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zoom RSS 『呪われた海の怪物』(1961)製作期間6日間、怪物のボディはレインコートで目玉はテニスボール!

<<   作成日時 : 2011/12/23 01:16   >>

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 『呪われた海の怪物』は『地球最後の女』を予定より早く撮り終えたロジャー・コーマン監督が俳優たちとスタッフに対して、ノー・プランだったにもかかわらず、余った滞在予定期間中にもう一本何か作ろうというメチャクチャな要求をした結果、製作開始からわずか6日間でクランク・アップまで漕ぎ着けたという伝説を持つ作品です。

 そのため当然やっつけ仕事となり、登場する怪物のコスチュームはすべて現地調達でまかなうはめになり、怪物のボディはレインコートに海藻を貼り付け、掃除用のモップで顔の輪郭を作り、漁に使う網のようなものを身体に絡め、目玉にテニスボールを使って、ついに怪獣映画史上に残る怪物を造り上げました。

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 完成したフォルムはぼくら世代には懐かしいポンキッキのムックにしか見えない。このように書いていくと、ロジャー・コーマンが適当に作ったクズ映画を想像されるでしょうが、1960年代当時の時事ネタであるキューバ危機をベースにしていて結構複雑なのです。

 キューバ本国から金塊を持って逃亡しようとしていたバチスタ側の軍人、密入国の手助けをするふりをして強奪しようとするマフィアの船長一味、さらには彼らを監視して動向を探るアメリカのスパイの暗躍という三者三様の思惑がさまざまな事件を引き起こす様子を描いたフィルム・ノワール風味の力作に仕上げている。

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 あくまでも風味なのは言うまでもない。怪物の登場する特撮シーンだけを見れば、ロケ旅行に出たついでの悪ふざけにしか見えない。しかし本編部分は意外としっかりと構成をしていて、しかもフィルム・ノワールのパロディをやってのけている。

 モダン・ジャズをBGMに使った冒頭のスパイ追跡シーンは緊迫感のある良い出来映えで、油断していると正直、ハッとさせられる。彼を見直そうと思い、集中しようとしたところ、シーンはスパイたちの隠れ家であるバーに移る。

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 緊張感のある会話とちょっぴり大人の会話が交わされたあと、危険な余韻を残しながら、安っぽくしたニコラス・ケイジみたいなスパイ役の彼は立ち去ろうとする。ここでハンフリー・ボガードならば、そのままタバコを燻らしながら、出ていくのでしょうが、そこはロジャー・コーマン。

 スパイはかっこよく別れるものの、いきなり階段にけつまずき、ズッコケて転んだ挙げ句に苦笑いしながら、女スパイにバツが悪い顔を浮かべる。一部始終を見ていた女スパイの冷ややかな視線が痛い。そのシーンは暗転する。フィルム・ノワールを茶化した感じがたまらない。

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 時間がない中で無理やり作った感は否めない。やたらと多い説明的なセリフと独白には参るが、ノワール映画ではモノローグは事件の顛末を主人公が振り返るときによく使われる手法なので、なんとも言えない。

 マフィアの船長一味の部下たちに個性的なメンツが揃っていて、ファム・ファタールもどきの安っぽい女優が結構歌が上手かったりして、ちょっぴり驚く。動物や怪物の鳴き声の物真似をする江戸屋猫八師匠のような部下が秀逸だが、すべてはっきりとそれと解るアフレコなのはゲンナリする。

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 逃亡者であるキューバ人将校たちはアタマが空っぽで、船長がでっち上げた怪物(じっさいは船長一味の策略で殺害していく。)次々に殺害されていき、全滅してしまう。怪物が存在しているような証拠を作るために色々な工夫がある。

 なかでも怪物の足跡としてトイレのシュッポン(?)でポッコンポッコン跡を付けていく。一番この映画では利口そうな船長は金塊を一味で山分けするために立ち回って行くが、怪物に邪魔されて、目的は果たせない。

 怪物は彼ら悪人たちをやっつけると得意気に金塊を独り占めする。つまりこの怪物は倒されることなく、悠々自適に南国の海で暮らしていく。なんだ、これ?フィルム・ノワールはどこに行ったのだろう?

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 見終わると、今さっき見たはずなのに誰が何をしていたのかさっぱり覚えていない。ノワール風味のいくつかのカットと暴れまわるムックの勇姿以外には特に記憶に残っていない。

 クズ映画だったのかなあ…。でもまあ、エド・ウッドの作品群のヒドさとはまた違うクズのようで、アホらしくてまた見たくなる不思議な味わいを持っている。

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 あくまでも『地球最後の女』の副産物の珍味として考えれば、すべて丸く収まる。夜中にベロベロに酔っ払って、みんなで見たら楽しいでしょう。映像のパーティー・グッズなのかもしれません。

 現在でも精巧なCGやふんだんな特撮技術だけが先走りした作品が多々ありますが、もしもそれらの映画の技術レベルが『呪われた海の怪物』と同じ程度の特撮だったとしたら、話の内容だけで観客を納得させられるだろうか?

 逆説的でもありますが、映画における特撮の効果は絶大です。その眼くらましにあって、作品の本質を見誤ると的外れな印象を持つ危険性もある。そういう意味ではこの映画は特撮のパロディであるだけではなく、映画を理解する試金石でもある。

総合評価 55点


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