかないのです。これでいいのだろうか。これでビールとポップコーンを頬張る観客は納得したのだろうか。DVDで見ていたり、テレビ放送を見ている分には良いですが、映画館まで足を運び、お金を払って観に行った人がこれを見て満足できたとは思えません。

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 人間の醜悪さこそが一番のホラーなのだというオチなのでしょうか。登山家たちの思惑があまりにもバラバラなので、こんな状態で厳しい未開の冬山など踏破できるはずがないとも思えてきます。白人の傲慢さと貪欲さこそが恐怖なのでしょう。

 ミステリアスな雰囲気とピレネー山脈でロケ撮影された自然の厳しさと美しさが映像に迫力を生み、現実味を帯びている点は高評価できますが、あまりにも特撮パートが少なすぎます。おそらくピレネー・ロケで製作費を使い切ってしまったのでしょう。

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 3メートルに達しようとする雪男たちのアクション・シーンはただのひとつもなく、人間たちに襲い掛かることもない。5人のクルーで雪男の捜索をする登山隊は一枚岩ではなく、現地人ガイドは出来ればさっさと帰りたがっていますし、お金を積んでクルーになったという使い物にならないメンバーもいる。

 ピーター・カッシング博士は雪男イェティの存在を信じる変わり者ではあるが、今回は人造人間も作らないですし、吸血鬼を退治するわけでもなく、ただただ夢を追い求める科学者役をクールに演じています。

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 それでも5人のうち、ヒマラヤ奥地から生還できたのはピーターと現地人ガイドだけです。他のメンバーはイェティに殺害されたわけではなく、高山病と酸素欠乏による幻聴で発狂したり、恐怖でライフルを乱射したために雪崩を誘発してしまい、絶命していく。

 もうひとりは仲間の裏切りにあい、火薬を抜かれたライフルで雪男と応戦させられて、ショックのあまり心臓発作を起こして死んでしまう。

 つまり雪男は誰一人殺していない。彼らはただただ秘境で静かに邪魔されずに生活していきたいだけなのです。事情を知っているチベットの高僧たち(ブキミでイイ味出しています!)は白人たちに何度も警告を発しますが、思い上がった白人たちはこの過酷な土地が大嫌いで、臭いだの食べ物が最悪だなどと散々悪態を突き通します。

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 現地人たちの命はお金で買えるとでも言いたげな態度は最低ですし、雪男も研究用ではなく、見世物小屋に売って、一攫千金を狙っている者がほとんどでした。50年代だから、こういった描写が許されたのでしょう。本邦の『獣人雪男』も似たり寄ったりです。

 雪男の恐怖を描いた映画というよりも、雪山での高山病や酸素欠乏は一歩間違えると死を招きますよという教育映画を作るための出汁としてイェティを登場させている様にも思えます。

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 しかしながら山岳登山サスペンス映画としての出来は素晴らしく、ハマーにもこういったシリアスな作品が作れるのだなあと妙に感心してしまいながら、DVDを取り出しました。僕が見たのはDVDで良かった。

 公開当時に観に行った人はたぶん、帰りの道中でブツブツ文句を言いながら家につき、たったいま見てきた映画について家族や友人に「おもろないから、観に行かんときやあ〜!」と言っていたのでしょうね。まあ、イギリス映画なので、ビールを飲みながら、パブで語っていたのかもしれません。

総合評価 70点

 
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
本作品は、4月頃にJ;COMで放映していましたね。
まさか本作品まで貴サイトで押さえられているとは…雪男に遭ったような気分です笑。
初見でしたが、教育映画臭さは感じなかったかな。
遊星からの物体Xなどもそうでしたが、恐怖は常に隣人との共存への不安にあることを活かした作品で、観られて良かった感でした。
日本以外の国々の宗教が過激な原理主義に奔りがちであるのは、共存への不安が顕在しているからでは、と思いました。だからこそ日本では観られない俗悪作品も日常感で描くことが出来るのでしょうかね。
ちなみに、シッキム王国というチベット族の国は王様が白人美女の奥方を迎えたら滅亡しましたとさ。ちゃんちゃん。

きやらはん
2016/07/15 22:27
こんばんは!

ハマーの映画の印象は血なまぐさいものが多いなあという感じではありますが、この作品他、いくつかの作品群はハマー臭さを感じさせない出来栄えになっています。

特撮映画は人間同士の絡みである本編部分の出来が良いか悪いかで説得力が違ってきますが、この映画はそのへんがきっちりと押さえられているので見応えがありますね。

>共存
不幸なテロがまた起きてしまいましたね。宗教の目的は信者の精神面での安寧であったり、平和に生きることなのでしょうが、あくまでもその宗教だったりコミュニティのルールを順守するのが前提でしょうね。

移民ではありませんが、夜道を歩いているときに向こうから数人で向かってくる外国人を見るとなんだか薄気味悪いのも事実です。まあ、僕が住んでいるのは奈良なので、普通に観光客なんでしょうけどww

>白人美女
原因は何だったんでしょうね?

ではまた!
用心棒
2016/07/16 01:19

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