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zoom RSS 『野獣死すべし』(1980)監督はルチオ・フルチ。でもこれギャング映画です。

<<   作成日時 : 2013/11/17 21:25   >>

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 『野獣死すべし』というハードボイルドな邦題から作品のあれこれを思い描いてみるとおそらくは主演にハンフリー・ボガードが出てきそうな感じか、松田優作主演のバイオレンス描写が詰め込まれたアクション映画なのかなあと想像が膨らんできます。

 ビデオテープの裏パッケージの解説を見るまでは、まさかこのギャング映画がイタリア残酷映画の巨匠、ルチオ・フルチ作品であるとは誰も思わないでしょう。

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 猥雑な化け物や血みどろホラーばかりを撮っているイメージのルチオ・フルチですが、じつはギャング物もフィルモグラフィに残っているのです。

 またホラーのなかにも『マッキラー』のように異質な作品も残しています。フルチらしくなく(?)、ストーリー展開もそれほど破綻せずに、フルチ的には出来が良いのにミッキーマウスと並び、ディズニー・キャラクターでも大人気のアイコン的存在であるドナルドダックの首を落とす描写を入れたために問題となりました。

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 このシーンを含めて、かつてはビデオ化されていたものの、ディズニーにバレてしまったためか、いまだにDVD化されていない。

 たまにヤフオクで流れてきていますので、興味のある方は落札してください。また驚きのラスト・シーンは長く記憶に残るでしょう。イメージ的にはカルト映画『江戸川乱歩全集 恐怖!畸形人間』の仰天のラストを思い出す感じです。

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 それはさておき、このギャング物というジャンル映画でもフルチらしい血みどろ描写はしっかり発揮されていて、数々の残虐シーンが存在します。女密売人の顔をバーナーで焼きつけて殺害したり、レイプシーンでは殴る蹴るだけではなく、肛門レイプシーンまで挿入されている。

 『わらの犬』でスーザン・ジョージが二穴挿入されたシーンにも驚きましたが、かなり暴力的な描写の連続で、女性と一緒に見るには勇気が要ります。というか、別れたかったら、こういうのを選べばいいのでしょう。

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 残虐なイメージをあえて見せずにアングルや音、影の様子などでそういった場面を観客の想像に任せるヒッチコック的な撮り方がオーソドックスなやり方だったのが『ナイト・オブ・ザ・リヴィング・デッド』から火がついて、『ゾンビ』『死霊のはらわた』『13日の金曜日』を見たら分かるようにスプラッター描写はより直接的になりました。

 見たら誰でも分かる見せ方が一般化してしまい、より残酷に、そして画面が臓物だらけにより汚ならしくなっていき、その傾向は今に至っています。

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 フルチのギャング映画はもしかすると自分がかつて映画館でファンとして楽しんできたフィルム・ノワールやジャンル映画としてのギャング物へのオマージュ、もしくはパロディを作り上げたかったのだろうか。

 ボスたちが内部抗争で暗殺される様を一気に見せてくるが、これはゴッド・ファーザー・シリーズのクライマックスを容易に想像させる。禁酒法のパロディだと思える外国たばこ密輸(笑)に関わる裏社会の密輸組織のお話というのは真面目なのか、パロディなのか疑問に感じるが、そこらへんは力技で押し切ってきます。

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 ギャング映画では銃撃戦は付き物ですし、血みどろシーンも多いわけですが、通常こういうシーンではせいぜい血糊が使われる程度です。しかしさすがは血みどろの第一人者だけあって、えぐい描写が多い。

 レイプシーンの描写もむごたらしく、犯した上に拷問してから半殺しという全く救いのない展開を観客に見せる。マフィアのやり口としては現実的なのでしょうけど、わざわざ映像化する必要性があるとは思えませんし、こういうのは現在の価値観では受け入れられないでしょう。

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 それでも、そこはジャーロの看板であるルチオ・フルチ。撃たれた犠牲者の死体描写や銃撃場面に執拗なまでにこだわって彼自身の個性や表現衝動を思い通りに発揮しています。

 着弾した身体に大穴を開けてしまうわ、奥さんを監禁している証拠に彼女のパンティを亭主に送り付けるなど、リアルではあるが下品な映像表現をふんだんに盛り込んでしまいました。

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 ただやはり昔気質の映画監督らしく、主人公(ファビオ・テスティ)の兄弟が裏社会の抗争に巻き込まれて死亡した後の水葬シーンではナポリを牛耳るボスたちが一堂に会する様子を高地からのショットで説明的なセリフなしで見せきっています。

 荒々しくシーンが変わっていく編集も雑なのではなく、それが狙いなのだろうなあと思えます。こういうギャング抗争の映画は粗暴な感じというか、少々散らかっている方が臨場感が出てきますので、リアルに見えてきます。舞台となったナポリの下町の雑踏のゴチャゴチャした雰囲気もこの映画の質を高めています。

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 またストーリー展開も主人公たちが復讐しようとしても、人質を奪還しようとしても、なかなか上手く行きません。それでも最後は町ぐるみで侵略的に縄張りを犯してきた一味を退治していくさまは痛快ではあります。

 普通に暮らしているように見える町の隣人が実は裏社会の人間だったというのはイタリアではよくあるマフィアの設定ですが、ここでも有効利用されています。引退後はテレビで西部劇やギャング映画ばかりを暇つぶしに見ている、でっぷりと太ったかつての元締めがいざとなったら若手たちの抗争の終結に乗り出すと、10分もかからずに一気に事態を丸く解決してしまうさまはコミカルで、まさにゴッド・ファーザーのようでした。

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 現実的には悪の組織を相手に立ち上がったとしても、最後は悲惨な結末になるのは容易に想像がつきます。結末としてはまあまあ主人公にとっては悪くはない展開にはなりますが、犠牲はあまりにも大きい。

 かつてのアメリカほど倫理規定にはうるさくなかったヨーロッパ、しかも見世物映画の宝庫だったイタリアだからこそのストーリーや描写なのでしょうか。

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 終始暗い画面とともに、何とも言えない、えぐみが嫌な余韻を残しますが、結果的には主人公と奥さんは地元の大ボスによって保護されていることが仄めかされていますので、一応はビター・テイストのハッピーエンドということなのでしょうか。

 殺されそうになったファビオが追手からなんとか逃げ切って、仲間の家で目覚めた朝に出されるエスプレッソ・コーヒーがとても美味しそうに見える。カフェオレなどのように甘さはなく、あくまでもビターな男の飲物はコーヒー独特の苦みとローストされた芳香が広がりそうです。

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 主演のファビオ・テスティという俳優はとても存在感があり、寂しげなまなざしやクールな態度がこの作品では活かされています。彼はフルチ監督の『荒野の処刑』にも出演していたのでお気に入りだったはずですが、その後は起用されていません。

 その後はなぜかフルチ監督にも呼ばれず、華々しい活躍はしなかったようですが、今でも俳優としてのキャリアは続いているようです。『ジュリエットからの手紙』という作品にも出ているようですので、TSUTAYAにあれば探してみようと思います。

総合評価 68点


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さん、こんばんは。このような作品があったのには驚きです!残酷の巨匠だからホラーや西部劇だけじゃなくマフィア物もたくさん作って欲しかったです。さて、マフィア物で思い出しましたが、最近テレビでやくざ映画が放送されなくなりましたが(地上波)、マフィア物も同様でしょうか…。でもテレ東ではおととい深夜枠で「グッドフェローズ」が、去年「アウトレイジ」が放送されました。さすがテレ東!
さすらいの映画人
2013/11/18 22:26
 こんにちは!

ぼくも最初にこれを見た時は驚きました。
まさかギャング映画を撮っているとは思いもよらなかったですよ。ビデオ時代は気楽に見れたのがいまはもうソフト化されていませんので視聴が難しくなってきていますね。

フルチ監督作品が好きな方ならば、これと『マッキラー』は押さえてほしいですよ。

>やくざ
最近見ないですね。『仁義なき戦い』とかは昔のレンタル屋さんではいつ行っても貸し出し中になっていましたし、あの躍動感は他の邦画にはない迫力でしたし、表現に問題があったとしても、それもまた映画史の一部なのですからゴチャゴチャ言わないで流して欲しいですね。

>テレ東
かつての東京12チャンネルのころから他局とはずれた感覚がこの局の真骨頂ですものね(笑)

思い出に残っている映画って、けっこう「昔、12チャンで見たなあ。」というものが多いので、独自のカラーを突き進んでほしいですね。京都テレビでは中島貞夫監督監修で映画劇場をやっていますが、なかなか時間が取れないですよ。テレビの映画劇場は録画などせずに放送しているときにオンタイムで見るのが昭和以来の伝統だと思っていますのでこの習慣は続けていきます。

ではまた!
用心棒
2013/11/21 14:03
こんばんは

サンゲリア、地獄の門と同年の作品で翌年にはビヨンドを撮ってますが気分転換に作ったのかな?

フルチ先生の作品はほとんどビデオでは発売されてますね

タイトルにはルシオ・フルチの〜とついてます

そんなフルチ先生ですがゴールデンタイムに放送された作品があります

もちろん木曜洋画劇場(笑)

タイトルは地獄のデビルズ・ダンシング(83・伊)

ビデオタイトルはマーダー・ロック

一応サスペンス映画?

ガラスの部屋(69・伊)のレイモンド・ラヴロック主演です

当時、驚いたものです

サンゲリア、地獄の門、ビヨンドはテレビでは放送出来ないなぁ

最期の脚本作品が「肉の蝋人形」、共同でダリオ・アルジェントも担当

もちろん期待通り…

マニア向けです

真昼の用心棒がまともな作品に思えてしまうのは僕だけかなぁ

パーソナルベスト
2016/11/15 21:21
こんばんは!

フルチって、すごいですよね。まるでヒッチコックみたいになんでもフルチのって付きますものww

この映画は現在視聴困難ではありますが、なかなか見応えのある作品ですので、DVD化された際はぜひご覧ください。

>サンゲリア、地獄の門
有名だけど放送は出来ない…。まあ、昭和の放送コードならともかく、臭いものには何でも蓋をする平成の世では放送しようという会議にも上がらないでしょうね。

>真昼の
あれはもちろん、みんなが見れる一般作品ですよww

ではまた!
用心棒
2016/11/16 01:20

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『野獣死すべし』(1980)監督はルチオ・フルチ。でもこれギャング映画です。 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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