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zoom RSS 『トリフィドの日』(1962)見なけりゃ損するSF映画の傑作。子供が見たらトラウマになるかも…

<<   作成日時 : 2013/12/12 22:02   >>

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 『トリフィドの日』は1962年に公開されたSF映画の傑作です。お話と映像の雰囲気は『ゾンビ』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ブラインドネス』『マンモス・フラワー』『宇宙戦争』『ゴジラ対ビオランテ』の良いところをミックスしたような感じです。

 つまり言い換えるとこの映画を構成する様々なアイデアが後々まで転用されているということです。この作品を知ってか知らずかは分かりかねますが、もともと『トリフィドの時代』というSF小説があります。

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 未来のクリエーターたちが各々この小説を読んで、自分の作品に使えると思ったアイデアを膨らませて、自分たちの作品に生かしたのではないだろうか。

 そうだとしたら、後世への影響力を考えるとこの『トリフィドの日』はもっと評価されて良い。限りある予算のなかでも最大限に見所を作り、観客を飽きさせない工夫をしてくれています。

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 アイデアが素晴らしく、流星群の天体ショーを楽しんだ世界中の人々が一夜明けると、多くが視力を失い、社会機能が麻痺してパニックに陥る。航空機は墜落し、都会は火に包まれ、蒸気機関車(!)は終着駅のホームで激突する。ミニチュア特撮の出来が良く、かなり頑張って良いものを作ろうとしている姿勢が素晴らしい。

 我々の文明社会は眼という器官が原動力であることが明らかになります。交通機関、電力、流通すべてには目が必要なので、盲目になってしまうとほぼすべてが機能停止します。

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 あくまでもSFではありますが、いかに目が重要なのか分かります。この光線は人類の視力を奪うだけでなく、食虫植物トリフィドを異常に進化させて、巨大化させた上に自由に動き回れるようにする。

 人間が歩く程度のスピード(まさにゾンビ!)ではありますが、視力を奪われた人類にとっては大繁殖して襲いかかってくる肉食歩行植物は恐るべき脅威として猛威をふるう。

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 潜水艦で任務に就いていた軍人、夜は消灯されて窓のない部屋に隔離されていた凶悪犯、眼の手術を受けていた主人公の船長、貨物車で密航していた孤児の少女らのトリフィドとの格闘や凶悪犯からの逃避行を主軸に描き、彼らは彼らなりにトリフィドの習性を見つけ出し、それを突破口に生き抜いていく。

 もうひとつの軸に、離れ小島の灯台の地下室で研究活動をしていた科学者夫婦のトリフィドとの戦いとサヴァイバルを描いています。

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 船長たちが見つけた習性はトリフィドたちは大きな音やある種の周波数に反応して、そこへ向かっていくことでした。囮を使って危機を乗り越えていきます。

 孤立している科学者夫婦はトリフィドに何度も襲撃され、倒したトリフィドをサンプルに実験を繰り返すものの弱味を見つけられない。疲労のあまり、数時間ほど眠ってしまった隙を付かれ、多くのトリフィドの侵入を招く。

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 灯台の最上階まで追い詰められた科学者夫婦はやけくそで防火扉を開けて、海水を浴びせかける。すると弱点がないと思われたトリフィドがじつは海水に非常に弱く、放水されるとどんどん溶けていってしまう。

 結末は呆気ないものですが、そこまでが丁寧に描かれているので見応え十分です。船長たちと科学者夫婦が出会うシーンはなく、各々がベストを尽して怪物を退治するのが良い。普通、こういった展開を採用すると最後にお互いに出会って、協力して怪物を倒すという結末を迎えるパターンが多いのですが、パラレルに進行し、出会わないというのも斬新です。

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 映像として印象深いのは船長たちがトリフィドから逃げていく過程でスペインまでたどり着き、まだ無事であった夫婦の邸宅で難を避けていると夜中にトリフィドの大群に囲まれる。

 なぜか屋敷の敷地内に放置されているタンクローリーのガソリンを浴びせかけ、彼らを焼き尽くすも明くる日にはまた無言のトリフィドの大群に囲まれている。

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 一切しゃべらないが明らかに自分たちを狙い続ける肉食歩行植物の描写がかなり気持ち悪い。トリフィドを焼き尽くしていくさまも薄気味悪い。

 これらの映像は強烈なインパクトを与えてくれます。過去に見た覚えはありませんので初見でしたが、小さい頃にこれを見ていたら、トラウマになっていたかもしれません。

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 この作品が問いかけるのは五感を持つ人類にとって最もコミュニケーションを取るためにそして社会を運営していく上で重要な鍵となる視覚を失うことの脅威と秩序が崩壊したときでも通常の人格を保てるのかということです。

 立派な振る舞いをしていた医者や看護婦が絶望してすぐに自殺してしまったり、紳士然としていた初老の男性が視覚を保っている少女を拉致しようとしたりする様子は傍観している分には大人気ないと思えるが、当事者になると果たしてどれほどの人が平静を保てるだろうか。

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 触覚、味覚、聴覚、嗅覚、視覚のうち、社会全体から明日無くなるとすると一番困るのが視覚でしょう。よって視覚を維持できた者は圧倒的なアドバンテージを得ます。神に近づく人間です。バベルの塔の神話では人類は共通言語を失いましたが、この作品では視覚を失い、より重たい負担と現実の脅威に直面します。

 脅威とは迫り来るトリフィドだけではなく、目が見えないからあちこちで起こる火事の恐怖と人類同士が互いに抱く不信感です。他人が犠牲になっていくのを見ても何も出来ないし、助けられない非力を実感するか、視力を保っている生き残りが暴徒化して、見えない若い女性に襲い掛かる様子は悪夢です。

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 ひとつの感覚を失うと多くの当たり前が当たり前ではなくなる。また五感を持つ人類が第六感、つまり霊感を得るようになったとすれば、他人の心の本音がさらけ出されてくるので、嘘が通用しなくなり、美辞麗句では誤魔化せなくなる。

 そういう世界においては各々の想念が一致する者同士でしか一緒にいられなくなるでしょうから、より身分や階層が厳格になるのではないか。想念がダイレクトに伝わる第六感の世界では想いのズレが人の価値を決定していくのではないか。

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 清濁さまざまな人々が住むシャバは暮らしにくいが、想いが違っても、口に出さない限りは差別されにくい。危機に直面しても、現実世界でなんとか生き抜いていく強い意志を持って行動してこそ、未来は開けていきます。

 ポジティブなSF映画と受け取りました。お値段は千円台とお得ですので、機会があればご覧ください。日本題には『人類SOS!』が採用されています。たしかに『トリフィドの日』よりは意味がダイレクトに伝わりやすいのかもしれない。

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 総合評価 80点



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