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zoom RSS 『クルージング』(1980)アル・パチーノ主演作だが、あまり知られていないハード・ゲイ物。

<<   作成日時 : 2013/12/12 00:05   >>

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 名優アル・パチーノ出演作品でぼくが好きなのは多くの映画ファンと同じように『ゴッド・ファーザー』や『狼たちの午後』ですが、すでに名声を得ていた1980年にある一本のウィリアム・フリードキン監督作品に出演していたのはあまり知られていない。

 ウィリアム・フリードキン監督といえば、『真夜中のパーティ』『エクソシスト』『フレンチ・コネクション』と話題作、傑作を連発していた時代の寵児でしたが、80年代を迎えるころから急激に輝きを失ってしまった映画人でもあります。

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 今回、取り上げた作品のタイトルは『クルージング』で製作年度は1979年で公開は1980年ということもあり、絶頂期を思い起こさせてくれる、かつての輝きの残像を見ることが出来ます。ニュー・アメリカン・シネマのスタイルをまだ引きずっているのは彼の良さでもあり、彼の頭の硬さでもある。

 個人的にはこういう彼のスタイルが好きなので、ホモ・セクシャルのえぐい世界を描いている映画ではあるが、十分に彼の良さは出ていると思います。しかしながら批評的には最悪で、その年のラジー賞にもノミネートされてしまいました。

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 クルージングというとイメージするのは豪華なクルーザーでの湾内一周などゴージャスな道楽を連想します。しかしホモ業界においては乱れに乱れたクラブでの男漁りを指す。着ている服やバンダナなどで自分が求めている行為を周りの人々に知らせる。

 まあ、口数が少ない男も多いでしょうし、シャイなボーイもいるから決まったルールなのでしょう。ノーマルな男性がルールを知らずにこの界隈に入り込んでしまうとまさに迷宮で戸惑うでしょう。

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 たしかに内容がショッキングすぎることが最大の要因でしょう。ホモ・セクシャル連続殺人鬼を逮捕するためにゲイの巣窟に潜入捜査を行う警察官の苦闘を描いた作品です。もちろんゲイ・バー内部でのホモ・プレイの様子もふんだんに描かれていて、ごっつい白人男性同士が愛し合うという、ノーマルな感覚(女好き?)の人が見ると、戸惑ってしまい、なんだか理解しにくいシーンの連続です。

 クラブには黒人が一人もいません。まださすがに異人種間での交わりがないところに80年代初頭という時代を感じます。男たちが濃厚なキスをし、ゴツゴツした手で愛撫を行い、激しく求め合い、後ろから交わる。

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 そのなかにはSMがあり、フィスト・プレイがあり、コスプレがあり、レイザーラモンHG(ハード・ゲイ)のような格好をした髭面のおっさんの乳首を苛めるプレイに対して、おっさんが恍惚の表情を浮かべるという悪夢のような描写もあります。

 現在の価値観であれば、ある程度は許容範囲が広がっていますし、人それぞれで好みや性癖が違うことも徐々に理解されてきてはいます。しかしこの作品が公開されたのは1979年ですので様々な誤解や偏見がある種の差別やステレオタイプの論評を呼んだのではないか。

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 『マイラ 昔は男だった』と同じように忌み嫌われた作品だったのでしょう。この映画の冒頭にはこの映画は一部のホモ・セクシャルの世界を題材に採ったものであって、全体を描いたものではないとのお断りがテロップで流れる。

 それだけ各方面からの激しい批判があったのでしょう。さて、内容に移ります。この映画に登場する殺人鬼自身は濃いサングラスとレザー・ジャケットというスタイルでナイフを隠し持っています。

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 もちろんホモ・セクシャルなので、今までによくあった売春婦を殺人鬼が殺しまくるのではなく、女の代わりに掘られ役の男たちが次々に犠牲者になる作品です。

 バラバラにされる者や拘束されてからメッタ刺しにされる者など猟奇的な方法で殺害が進
行していく。序盤から犯人は出てきますが、顔はシルエットに覆われているし、声と「ここにいるはだれ?お前と俺だけ。」という印象的なわらべ歌の一節によって判別できる程度です。

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 身体的特徴としてはずんぐりむっくりで、警察署長役の俳優に風貌が似た感じという程度ですので、もし署長が犯人だったら嫌だなあと思いつつ、ビデオを見ていました。

 昔、20年以上は前にそんな感じの結末を迎える映画をテレビで見た記憶がありましたので、もしかするとこれだったかもしれないが、まさか偶然にぶち当たるわけもないしなあと思いながら見ていました。

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 アル・パチーノは潜入捜査を開始すると最初はあちらの世界、つまりぼくらが知らない世界に戸惑い、独特のルールや作法を周りのホモの人に教えられていましたが、次第に毒されていき、“郷に入れば、郷に従え”のルールと“朱に交われば赤くなる”の言葉通りにあちらの世界の住人になっていきます。

 自分自身を取り戻すために定期的に彼女に会いに行くのもリアリティがありますし、ある時期からはアル・パチーノの心情も変わってきていて、それに本能的に気付いた彼女によってしばらくは会わないと言い渡されるのも生々しい。

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 殺人鬼を探すために潜入するというミッションだったのが、彼の精神的及び肉体的な変化により、精神構造も複雑化していき、狂気に満ちた感覚に目覚めたアルが最終的には新たなる殺人鬼に変貌してしまうという結末は後味の悪さを見る者に与える。

 あくまでもこれは個人的にそう思っただけで、エンディングがきちんと描かれずにぼやけているのでいくつかのオチが想定できる。

 自分も殺人鬼になってしまうという結末、じつは殺人鬼はまだ捕まっていないという結末、姿を消した隣人の行方も知れないままにされているという点からはもしかすると真犯人は隣人だったのかなどいくつもの疑問が浮かびます。

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 こうした多くの疑問を残して、真相が解明されないまま、ある種の覚醒と自覚を得たようなアル・パチーノの髭剃り顔のアップで唐突に“THE END”を迎える。

 狙いなのでしょうが、あまりにも突然に終わってしまうので訳が分からないと思った映画ファンが評価しづらいと感じても仕方がない。もともと理解しにくいホモ・セクシャルを扱っているのに加え、あまりにも臨場感たっぷりのグリニッジ・ヴィレッジやクリストファー・ストリートのロケが効きすぎていて、圧倒されてしまう。

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 作品は強烈ですが、この映画につけられているサントラは秀逸で、クラブでのサウンド、ニューヨークのニューウェーブ・シーンだったり、プログレのようなインストがつけられている部分があったりと音楽的に優れています。

 あまり有名ではありませんが作品そのもののクオリティーは高く、脚本があちこちで交通事故を起こしているもののフリードキンのセンスは見応えがあります。

 現在、この作品はDVD化はされていません。そのため大昔にレンタルビデオ屋さんに並んでいたビデオや輸入版VHSがヤフオクやAmazonで取引されていて、ヤフオクで7000円くらい、Amazonで2500円くらいで出品されていますので興味のある方はご覧ください。

評価 65点





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