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zoom RSS 『モンティ・パイソンのザ・ラットルズ』(1978)ビートルズのパロディとしてはベスト!

<<   作成日時 : 2014/03/01 01:51   >>

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 モンティ・パイソンがビートルズの歴史をパロディに仕立てあげたのがこの『モンティ・パイソンのザ・ラットルズ』(1978)です。オリジナル・タイトルは『オール・ユー・ニード・イズ・キャッシュ』、つまり『金こそはすべて』というなんとも皮肉っぽい題名です。

 さすがにそのままではリリースしにくいと思われたのか、『モンティ・パイソンのザ・ラットルズ』になってしまいました。見ていて、何だかとてもビートルズの『コンプリート・ザ・ビートルズ』に構成が似ているなあと思いました。CDではラトルズになっていますが、VHS時代にはラットルズと表記されていましたので、今回はラットルズで統一します。

 しかし、ビートルズのドキュメンタリー製作年度は1982年なので実はモンティ・パイソンの『モンティ・パイソンのザ・ラットルズ』のほうが先に製作されていたという驚きがあります。

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 つまりモンティ・パイソンを先に見ていたイギリスのファンは『コンプリート・ザ・ビートルズ』を見たときに爆笑しながら見ていたのではないだろうか。

 モンティ・パイソンを見ていなかったぼくら日本のビートルズ・ファンはよく出来た構成や挿入されるマリアンヌ・フェイスフル(ミック・ジャガーの元カノ)らのインタビューに感慨深くなりましたが、ラットルズのインタビューにはミック・ジャガーが登場して、けっこうラットルズとの思い出話をしゃべっています。

 もちろんフェイク・ドキュメンタリー形式を取っていますが、微妙にビートルズとストーンズとの関係を絡めているので、ニヤニヤしてしまう。

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 本編ではビートルズの歴史同様にクォーリーメンに似たナスティ(お下劣なビデオ・ナスティという言葉もあるくらいだから、何かと世間を騒がせたジョンでしょう。ニール・イネスが熱演。)とダークの出会いから描かれていて、名前の綴りはDIRKでお金に執着するというイメージでDIRTYを連想しました。

 もちろんポールを意識していて、エリック・アイドルがポールの特徴をしっかりつかんでいます。彼は口パクで、実際の歌と演奏はオリー・ハルソールが担当し、ハルソーもスチュワート・サトクリフを思い起こさせるレポ役でちょっとだけ出演しています。

 そこへインド人系(?)の役者リッキー・ファターが演じるスティッグ(ジョージ。のちのインド思想への傾倒をすでに暗示。)、そして名前を縮められたバリー・ウォム(同じくリチャード・スターキーを縮められたリンゴ・スター。ジョン・ハルシーが演じています。)が加わってグループ結成という具合でクスクス笑えます。

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 素晴らしいのはビートルズ・ファンならば一度は見たであろう映像を完コピしたうえでパロディ化していくので、ガチガチなファブ4マニアでも十分に楽しめます。

 キャバーンで『サム・アザー・ガイ』を歌っていたシーンには『グース・ステップ・ママ』をかまし、エド・サリヴァン・ショーの『シー・ラブズ・ユー』演奏シーンには『ホールド・マイ・ハンド』、「パラディアムの夜」やロイヤル・コマンド・パフォーマンスの模様ももちろんカバーされていて、『ウィズ・ア・ガール・ライク・ユー』を持ってくる。

 ちなみにラットルズのデビュー作は『ツイスト・アンド・ラット』だそうだ。ハンブルグ時代まで描かれていて、カイザーケラーがラットケラーになっていたりします。ネズミがいっぱいの部屋で寝ていたというシーンでは本物のネズミを出演させていて気持ち悪い。

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 のちのちの重要人物であるマハリシのシークエンスではバンガーがボグノーに変わっていて、『ラブ・ユー・トゥ』に似た曲がかかっています。

 ラットルズの演奏シーンが秀逸で、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの演奏時のクセを再現しているこだわりが素晴らしく、ただ茶化すだけではない、クリエイターの意地が窺えます。

 ジョンがリズム・ギターを掻き鳴らしながら、ガニ股になっていく様子や、ポールが斜め上を瞬きしながら目線をクリクリと変える様子、ジョージが白い歯を見せながらハーモニーに加わる様子などが完璧に再現されています。

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 中でもニール・イネスの声やしゃべり方がジョンにそっくりで、いわゆるキリスト発言でのバッシングへの弁明シーンは良くできています。

 本家はイギリスにおいてはジーザスよりも若者の心を捕らえているんだという趣旨の弁明でしたが、ラットルズでは“GOD”ではなく、“ROD”よりも有名だと言ったのだと言い訳する。

 つまり、ロッド・スチュワートのことであり、ロッドはパープリンだと言い切ってしまう。演奏シーンに戻ります。

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 印象的だったのは『ヘルプ!』ならぬ『アウチ!』(いてぇー!!)、『アイ・アム・ザ・ウォルラス』ならぬ『トラジカル・ヒストリー・ツアー(悲惨な歴史の旅)』の『ピギー・イン・ザ・ミドル』、『ゲット・バック』ならぬ『ゲット・アップ・アンド・ゴー』が最高で、『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』も『グッド・タイムス・ロール』となり、いずれもインパクトは絶大で耳にこびりついてなかなか離れません。

 結局、サントラ盤『ザ・ラットルズ』まで買ってしまう有り様でした。かなりサントラのクオリティが高く、色々な映画を見てきましたが、見ていて欲しくなり、実際に買ってしまったのは『ライト・スタッフ』以来です。

 ボブ・ディランとの出会いが描かれていて、麻薬ではなく、紅茶を飲むスノッブなティー・タイム習慣が身に付いてしまい、それがもとでナスティ(ジョン)やミック・ジャガーが逮捕されてしまいます。

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 名前の言い換えはたくさんあり、シェイ・スタジアムはチェ・スタジアムになってしまう。革命家チェ・ゲバラを記念して作られたそうだ。

 ポール死亡説までパロディになっていて、ここではスティッグ(ジョージ。)がすでに死んでいて、アルバム『シャビー・ロード(アビイ・ロードではない。)』のジャケットで彼だけがパンツ一丁にされているが、イタリアでは死を意味するとか、曲のなかで「ぼくはスティッグを埋めた。」と歌っている(『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』ですね。)とかさまざまなスティッグ死亡説の根拠が示される。

 中盤では生中継が売りだったアワ・ワールドを茶化し、画面下に“ビデオ収録”とテロップを流しながら、『ラブ・ライフ』を歌う。『愛こそはすべて』ではオープニングで『ラ・マルセイユ』が演奏されるが、ここでは「お〜たまじゃくしはかえるの子〜♪」が流される。

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 サッカーのチャットみたいだが、彼らはエバートンのサポーターだったことも明かされます。そういえばビートルズの青盤と赤盤が意味するのは赤がリバプールで青がエバートンのチーム・カラーでした。

 アニメ『イエロー・サブマリン』まで再現され、『チーズ・アンド・オニオン』として演奏される。後半では小野洋子の代わりにナチスの制服を身に纏ったドイツ人女性(設定はヒトラーの娘!)と結婚するナスティ(ジョン)の映像が流れるが、このときに他のメンバーのパートナーたちも出演し、まるで『サムシング』のPVを見ているようでした。

 このように、見れば見るほどその細かい再現に笑いが止まらない。極めつけはジョージ・ハリスン本人がリポーター役で出演していることで、モンティ・パイソンと関係が深い、洒落が解る彼が本編に出てしまっているわけですから、ビートルズのファンは文句を言わずに楽しまなければならない。

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 『ラブ・ライフ』のアウトロで『ホールド・マイ・ハンド』のコーラス部分が歌われるのは『愛こそはすべて』で『シー・ラブズ・ユー』が歌われているのと対を成している。いやはや、本当に細部までこだわっていますね。

 どうせパロディをやるのなら、これくらい徹底したほうが見る側も楽しめるということなのでしょう。「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ!ラブ!〜♪ラブ・イズ・オール・ユー・ニード・イズ!〜♪」が「ラブ・イズ・ザ・ミーニング・オブ・ライフ!」に変えられています。

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 どちらも意味することは同じですが、こういった歌詞にまで気を使っているパロディだからこそ、ジョージも楽しそうに出演しているのかもしれない。

 解散間際の混乱も描かれていて、アラン・クラインもどきのマネージャー就任やルーフ・トップ・コンサートの模様、アップル・コープスもどきのバナナのデザインも笑えます。

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<収録曲>

1. Goose-Step Mama
2. Number Two
3. Baby Let Me Be
4. Hold My Hand
5. Blue Suede Schubert
6. I Must Be In Love
7. With A Girl Like You
8. Between Us
9. Living In Hope
10. Ouch!

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11. It's Looking Good
12. Doubleback Alley
13. Good Times Roll
14. Nevertheless
15. Love Life
16. Piggy In The Middle
17. Another Day
18. Cheese And Onions
19. Get Up And Go
20. Let's Be Natural

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 知らない人に「ビートルズのアウトテイク集で、すごく出来が良いから聴いてみて!」と言って渡せば、何の疑問もなく聴いてくれそうなくらい素晴らしい。

 情報が少なかった70年代とかに海賊盤でこれらの収録曲が入っていても、たぶん気付く人は少なかったのではないか。「ゲット・アップ・アンド・ゴー・バック・ホーム〜♪」と歌っているのはもちろん『ゲット・バック』のパロディ『ゲット・アップ・アンド・ゴー』ですが、普通に聴いていても良い曲ですので、ビートルズ・ファンの方にこそ聴いてもらいたい。

総合評価 80点



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コメント(2件)

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ラットルズ最高です!! モンティ・パイソン、笑えるものとそうでもないものがありますね。ジョージ・ハリスンは特に彼らのファンで〔バンデッドQ〕はジョージの設立したハンドメイド・フィルム社で映画化したはず・・・。モンティとは直接のつながりはないでしょうがテリー・ギリアムの作品にはモンティに近いセンスを感じるのですが、いかがでしょう?
シュガー・シェイカー
2014/03/01 15:26
 こんばんは!
>最高
そうですよね。好き嫌いが分かれるモンティ・パイソンですが、これやはじめての劇映画となったアーサー王伝説のパロディ『モンティ・パイソンのホーリー・グレイル』を買っちゃいましたよ(笑)

このホーリー・グレイルはテリー・ギリアムとテリー・ジョーンズの共同監督ですし、特典の音声解説では彼ら二人とエリック・アイドルらがおしゃべりしていますよ。

 ガチガチのビートルズ・ファンにこそ、肩の力を抜いて見てほしい作品ですね。

 ではまた!
用心棒
2014/03/01 23:44

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