良い映画を褒める会。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『透明人間』(1954)と〜めいにんげん あらわる!あらわる!透明なのになぜわかる?

<<   作成日時 : 2013/10/26 19:04   >>

面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 6

 数日前、帰宅後の夜9時に何となくCSを見ていると、日本映画専門チャンネルでちょうど始まったのが1954年公開の『透明人間』でした。

 監督は『ゴジラの逆襲』を撮った小田基義です。このあとはあまり有名な作品はないようですが、定かではありません。東宝も労働争議などでごちゃごちゃしていた余波もあったのかもしれません。1958年以降のキャリアはどうなっているのでしょうか。

 作品は70分余りの中編ですが、演出に少々難があり、100分間程度に感じます。原因はキャバレーでの歌唱シーンが多すぎることです。

 そのためなかなか本題であるはずの透明人間の物語が進まず、ダレてきてしまいます。歌唱シーン自体はモノクロの陰影がいかがわしい雰囲気を出していて、フィルム・ノワールを思い出させてくれる。

画像


 映像としては綺麗に撮られています。しかし特撮映画を観に行ったはずの観客は戸惑ったのではないか。特にこどもたちはなんだか訳が分からなかったに違いない。

 軍部によって透明人間にされてしまった主人公はまさに悲劇の人で存在を消されてしまった彼はピエロの扮装をして、人間世界で生きている。笑いの陰に深い悲しみをたたえたピエロの表情は人間の苦悩を映像で分かりやすく伝えてくれる。

 ピエロ(河津清三郎)が透明人間の正体という設定は秀逸なので、彼にもっと焦点を当てて、時間を割くべきだったのにおそらく集客上の妥協でしょうか。

 情婦なのか、歌手なのかよく分からないヒロインの役柄(三條美紀を推したいのでしょうが、ファムファタールでもないし、なんだか中途半端です。)にスポットライトを当てたためにSFテイストを著しく損なってしまう結果になりました。

画像


 円谷特撮はそんな中でもしっかりと仕事をしていて、透明人間の映像処理や無人で走り続けるスクーター(あまりにもシュールで爆笑しました。)の撮影で効果を発揮しています。悪党どもと戦うシーンはパントマイムになってしまいますが、それなりの殺陣がつけられていて楽しめます。

 その後に多く製作された変身人間シリーズの先駆けとなった一本であることは確かです。『ガス人間第一号』『美女と液体人間』『電送人間』、そして『マタンゴ』へと繋がっていく系譜の第一作品目が結果的にはこれだったのでしょう。

 ただ前述した変身人間シリーズはカルト的な人気をいまでも保っていますし、そのなかでも『マタンゴ』は海外にもファンがいるくらいです。

 ところがこの『透明人間』は東宝特撮に強いマニアしかその存在を知りませんし、レンタル屋さんの棚にも並んでいない。

画像


 初期円谷特撮として貴重な作品だと思うのですが、あまりこれが好きだという方に会ったことがありませんし、テレビ放送で見た記憶もありません。

 『ガス人間第一号』や『マタンゴ』は小学生のころに見ましたが、どうも『透明人間』は思い出せない。子供だったぼくの感受性のアンテナには引っ掛からなかったのでしょうか。

 70年代はけっこうモノクロ作品でも普通にテレビ放送されていましたが、これは思い出せない。今回はまるで昔の12チャン映画を見るような行きずりの感覚で最後まで見ましたが、そうじゃなかったら、さらに10年くらいは後回しになっていたでしょう。

 戦争末期の悪あがきする軍部によるキテレツな実験のために姿形を失ってしまった若き犠牲者は自己のアイデンティティーを国家によって奪い取られる。しかも何一つ補償されることもなく、闇に葬り去られてしまう。

画像


 その実体なき透明人間が生活していく手段として選んだのが奇抜な衣装を身に纏い、顔を白塗りしていても不思議ではないピエロだったのでしょう。彼の周りで次々に起こる透明人間ギャング団による犯罪は姿なき彼には事実無根であることを証明するのは不可能です。

 見えない存在の描写はマイノリティを表しているのか、深読みなのか。この映画のタイトルは『透明人間』ですが、やっていることはいわゆる幽霊などの怪談モノと大差はないような気がします。

 幽霊の代わりに出てくるのが透明人間なのだろうか。透明ではあるが人間でもあるので悲劇的なラブストーリーに出来なくもない。ただしいかんせん70分間というお昼の時間帯に放映される12チャン映画のような尺では様々な制約があるのか、すべてが中途半端になってしまっている。

 主人公と盲目の少女の関わりや悪の組織から抜けきれないヒロインとのロマンスなど上手く膨らませれば、もっとクオリティーが上がる要素はあるので、ぜひとも東宝でブラッシュアップしてリメイクしてはどうだろうか。

