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zoom RSS 『パニック・イン・テキサスタワー』(1975)大量射殺犯をドキュメンタリー・タッチで描いた傑作!

<<   作成日時 : 2013/12/16 23:28   >>

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 『パニック・イン・テキサスタワー』はかつてはテレビ放送されていましたが、ここ20年くらいは見ていません。大昔に見た映画を記事にすることが増えていて、今回はこの作品のことを書こうと思い立ちました。

 すぐにレンタルを探したり、ヤフオクを当たったり色々と捜索しましたが、まったくヒットしません。もしやと思い、『パニック・イン・テキサスタワー』という英語タイトルは邦題かもと気づき、正式な原題の『DEADLYTOWER』を探し出して検索すると、どうやら輸入盤DVDがあることが分かりました。

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 値段も1600円位と手頃でしたし、最悪PAL盤だったとしても見れないよりはマシだし、PCで再生すれば良いやと割り切り、注文を出しました。

 スイスからの郵送だったようで三週間以上も掛かりましたが、無事にヨーロッパを旅した後に極東のわが家に到着しました。

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 お話の軸は大量射殺魔として有名なチャールズ・ホイットマンが1966年8月1日に大学の90M以上の高層タワーでの凶行に向かうまでの軌跡、さらに大量殺人を犯して、射殺されるまでを若き日のカート・ラッセルを主役に抜擢し、ドキュメンタリー・タッチで描きます。カート・ラッセルはこの難しいサイコ役を熱演しています。

 実際にこの事件は相当に衝撃的だったようで、殺害された犠牲者が15名、負傷した被害者が30名以上という最悪の結果を招き、コロンバイン大学での大量射殺事件が起こるまで40年近くも犠牲者数記録を保っていました。

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 脇役でよく出ていたネッド・ビーティも出演していてなんだか懐かしい。共演にアーネスト・ボーグナインやらジョージ・ケネディなんかがいたら、個人的にはもっとわくわくしたでしょうが、今回の作品には出演していませんでした。

 劇場用ではないのが不思議なくらいの秀作で、テレビ映画としては屈指の名作です。製作者たちの真面目な姿勢に好感が持てます。全編を通して、かなり重々しく、汗が噴き出してくるような暑さの臨場感が画面から伝わってきます。

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 本当に出演者一同、みな汗だくで顔からはポタポタ汗がしたたり落ちますし、着ている服も汗染みだらけで、汗のすえたような臭いが伝わってきそうなくらい尋常ではない量の汗、汗。汗のオンパレードです。

 とくに展望台に突入する際の緊迫感を盛り上げるために下からのあおりショットで警官の職務への意志の強さと後戻りできない恐怖を表現しているようで見る者にもこれらの複雑な心情が押し寄せてきます。クライマックスでは最初は400フィート以上も離れてた狙撃者と警官の距離はほんの数メートルまで近づいていく。

 ホイットマンも最初は好き放題に射殺できたが、展望台を拠点として撃っているのが分かるとあちこちから逆に狙われたり、歩行者も銃弾を避けていくのでほとんど当たらなくなっていく。このあたりの描写もリアルでした。

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 汗は疲労と緊張感を画面に漲らせていて、張り詰めた緊張感が素晴らしく、あっという間に上映時間が過ぎていき、90分以上が経っていました。犯人側と警官側を並行的に描く構成も効果的で、見ている者を飽きさせない。

 そもそもスタートは夜勤を終える警官の描写の後にホイットマンのタワー立てこもりまでの数時間前を描いていく。それは母親及び新妻の刺殺と遺書のタイピングですのでかなり深刻な導引部になっています。

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 抑えられない暴力への衝動

 ひどい頭痛

 長い間精神科に通っていたが、ついに結論に達した。

 この世界は生きるには値しない。

 一人で戦うしかない。

 1時33分 母が死んだ 3時に妻が死んだ


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 実際のテキサスタワー無差別狙撃事件も暑い真っ盛りの8月1日に起こっています。こういった独特な雰囲気は他ではあまり見ない。平行して描かれるのはヒスパニック系移民の警官(リチャード・イニグエス)が昇進を見送られた挙句に普段の生活では嫁に金のことでガミガミ言われて、頭が上がらない体たらくを写し出していく。

 そんな彼が非番の日ではあるもののラジオで聞いた事件の一報にいてもたってもいられずに、使命感から重大犯罪の現場へ出向き、結果的に実働部隊の最前線で働くことになる。

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 一歩間違えたら、彼も射殺されるかもしれないという緊張感が満ちてきます。ただでさえむしゃくしゃする真夏の日であれば、ただストレスを溜め込む生活を強いられているその他の人々も第二のチャールズ・ホイットマンになっていたかもしれません。

 ホイットマンはピクニックに行くように周到な準備をしていきます。海兵隊出身である彼は軍支給の道具箱(棺桶みたいにでかい!)に多くのライフル、拳銃、ナイフ、灯油、籠城用の食物(チーズやクラッカーなど腐らないもの)、情報収集用のラジオなどを詰め込んでいく。

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 彼はホームセンター(?)でその大きな道具箱を運ぶカートを買い、さらに銃砲店に出向き、欲しいライフルや自動小銃、そして600発もの銃弾を買い込む。店主に何に使うのかを尋ねられると「ブタを撃ちに行くんだ。」と答える。客の要求のままに何のためらいもなくこのような大量の武器を売ってしまう銃砲店のモラルの低さも問題である。

 世の中で起きたことをすべて他人事だと受け流していく人は問題意識に欠けている。すべてを被害者意識でとらえるのも間違えています。物事のバランス感覚をしっかりと身に付けている者を大人と呼ぶ。

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 このバランス、私生活と仕事が両方とも充実しているのがベストですが、働きながら、時間に拘束されながら生きていくのは難しい。それでもどうにかして折り合いをつけるのが大人であろう。すぐに精神異常だとか言って現実逃避する前にあまりにも精神的に幼い、甘えた考え方を反省すべきである。

 自分の思い通りになんて物事は運ばないし、周りはすべて違う考え方を持つ他人だと認識していないからこそ、なんで自分の言うことを聞いてくれないのだなどという甘えが顔を出してくる。

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 ストーカーなどはカタカナで言わずに暇人の変態と呼んだ方がしっくりとくる。ストレスはあって当たり前で、ストレスのない職場というのは期待されていない人材と同義語ではないか。

 ホイットマンが凶行に及んだ理由は何だったのだろうか。彼は射殺されたので真相は藪の中です。ミステリアスな部分があるのでそこをフィクションで補完して人物像を炙り出そうとした映画作家のひとりがピーター・ボグダノヴィッチです。

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 彼の処女長編『殺人者はライフルを持っている』はこのホイットマン事件に大いにインスパイアされて劇場用映画として製作されています。

 海外でも1600円で販売できるのであれば、我が国でもそれくらいでリリースしてほしい。同じくテレビ映画の『戦闘機対戦車』を復活させた実績を持つTSUTAYAさんあたりにひょこっと出して貰えると嬉しい。

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 ついでに『早春』『傷だらけのアイドル』『最後の脱出』『センチネル』なども難しいのは百も承知であえてお願いしたい。色々と権利問題やらなんやらがあるのでしょうね。

 昨日もソフト化が望まれつつもなかなかリリースされなかったスタンリー・キューブリック監督の初期作品『恐怖と欲望』だったり、アレハンドロ・ポドロフスキーの『エルトポ』がTSUTAYAさんに並んでいました。クリエイター本人が亡くなったりするとその遺族はお金が入れば何でもいいので封印を解いてくれるでしょう。

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 やれば出来るのですから、今後の発掘名作コーナーに期待しています。新作にあまり興味がないぼくが今でもレンタル屋さんに行くのはカルト映画やDVD化されなかった過去作品のリリースをチェックする楽しみがあるからなので、今後もTSUTAYA捜索活動は定期的に行っていきたい。

 とくにコーネル・ワイルド監督作品は『ビーチレッド戦記』『裸のジャングル』『最後の脱出』など最近の映画の予定調和にうんざりしている映画マニアには堪えられない作品群ですので早く見たい。

 ちなみにこの『パニック・イン・テキサスタワー』は『DEADLY TOWER』で輸入版が発売されていますのでトライしてください。セリフも少なく、日本人でも見やすいですよ。

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総合評価 82点



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