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zoom RSS 『マージン・コール』(2011)豪華キャストで製作された、リーマン前夜の悪あがきを描いた野心作。

<<   作成日時 : 2014/04/29 19:08   >>

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 リーマン・ブラザースを臭わせる証券会社で行われる破綻前夜の悪あがきを描いたのがこの『マージン・コール』です。主演にはケヴィン・スペイシー(少しだけ良心が残っている慎重派のベテラン部長役)、ポール・ベタニー(やり手の主任で浪費し続ける中間管理職役)、ジェレミー・アイアンズ(会社のトップで、自分さえ良ければ、他人のことはどうでもいいという大悪党)がしっかりとした演技で脇を支えています。

 その他にもザカリー・クイント(スタンリーの部下だったが、善後策に当たらされる若手社員)、サイモン・ベイ(副社長役で、金の亡者)、デミ・ムーア(リストラを推し進める地獄の使者)、スタンリー・トゥッチ(会社の沈没を見抜くが一方的に解雇される危機管理担当)など豪華なキャストが勢ぞろいしているにもかかわらず、なぜかこの映画は未公開のまま終わってしまいました。

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 説得力を持たせるためにケビン・スペイシー、デミ・ムーアなどのベテラン俳優が多数起用されていて、映画の雰囲気を落ち着きのあるしっかりしたものにしています。

 それでも未公開だったのはたぶん地味すぎるからに他ならない。題材が金融関係の破たんを描いてはいるものの、派手な市場でのクラッシュシーンはなく、会社内部での対応策や会議の様子に大半が費やされている。つまり大人向けの映画なので、見る人を選びます。また笑えるシーンや恋愛を描くような甘さは全くなく、現実的で寒々しく、骨太な映画です。

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 日本で公開されるハリウッド映画ではほとんどがラブ・ストーリーが伏線として描かれているものばかりで、そのほとんどが機能していないにもかかわらず、いまだに類似したプロットで拡大再生産されているように思えます。観客が見たいのはそんなものではないことには考慮されていない。

 そんな状況の日本市場では公開されることもなく、静かにDVDが発売されただけで、地上波にも乗らず、ぼくもたまたまテレビをつけた時にやっていたCS放送でようやく目にした次第でした。最初はぼんやりと眺めていただけでしたが、だんだんと緊迫した展開に引き込まれていき、気が付くと最後まで見ていました。

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 CS放送だったので、再放送を確認し、録画を済ませ、二回目を見てから、この記事を書いています。本当に地味な映画ではありますが、見応えは十分です。難しそうだと思われるかもしれませんが、専門用語を極力減らして、緊急事態をどうやって乗り切るかだけに焦点を当てているので普通に楽しめる内容になっています。

 人間らしさを描くエピソードとしてはスペイシーが飼っていた犬が病気にかかり、結局は死んでしまい、途方に暮れた彼は別れた奥さんの家の庭に勝手に入り込み、埋めていくところで映画は終わります。ただし、彼はまだ善良なのだというシーンではない。なぜならこの日の彼はアメリカ国内にパニックをもたらした金融危機を発生させた会社での証券投げ売りの現場責任者の一人という役割だったのです。

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 最初は投げ売りに反対していたものの最後は金に釣られて、悪党に加担して行くわけですから、人間らしいとも思えない。破綻の日に大方の不良債権を逃げ売りして一時的な危機を自分だけ回避したジェレミー・アイアンズに至っては満足げに最上階にあるフレンチ・レストランで優雅に食事をして過ごしている。一方で社員の80パーセントに解雇を言い渡しながら、そして市場を自己都合のみで大混乱に陥れた張本人は責任も取らずに逃げ切ってしまう。

 人間性が素晴らしいか醜悪かはピンチを迎えた時ほど、はっきりと顔を出してきますので、剥き出しの利己主義に走る高額所得者の群れを見るとムカムカ来るかもしれない。彼らにとってはただの数字でも、実際にお金を払って、彼らの言うがままに不良債権を買わされる庶民は有り金すべてを失ってしまう。

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 サブプライム・ローンなどの怪しげな金融商品が跳梁跋扈していたリーマン・ショック前夜の証券会社の幹部や社員の様子を上手く描いたのがこの『マージン・コール』です。

 年収が億単位の登場人物ばかりですが、分相応以上の暮らしを送ろうとする者ばかりなので、ほとんどの登場人物が借金を抱え、多額の慰謝料を持っていかれる。

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 若手社員(ザカリー・クイント)がなぜ何億も貰っているのに破綻寸前なのかを尋ねると、上司(ポール・ベタニー)は税金で半分はぶんどられた後に、服に数百万、クルマに数千万、家のローンに数千万、高級コールガールに数千万と内訳を洩らしていく。

 大金を貰えば、貰ったランクの生活を始めてしまうので、ほとんど貯金などはないのでしょうし、その暮らしのレベルは高いままで設定されて、失った後も続けてしまう。日本もだんだんドライで自分のことしか考えない会社が増えてきていますが、アメリカはさすが資本主義の本場なので常に解雇の恐れを抱きながら働いている。

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 つかの間の贅沢を満喫してしまうと、よけいに失ったときのショックは大きいのではないか。ここで描かれるのは証券会社内部での悲哀でしかない。コイツらがガリガリ亡者となって、小金持ちの欲張りどもから有り金をむしり取っていったのだろうが、一般人に与えた被害や不幸についてはまったく気にも留めていない。

 数字だけを追い求める異常者の群れです。そんな彼らにもヤキが回ってきますが、我が身だけが可愛い彼らは紙屑でしかないサブプライム證券を破滅の日まで売り続け、自分達だけが売り逃げする姑息で反社会的な商行動を取ります。どれだけ社会に迷惑がかかろうと構うことはなく、儲けのみを追求する。

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 われわれ日本人が相手にしているのはそういう輩であることを肝に銘じ、TPPなどはなけりゃないで構わないくらいの態度で臨んで欲しい。共産主義よりはましなだけで、資本主義が完璧などとは誰も思っていないはずです。ちなみにショパンの前奏曲15番『雨だれ』が劇中で使用されていて、やけに深刻に響いてきます。

総合評価 75点


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