画像


 かつての大ヒット作品ではなく、陽が当たらなかった作品や『夕映えに明日は消えた』のようなお蔵入りした作品こそ新たに作り直した方が観客側も新鮮に思えるかも知れない。もちろんバランスとしてはあくまでも特撮SFホラー要素が80パーセント、ラブストーリーとヒューマンドラマが20パーセント程度に抑えることが前提です。

 恋愛モノ要素が30パーセントを越えてしまうと特撮ファンも恋愛映画ファンも不満にしか思わないガッチャマン的な残念な結果になるでしょうから、そこは脚本に頑張っていただきたい。

 そういう意味では今回の鑑賞は昭和のビデオすらなかったころの鑑賞環境に近い。それはなんだか楽しい気分になります。

総合評価 55点


透明人間 【期間限定プライス版】 [DVD]
東宝
2014-02-07

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 透明人間 【期間限定プライス版】 [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



マタンゴ【期間限定プライス版】 [DVD]
東宝
2013-11-08

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by マタンゴ【期間限定プライス版】 [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



美女と液体人間 【期間限定プライス版】 [DVD]
東宝
2014-02-07

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 美女と液体人間 【期間限定プライス版】 [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
結局のところ、あの後盲目の少女の目は治療できたんでしょうかね?そこが気になりますね。できればちゃんと治療して欲しいと思いました。
あとご存知無いかと思いますが。この映画の翌年に松竹が制作した「明智小五郎シリーズ・青銅の魔人」もお薦めですよ。何せ明智小五郎が透明人間になるというトンデモ展開ですから。DVDが出てるので、一度ご覧になってみては?
ベラデン
2013/12/20 23:48
 こんばんは!
>治療
そうですね。あのあとの展開って描かれていませんね。警察病院とかで治療すればすぐに良くなるかもしれませんものね。

>青銅の魔人
えらくぶっとんだ内容のようですね。名前は知っていましたが、そういう内容だったんですね。むかしCSで放送されていましたが、残念ながらスルーしてしまいました。機会があれば見えない小五郎を見てみたいですよ(笑)

ではまた!
用心棒
2013/12/20 23:58
こんばんは

当時はキャバレーがよく出てきますが、この作品では「黒船」

欄`送人間では「大本営」(笑)

特撮が見せ場ですが、ストーリーは?

服を着れば、メイクをすれば普通の状態…

透明特攻部隊?裸なら透明ですが…

そのあたりが曖昧かなぁ

伝送人間では移動する機械をどう設置したか?

生き埋めになった状態からどうやって助かったのか?

突っ込みどころが多いですが、背景には戦争がからんで、悲しい過去を背負って生きている主人公には共感します


ちなみに僕は両作品のビデオソフトを持ってます

三條美紀さん、美しいですね

今年残念ながら亡くなりました

新聞の片隅で見かけたときこの作品を思い出しました

東宝特撮映画はファンが多い

その後の他社の作品にも影響を与えています

深く考えずに観れば楽しめる作品です

円谷についてふれてませんが、それはまた別の作品で…


パーソナルベスト
2016/07/26 23:48
こんばんは!

昭和の映画に出ていた方が年々亡くなっていくのは仕方のないことではありますが、寂しいですね。

>特撮
いまだに好きなので、週末は『シン・ゴジラ』を観に行く予定ですww

特撮を使わない本編部分がしっかりとしていれば名作になる可能性が高くなりますねww

週末も本編部分に注目して見ていきますよ。

ではまた!
用心棒
2016/07/27 00:43
こんにちは

特撮映画はいいですね

特に5〜60年代の作品は比較的短い作品の中でしっかりとした造りです


欄d送人間のタイトルが間違っていました

電送×電送○です゛訂正します

個人的には卵蝟p_も好きですね

約82分と短めですが、よくできた作品です

魔神の目の動きは橋本力、彼は翼hラゴン怒りの鉄拳にも出演してます

翼Sジラは言わずと知れた名作

志村喬のラストの台詞

ゴジラは一匹だけとは限らない…

いま思えばシリーズ化の前提だったのかなぁ

前評判は決して高かったわけではないけど、そういう作品の中で後世に残る名作になるのは素晴らしいことです

前評判がよくて失敗作を観るのは残念です

パーソナルベスト
2016/07/27 12:22
こんにちは!

>シリーズ化
最近の映画の終わり方では“続く”にしたいのだろうなあという願望も感じますww

ただ続けても第一弾を越えられないものが大半なので、願望交じりの続編への布石は無用に願いたいものです。

>前評判
お金をもらって書いている人や出演者たちがバラエティに大挙出てくる番宣、内容と一致しない“感動した”“驚いた”CMなどは無意味ですよね。

ではまた!
用心棒
2016/07/27 15:04

コメントする help

ニックネーム
本 文
『透明人間』(1954)と〜めいにんげん あらわる!あらわる!透明なのになぜわかる? 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる